(5) 貼付作業
今回は南部生活環境事業所の協力を得ながら、行政側で作成したポスター(日本語のみ)と同時に集積所への貼り出しが可能となったため、協力をお願いしました。しかし「年末・年始のごみ量が増加する中での貼付作業は困難」という現実もあり、推進担当(町内会への連絡調整、広報・指導業務、不法投棄、ふれあい収集などを担当する組合員)のみで対応するという方法がとられ、実質的には3人での貼付作業となったことから、全ての集積所へ貼付することができませんでした。
推進担当は市内5ヶ所の生活環境事業所にそれぞれ配置されていることから、推進担当の横のつながりをいかし、他の事業所管轄エリアの数箇所で活用されました。
(6) より有効な貼付をめざして
組合内部での情報伝達や、詳細までの調整が不十分だったこともあり、満足のいく結果にはなりませんでしたが、今回の反省から今後の取り組みでは、①対象地区を全市域とし、貼付箇所について各地区での集住状況を把握する団体と連携しながら絞り込みを行う、②貼付作業は短期間で人員を動員して行い、やったところ、やらないところの差をなくす、③町内会、貼付作業者への連絡、説明、調整ができる担当者を養成する、④事前にスケジュール、貼付方法をマニュアル化する、などを検討することにしました。
(7) 年末年始の総括から、行政としても姿勢明確に
年末年始はごみの排出量が増大することから、環境局では、作業計画、安全衛生、広報、連絡調整等について、12月初旬から対策会議を設置し、翌年の1月中旬までを対策期間としながら2月には作業総括を出しています。
その中で広報についても計画・総括しており、総括に対する申し入れへの回答では、多言語広報の必要性は共通認識し、取り組みの実績もあることから、「年末年始につきましては、より効果的な広報を行うために、外国人向けポスターを作成し、町内会等の掲示板への掲出やごみ集積所に貼付するなど対応を図ってまいりたいと考えております」という内容が明記されました。
(8) 今後の取り組み
環境局からは前向きに取り組む考え方が示されましたが、予算の確保がされていないことから、内容、手法、規模、対象等について事前に情報の提示と協議を求め、①取り組みを形骸化させない、②継続的な取り組みとさせる、ことに向け、労働組合が関わりを持ちながら継続した取り組みとし、新たな情報周知の手法を模索し、すすめていきます。
3. 自治研としての成果と課題
(1) 川崎市環境局の今回の収集日程の変更総括は、「当初は混乱があったものの、適切な排出がされている」となっています。事前の広報について、時間・予算をかけて行ったことから、約83%の市民が制度変更について理解をしていましたが、理解していなかった17%・約24万人の市民について、その内訳を分析することで効果的な広報が見えるはずですが、行政としての分析はされていません。目標値を設定した取り組みを行っている場合、達成度を重視した結果に満足することなく、達成されなかった原因、対象を詳細に分析することが重要であり、次の施策へとつながるものにすることが不可欠です。
(2) 外国籍住民との共生や、住民自治における外国籍住民の参加など、自治体における施策では常にマイノリティを意識しての政策形成と、決定した施策の周知徹底を意識すべきですが、サービスを提供する側が、サービスの受け手、対象者を絞り込んでしまうことも多々あり、マイノリティに対する施策は後回しとなる現状があります。
(3) 神奈川県における外国人登録者の国籍は166ヶ国・地域にもなっていること、また国籍別登録者数の構成が変化してきていることからも、多言語広報=7ヶ国語ということを再考する必要があります。単純に「英語標記すればほとんどの人が理解できる」という発想ではなく「母国語での情報取得が可能である」という、いかに多くの文化を取り入れて実施することができるかという観点が重要です。
(4) そのためにも、予算措置の段階から、多言語化を意識した施策に向け、予算要求がされるべきです。予算規模の縮小に逆行すると感じるのか、ばらまき広報を見直した効果と感じるのかは、政策、施策の優先度が重要な判断基準です。現状で大々的に取り上げられる可能性は低いといわざるを得ない状況であるがゆえに、組合の自治研活動としての地道な取り組みが必要です。
(5) 特に、今回の取り組みで感じられたことは、情報に対する意識として「発信していること」=「理解されていること」という認識が固定化されていないか、という危惧です。ホームページでの情報発信が主流となっている中で、「パソコンは一家に一台あり、情報の取得が可能」「多言語化した情報を掲載しているから、情報取得は可能」という判断は、パソコンがない家庭や、ホームページのアクセシビリティの問題、情報過多によるまぎらわしさなどに目が向かない結果、情報に触れる機会を狭めている状況を生み出しています。
(6) 情報は「発信する」ものとしての性格が強いものですが、そこに「どのような方法で、より多くの対象に届けるか」という視点が不可欠であり、その中にマイノリティが含まれていることを意識することが重要です。
(7) 町内会や翻訳を依頼した団体との連絡、調整、実行を通し、協働することの可能性、楽しさ、難しさと自治研活動における連携の重要性を実感しました。わたしたち自身がそうでしたが、住民、特に町内会は否定的な意見もあるのではないかという先入観が存在したことは事実です。今回の取り組みでは、幸いなことに快く賛同してくれましたが、日頃からの関係性が希薄であることから、悲観的な先入観が先行してしまうことに気づかされました。
(8) 期待以上に住民自治の意識は高まっているように感じました。地域性や年齢層によって偏りがあることは当然ですが、生活していくうえでの問題点の認識、解決策、機動力は住民自身が持っていることを認識させられました。「住民自治」と「行政の施策」が「協働」という形態をとりながら、どのように展開されるのか、将来への可能性に期待が広がりました。
(9) 逆に、新興住宅地や再開発地域における広報には、当初は住民自治が機能しないことも想定され、町内会だけにとらわれない、様々なコミュニティーとの協働が効果をあげるものとして期待されますし、行政がいかにコーディネートするかが重要であることも強く感じるものとなりました。
(10) 広報という側面から取り組みを行いましたが、「だれが」「どこに」「どのように」を考えることは、「まちづくり」「協働」というキーワードと密接に関係することを実感しました。
(11) さらに、対象を「障がい者」「子ども」「高齢者」などへ拡大した時、それぞれにあった手法が検討される必要があります。より多岐にわたる取り組みが可能となる反面、一元的な広報による効果を高める必要性もあり、折衷できる視点や手法についても調査・研究の必要性があると感じました。
4. おわりに
今回、「対象」を絞りこんだ取り組みとならざるをえなかったのは、企画段階での時間の短さが原因であることは明らかですが、「思い立ったら行動してみよう」という「思い切り」も必要と感じました。行政との協働が不調に終わった段階から、長期的・継続的な取り組みを構想し、実績を積み上げ、誤解を恐れずにいえば「既成事実化する」ことで、影響力を発揮することができました。地道で、今後の確約のない中での取り組みは継続するにも体力が必要です。目的意識を明らかにし、どのように結果を出すかのコーディネートも必要です。もちろん自分たちが描いた絵に近づかないこともありますが、軌道修正しながら、実感できる形を残すことによって、組合員への影響、反響も得られ、結果として自分たちの業務内容やスキルアップにつながることが実感できれば、自治研活動の幅も、より広がりを持つことができるはずです。今後は、その「可能性」を継続的に、かつどのように実行していくかが問われています。より広い視点と実践に結びつくアイデア、行動力が必要であることからも、若い世代の組合員が自治研活動に魅力を感じることができるよう、取り組んでいきたいと思います。
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