【自主レポート】

第32回北海道自治研集会
第Ⅴ-②分科会 温暖化防止とクリーンエネルギー

地球温暖化対策に原発は有効か?
~「原発はクリーンエネルギー」というまやかし~

岡山県本部/脱原発専門委員会・委員長 平岡 正宏

1. はじめに

(1) 温暖化防止に対して原発が有効とされていることについて
 近年の地球温暖化に対する世界的な危機感によって、温暖化を促進する温室効果ガス(二酸化炭素)の排出量が少ないという原子力発電の「利点」に注目が集まっています。
 2007年頃から急激な上昇を見せた原油価格の高騰も、原子力発電推進の材料となっています。2008年7月の洞爺湖サミットでは、原油価格高騰対策として原子力発電を世界的に推進し、中国やインドにも原子力発電の利用を積極的に働きかけるということで、合意をみています。また、2050年に世界の温室効果ガス(二酸化炭素)を半減させるとする数値目標を共有することも合意されました。
 国は、原子力を温室効果ガスの排出を減らす不可欠の手段としています。その根拠として、①原発が発電中には二酸化炭素を排出しない、②ライフサイクルで比較しても化石燃料を利用する発電システムよりも少ない、の2点を挙げています。

(2) 「二酸化炭素を排出しない原発は温暖化対策の切り札」という声は正しいのか?
 「原子力白書」によれば、二酸化炭素の排出量は、化石燃料が245~1,372t/100万kWhであるのに対して原発は3~40tとなっています。これには放射性廃棄物の処理・処分の過程で放出される二酸化炭素も計算には含まれていますが、世界のどこも処分できている国はないので、計画どおり進んだと仮定した上での計算でしかありません。
 確かに原子力は発電中は二酸化炭素を排出しないのは事実ですが、燃料のウラン採掘や施設建設、運転中などでは二酸化炭素を必然的に排出しているのです。
 二酸化炭素削減効果を求めて世界中で原発の新設を推進すれば、建設にともなって排出される二酸化炭素がかえって温室効果を高めてしまうことになります。ライフサイクルでいえば建設中の排出量は多いのです。
 日本では、電力会社は原発を建設すると同時に、原発が停止した場合に備えてほぼ同じ容量の火力発電設備などを建設するという二重投資もしています。「発電時に二酸化炭素を出さない」というだけでは無理があります。
 また、火力発電などに使用する化石燃料の枯渇が懸念される現在、化石燃料依存からの脱却としても有効であるとされていますが、原発の基数が増えウラン資源の需要が高まれば、質の良いウラン資源がなくなり、採掘にともなう二酸化炭素排出量が増えて、結果的にみれば、化石燃料発電システムよりも排出量が増えるといったことも想定されます。
 しかも、ウラン資源も地殻中のウラン235のみを考えた場合、資源がそれほど豊富ではないし、増え続ける使用済み核燃料を再処理するための解決策として推進されていた高速増殖炉計画が技術的な困難さのため頓挫しています。現在は余剰プルトニウムを消費するためのMOX燃料によるプルサーマル計画が進められていますが、現状では使用済み核燃料が再使用できる見込みはありません。

(3) まとめるならば、
 まさに「木を見て森を見ず」であり、「発電時」の一点を見るならば確かに原子力は二酸化炭素を排出しませんが、「原料採掘から廃棄物処分」までのプロセスを追跡すると、決して原発は「温暖化対策の切り札」とはなり得ません。
 また、原発から発生する放射性廃棄物は、原爆やチェルノブィリで学んだように、「万が一……」の時には世界規模での環境破壊を起こしかねません。

2. これまでの私たちの取り組み

 私たちはこれまでも、「原発はクリーンエネルギー」にはなり得ない、ということを様々な角度から検証し、脱原発への運動を進めてきました。
 この章では、これまでの我々の運動をまとめて紹介し、現時点での問題点を提示することにします。

(1) 高レベル廃棄物拒否運動について(過去からの経過)
 岡山県内では、高レベル放射性廃棄物(高レベル廃棄物)地層処分に関連して、法律が制定される遙か以前の1980年代から数ヶ所であやしい動きが確認できていました。地元住民は『岡山県が狙われている』という高い関心を持ち、『故郷を放射能から守りたい』という素朴な願いから、1981年に山宝鉱山で運動が始まりました。

① 山宝鉱山・荒戸山のたたかい
 1981年、川上郡成羽町(現・高梁市)・山宝鉱山の地層処分場空洞掘削実験があり、坑道は掘削されましたが高レベル廃棄物に関するノウハウを得ました。1985年、阿哲郡哲多町(現・新見市)荒戸山周辺の高レベルボーリング調査誘致など、県内で高レベル処分場候補地として誘致運動が発覚しました。業界紙も哲多町荒戸山周辺を特定して、「高レベル放射性廃棄物処分施設、岡山県・哲多に-4,000億円を超す計画、国、立地方針を固める-」という、生々しい記事が掲載されました。このときは、早めの情報収集と山宝鉱山の運動で得たノウハウを活用し、旧哲西町職の仲間をはじめとする住民運動が組織され、町民の90%以上の署名を集約して、町長・議会へ提出、町長提案で「放射性核廃棄物の持ち込み拒否宣言」が全会一致で採択され、一定の成果をあげることができました。
 しかし、その後も県北部を中心に地下施設計画など地層処分につながる不審な動きはつづいていました。

② 「県条例の会」スタート
 このような不審な動きや旧科技庁・旧通産省の情報等を分析した結果、県の各地が高レベルの処分地として狙われているのでは? という危機感が高まり、1989年10月1日に「放射能のごみはいらない 県条例を求める会」(県条例の会)が各界各層で組織され、この組織を中心に、岡山県に高レベル放射性廃棄物持ち込みを拒否するという県条例の制定を求める運動が県下全域に広がっていきました。
 1990年6月、2ヶ月間にわたる「県条例直接請求署名運動」の結果、34万6千5百の署名・押印を集め、岡山県知事へ請求しました。臨時県議会において、条例案は否決されたものの、当時の長野士郎知事は「県民が不安を覚えるような施設を誘致するつもりはない」と意志表示し、知事が代わった現在でも県の見解として守られています。
 この運動の延長線上で1991年3月湯原町議会において放射性廃棄物を拒否する条例が全国ではじめて採択され、4月1日施行されました。
 つづいて動燃事業団人形峠事業所のプルトニウムなどを含む回収ウランの濃縮試験に反対する署名運動が始まり、これに反対する署名が約54万筆集まりましたが、試験は強行されてしまいました。
 その後約10年間、人形峠をはじめとする中国山地が地層処分候補地として狙われている資料が次々発覚し、県条例の会を中心に調査・研究・学習会を地道につづけながら、リアルタイムで政府の審議会や業界の動きを追跡してきました。

③ NUMOの処分場公募に抗して……県内すべての自治体が高レベルを拒否
 高レベル処分法の成立により、高レベル廃棄物の地層処分実施主体が原子力発電環境整備機構(原環機構・NUMO)となり、2002年12月、全国の市町村長を対象に処分場の公募を始めました。
 高レベル最終処分地の誘致に直接つながる概要調査地区の「公募」方式については、当該自治体の首長が絶対権限を持っています。そのため、私たちが取った戦略は、県内市町村すべての自治体首長から高レベル放射性廃棄物の「拒否回答」を得て、県内に高レベル放射性廃棄物を持ち込ませないという方法でした。
 そこで、県内78市町村すべての自治体首長から「高レベル拒否」を求めるべく、県条例の会を中心に、すべての市町村長に直接会って「公募に応じないよう」要請しました。各自治体には事前に趣旨と申し入れ書を提出することを伝えた上で、2002年11月15日に「STOP 高レベル放射性廃棄物」キャラバン隊として最初に岡山市を訪問し、以後各地域の団体・労働組合からも協力を得ながら、要請行動をつづけました。
 2003年2月上旬には78市町村のうち、上斎原村(現・鏡野町)を除いた77市町村長から「高レベル拒否」の回答を得ることができました。
 県下全自治体に直接出向き、申し入れを行ったことにより、それぞれの自治体が「高レベル放射性廃棄物」や「地層処分方式」の危険性について真剣に考え、検討した上で「拒否」の回答を出したというのは、運動として大きな成果と言えます。
 "平成の大合併"により、78市町村から2006年3月末に29市町村となりました。新しい市町長に対して更に2006年6月に「第三次要請行動」を行い、改めて「高レベル拒否・地層処分地応募拒否」の意思確認を行いました。
 これにより、現地点ですべての首長から「高レベル拒否」の回答を得ることができたことは、当面の到達点といえます。つまり理論的には、現時点で岡山県内に高レベル廃棄物が持ち込まれる状況はなくなったということです。
 また、中国ブロック各県や北海道をはじめ岡山方式が全国へ波及しつつあります。
 エネ庁・原環機構など原子力業界では、2007年頃をメドとし最終処分候補地選定の正念場と位置づけ、イメージコマーシャルを繰り返し放映し、原発があたかもクリーンエネルギーであるかのようなイメージを刷り込み、全国各地のシンポジュームの開催、また、公式・非公式での自治体への接触がつづけられています。そうした結果として交付金欲しさに手を上げる首長が出たり、検討を進める自治体もありましたが、各地の反対運動により、未だ候補地の選定は行われていません。こうした現状から、更に強力に、今後も継続的に全国すべての首長から「高レベル拒否」の回答を求め続けることが必要ですし、全国の自治体がこれを拒否すれば地層処分ができなくなります。

(2) 高レベル廃棄物拒否運動全国集会について
 国の原子力政策は、2005年「原子力政策大綱」を受けて2006年「原子力立国計画」を策定し、これまでの計画をさらに現実的にプルトニウムサイクルへ踏み込もうとしています。この計画は、青森県の再処理工場の本格稼動を目前にし、福井県の高速増殖炉「もんじゅ」の運転再開をめざし、佐賀県玄海原発・島根県島根原発・愛媛県伊方原発・静岡県浜岡原発のプルサーマル計画で余剰プルトニウムを消費する計画を強引にすすめています。
 その中で、再処理工場で使用済み核燃料棒から化学処理し分離される予定の高レベル廃棄物の最終処分場の選定が、核燃料サイクル全体の計画で平成10年代後半(2007年)をメドに、おしせまった問題として、国を挙げた取り組みがつづけられています。
 2002年度からはじまった最終処分場候補地の公募に対し、東洋町・余呉町など日本各地で応募の動きがありましたが、地元や全国からの支援もあり、すべて頓挫しています。
 このような情勢の中で「岡山で話そうや 原発のごみ・全国交流集会-高レベル放射性廃棄物の地層処分」が岡山市で開催され、その前段で「2007年自治労脱原発運動推進全国交流会議」を開催し、全国28都道府県から282人の参加を得て、安全性が確認できていない高レベル放射性廃棄物を地層処分させない運動の全国展開が確認されました。
 その後岡山県実行委員会では、集会の記録(DVD)や「高レベル拒否運動のすすめ」(CD)を各県の自治労県本部、原水禁・平和センター、中央の平和フォーラム構成団体へ提供し、また、自治労大会(盛岡)沖縄自治研で発言するなど、岡山から高レベルを拒否する運動を全国へ発信してきました。

(3) 低レベル放射性廃棄物処分場の誘致反対に向けた動き・取り組みについて
 岡山県鏡野町に原子力機構人形峠環境技術センター(人形峠センター)がありますが、2009年度で同施設の廃止措置事業に伴い7億円あまりの電源立地促進対策交付金が打ち切られます。そのため、財源確保対策として町議会で「低レベル処理施設処分場を選択肢としてどうか」など議論されていることが発覚しました。この他にも、「RI・研究所等廃棄物」についての集中審議や「低レベル放射性廃棄物処理処分場」の実証試験についても審議を行っています。また、鏡野町原子力対策委員会・町長らが、六ヶ所村の「日本原燃低レベル放射性廃棄物埋設センター」や東海村の「原子力機構放射性廃棄物処理処分研究施設」などを視察していることが発覚、同対策委員会は、今年2月に人形峠センターでの新たな事業へ向けた答申を提出し、放射性廃棄物の処理・処分を示唆しています。
 このように鏡野町議会で、昨年から新たな交付金獲得目的のために、低レベル放射性廃棄物処分施設の誘致問題が議論されているところですが、これは県外からの持ち込みになります。
 こうした一連の動きに対して、1月11日、岡山県平和センターをはじめ県内11の市民団体が岡山県知事に対し、低レベル放射性廃棄物の県内処分の拒否を求め申し入れを行いました。
 これに対し岡山県は、これまでの高レベル廃棄物に関して「住民に不安を与えるような施設を誘致するつもりはない」という県の方針を、3月議会の知事答弁を公式回答としています。
 また、人形峠センターの敷地内は、これまでに1,000m級のボーリングをしており、深さ300mの高レベル放射性廃棄物の最終処分場候補として何度も狙われてきており、これまでの高レベル廃棄物と今回の低レベル廃棄物処分場として原子力機構に狙われ続けており、鏡野町議会の動きや、岡山県議会・県当局の動きと政治家・地元有力者の動きに耳目を集中しているところです。

(4) TRU廃棄物地層処分の実施主体がNUMOとなったことについて
 2007年通常国会で改正された 高レベル処分法により、2008年4月1日からTRU廃棄物を原子力発電環境整備機構(原環機構・NUMO)が実施主体となって地層処分することになりました。
 NUMOは、4月2日、全国の自治体を対象にあらためて地層処分の公募を始めました。応募方法は、高レベル地層処分(第一種)単独、TRU地層処分(第二種)単独、高レベル・TRU併置処分の三種類となりました。新しいパンフレットには、交付金は10億円などと手厚い地域共生策を示しています。

(5) 人形峠センターの放射性廃棄物について
 今国会(第169国会)で原子力機構法の改正により、RI・研究所等廃棄物の処分については、日本原子力研究開発機構(原子力機構)が処分実施主体となりました。
 RIというと病院などから発生するものを思い浮かべますが、実はRI・研究所等廃棄物の主役は、東海再処理工場や研究炉などの放射性廃棄物(約80%)で、これまで各事業所などで保管されてきましたが、処分方法が決まっていなかったのです。
 現在、人形峠センター内にあるウラン濃縮施設等の各種の放射性廃棄物については、いずれ機構の業務として同センターに処分する可能性を含んでいますが、浅地中トレンチ処分・浅地中ピット処分・余裕深度処分相当の放射性廃棄物も存在しています。
 私たちは、身近にせまった低レベル放射性廃棄物の危険性を広く県民に知らせることと、放射能被曝から県民を守るために、安全管理・監視を求めていかなければなりません。

3. 今後の取り組みについて

 前段で見てきたとおり、私たちは原子力発電でも最終段階の「廃棄物の処分」問題に焦点をあてて運動を行ってきました。それは「自治労」という組織だけでの運動ではなく、「広く市民運動の一翼を担う」という意識のもとに運動を継続してきたと認識しています。それはもちろん「放射性廃棄物を我が県内に処分させない」ということが大前提ですが、それよりも、「これ以上放射性廃棄物廃棄物をつくらせない」という思いを全国の仲間と共有していたが故に、運動を継続できたものと思います。
 日本では昨今、「地球温暖化防止」という錦の御旗のもとに、「原子力はクリーンでエコな電力です」という宣伝がなされています。前段に二酸化炭素排出量のまやかしについては言及しておきましたが、再度ここで確認しておきたい点があります。
 それは、現時点でもなお、使用済み核燃料の最終処分地が決定していない原子力発電は、本当に「クリーン」なものでしょうか? 発電時だけ二酸化炭素を排出しないことは事実ですが、それと引き替えに数千年レベルの毒性を持つ放射性廃棄物を際限なく生産する発電が「クリーン」だとは到底言えません。
 この放射性廃棄物を人体や環境に影響が減少する数千年もの期間、いったい誰が誰の責任において、どのように管理・監視していくのか。それ以前に、それほどの長期スパンで管理できるのか、誰一人としてイエスといえる人はいないのではないでしょうか。
 だからこそ、我々は、やはり「脱原発」を進めなければならいのです。
 そのためには当面の取り組みとして、NUMOによる地層処分場公募について、明確に反対していくことが必要です。そのため、下記の取り組みを提起します。
 ① 国・電力業界をあげて進めている、地層処分についての宣伝に対し、地震列島日本における地層処分の危険性を訴えていく。
 ② 身近にせまった低レベル放射性廃棄物の危険性を広く国民に知らせることと、放射能被爆から県民を守るために、安全管理・監視を求めていく。
 ③ 財政健全化法の施行により、多くの自治体において「健全化計画」、「再生計画」が義務付けられることが予測され、財源ほしさに地層処分候補地に立候する自治体がないか注視する。
 ④ 活動が停滞している自治労脱原発ネットワークと各県本部及び地域が連帯して地震列島日本における地層処分反対運動に取り組む。

4. おわりに

 これまで、「脱原発」を訴えてきましたが、最後に今後の展望を記しておきます。
 私たちは、「再生可能な」エネルギーの開発・普及でCO2を減らし、脱原発でCO2を減らすという政策の決定とそこに至るプロセスこそが、ドイツのような展望のあるエネルギー政策への道筋であると確信しています。
 このことを全国の仲間、市民の皆さんへ訴えていくことこそ、「地球温暖化」防止への一番の近道ではないかと考えています。
 道のりは決して平坦ではありません。もちろん現状で「再生可能な」エネルギーのメドが立っているわけでもありませんが、安易に「原発」に頼ることの危険性については、上に述べてきたとおりです。
 今回、北海道自治研自主レポートという形でまとめさせていただきましたが、私たちも「自治労」という組織の中での運動の限界について反省していくべきことが多くあります。それは活動している私たちの思いと、自治労中央本部の思いが一部乖離しているのではないかという疑念です。
 私たちは、決して自治労本部の運動方針に反して活動しているわけではないはずです。それでも、労働運動の連合体としての「連合」そしてその構成産別としての「自治労」、その自治労に結集して運動を行っている私たちの間に、「原発」への温度差があってはいけません。
 私たちは運動として、連合本部の原発政策について到底納得できるものではないため、脱原発ネットワークアドバイザー等の意見を集約し、真正面から議論する必要性が求められていると考えます。




4月開催用に追記
 昨年のレポート提出後のRI・研究所関係の低レベル放射性廃棄物等の情勢が変化していますので、追記にて加筆・修正したいと思います。

 まず、これまで決まっていなかった、RI・研究所等廃棄物(低レベル放射性廃棄物)の処分の実施主体が、2008年5月28日、原子力機構の設置根拠法の改正により、原子力機構の業務に放射性廃棄物の埋設処分(高レベル処分を行うNUMOの業務に属するものを除く)を加えることで原子力機構に決定しました。
 この法改正では、処分場の選定や処分方法など詳細な実施計画の策定が原子力機構に丸投げされた形となり、安全性の確保は後追いとなっています。また、名称も国の定めた基本方針で「放射性廃棄物」ではなく「研究施設等廃棄物」となり、処分対象がぼやけることで処分実施に歯止めがかかりにくい状況が考えられます。岡山では、直接、この法改正が関係してきます。
 岡山県には県東部大半の地域の主要な水源である一級河川吉井川の源流、鏡野町に原子力機構人形峠環境技術センターがあり、その施設内には、3,000台のウラン濃縮遠心分離機そのものが放射性廃棄物として存在しており、これは、低レベル放射性廃棄物に該当します。
 岡山県内の動きとして2009年2月19日に市民団体「放射能のゴミはいらない 県条例を求める会」(以下、「県条例を求める会」)が鏡野町長に「低レベル放射性廃棄物の県内処分反対」の申入れ・協議を行いました。
 それに対し鏡野町長は「低レベル放射性廃棄物の危険性について、若い学者に鏡野町へ来ていただき、勉強しながら『安心・安全』をアピールしていきたい」と口頭回答し、前向きな姿勢を覗かせました。また、同町長が、「高レベルは考えていない」と言い切りながら、低レベル放射性廃棄物に関しては電源立地交付金に代わる交付金欲しさに処分場誘致の動きを見せたことは、重大な発言として受け止めています。
 一方、「県条例を求める会」は、核のごみキャンペーン関西の末田一秀氏を講師に招き、新たな動きを見せる低レベル放射性廃棄物の埋設処分について学習を深め、安全性の確立していない埋設処分に反対する運動を全県的に展開することを確認しました。
 また、県本部脱原発専門委員会では市民団体とも連携し、県民を放射能被害から守るために、放射性廃棄物の安全監視・管理を求め、継続的な学習会を積み重ねながら、この運動の取り組みを展開することを確認しました。
 最後に、脱原発・クリーンエネルギー転換を求めるたたかいは、関連施設を持つ県本部・単組・地域だけの課題ではなく、全国の自治労の仲間が共に考え、共に行動すべき運動であります。そのためには本部が指導的な役割を果たし、現場と連帯した脱原発運動を共につくりあげていく必要があると考えます。
 2009年10月3日に原子力政策の転換を求め、東京都・明治公園で行われる「10.3 NO NUKES FEST2009」の集会の大成功に向け、きちんと自治労の運動として位置づけ、結集し、運動を展開していこうではありませんか。