【要請レポート】

第32回北海道自治研集会
第Ⅴ-②分科会 温暖化防止とクリーンエネルギー

地域再生の特効薬「エネルギーの地産地消」


北海道本部/別海町職員組合

1. はじめに

 マスターベーション。当然の様に別海町の生乳生産量日本一というアイテムは全国に誇れると信じていた。しかし、知名度はゼロ。ショックだった。「いったい何ができるのか」、の自問自答に友人からの一言。「今までの財産をもう一度見直せ」。きっかけとなった。
 そこで、町の潜在能力と現在進行中のプロジェクトを紹介します。
 別海町は北海道の東部に位置しております。羽田空港から中標津空港まで90分・中標津空港から別海町中心地までバス30分のところに位置しております。地形は山岳がなく平坦で西から南東に向かいゆるい傾斜の大平原でその広さを例えて言えば、13万ha余りで香川県・大阪府に迫るほどです。さらに言えば、南北44km東西61kmに及んでいます。我町の基幹産業は第一次産業で、特に酪農が盛んで全町で約11万頭の乳用牛を飼育しており、これは全国の乳用牛の6%になります。生乳の生産量は年間約44万トン(東京都民が飲む牛乳の1年分)になります。耕地面積は63,000haで琵琶湖とほぼ同じ面積で99%が牧草地であります。
 また、人口は昭和30年代の22,000人をピークに現在では約16,500人となっております。原因につきましては農家戸数が1961年の2,600戸をピークに現在では約830戸と同様に減少していることから農業環境全般の問題と考えています。
 古くは交易の要所でありました別海町は、1879年7月に役場が設置され、その後1971年に町制が施行され本年で130年を迎えます。恵まれた自然環境と土地資源を生かした農業・漁業を基幹とする産業基盤を発展させてきました。特に農業におきましては1956年高度酪農集約地域に指定されそれまで冷害凶作を繰り返していた畑作から酪農中心へと転換が図られ酪農近代化へ歩み始めました。更に1973年に国のプロジェクトとして別海町に新酪農村がスタートしてからは農業施設や機械の大型化・近代化が進み今日のような「全国一の酪農王国」としての位置づけを確かなものにしています。また、農業産出額は約449億円で全国第5位となっております。反面大規模農家となり家族経営の限界に近づき労働力の不足が生じました。
 一方、歴史ある漁業は沿岸部の4漁港を拠点に発展してきました。根室湾海域は昭和30年代までにホタテ漁中心の漁場でしたが、昭和40年代に入って資源状況が著しく悪化したことから、その後は種苗生産をはじめ資源回復・増大に向け様々な試みが行われるようになりました。1971年ころから本格的に推進されるようになった管理型漁業は、のちに北海シマエビやアサリ、ウニ、ニシンなどにおいて取り組まれ、資源の維持回復を重視する「育てる漁業」が定着しています。
 別海町は、酷寒の地にありながら、1956年には高度酪農集約地域の指定を受け、パイロット・ファームに着手した。以来、畑作から酪農への転換が始まり、先人達の努力により現在乳用牛は約11万頭を数える名実ともに全国一の酪農郷を築き上げることができました。
 しかし、これまでの規模拡大と経済成長重視の過程で、地域から発生する家畜ふん尿は十分な処理を行うことが出来ず、土壌・河川・湖沼などへの悪影響を及ぼしていました
 本町はふん尿の有効な利活用による環境保全と地域産業(酪農、漁業)との調和を目標に、酪農研修牧場や資源循環試験施設、遊休サイロなどを活用し、バイオガスプラントの試験導入を進めてきました。その結果、ふん尿を環境にやさしいエネルギーや有機肥料として有効に利活用できるシステムを普及することが可能になってきています。
 バイオガスプラントの技術とシステムを活用し、CO2の削減や地域環境の保全を図るとともに、安定的エネルギーを確保し、生産から加工、販売までの産業創出など、別海町独自の付加価値を構築し、将来に向かって資源循環型の安定的な酪農、漁業の振興を推進することを目標に、2005度には「バイオマスタウン構想書」を作成し国に提出するとともに、町全体の「バイオマス利活用計画」を策定しました。
 この計画を第一歩として、資源循環型酪農の確立と、将来ともに別海町に生きる人々のためにも、環境にやさしく、安心して住める、健康な町づくりを、一歩一歩進めていくものです。

2. 別海町の賦存バイオマスエネルギー

 別海町は、2002年度NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の支援を受け「別海町地域新エネルギービジョン」を策定した。このビジョン策定では、本町が持つ潜在的なエネルギーの賦存量と、その活用によるCO2の削減効果等を調査しました。


表1 別海町エネルギー需要量のまとめ(単位:103kWh/年)
項 目
電気
灯油
重油
LPG
ガソリン
軽油
合計
公共施設
8,404
3,479
13,750
322
25,955
産業
34,343
1,472
160,880
94,450
291,145
一般家庭
19,800
105,247
8,093
133,140
運輸
166,903
166,903
合 計
62,547
110,198
174,630
8,415
166,903
94,450
617,143

 調査では乳用牛から発生する畜産系バイオマスエネルギーの活用が最も有力とされ、排泄されるふん尿量5,257t/日をもとに潜在能力を推計すると、バイオガス発生量は131,400m3/日となり、これを発生熱量に変換すると、678,200Mcal/日と試算した。このエネルギー量は、別海町エネルギー需要量の44.6%に当たる。またCO2の削減効果は、灯油換算にして18,784t/年となり、別海町の使用化石燃料から発生するCO2量の44.6%にあたります。
 別海町では、当面の目標として、乳牛ふん尿 812.5t/日(乳牛12,500頭分:65kg/日・頭)を嫌気性発酵させ、効率的なエネルギー発生システムの構築を検討している。
 このため、2000年度に独立行政法人北海道開発土木研究所が主体となって別海町広野地区に設置した共同利用型のメタン発酵施設を活用し、同施設で発生している余剰バイオガスの精製圧縮充填ガス燃料化実証実験を2006年度に行う。本報告では、この実験事業を通して計画しているバイオマスエネルギー事業の概要と事業効果検討の概要について述べます。


図1 別海町乳牛ふん尿の潜在エネルギー

3. メタン発酵適用の事前検討

(1) メタン発酵本来の特徴
 メタン発酵を行う利点としては以下があげられる。

・環境にやさしい処理 密閉系処理なので発酵段階で発生する臭いやアンモニア揮散等が少ない。
・原料の無臭化 嫌気性処理により臭いの成分がガス化する。
・消化液としての有効な液肥化 窒素分の目減りが少なく・即効性のある有機肥料として活用ができる。
・ふん尿中有害菌・雑草種子の死滅 高温嫌気性処理での有害菌・雑草種子の死滅により、消化液の広域利用が可能。
・エネルギーが回収できる メタンガスとしてエネルギーの取得が出来る。
・処理エネルギーが少ない 施設維持に関するエネルギーが少なく、原料移送と発生ガス利用の温度維持エネルギーのみ。

(2) 消化液の土壌還元
 土壌還元にあたっての性状、留意点は以下と考えた。

・嫌気性発酵後のふん尿(消化液)に含まれる化学肥料成分は、発酵前のふん尿成分とほとんど変わらないため、従来行っていたスラリー灌漑と同様に以下の利用ができる。
・牧草(チモシー)地における施肥標準量は、10㎏/10a(総窒素)、8㎏/10a(リン酸)、18㎏/10a(カリウム)とする。従って、消化液の散布量は、総窒素で6.3t/10a、リン酸で20.0t/10a、カリウムで4.9t/10aとなる。しかし、散布量の最も下限制限となるカリウムの4.9t/10a(=49t/ha)が、年間当りの散布上限量となる。
・消化液を利用する上で、過剰施用による生産性と環境への悪影響を回避し、持続的な作物の生産性を実現していく必要があります。消化液中の肥料効果成分を有効利用すると同時に、消化液の散布時期とそれに見合った分化学肥料を減肥する必要があります。

4. バイオガス改質・エネルギー機器導入の為の実証計画

(1) バイオガスの利用に関する問題点
・発生熱量の不安定性(メタン濃度の不安定性)と不純物(硫化水素・飽和水蒸気等)の混入バイオガスを利用できるボイラー・発電機等の機器が少ない。
・バイオガスを電気・熱エネルギーに変換した場合、販売することが難しく、牛舎・プラント内だけの消費に限られている。また、売電単価が安く、機器の維持管理費が高い。

(2) バイオガスの利用効率を上げるための対策
・圧縮冷却分離・化学薬品・膜分離装置などにより二酸化炭素や水分・硫化水素を吸着反応させ、メタン純度を上げる。
・メタン純度を上げたバイオガスにLPGを添加し、1m3当りのエネルギー量を11,000kcal(都市ガスと同等)に改質する。
・現在流通しているガスと同程度にする事により、バイオガスエネルギーの利用を農家だけではなく、公共施設・一般家庭など広域的な利用を図る。


図2 バイオガスの改質・圧縮による燃料化の検討

5. 改質バイオガスの圧縮・充填設備による実証試験の計画

 前述のような経緯から、2006年度より、別海町で現在稼動中の共同型バイオガスプラント((独)北海道開発土木研究所 別海資源循環試験施設)から発生する余剰バイオガスを使用し、改質・圧縮・充填作業を試験的に行っている。この実証試験結果を基に、町において積極的なバイオマスエネルギーの利用方法を模索することとしている。
■試験及び調査内容の項目
・改質バイオガスが外販出来る設備の検討
・改質バイオガスのコスト試算
・輸送距離、流通体制の最適化の検討
・ガス供給設備の検討
・改質バイオガス使用機器の燃焼試験
法規制に関する調査、など

6. バイオマス利活用の事業化

 現在、今後の事業化に向けての取り組み案を策定している。現在、事業の実現のための実証試験を開始しており、実証試験成果や環境調査などをもとに、事業を進めて行く考えである。

(1) バイオマス利活用システム構築の検討
  乳牛のふん尿を資源として有効に活用するためには、バイオガスプラントで処理された消化液を圃場に還元するシステムと、バイオガスをエネルギーとして利活用していくシステムづくりが必要である。このために以下の検討が必要となる。
① ふん尿消化液の圃場還元を促進するため酪農サポート事業を確立させる。
  バイオガスプラント導入には、戸々の酪農家に施設する戸別施設型と酪農集団で共同利用する共同施設型がある。消化液の圃場還元を効率よく行うため、戸別施設型はコントラクター会社に、共同施設型はデイリーサポート会社に委託するシステムをつくることを検討する。
② 町全体でエネルギー活用システムを作ることを検討する。
  発生したバイオガスのエネルギー利用体制を確立するため、バイオガス施設の法人等を設立しバイオガスプラントのレンタル・リース、管理指導、ガスの改質・充填業務等の事業を検討する。
  プラントで改質したガスは、まずは自家施設で使用し、余剰ガスはガス販売会社が、戸別酪農家及び共同施設のデイリーサポート会社から購入して町内全域に販売することを検討する。


図3 バイオガス利用事業の概要

(2) 事業推進体制の確立
 別海町では、2006年度、庁内に環境特別推進室を新設した。今後、別海町バイオマス利活用事業組織委員会(仮称)と別海町バイオマス利活用事業実行委会(仮称)を組織し、バイオマス利活用計画(表2参照)にもとづき、各事業の計画立案と実施を推進して行くこととしている。
① 2006年度は、環境保全効果の調査と事業実施計画を策定すると伴に、バイオガスの利活用に向けてのガスの改質・圧縮・充填とボンベによる搬送の実証と、町内の公共施設や一般住宅などでエネルギーとしての使用実証と事業化の可能性についての検証を行う。
② また、先行事業として、べつかい乳業興社をコアに、牧草の生産から、良質な牛乳の生産、バイオマスエネルギー利活用による食品加工、販売の事業体制づくりを推進する。
③ 2007年以降は、バイオマス利活用計画による酪農集落の再編に向けて、酪農サポート事業、バイオマスエネルギー事業、食品加工と観光振興事業の推進を検討する。

(3) 事業スケジュール
① バイオマス利活用計画は2006年3月に策定し、環境関連の一部計画とバイオガスの改質による利用機器の使用実証および事業性評価を行い、2009年度から各事業別に実施母体を設立し事業を推進する。2009年度には、2010年以降の計画を策定し、第2期、第3期、第4期、と長期20年の目標を設定し、各事業を推進して行く。
② バイオマス利活用による環境改善効果は2005年度、土壌、河川、湖沼、大気の環境改善計画を検討し,2006年度に調査と改善目標を設定しました。
③ バイオマスエネルギー利活用の実証は2006年度にバイオガス改質(13A相当)(注1)・圧縮充填、流通、実証と町内の各施設で、ガス使用機器の使用試験を行う。2008年度には2009年度からの普及に向けて、バイオガスの改質装置のコンパクト化と改質バイオガス使用機器の選定を行う。

(4) 酪農サポート事業の推進
① バイオガスプラント導入地区の選定は消化液の効率的な圃場還元が基本となることから、コントラクターやデイリーサポートなど、圃場の共同管理体制を確立させる必要がある。
② 圃場作業受託会社(コントラクター会社)は、選定した酪農集落のコンラクターを対象に、体質強化を図るために有限責任事業組合(LLP)による組織化を図り、圃場管理受託のもとに消化液の適正還元を行う。
③ 圃場管理、飼料生産会社(デイリーサポート会社)を初年度に計画し、次年度以降に有限責任事業組合(LLP)等を組織化し、バイオガスプラントを設置する。戸々の酪農家からふん尿を収集し一括管理し消化液の圃場還元を行う。その後は集落の選定にもとづき実施していく。

(5) バイオマスエネルギー事業の推進
① バイオマス施設会社は、事業性評価の結果を受けて初年度に計画立案し、次年度以降にバイオガスプラントの導入に向けて共同企業体による会社を設立、バイオガスプラント及びガス改質装置のレンタル・リース事業を開始する。
② バイオマスタウン別海先行事業は、べつかい乳業興社等をコア企業として、実施に向けて新連携事業として実施するものとする。

(6) ブランド開発と環境産業の振興事業
① 環境・食料・エネルギーを基本理念として、地域の環境保全・酪農、漁業の振興・寒冷地のエネルギー利活用の促進を図るために、また自立できる21世紀の低コスト町作りを目差して、計画当初からプロジェクトを組織し、酪農集落の再編に向けてのビジョン作りを推進する。
② 食品加工の起業化はべつかい乳業興社等をコア企業として、新連携事業として設立し、バイオガスエネルギーを乳業興社で使用し、乳製品、魚介類の加工、販売の体系を構築し、バイオマスタウン別海の先行モデル事業として推進する。


表2 バイオマス利活用計画
 
酪農サポート事業
 
バイオマスエネルギー事業
 
食品加工&観光振興事業
 
■事業実施予定地区の設定
・先行実施事業地区として町内2ヵ所から酪農集団を選定。
■事業主体及び事業手法の検討
・第3セクター方式、共同事業体方式、事業協同組合方式、有限責任事業組合(LLP)方式等を検討し設立
■バイオマス利活用の実証試験
・実施場所:中西別バイオガスプラント
・事業内容:バイオガスの改質と使用実証
■環境調査
・事業主体:別海町
・事業内容:バイオガス利用による環境改善効果
■基本計画の策定
・バイオマスタウンそのものを中核とした観光振興計画
・別海町新ブランド開発計画
・観光拠点開発計画
・事業主体:べつかい乳業興社をコア企業とする連携企業体の設立
※中小企業新事業活動促進法に基づく新連携対策補助金
■戸別施設型バイオガスプラントの導入
・事業先行地区A地区
・対象戸数:18戸
・事業主体:酪農家、農業協同組合、地元企業による法人もしくは組合方式
・事業内容:バイオガスプラントの導入、戸別設置の共同利用型
■バイオガス施設会社の設立
・第3セクター方式、共同事業体方式、事業協同組合方式、有限責任事業組合(LLP)方式等を検討し新会社を設立
・事業内容:バイオガスプラント、バイオガス精製機器、バイオガス利用機器の販売、またはリース、メンテナンス
■循環型酪農生産・加工体系確立事業の推進
・食品加工工場等でのバイオガス利活用計画
■有限責任事業組合(LLP)の立ち上げ(事業・運営主体)
・べつかい乳業興社他町営団体、(有)別海町酪農研修牧場、農業協同組合、漁業協同組合等
■共同施設型バイオガスプラントの導入
・事業主体:酪農家、農業協同組合、地元企業による法人または組合方式
・事業内容:バイオガスプラントの導入、粗飼料生産、圃場の管理等
■バイオマスエネルギー利活用事業の実施
・事業主体:上記新会社
・事業内容:イオガスプラントとガス改質機器の販売またはリース
■バイオエネルギー販売事業
・事業主体:ガス会社、地元企業
・事業内容:バイオガスの販売
■別海町新ブランド品の商品化
・乳製品を中心とする食品開発
・オリジナルグッズの開発
■観光等施設の整備
・道の駅の登録
・宿泊施設
※地域再生計画、地域ブランド形成事業ほか
■事業実施地区の拡大
・酪農集団別に事業実施地区を
募集・選定し、事業の拡大を図る
・実施対象戸数:85戸(8,500頭)
・本町酪農集団(72集団)の再編とバイオガスプラント導入
■バイオマスエネルギー利活用事業の拡充
・事業主体:上記新会社
・事業内容:対象地区にバイオガスプラントのリースまたは販売、管理、改質ガスの生産と供給を行う
・バイオガスプラントの普及に合わせ事業の拡大を図る
■食品加工業等の起業
・事業及び運営主体:有限責任事業組合(LLP)
■交流イベントの実施
・芸術、文化、産業、スポーツイベントの開催を通して、全国、世界へ向けての情報発信
・グリーンツーリズム
・若者や団塊の世代を中心とした別海町移住・定住事業

7. 改質バイオガスの圧縮・充填の費用便益

 2006年度に実証実験を行った改質バイオガスの燃料化について費用便益分析を試みた
 費用便益分析の流れは図4にを示すとおりで、利活用施設の関係者(セクター)の収益と社会的効果の和を年総価額とし、それを現在価値化した妥当投資額と総事業費の比を投資効率とする。この費用便益分析方法は、2005、2006年度に農林水産省でマニュアル化を検討中の分析法であり、バイオマス利活用施設整備の検討に活用することを目標とした方法である。
 バイオマスの利活用施設については費用便益を分析した前例がないこともあり現在効果を精査している段階であるが、この種の事業効果を判断するためには利活用を行いかつ地域が活性化するためのシステムの構築が重要であることが改めて認識できた。
 費用便益分析を行った結果、改質バイオガスの燃料化事業がもたらす効果として以下があげられる。この中の◎印は費用便益分析で金銭価値化が行えた効果であるが、バイオマス利用の必要性は理解されているものの、環境や社会への効果は金銭価値化することが困難であり、住民の意識調査を行う中で効果を金銭価値化していく必要があると考えている。


図4


8. さいごに

 マスターベーション。自身の満足が共通の満足となり、それが最大値となることの追求に生きがいを感じることこそ、まさに……
 JISマークからJASマークに人事異動した時期の気持ちが最初でした。モチベーションを上げるため、組織満足からの脱却を考えるが既成概念の壁は厚く、長期的な取り組みとなることは必至。そこで、先人達の実績に自身の味付け、そして何よりは若い力をエッセンスとし、融合することにより成果が生まれる。
 最初は小さい取り組みですが、エネルギー需給ポテンシャルの高い当町は将来、エネルギー供給基地とした街づくりを図りたいと考えています。是が非でも成功に向けて努力することは、全ての自治体がアイテムこそ違え目指していることは同様といえますが、独自の工夫(目的を特化した新たな枠組みも考慮した組織を作る等)により解決に向かうことも可能です。何より信念と直向さを持ち取り組むことが重要で、住民目線で進めなければ自慰となる恐れがあります。
 今まで述べた当町の取り組みが、家庭用としてが広く普及するようになれば、それはこれまでの産業機器という観念から民生機器・家庭製品に変わり、専門家の扱うものから誰でもが使える道具になります。その製品の市場も世界に広がると同時にサービスの体制も整えられ雇用も発生する。これまでの大型の「省エネルギー装置」の概念から脱皮する必要があります。無駄に捨てられているエネルギーを回収して有効に利用しようというだけの簡単な発想です。まして自然やバイオマスを利活用したエネルギーは環境に与える負荷もほとんどなく、住民が積極的に地域社会の発展・自立に努力するという積極面があります。
 別海町が先頭となり地域住民と共に明るい将来を築くため行動する。地域の主体性を活かした規制改革を通じ、地方発の独創的な取り組みで改革の波を巻き起こし、経済の活性化に向け、積極的に取り組む必要があります。こうした観点から、町内の優れた産業基盤を活かしながら、地域の自助努力を主体とした取り組みを両輪に、産・道・町が連携した拠点的新産業集積等の形成に取り組み続けます。




注1 13Aとは十数種類ある都市ガスの規格の一つである。熱量は46.04655MJ/m3N≒10,989.6kcal/ m3Nであり別海町で使用されているプロパンガスの熱量の46%である。現在のガス燃焼機器に関しては、地域が供給しているそれぞれのガス規格に燃焼装置(ガス噴射部分:ノズル)を変更して使っている。全国的な規格の統一ということで、5年後には全国のガス燃焼機器は13A規格になる予定である。