【自主レポート】

第32回北海道自治研集会
第Ⅴ-①分科会 自然環境保全と循環型社会

大分県内のごみ分別について(案)


大分県本部/地方自治研究センター・環境自治体専門部会・地球温暖化グループ

1. はじめに

(1) 日本の経済は、高度成長期以後今日まで「大量生産・大量消費・大量廃棄」によって発展してきました。この経済システムによって生み出された廃棄物は増大の一途をたどり、廃棄物を埋め立てる最終処分場が足りなくなる事態も生じてきました。
   このため、廃棄物の発生を抑制するとともに、廃棄物をリサイクルすることによって廃棄物の減量をはかることが重要となり、特に一般廃棄物のうち容量で約61%、重量で約22%を占める容器包装廃棄物の処理が緊急の課題となってきました。
(2) そこで政府は、1995年「容器包装リサイクル法」を制定し、家庭から一般廃棄物として排出される容器包装廃棄物のリサイクルシステムを構築することにしました。この制度は、1997年に一部施行され、2000年に完全施行となりました。
   また、法施行後約10年が経過したこの容器包装リサイクル制度の課題を解決するため、2006年に改正容器包装リサイクル法が成立し、2007年4月から施行されることになりました。改正の概要は、①容器包装廃棄物の排出抑制の促進(消費者の意識向上・事業者との連携の促進、事業者に対する排出抑制を促進するための措置の導入)、②質の高い分別収集・再商品化の推進(事業者が市町村に資金を拠出する仕組みの創設)、③事業者間の公平性の確保(ただ乗り事業者に対する罰則の強化)、④容器包装廃棄物の円滑な再商品化(円滑な再商品化にむけた国の方針の明確化)です。
(3) 内閣府が2005年に行った「環境問題に関する世論調査」で「大量生産、大量消費、大量廃棄型の社会を見直して、天然資源の消費を抑制し、ごみを減らしてリユースやリサイクルをすることで環境への負担が低減されるような循環型社会を形成する施策を進めていくことについて、どのように思いますか」という問いに対し、①受け入れられないが1.7%、②廃棄物のリユースやリサイクルを進めるが29.3%、③循環型社会への移行が53.8%と、環境に対する国民意識の高まりが伺えます。

2. 大分県自治研センター「環境自治体」専門部会の取り組み

(1) 「環境自治体」専門部会では、2007年11月から毎月1回議論を重ね、地球温暖化対策の一環としてごみをテーマに研究することとしました。まず、部会員の疑問・課題・意見を整理するためKJ法・ブレーンストーミングを行いました。その中で大きな分類として、①温暖化の問題、②環境・森林、③エネルギー、④ムダがない工夫、⑤ごみの有効利用、⑥生ごみ、⑦ごみ分別、⑧収集、⑨リサイクル、⑩不法投棄についてまとめました。
(2) まとめた疑問・課題・意見をもとに議論する中で、①県内自治体のごみ分別の統一性、②ペットボトルは洗って出すのか、③キャップは可燃ごみ・資源ごみか、④住民が分別した労力が生かされているのか調査を実施することを決定しました。
(3) 調査では、①自治体のごみ分別方法の表や冊子の収集、②自治体に対し分別方法のアンケート調査を行いました。

 ※ アンケート調査の集約状況

1. ペットボトル・新聞紙の分別方法について

① ペットボトルの「キャップ」の分別方法
 ア.つけたまま (1) 竹田市
 イ.可燃物 (13) 大分市・臼杵・津久見市・佐伯市・日田市・九重町・中津市・宇佐市・豊後高田市・別府市・杵築市・国東市・日出町
 ウ.資源ごみ (2) 由布市・豊後大野市
 エ.その他(1) 玖珠町(可燃物だが、スーパーで換金ワクチンを買う資金にしている)
② ペットボトルの「ラベル」の分別方法
 ア.つけたまま (7) 大分市・由布市・豊後大野市・竹田市・臼杵市・宇佐市・国東市
 イ.可燃物 (10) 津久見市・佐伯市・日田市・玖珠町・九重町・中津市・豊後高田市・別府市・杵築市・日出町
③ 新聞紙・チラシの分別方法
 ア.新聞紙・チラシは一緒 (11) 大分市・由布市・臼杵市・津久見市・佐伯市・日田市・玖珠町・中津市・宇佐市・豊後高田市・日出町
 イ.新聞紙・チラシは分ける (6) 豊後大野市・竹田市・九重町・別府市・杵築市・国東市
   
2. 資源ごみについて
   
① 収集後の「かん」の処分  
 ア.リサイクルされている (17) 大分市・由布市・豊後大野市・竹田市・臼杵市・津久見市・佐伯市・日田市・玖珠町・九重町・中津市・宇佐市・豊後高田市・別府市・杵築市・国東市・日出町
② 収集後の「びん」の処分 
 ア.リサイクルされている (17) 大分市・由布市・豊後大野市・竹田市・臼杵市・津久見市・佐伯市・日田市・玖珠町・九重町・中津市・宇佐市・豊後高田市・別府市・杵築市・国東市・日出町
③ 収集後の「ペットボトル」の処分 
 ア.リサイクルされている (15) 大分市・由布市・豊後大野市・竹田市・臼杵市・佐伯市・日田市・玖珠町・九重町・中津市・豊後高田市・別府市・杵築市・国東市・日出町
 イ.一部燃料として焼却している (1) 津久見市
④ 収集後の「発砲スチロール」の処分 
 ア.リサイクルされている (6) 大分市・由布市・豊後大野市・日田市・玖珠町・九重町
 イ.可燃物 (6) 佐伯市・宇佐市・豊後高田市・別府市・杵築市・日出町
 ウ.一部燃料として焼却している (4) 竹田市・臼杵・津久見市・中津市
 エ.収集後は把握していない (1) 国東市
⑤ 収集後の「古紙」の処分 
 ア.リサイクルされている (16) 大分市・由布市・豊後大野市・竹田市・臼杵市・津久見市・佐伯市・日田市・玖珠町・九重町・宇佐市・豊後高田市・別府市・杵築市・国東市・日出町
 イ.一部燃料として焼却している (1)  中津市

3. ごみの分別について
  分別・収集についての課題

大分市: 分別方法が正しく理解されていない面があり、周知の徹底が課題です。
由布市: 個人の分別がまだよくないものがある。(出し方のマナーが悪い)
  広報を行って改善はされてきている。
津久見市: ペットボトル・発砲スチロールについて、ごみ固形燃料化施設「ドリームフェーエルセンター」で処理をし、固形燃料にしている。
日田市: 可燃ゴミのRPF化を検討中。(RPF化…木クズや紙・プラスチックを固めて燃料化。現状は焼却処分)
玖珠町: PET、発砲スチロールは分別しているが、その他のプラスチックは近くに処理工場がないため「燃えるごみ」としている。そのため玖珠町は6分別だが、輸送、人件費の面で補助制度ができれば分別を増やすことも可能ではないかと思う。
杵築市: ストックヤードの整備。
日出町: リサイクル業者の設備と数。一般廃棄物の自治体外への越境が認められていない。家電リサイクル料の前取りをしてほしい。

3. 考 察

(1) 自治体の環境に対する考え方
① ごみの出し方を検証してみると、市町村で差があることが分かります。ごみの分別方法が異なるため住民にとってはとまどうことが多いのではないでしょうか。
  また、ごみ分別を細分化するほどリサイクルには役立ちますが、回収にかかる手間やコスト、住民への分別教育の徹底などクリアするべき課題も多いのが現状です。
② そもそも一般廃棄物の収集・処理・処分などの処理責任は市町村にあり、ごみ処理の歴史や処分場の残余年数、焼却炉の能力差などによって、ごみの分別方法は市町村によって様々です。しかし、各自治体の分別方法は、自治体の「環境行政」という観点からではなく、焼却炉や処理業者の施設の能力で決まっています。実際、ペットボトルの処理を委託している業者が機械でラベルをはがすことが可能な場合でも、住民に分別をさせています。これは、委託先が変わった場合、分別方法を変更すると住民が困惑するという理由からです。自治体は、もっと「環境行政」という観点からごみの分別を考えるべきです。

(2) 県のごみ処理広域化計画
① 県のごみ処理広域化計画は、ごみの排出抑制、資源化の推進を基本に、中・長期的に、ごみ処理施設の集約をはかっていくことにより、ダイオキシン類の削減、未利用エネルギーの有効活用や公共事業費のコスト縮減等をめざしており、そのための計画と推進方法などについて方向性を示したものです。
② この計画によれば、県内を6ブロックに割りごみ焼却施設からのダイオキシン類の発生抑制や最終処分場の延命化、処理施設の効率的な運用改善をはかるため、市町村のごみ処理施設の集約化による広域処理が不可欠としています。

ブロック名
構成市町村名
大 分 大分市、由布市、臼杵市、竹田市
別杵国東 別府市、杵築市、日出町、国東市、姫島村
津久見 津久見市
県 北 中津市、豊後高田市、宇佐市
県南大野 豊後大野市、佐伯市
日田玖珠 日田市、玖珠町、九重町
 

(3) 過剰な分別の弊害
① ごみの分別細分化を推進したため、可燃ごみに混じっていた紙類・プラスチック類が減り可燃ごみの全体量が減少しました。その結果、焼却炉内の温度が上がりにくくなり、それを補うために重油を燃やしています。
  アンケート調査からも分かるように、一部燃料として焼却している自治体もあることから、焼却処理するごみの中にも、紙類・プラスチック類は含まれていなければならないということです。
② 分別の種類が増えることで自治体の予算も増加しています。この点に関して今回調査は実施していませんが、他県の市町村の公表データを参考にすると、名古屋市では1997年には16億円だった予算が2004年には70億円にまで達したそうです。名古屋市のレポートには「資源化貧乏」という表現も見受けられます。

4. まとめ

(1) いくら分別を増やしても、住民は完璧にはできません。市町村は、分別が多いことを自慢する風潮がありますが、分別を少なくすることで住民負担と収集運搬経費などを削ることが必要ではないでしょうか。
(2) 実際、分別という住民の労力が生かされていないケースもあります。住民の分別が不十分、マナーの悪いという理由でリサイクルできないこともあります。
  また、過剰な分別で焼却炉内の温度が上昇せず、重油を燃やしているところもあります。環境のためにごみを分別し、リサイクルしているにもかかわらず、そのことが逆に重油を燃やしCOを発生させているのであれば考え方を少し変える必要があります。
  つまり、分別の増加は、「住民の手間の増加」「収集コストの増加」「燃焼効率の低下」を招きます。だから、分別を少なくする事によって上述の3つを解決する必要があるのではないでしょうか。
(3) 県のごみ処理広域計画では、広域的にごみを処理するとしています。この計画は推進するべきだと考えます。焼却炉の耐用年数は約20年程度で、建設費は約数十億円から数百億円と耐用年数の割には莫大な金額がかかります。少自治体での建設では財政に与える影響も大きく、費用対効果は低いと思います。広域で焼却施設を建設することは1自治体当たりの負担を軽減し、より良い施設を建設することができます。
(4) 広域化にあたってはごみの分別方法を統一する必要があります。統一する場合、①「環境自治体」、②住民が分別に参加しやすい、③住民の分別という労力を生かす ことを考えることが必要です。また、原油高が今後も予想されるため、輸送コストを考慮することも必要です。
(5) ごみの減少が困難な理由は、ごみを出すのが目的である人は誰もいないということです。社会に流通するすべての商品には包装がされ、商品の消費により、包装はごみとなります。つまり、ごみを減少させるためには、包装を減少させなければなりません。しかし、それは自治体でできることの範疇を超えています。再生して利益の出るごみはすでに民間による再生がなされ、残っているごみはコストをかけてリサイクルする、もしくは燃やし、埋めるしかありません。このコストを必要な出費と考え、リサイクルを推し進めるのか、切り捨ててただ燃やすのか自治体は住民に選択させるべきではないでしょうか。

5. 政策提言

(1) 焼却炉の費用対効果や県のごみ処理広域化計画を考慮すると、県内のごみ処理を1本化すべきです。また1本化に伴い、県内のごみ分別方法も統一する必要があります。
(2) 方法としては単純化した統一基本分別をつくり、ごみ袋も統一します。ごみ袋は色を変えたり番号標記にしたりし、何色・何番は「可燃物」、何色・何番は「資源プラ」といった感じです。スケールメリットを生かせばごみ袋も安くなり、分別方法の周知もしやすくなります。
(3) 焼却炉・処理施設は、焼却炉は「○○市」、かん・びんは「○○町」といった感じで振り分けます。
(4) クリアしなければならない課題としては、施設の場所選定です。受け入れ自治体は住民の意見を十分聴衆し合意しなければなりません。また、輸送コストの問題です。これまで近隣で処理できていたものが県内を移動するわけですからその分コストは増加します。
(5) 統一基本分別の種類や自治体間の調整、輸送コストの課題などありますが、「環境行政」として、ごみの分別について議論していくことが必要だと思います。