【自主レポート】自治研活動部門優秀賞 | 第32回北海道自治研集会 第Ⅴ-①分科会 自然環境保全と循環型社会 |
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都心に隣接し、宅地化が進む人口19万人の西東京市。その市内中央部に本稿の舞台となる「まちの里山」ともいえる東大農場がある。東京大学(以下「東大」という)がこの農場の移転を計画したのを機に、市民組織が、行政・議会との連携・協働が実現しない中で、単独で農場存続運動を展開、市民力が影響して農場移転中止が決定した。 1. 東大農場存続運動について (1) 東大農場の移転計画発表と市民組織の結成 (2) 「残す会」の活動の経緯と活動内容 2. 市民運動の成果とその背景 「残す会」の東大農場存続運動の成果を挙げれば3つある。 (1) 運動目標の明確化と市民からの信頼 (2) 「残す会」の効率的な組織運営 (3) 東大との信頼関係構築 (4) 社会的背景の後押し 3. 実現できなかった行政・議会との協働 (1) 農場存続運動で行政・議会はなぜ動かなかったのか |
(注) 坂口市長のマニフェストに謳われた「東大農場のみどりを守るための市民検討委員会」として、2005年11月に設置。委員は学識経験者1人、市民3人、職員1人で構成。農場存続が決定したため、2008年3月に解散。 |
② 市長に対し「東大農場存続を東大へ働きかけて欲しい」旨の要望書を提出したが、提出してわずか半月後に「『東大農場懇談会』での答申を待って、2008年度を目途に市の方針を策定したい」との回答にとどまった。 ③ 市議会に対しても、市と同趣旨の陳情書を提出。2007年の3月・6月の定例議会でともに実質審議されないまま継続審査となり、9月定例議会では、農場存続が決定したために「すでに陳情の願意が通っているので審査する必要がなくなった」として審議未了扱いにした。 (2) 市民から寄せられた市の協働に対する不満等 4. 西東京市職員労働組合による市民との協働 (1) 東大農場存続運動に繋がったアースデイ行動 |
(注) アースデイは、旧田無市の市職員労組役員が公民館に配属され、公民館の環境講座を実施する中で自治意識を持つ市民と交流し、1990年に始めた運動。 |
(2) 市職員労組の目指すもの―求められる公務員像― |
(注) 本年2月、西東京市では、2003年に職員向けに策定した協働の基本方針を見直し、新たに「市民活動団体との協働の基本方針」を策定した。 |
(結びにかえて) 以 上 |
資料1. 東大農場とは |
正式名称: | 東京大学大学院農学生命科学研究科附属 農場(旧多摩農場。現西東京キャンパス) |
農場の位置: | 西東京市緑町(田無駅から北に徒歩7分) |
農場の歴史: | 1935(昭和10)年 駒場から移転 2003年3月 検見川への移転決定 2007年8月 移転中止決定を発表 2008年5月 農場の整備計画発表 |
農場の目的・機能: | 農学に関する教育・研究のほか、社会貢献も重要な役割。 また、環境・教育の場、広域避難場所、さらには雨水の地下水涵養、大気浄化等の機能をもつ。 |
農場の地勢・規模: | 土壌は関東ローム層と呼ばれる火山灰土壌で、その表層は黒ぼく。 敷地面積:22.2ha(うち畑16.5 田1.5) 建物施設:本館事務棟、学生宿舎、作業棟等 1935(昭和10)年頃の建物群は、旧乳牛舎(現農場博物館)等20棟に及ぶ。 |
農場の現況: | 2007年8月の移転中止により、神奈川県二宮の果樹園、検見川の緑地植物実験所の機能を、当農場に移し、教育・研究のフィールド拠点として整備に着手。一部の土地は、整備対象外地域として処分も検討。 新しく整備されれば、東大演習林―里地・里山―畑・水田と連続した環境が出来上がり、地域連携、社会貢献に係わる施設も整備される。 なお、農場博物館は2007.12から開館。 |
第1回アースデイ 1990.4.28 (自治労産別として方針提起されたアースデイ行動)市内の雑木林である「自然公園」で自然観察会。組合員30人参加 第2回アースデイ 1991.5.18 「東大演習林」の自然観察会と「石神井川」の水質調査を実施。組合員のほか、市民20人が参加 第3回アースデイ 1992.4.18 (実行委員会方式で取り組み。市職員労組の中にアースデイ推進委員会〈自治研推進委員会へ繋がる〉を立ち上げ。)自然公園観察会、フリーマーケット、その他イベント、パネルディスカッション「田無の環境を考える市民の集い」を開催。現在の原型となる。 第4回(1993年)~第11回(2000年) 市民中心に実行委員会方式で開催。市職員労組は独自のイベント開催や事務局を担当。労務提供(約200人~約70人)、資材貸与、財政的な面で協力。 (2001年1月、保谷市と田無市が合併。西東京市誕生3年目にアースデイin西東京実行委員会〈21団体〉が復活(それまでは旧田無市で開催)) 第1回「アースデイin西東京」 2003.9.27 初めて東大農場で開催。前夜、講演会を開催(テーマ「地球環境と農業」)。 第2回「アースデイin西東京」 2004.10.2「楽しもう。身近なみどり、東大農場へ」というキャッチフレーズで、市民への東大農場PRを主目的に開催。 第3回「アースデイin西東京」 2005.10.15 4月開園の「西東京いこいの森公園」で開催。 (市職員労組と市民との協働で定着したアースデイは、2006年から2年間、東大農場の収穫祭と共同開催した) 第4回「西東京アースデイ&収穫祭2006」 2006.11.23 初の東大農場と同時開催。 第5回「西東京アースデイ&収穫祭2007」 2007.11.23 東大農場移転中止後初の開催。 |
以 上 |