【自主レポート】

第32回北海道自治研集会
第Ⅴ-①分科会 自然環境保全と循環型社会

ペットボトルの分別?


大分県本部/地方自治研究センター・環境自治体専門部会・地球温暖化グループ

1. はじめに

(1) 地球温暖化を防ぐために、現在、様々な分野で研究が進められており、国、自治体においては法律や政策を整備し、社会の仕組みを変えようとしている。そして、私たち一人ひとりの意識や取り組みも、今後社会を動かしていく大きな力になることであると確信する。
(2) その私たちの地球温暖化に対する意識および危機感は高まってきており、温暖化防止に対する取り組みがメディア等に頻繁に出ており、かつそれは多種多様である。しかしながら、身近な対策には本当に効果が見込まれるのであろうか? 大きく分けて、エネルギーの消費を抑えエコ発電を推進する論議と、森林資源をはじめ自然を守ろうという論議と、無駄をなくすという論議に分かれる。このなかで、地球温暖化グループはテーマとして、我々自治体職員が政策として取り組みやすい問題、「無駄をなくす」論議を発展させてごみ問題を取り上げることにした。
(3) ごみ処理については自治体固有の責任とされ、一部の広域処理システムを除いて各自治体で様々な形態である。それを、「統一したものにできないか」という論議の過程でごみを資源として有効利用できないか? という話題となった。まず、一番に問題になったのはごみ焼却処分場の機能と構造である。それが、最新鋭の機能であればごみはプラスチックも共に燃料として、排ガスもクリーンなままで発電や給湯などの有効利用がはかれる。さらにその灰までもが、資源として活用できる。ところが、現実には耐用年数や更新時期の関係から、全処分場が最新鋭の機能を持っているとはかぎらない。埋め立て処分場の容量の関係からも、資源ごみを含めた分別収集処分が要求されている。その資源ごみを考察してみると、ペットボトル・かん・びん・古紙に大別された。そして問題となったのが、かん・びん・古紙はそのままリサイクルされて生まれ変わっているが、ペットボトルはどうなってるの? という疑問である。

2. 大分県自治研センター「環境自治体」専門部会の取り組み

(1) 「環境自治体」専門部会では議論を重ねる中で、「ごみを分別した住民の労力が生かされているのか?」という疑問が出た。そこで、自治体のごみ回収方法、リサイクルの状況について自治体に対しアンケート調査を実施した。そのうち、おもにペットボトルに関する結果を下記に掲載する。

 ※ アンケート調査の結果
1. ペットボトル・新聞紙の分別方法について
 ① ペットボトルの「キャップ」の回収方法
  ア.つけたまま(1) 竹田市
  イ.可燃物(13)   大分市・臼杵・津久見市・佐伯市・日田市・九重町・中津市・宇佐市・豊後高田市・別府市・杵築市・国東市・日出町
  ウ.資源ごみ(2)  由布市・豊後大野市
  エ.その他(1)   玖珠町(可燃物だが、スーパーで換金ワクチンを買う資金にしている)
 ② ペットボトルの「ラベル」の回収方法
  ア.つけたまま(7) 大分市・由布市・豊後大野市・竹田市・臼杵市・宇佐市・国東市
  イ.可燃物(10)   津久見市・佐伯市・日田市・玖珠町・九重町・中津市・豊後高田市・別府市・杵築市・日出町
 ③ 収集後の「ペットボトル」の処分
  ア.リサイクルされている(15) 大分市・由布市・豊後大野市・竹田市・臼杵市・佐伯市・日田市・玖珠町・九重町・中津市・豊後高田市・別府市・杵築市・国東市・日出町
  イ.一部燃料として焼却している(1) 津久見市
2. ごみの分別について
  回収・収集についての課題
津久見市: ペットボトル・発砲スチロールについて、ごみ固形燃料化施設「ドリームフェーエルセンター」で処理をし、固形燃料にしている。
日田市 : 可燃ごみのRPF化を検討中。(RPF化……木クズや紙・プラスチックを固めて燃料化。現状は焼却処分)
玖珠町 : ペットボトル、発砲スチロールは分別しているが、その他のプラスチックは近くに処理工場がないため「燃えるごみ」としている。

3. 分 析

(1) ペットボトルの回収方法については、見事に各自治体で対応がまちまちである。その理由としては、委託先のリサイクル業者の施設と処理能力による違いであるらしい。さらに、手間をかけて回収したものを焼却炉の助燃剤として、焼却処分している実態の報告もあった。また、現行ではリサイクル業者に引き取られた後は、ごみとして追跡されないので実態把握が困難な状況である。
(2) そこで、PETボトルリサイクル推進協議会の「PETボトルリサイクル年次報告書」を参照してみると、現在日本で生産される約50万トンの容器リサイクル法に定める回収対象ペットボトルの内、回収されているペットボトルは約30万トン、その内14万トンが繊維、シートなどに再利用されている。なお、再びペットボトルとして還流した量は1万トン弱に過ぎない。ペットボトル再生品には洋服(ユニフォームなど)やカーテンなどの繊維製品・フリースとシート材への転用が主で、ペットボトルとしての再生はコストの点から量産化事業を中止しているため大きく減少している。
(3) それでは、再利用されていない回収ボトルはいったいどうなっているのだろうか? 回収された約30万トンの半分近くはいったいどこに行ったのだろうか? そして、その実態を国民に広くしらしめているのだろうか? 我々は、有効利用されていることを信じて家庭での分別作業に協力している。もし、分別が意味のない作業であれば国民への行政責任をはたしていないばかりか、国民への裏切り行為ではないか? しかも、分別品の回収作業にはなにがしかの公金を投入しているはずである。
(4) 中部大学総合工学研究所教授 武田邦彦氏 の著書によれば、ペットボトルのリサイクルはそれに要する輸送コストや、再資源化施設の運転コストから逆に資源の無駄使いであるとしている。確かにお金をかけて回収しても、その半分以上を燃やしているのなら最初から可燃ごみとして高性能なごみ焼却炉で燃やしてしまったほうが、手早いし環境にもよいのかもしれない。日常で、ラベルを取って、キャップをはずして、軽く水洗いまでする我々の労力は、誰が補償してくれるのだろうか? だいたいにおいて、コンビニエンスストア等のごみボックスでは大量のボトルがキャップも取らずに回収されている。
(5) びん・古紙については、昔からリサイクルの理念が浸透している。かんについてはスチール・アルミとも原料の特性から最資源化も容易なので、高値で引き取られるのでリサイクルがやりやすい。新参のペットボトルのリサイクルは、どういう経過で始まったのだろうか? 1995年に制定された容器包装リサイクル法により、日本では飲料業界の1L未満の飲料用ペットボトルは作らないという自主規制が1996年に解除され、小型ペットボトルを使った飲料が普及し流通するようになった。当時、小型ペットボトルの普及はごみ減量に逆行しているとの批判もあったが、リサイクルを行うという免罪符によって世論の認知を受けたのである。ここで問題になるのは、リサイクルの経路も実績もあるのに、再資源化や回収コスト低減の努力が図られていないことである。リサイクルがなされているという数字上の現状に満足し、実際の最終処分形態までの追跡調査をおこたっているのではなかろうか。もし、他の資源ごみのように回収コストに見合った有効利用の方法が浸透すれば、国民に対する責任も果たせると考える。
(6) また、ペットボトルの問題と関連して家電リサイクルの現状についても議論となった。都会と違って大分の田舎道では不法投棄が絶えない。その大部分が、リサイクル料金の対象となる大型家電である。幸い、分解しにくいペットボトルが山の中に大量に不法投棄されることはないが、この点がリサイクルされている唯一? の利点だと思う。

4. 政策提言

(1) ここで、地球温暖化対策の観点からペットボトル行政に対しての提言を考える。
  ① ペットボトルのリサイクルを中止して、燃えるごみとして回収する。
  ② 小容量のペットボトルを規制する。
  ③ 容器代にあらかじめ回収費を転嫁して、デポジットを行う。
  ④ 再資源化の工夫を研究し、さらに有効利用が図れるようにする。
  ⑤ サーマルリサイクルとして、廃ペットボトルを回収し燃やして熱源として利用する。
(2) それぞれの提言について簡単に考察してみると、
  ① については、武田氏の提言と同じであるがごみ処分場の問題とリンクする。自治体職員としては、この提言を受け入れがたい面もある。
  ② は、業界の反発も大きいと予測されるし、現実としては困難であろう。
  ③ は、商品の価格に転嫁されるであろうが、総量についての抑制効果がある。
  ④ は、研究開発費をどうやって調達するかが問題である。
  ⑤ は、現在のようにキャップをはずしたり、中身を洗ったりする手間は少なくともはぶくことができる。
 家電リサイクルについては、その品目の拡大とリサイクル料金の前取り(デポジット)が検討されている。再資源化の研究開発費として、ペットボトルにデポジットの概念を導入し、その費用で有効利用方法の研究開発費を賄うという提案はどうだろうか? 昔から、一升びん・ビールびんはそうやってリサイクルを実施してきたのだから。
 また、サーマルリサイクルであれば分別の労務も低減できるし、燃えるごみとしての回収よりも燃焼炉への投入量の制御が可能になるので、より、温暖化対策として有効かもしれない。さらに、遠くのリサイクル施設へ運ぶ輸送コストも低減できる。よって、①・②の対策は無理でも、③・④・⑤の対策を組み合わせてはどうだろうか?
(3) いずれにしても、ここでペットボトルのリサイクルについて実態の把握と、今後どうしていくべきかの真摯な議論が必要であると確信する。リサイクルにはコストもかかるし資源も無駄使いであるかもしれないが、リサイクルの行為になんらかの意義や価値を見出せないだろうか? 現状で半分以上は回収されているのだから、その実績を無にしてしまうのももったいない話ではある。せっかくできたリサイクルのシステムや習慣を、いきなり、燃えるごみとしてリサイクルの行為自体をやめるのも、環境政策の啓蒙という視点からもマイナスであると思う。万が一、将来の燃料事情からリサイクルが再び必要になったら、再構築の手間は膨大なものになると予想される。
(4) 今のペットボトルのリサイクル指針として、「①ラベルをはずす。②キャップをはずす。③中身を水洗いする。」この方法が推奨されている。この手間をコンビニや自販機のごみボックスと同じように簡略化することで、さらにリサイクルの実績を向上することができるのではなかろうか? 少なくとも、手間の無駄使いを縮小することができるのでは。要はリサイクル先の受け入れ体制やリサイクルの状況に応じて、適正な方法を指導していくべきである。自治体間でバラバラで良いはずはないと確信する。
(5) 地球温暖化対策としてごみ問題を考えるのであれば、ごみ全体の量を減らす工夫が必要である。その方法の一環としてのリサイクルなので、リサイクルによって温暖化を加速するような政策はできるだけ避けなければならない。それを踏まえたうえで、ペットボトルの問題は今後どうしたらいいか? 住民を交えて総合的に議論する必要がある。情報のさらなる開示も必要だし、もちろん「容器リサイクル法」の一部改正も視野に含めて。


< 資 料 > PETボトルリサイクル推進協議会(http://www.petbottle-rec.gr.jp/top.html)より


2006年度回収率は66.3%で世界最高水準をキープ
回収率の定義改訂、旧回収率から新回収率へ
使用済みPETボトルの回収率は、これまで分母に指定PETボトル用樹脂生産量を用いていましたが、今回、産構審のガイドラインに従い指定PETボトル販売量に変更しました。また、分子の一部である事業系回収量をボトル製造時の成形ロスを除いた使用済み指定PETボトル事業系回収量(以下事業系ボトル回収量)に変更しました。詳細は「回収率の改訂」を参照して下さい。以後、これまでの回収率を「旧回収率」、改訂された回収率を「新回収率」と呼びます。
新回収率66.3%を達成
2006年度の新回収率の分母となるPETボトル販売量は、544千トンで、前年度の530千トンを2.6%上回りました。
一方、新回収率の分子となる市町村分別収集量と事業系ボトル回収量の合計となるPETボトル全回収量は361トンで、前年度の327千トンを10.3%上回りました。その結果、新回収率は66.3%で、前年度の61.7%を4.6ポイント上回り、続伸しました。
日本の回収率を2006年度の欧州36.8%、米国23.5%の回収率と比較してみますと、これまで通り世界最高水準をキープしています。
表1●指定PETボトルの新旧回収率比較
(出所)
市町村分別収集量は環境省資料
事業系回収量・事業系ボトル回収量・PETボトル販売量はPETボトルリサイクル推進協議会資料
樹脂生産量は指定PETボトル用樹脂の生産量。PETボトル協議会資料
千トン未満を四捨五入してあるため、数値が若干上下している。
図1●日米欧のPETボトルリサイクル状況比較
(出所)
米国=NAPCOR資料
欧州=PETCORE資料
日本=PETボトルリサイクル推進協議会資料
(1997-2004年度は旧回収率、2005-2006年度は新回収率)
市町村分別収集量は前年度比6.5%増加
2006年度の市町村分別収集量は268千トンと前年度を16千トン、6.5%上回りました。しかし、分別収集計画量285千トンには17千トン及びませんでした。
事業系ボトル回収量は前年度比23.4%向上
推進協議会は2001年度から使用済みPETボトルのうち市町村分別収集以外でリサイクルに回された事業系回収量について独自に調査を進めてきました。
この調査は第三者調査機関により、使用済みPETボトルを粉砕し再商品化を行う事業者を対象とし、回収品の受け入れ量をアンケートにより計測しています。その際、回収品の出先を市町村系と事業系とに分け、主に事業者等により回収される事業系回収量とその事業系回収量からボトル製造時の成形ロスを除いた事業系ボトル回収量を求めました。
2006年度新回収率の分子の一部となる事業系ボトル回収量は、92千トンが確認されました。これは、前年度75千トンを23.4%上回っています。
図2●指定PETボトル回収率の推移
(出所)上表1と同じ
注1) これまで市町村回収率なる指標を設けていましたが、今回より市町村回収率を廃止し、分子を市町村分別収集量と事業系回収量との合計値とする回収率に一本化しました。
注2) 2005年度の数値は、本冊子2006年度版の発行以降に環境省の数値が変更になったため、本冊子2006年度版の数値とは異なっています。