【自主レポート】

第32回北海道自治研集会
第Ⅴ-①分科会 自然環境保全と循環型社会

し尿処理から発生する脱水汚泥処理について


京都府本部/城南衛生管理労働組合・副執行委員長 川戸 英美

1. 概 要

 城南衛生管理組合は、京都府南部に位置する宇治市・城陽市・八幡市・久御山町・宇治田原町及び井手町の3市3町で構成される特別地方公共団体(一部事務組合)です。
 主な業務は、し尿の処理処分、ごみの中継運搬、処理処分、資源化及びこれらに関係する行政事務で、し尿処理施設1場、ごみ焼却場2場、粗大ごみ処理施設1場、リサイクルプラザ1所、埋立処分場1場、ごみ中継場1場を有し、管内38万人の廃棄物処理を実施しています。

2. し尿処理について

 管内から収集された生し尿と浄化槽汚泥の全量を115KL/日の処理能力を持つ「クリーンピア沢」で受け入れています。その内、生し尿の一部は、隣接する京都府木津川流域下水道の洛南浄化センターへ希釈後、投入しています。残りの生し尿と浄化槽汚泥は全量、自己処理しています。
 また、クリーンピア沢は、処理方式として標準脱窒素+高度処理(活性汚泥方式)を採用しているため、大量の汚泥が発生します。この汚泥は、濃縮後、脱水設備で脱水し、乾燥焼却設備で発生量の1/100に減量したあと焼却灰として最終処分しています。(「フローシート」参照)


フローシート


3. 課 題

 施設(焼却設備)の運転には、多くの白灯油や電気が必要です。化石燃料の削減による温室効果ガス発生の低減と施設老朽化対策(稼動12年目)処理経費の縮減をはかることが急務となっています。
 クリーンピア沢汚泥乾燥焼却設備稼働に伴う温室効果ガス(CO)の算定式は次のとおりです。
(電気使用量)2007年度使用量 152,595kWh
  152,595×※0.000555=84.691tCO
(白灯油使用量)2007年度使用量 448KL
  448×※36.7×※0.0185×※44/12=1,115.289tCO
 温室効果ガス合計 84.691+1,115.289=1,199.98tCOの温室効果ガスを毎年、発生させています。
 また、クリーンピア沢の経費的問題点として、
  ① 焼却設備の運転に伴う白灯油購入料の増大
  ② 老朽化に伴う各設備機器のメンテナンス(維持補修)経費の増大
  ③ 生し尿収集対象世帯の減少による汲み取り収集手数料収入の減
が、挙げられます。
 上記の内、③は下水道進捗に伴い対象世帯が減少しているものであり、政策上もより一層の推進を図っていくべきものであるため、減少は止むを得ません。
 よって、温室効果ガスの削減と処理経費(コスト)削減に対する方策を次項のとおり原案化してみました。

4. 焼却設備の経費削減

 前項で示したようにクリーンピア沢焼却設備の稼動には白灯油が欠かせず、今後も温室効果ガスの発生とランニングコスト及びオーバーホール(修繕)経費が必要となります。単純に焼却設備を休止した場合、排ガス、ダイオキシン類の発生を抑制できるなど環境面でメリットはもちろん、単年度で4,000万円以上の予算が不要となるため焼却設備の休止が可能かどうか方策を検討しました。その具体案としては、
① 脱水汚泥を直接、埋立処分した場合
  関係法令により実現は困難。仮に実現出来たとしても処分料(約700万円/年)がかさむことと脱水汚泥性状の安定化に課題が残る。
② 肥料化、再資源化
  汚泥成分に重金属が多く含まれているため、肥料化に適さないと過去に分析結果を受けている。脱水汚泥は含水率85%前後であり、実用化は困難。
③ ごみ焼却場への搬出処理
  ごみ焼却場の受け入れ体制が整えば可能。ただし、1日約10tの搬送方法、搬入方法が課題。
  以上のように実施可能な方策としては、③がもっとも有効的であるとの判断に立ち、関係所属と協議に入り、次項の内容で実証を行うこととなりました。

5. 脱水汚泥の焼却場への搬出と課題

① クリーンピア沢の脱水汚泥コンベアを逆転運転させ、4tダンプ車に脱水汚泥を積み込む。
  1台の積み込みに要する時間と臭気の有無を把握する。
② 焼却場(折居清掃工場)まで搬送する。搬送中に脱水汚泥が液状化して流出しないかどうかの確認を行う。
③ 焼却場での燃焼状況の確認。クレーン、火格子、灰コンベア類への影響の確認。
④ 受入れ可能量の目算。全量(10t/日)が可能かどうかを見極める。


脱水汚泥搬出経路図



2007年度決算見込額
 
(単位:千円)

項  目

金  額

備  考

消耗品費

1,924

苛性ソーダ購入費

燃 料 費

31,683

白灯油年間使用量396KL

光熱水費

1,893

電気使用料

修 繕 料

9,450

定期点検整備修繕料

委 託 料

728

焼却灰埋立処分料、排ガス測定

公 課 費

1

汚染負荷量賦課金

合   計

45,679

 


6. まとめ

 今回のレポート内容は、実証段階前の状況を報告しています。現時点の検討項目・課題としては、①排出に利用するコンベアの搬送能力とダンプへの積載量、②搬送に要する時間、③積込み時及び搬送中の臭気対策、④受入れ先諸設備の損耗対策等々が考えられ、これらの検証を慎重に行う必要があります。
 将来的にあらゆる障壁がクリヤーされ、脱水汚泥をごみ焼却場で全量処理することが可能になれば、環境への負荷の軽減と経費(コスト)の節減を実現できることは間違いないと思います。


<参考1> 2008年4月推定脱水汚泥量

4月

搬入量(生し尿
・浄化槽汚泥)

脱水量(※1)
3

濃縮汚泥量(※2)
mg/L

含水率(※2)

脱水汚泥量(※3)
(脱水ケーキ量)t

1日(火)

306.34

66.8

16,040

85.2

7.24

2日(水)

323.95

72.3

16,040

85.2

7.84

3日(木)

314.51

73.7

16,040

85.2

7.99

4日(金)

330.55

75.1

16,040

85.2

8.14

5日(土)

 
 
 
 
 

6日(日)

 
 
 
 
 

7日(月)

308.52

67.6

16,040

85.2

7.33

8日(火)

298.05

69.2

16,040

85.2

7.5

9日(水)

260.06

72.4

16,040

85.2

7.85

10日(木)

291.9

129.1

16,040

85.2

13.99

11日(金)

310.5

64.5

16,040

85.2

6.99

12日(土)

 
 
 
 
 

13日(日)

 
 
 
 
 

14日(月)

301.06

91.6

16,040

85.2

9.93

15日(火)

326.37

117.2

16,040

85.2

12.7

16日(水)

306.41

88.7

16,040

85.2

9.61

17日(木)

346.61

140.1

16,040

85.2

15.18

18日(金)

342.24

103.5

16,040

85.2

11.22

19日(土)

 
 
 
 
 

20日(日)

 
 
 
 
 

21日(月)

300.72

155

16,040

85.2

16.8

22日(火)

318.31

169.2

16,040

85.2

18.34

23日(水)

297.45

106.2

16,040

85.2

11.51

24日(木)

311.19

154.4

16,040

85.2

16.73

25日(金)

348.99

172.7

16,040

85.2

18.72

26日(土)

 
 
 
 
 

27日(日)

 
 
 
 
 

28日(月)

297.15

117.7

16,040

85.2

12.76

29日(火)

 
 
 
 
 

30日(水)

300.06

112.8

16,040

85.2

12.23

合 計

6540.94

2219.8

336840

1789.2

240.6

 

平均日量(t)

11.45


(備考)
※1 DCS(制御装置)日報データー
※2 4月24日実施 汚泥試験分析結果値
※3 脱水ケーキ(脱水汚泥量)計算式

    脱水量×
濃縮汚泥量
────────────
(100-含水率)×10000
 (少数点3位以下四捨五入)


<参考2> 地球温暖化対策の推進に関する法律施行令第3条排出係数一覧表(抜粋)

(温室効果ガス総排出量に係る温室効果ガスの排出量の算定方法)
第3条 法第2条第5項の政令で定める方法は、次の各号に掲げる温室効果ガスである物質の区分に応じ、当該各号に定める方法とする。
 1 二酸化炭素 次に掲げる量を合算する方法
  イ 別表第1の第2欄に掲げる燃料ごとに、総排出量算定期間(温室効果ガス総排出量の算定に係る期間をいう。以下同じ。)においてその本来の用途に従って使用された当該燃料の量(当該燃料の区分に応じ、同表の第3欄に掲げる単位で表した量をいう。)に、当該区分に応じ当該燃料の1当該単位当たりのメガジュールで表した発熱量として同表の第4欄に掲げる係数を乗じて得られる量に、当該区分に応じ当該燃料の1メガジュール当たりの発熱に伴い排出されるキログラムで表した炭素の量として同表第5欄に掲げる係数を乗じて得られる量に、12分の44を乗じて得られる量を算定し、当該燃料ごとに算定した量を合算して得られる量
  ロ 総排出量算定期間において使用された他人から供給された電気の量(キロワット時で表した量をいう。)に、当該電気の1キロワット時当たりの使用に伴い排出されるキログラムで表した二酸化炭素の量として0.555を乗じて得られる量


別表第1(第3条関係)

一般炭

キログラム

26.6

0.0247

ガソリン

リットル

34.6

0.0183

ジェット燃料油

リットル

36.7

0.0183

灯油

リットル

36.7

0.0185

軽油

リットル

38.2

0.0187

A重油

リットル

39.1

0.0189

B重油又はC重油

リットル

41.7

0.0195

液化石油ガス(LPG)

キログラム

50.2

0.0163

液化天然ガス(LNG)

キログラム

54.5

0.0135

10

都市ガス

立方メートル

41.1

0.0138