【自主レポート】

第32回北海道自治研集会
第Ⅴ-②分科会 温暖化防止とクリーンエネルギー

風をエネルギーに~地球にやさしいマチを目指して
~風力発電への取り組み~

北海道本部/寿都町職員組合・書記長 高橋  玲

 寿都町は、北海道南西部の日本海に面し、札幌・函館間のほぼ中間に位置し、面積95.36km2の町です。
 延長32km2の海岸線が弓状に寿都湾を形成しており、漁業を基幹産業とし、水産加工業を中心とした第2次産業の商業により成り立ちます。 
 名産品としては、小女子を生のまま炊き上げた『生炊きしらす佃煮』や『ほっけ飯寿し』などがあり、海の町ならではの、味覚が味わえます。



 また、風の町『寿都』をアピールするため、本町出身の漫画家・本庄敬氏によるマスコットキャラクター『風太くん』が誕生し本町の観光振興に大いに活躍しています。
 全国的にも風の強いことで有名な本町は、春から夏にかけて吹く南南東の強風(通称~だし風)と、秋から冬にかけて吹き荒れる北西の季節風が漁業や農業に悪影響を与える悩みの種となっていました。
 こうした中、その風をまちづくりに生かそうという逆転の発想により、クリーンなエネルギーを生み出す風力発電に着目し1989年に自治体初の風力発電所(16.5kWh×5基~現在廃止)を設置したのが始まりです。
 しかし当時は、風力発電に対するガイドラインがなく、しかも、電力を供給する施設があることが条件で、電気暖房を取り入れていた町立中学校が対象となり、その裏山に面した丘陵地帯に設置したため、海岸線に比べ風の条件が悪く、発電状況は8.1%程度の稼働率でありましたが、児童生徒をはじめ町民も風力エネルギーに関心を持つようになり、他の自治体からも注目を受けました。
 しかしながら、この風車は主要システムの老朽化が目立ち始め、2006年4月で廃止しております。
 その後、1999年3月に町営温泉と農村活性化センターへの電力供給を目的として、230kWの風車を1基建設しました。ドイツ製の風車は、タワーの高さが36.6m、ブレードの直径は30mで、年間約40万kWhの発電状況で、夜間等に発電した余剰電力は北海道電力(株)に売電しています。風車の設置場所がサッカー場、ソフトボール場に隣接しているため、訪れた方々の興味を誘っています。
 また、2000年に策定された「第6次寿都町総合振興計画」及び2001・2002年度の2ヵ年をかけて策定された「寿都町地域エネルギービジョン」に沿って、風力を中心とする新エネルギーの導入検討により、2002・2003年度に新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の補助を受け、寿都湾最奥部の海岸沿いに定格出力600kWhの風車3基を建設し、自治体として初めて本格的に売電事業に取り組みました。このように本町の発電所の形態も、完全自家消費から余剰電力売電、そして売電事業へと変化し、自治体として初めて本格的に売電事業へ取り組んでおります。
 2003年までに建設した風力発電の実績をふまえ、環境にやさしい、クリーンなまちづくりと自然エネルギーの重要性をアピールし、地球環境問題への普及啓発を図るとともに、風力発電事業から生じる収益を町の基盤整備の財源として将来の収支の見通しを立て、2006・2007年度の2ヵ年にわたり、NEDOの助成をいただき、自治体単独としては最大規模の風力発電所を建設することになりました。
 設置箇所については、既設の3基の風力発電所の東側の海岸沿いに1,990kWの風車を5基建設し、昨年の秋より発電を開始しております。
 この地点の風況調査では、地上50mでの平均風速は約7m/sというデータが出ており、環境影響調査でも風車には影響はないとの評価も出ており、新たに風力発電事業を行うには最適な場所であります。

 昨年度運転開始した、この風力発電所は、マスコットキャラクターの「風太くん」から名前をもらい、「風太風力発電所」と称し、風車の大きさは、タワーのトップまでが64m、ブレード(羽根)の直径が71m、地上からブレード最高までは99.5mという巨大な風車です。
 最高出力は1,990kWで、5台の合計は9,950kWになります。
 風速2.5m/sからローターが回転を始め、発電を開始します。また風速25m/sの強風になると、ローターの回転を止める仕組みとなっております。
 ドイツで製作された風車本体は、5月中旬までに船で隣町の岩内港に運搬され、5月21日から約3週間かけて建設場所へ陸送され、10月初めより風力発電所としての稼動をしております。
 風太風力発電所では、年間約2,600万kWhの発電が見込まれ、一般家庭で見ると約6,000世帯を賄う計算となります。
 この大型風力発電所の総事業費は約26億1百万円で、そのうち補助金が約1/3、残りは町債で措置し、起債の償還については売電収入を充てていきます。また、施設の維持管理費や修理並びに事業終了後の発電所の撤去に係る費用などを差し引いて、年間約8千万からの収益を想定しております。
 寿都の風は、今では町の財産として、未来の寿都町の基盤となるエネルギー源として位置づけております。
 また一連の風力事業の展開により、町内小中高校では総合学習の時間に、風力発電をテーマに取り入れ、自然エネルギーや新エネルギーについての仕組みや特徴を学習し、大量に排出される二酸化炭素の大気汚染による地球温暖化などの問題に深い関心を持つようになりました。
 さらに、本年7月に開催された北海道洞爺湖サミットを契機に、本町では2008年度を「環境保全元年」として、さまざまな環境問題に対し「地域でできること」を合言葉に様々な取り組みを行っており、寿都の自然を守るための環境保護(eco=エコ)活動を推進し、地球環境に(E)ことを、子どもから大人までみんなで協力しあうことを目的とした環境フォーラム「E'CO suttu 2008 ~エコの心がええこを育てる」を風力発電が設置しているすぐそばの浜中海岸において開催し、寿都の恵みを実感してもらう地引網体験、エコ活動に積極的に取り組んでいるシンガーソングライターの白井貴子さん等のエコトークやエコライブ、そして森へ移動しての記念植樹など盛り沢山の内容で、大人から子どもまで約600人の参加者が環境についての意識を深めることができた1日となりました。



 また、今年で5回目となる「全町民海岸クリーン作戦」は、年々参加する町民、ボランティアが増え、約600人の参加があり、国道沿いの「花いっぱい運動」、各種イベント時のゴミの分別収集など、既存のソフト面においての環境施策展開も軌道に乗り、住民の認識も浸透しております。
 今後も、水産資源、観光資源、歴史・文化遺産などはもとより、風という地域資源を最大限に有効活用し、「自然の恵みと歴史が育む安らぎのまち」をまちづくりの基本テーマに掲げ、「環境にやさしいクリーンなまちづくり」を推進していきます。