1. はじめに
2006年2月27日、弘前市、岩木町及び相馬村の旧3市町村が新弘前市として誕生し、2008年4月1日現在(推計)の人口は184,176人、世帯数は69,861世帯の街となった。
弘前市では1995年「容器包装リサイクル法」成立に伴い、青森県内に先駆けて2000年度から、限りある資源を大事に活かし、次の世代に引き継いで行く為にもと家庭ごみの12分別収集を導入した。しかし、大量生産、大量消費、大量廃棄のサイクルが変わらない現社会、ほぼ毎年「その他プラスチック」の排出量が増え続け、収集・運搬・処理コストの増加などから、効率的な行政サービスを行う為の見直しが必要となり、2008年4月からは「その他プラスチック」を「燃やせるごみ」へ、「燃やせないごみ」のプラスチック素材のみのもの(長さ45cm未満)を「燃やせるごみ」へ、無色のガラスびん・茶色のガラスびん・その他の色のガラスびんを統合し、12分別から9分別への見直しによるコスト抑制に踏み切った。
この度の分別見直しについては、前弘前市廃棄物減量等推進員・前青森県環境美化推進員としての巡回活動に携わり、現在、青森県地球温暖化防止活動推進員として、ごみ減量化・再資源化・地球温暖化防止を進めていく上において取り組んできただけに、釈然としないモノを感じているが、まずは問題点を調査・分析し、考察する。
2. ごみ12分別収集スタート前の経過と状況について
(1) モデル地区の状況
1995年、城西町会連合会(1,600世帯余)を廃棄物減量等推進員モデル地区として指定し、各町会から2人が選出され、ジャンパー・帽子・腕章を着用し、地区の巡回指導にあたる。
1998年、びん・ペットボトル分別収集のモデル地区として城西町会連合会指定。
同年、発泡スチロール、白色トレイを「燃やせないごみ」へ。
1999年、燃やせないごみの収集回数を月1回から2回とし、廃棄物減量等推進員を市内全地区に設置。
同年、びん・ペットボトル分別収集のモデル地区を3地区追加。
モデル地区でのごみ収集は、無色透明なびん・茶色のびん・その他の色のびん、ペットボトル、発泡スチロール・白色トレイは、各自ごみステーションに置かれたネットにごみを持ち寄り分別して入れ、ごみ収集車は空のネットを置いていくというスタイルで実施。
▲ 課題としてのネットの管理は、ごみステーション設置場所の協力員の方ですが、全市となればネット購入の経費や管理上の問題から、中が見える透明な袋での回収となった。
1999年、廃棄物減量等推進員を市内全地区に設置し、市内303町会への説明会を6月から開始し、翌年1月までに合計243回、市民へ説明をして回ったり(以降、随時、事業所・学校・各町内会からの要望により出向く)「広報ひろさき」で実施内容を紹介したり、「ごみの分け方・出し方」の冊子を9万冊作成し、市内65,000世帯に配布したり、また、一覧表・日程表・ビデオ「さあ始めよう、分別収集(10分)」を5,000本作成し、町内各班に回覧を実施した。
▲ 廃棄物減量等推進員・青森県環境美化推進員としては地域住民に対して、自前の通信を発行したり、新聞の投稿欄やミニコミ誌に寄稿して分別の意識啓発を図る。
※ 青森県環境美化推進員『1998年、青森県では「青森県環境美化推進員(1997年12月24日、青森県条例第59号として交付された『青森県空き缶等散乱防止条例』第13条に位置づけられている。)」
(2) 夜の繁華街、K街住民の意識が高まった事例
地区住人構成は飲食業、一般住宅(町会未加入者含む)事業所あり。
地区住民は、アキラメ姿勢ながらも少しでもきれいな地区にしたいと、清掃を実施してきたが効果はなく、市に対して苦情をよせた時、市職員が夜、周辺にチラシをまいてマナーあるごみ出しの協力を願って歩いた。
K地区住民としては、常時ごみが散乱し、衛生上・景観上からも問題であったごみAステーションの改善を願っていた。
青森県環境美化推進員としては、巡回活動等で住民、飲食業さんとも「ごみ談義」をするまでの顔見知りとなり、3分別から12分別収集を目前にした3月中旬、危機感を訴える声が出て、県の了解を得、市、町会とも連携をとり、各自が役割分担し、ごみステーションを廃止した。
● 役割分担について
飲食業さん |
営業ごみは各自フタ付きの容器を準備し、回収業者に依頼。 |
町会長さん |
町会未加入者から拒否されたことがあるので及び腰。推進員が廻る事を了解。 |
美化推進員 |
了解を得、地区住民を1軒ずつ廻り、Aステーション廃止の承諾願う。 |
喫茶店主の方 |
Bステーション前で未加入者だが常に清掃に努めていた方なので、コミュニケーションを図る。 |
市役所 |
担当課は「不法投棄禁止」の看板設置。清掃事業所はAステーションのごみを全て撤去する。 |
地区住民 |
毎戸収集の方とBステーションに出す方に場所の確認をする。 |
◎ Aステーションは、景観上からも負の場所であっただけに廃止に関わった町会をはじめ、市にとっても成功事例となった。地区の皆さん、何とかしなければ……との思いはあったが、それぞれの隙間をうめる役目が青森県環境美化推進員として丁度、行政と地区住民とのつなぎ役に。この度の事で飲食業の方々も“皆でやれば出来る”と各自、ごみ分別の意識が高められたと確信する。
3. ごみ12分別収集スタート後の経過と状況について
(1) 開始に踏み切った理由&収集方式
1995年「容器包装リサイクル法」が成立し、弘前市では家庭系ごみの約6割を占めるプラスチックごみを不燃ごみ扱いにし、ごみの減量化と再資源化、最終埋立て処分場の延命化を図るために決定したことにある。
可燃ごみの焼却業務は周辺の5町3村(岩木町・板柳町・大鰐町・平賀町・藤崎町・碇ヶ関村・相馬村・西目屋村)で組織している「弘前地区環境整備事務組合」が行っている
ごみ収集は、毎戸収集(各家の前に出す)とごみステーション収集の2方式で実施され、ごみは収集日当日の朝8:30までに、ごみ冊子をみて、日程表を確認して、各自の決められた場所へ出す事"決められた日に、決められた物を、決められた場所に出す"が合言葉的になっている。
(2) スタート以降の状況&対応
ごみステーション(ごみ収集車が回収にくるまでの一時集積所)には、分別が不十分・曜日の間違い・時間を守らない・洗われてない・袋の色が違う・他地区からのポイ捨てなどで黄色いステッカーを貼られた袋が残される等多くの苦情が寄せられた。
特に集合住宅地や新興住宅地、町会未加入者が多い地区、ごみステーションが住宅の前、また、河川や児童公園など離れたところに設置されている地区においては責任が薄くなるせいか、ごみの散乱やルールの不徹底が目立った。
原因として考えられることは、ごみだしのルールが徹底されていない、ルールを知らない、ルールを守る理由がわからない、ルールの仕組み等に問題があるので守らないのではないかと考えられる。
対応として、容器包装ごみは汚れをとって、分別して出すと言う事で、一人暮らしの高齢の方や障害を抱えている方への配慮に市や廃棄物減量等推進員(1年で12,000円の報酬)さん方の地道な活動と市の広報活動(「広報ひろさき」への掲載・新聞・テレビ・FMあっぷるウェーブ・出前講座等々)、保育所・学校等への環境教育の推進、環境マネジメントシステムに関すること、地球温暖化防止実行計画の策定・推進に関すること。また、旧弘前市においては、市民参画のもと、2001年3月に策定した「弘前市環境基本計画(ひろさきアジェンダ21)……現在市町村合併に伴い失効中」に掲げられた各種の環境施策を、市民、事業者、市が適切な役割分担のもと、実現するに当り、その連携先との関係や役割分担、相互協力の内容を定める協定(「環境パートナーシップ」)を結んでいる。
▲ 主な活動として、鮭稚魚放流・まちかど広場クリーン大作戦・だんぶり池作業・こどもエコクラブ・エコクッキング・環境シンポジューム等など。
▲ 商工会・事業所等への働きかけとして、エコストア・エコオフィス認定制度により、事業者自身の環境保全と省資源に対する社会的責任の自覚による自主的な行動を促すことを図るのが目的で、市が定める基準に合致すれば認定し、認定証とステッカー・ポスターを交付する。市は、認定店・認定事業所を市のホームページ等を通じて紹介する。
2001年、「家電リサイクル法」施行に伴い、「その他プラスチック」の収集回数を月2回から週1回に変更。
2002年、「建設リサイクル法」施行に伴い、12月、弘前地区環境整備センターにおいて、可燃ごみの焼却が開始された。
2003年、弘前地区環境整備センターの資源化施設・リサイクルプラザが完成
弘前地区環境整備センター灰溶融炉爆発事故……2008年和解に、稼動には相当に期間を要するだろう。
同年、10月「家庭系パソコンの回収・リサイクル」がスタート。
2005年、「自動車リサイクル法」が本格施行となった。
市では、2006年4月、市の事務・事業に伴う温室効果ガスの排出を抑制し、市民や事業者の行動の模範となるよう、「弘前市地球温暖化防止率先行動計画」を策定し、環境負荷の低減に取り組んでいる。
▲ 主な取り組みとして、「エコ通勤デー」を実施。
4. ごみ9分別収集移行への経過と状況について
(1) ごみの財政状況等について
厳しい財政事情で歳出の削減・歳入の確保という事で、ごみ有料化導入も視野に……
しかし、容器包装リサイクル制度による問題点など、特に「その他プラスチック」について取上げるが、大量廃棄・リサイクル化により、排出量の急増、市町村の負担大となり、収集・梱包・保管経費増、委託料の高額化。また、高齢世帯の増加による分別のわかりにくさ、事業系の曖昧さから事業系への市町村負担の発生、環境負荷軽減に疑問が、燃料等の使用やごみの2分の1が焼却(熱回収)。
▲ 「その他プラ」にかかったコストは、収集運搬で6,500万円、中間処理に1,300万円、容器包装リサイクル協会に支払った負担費が889万円。
収集量が約20倍の可燃ごみの収集運搬費は8,400万円で、「その他プラ」にかかるコストの大きさが分かる。
▲ 2006年度のリサイクル率:11.2%、県:11.8%、全国:19%
▲ 「その他プラ」の資源化量は県の4倍、全国と比べても2倍だが、重量で計算するリサイクル率には反映されにくく、数値に表れない。
▲ ごみ減量などを目的に制定された容器包装リサイクル法だが、事業者の発生抑制が進んでいない。リサイクルコストの7割が市町村の負担で、事業者の負担が少なすぎる。
▲ ごみの有料化は、有料化による不法投棄の増加が懸念されるので実施しない。
▲ 事業者による食品トレイの75%が自主回収ルートに。それに2007年4月1日、容器包装リサイクル法が改正され、事業者の排出抑制を促進し、レジ袋の有料化、マイバック配布等の取り組みを求め、事業者から再商品化費用が効率化された分の2分の1を市町村に拠出。
▲ その他として、政令や省令の改正として、再商品化手法として固形燃料化を認め、自主回収分の控除を認める。
(2) 分別の見直しによる現状と課題
弘前地区環境整備センター灰溶融炉爆発事故により、市の埋め立て処分場は満杯の状況下、事故後、灰を他県の処分場へ依頼していたが、財政が厳しい中「その他プラスチック」を還元剤として「燃やせるごみ」に熱回収に変更することで、燃料の削減、経費節減につながるということで、昨年10月、弘前市では、費用対効果がより高い効率的なごみ処理を行う為、各種団体の代表者や一般公募の市民を委員とする弘前市廃棄物減量等推進審議会に、家庭ごみ分別の見直しについて提案し、了承を得る。
2008年2月14日には分別変更に伴う説明会を開催し、市民の声としては、「これで少しは楽になる」という声、「なぜプラスチックを燃やす事にしたのか」「ダイオキシンは出ないのか」「リサイクル意識が低下するのでは」「学校での環境教育はどうなるのか」等の議論となる。
▲ 「その他プラスチック」収集用の2分別収集車は全て減車となり、収集した「その他プラスチック」から異物を除去したり、圧縮・梱包・保管する経費などについては節減に繋がり、これらの経費の増減を差し引き、前年度予算と比較すると約7,800万円の節減となるが、民間委託事業者としては専用車の3人乗車が2人になり人員削減に踏み切った。
▲ いかにごみ減量を進めるかで、マイバック持参の協力呼びかけによるレジ袋の削減、スーパー等に店頭回収普及の協力依頼、過剰包装の辞退、新聞・雑誌・その他の雑紙(レシートやカレンダー・はがきをはじめ、水に溶ける紙)を地域の再生資源回収運動や市の拠点回収に出すなど市民への呼びかけをいかに図っていくかにある。
◎ごみ減量運動・報償金の推移
ごみの減量化・資源化を推進するため、町会や学校PTA等が実施する再生資源回収運動に対し、回収量に応じた報償金を支給している。(1979年、資源ごみ回収運動推進報償金を制度化)
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1990年
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1991年
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1995年
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1997年
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1999年
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2007年
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1kg当りの価格
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2円50銭
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3円
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3円50銭
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4円
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5円
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4円
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▲ 2007年4月からの容器包装リサイクル法の見直しにより、白色トレーの使用量に応じて店が支払わなければならないリサイクル費用から、店頭回収した分だけ差し引かれることになった。市民として、白色トレーを市のごみ収集に出さずに、これまで通り洗って店に持参すれば、市のごみ処理経費の節減になるほか、店にとってもリサイクル費用の節減になる。
5. まとめ
諸情報をキャッチする各自の意識度、町会・住民・行政との協働(パートナーシップ)のあり方、研修や環境教育による意識の向上、まずはできるところから各立場から意識のバリアフリー化を図っていかなければならないのではなかろうか。また、行政との連携のもとに地域や学校で現場からの環境教育実施と、リーダー養成研修等による人材育成が必要。
法律の不備として、「容器包装リサイクル法」自体に問題があると認識する。その問題点としては製品を買わない住民までが税金で処理費を負担させられている点にある。
生命の視点から経済を考え、生命を脅かすにいたった経済を生命の側から制御するという発想に立ち、資源循環もそのための一手段に位置づけ、法律の改正が必要だ。
しかし、地球温暖化による気候変動がもたらす影響は多大と察するが、CO2を減らす対策として、安易に原子力エネルギーに? そのツケを次の世代に先送りする事のないように、まずは、誰かではなく、貴方も、私も、弘前市のごみ問題から直視し、地球全体で温暖化防止による気候変動にストップをかけていかなければならない!!。 |