【自主レポート】

第32回北海道自治研集会
特別分科会 夕張からわがまちの財政を考える

南相馬市の決算について


福島県本部/自治労南相馬市職員労働組合

1. はじめに

 2006年1月1日、原町市、鹿島町、小高町の3市町が合併し、南相馬市が誕生した。南相馬市の面積は398.5平方km、人口は2008年3月31日現在72,301人(住民基本台帳人口)となっている。南相馬市の誕生から2年が経過したが、この間、地方財政を取り巻く環境は大きく変化した。小泉構造改革で行われた「三位一体改革、歳出・歳入一体改革における地方交付税改革」は、特に地方に大きな影響を与え、その結果、財政危機を叫ぶ自治体が増えている。
 また、小泉構造改革は「格差社会」という負の遺産を生み出した。格差を是正し、進展する少子高齢化に対応できる安定した日本社会を築くためには、医療、介護、福祉など「社会的セーフティーネット」としての行政サービスの充実が必要である。そのためにも安定的・持続的な地方税財源の確保が大きな課題となっている。
 一方、夕張市の財政破綻、昨年6月15日に成立した「自治体財政健全化法」により、「地方税財源の使われ方」にも関心が高まっており、使われ方の検証は重要性を増している。
 よって、当組合は、今集会が絶好の機会であると捉え、決算カードを用いて過去5年間(2002年度~2006年度)の決算内容を検証し、その概要をまとめた。
 なお、2002年度から2004年度分は旧3市町決算カードの数値を合算、再計算している。3市町において、それぞれ特色ある政策を決定し、財政運営が行われたことを踏まえれば、3市町の数値を合算、再計算により南相馬市として検証することは少々乱暴である感は否めないが、「数値比較を単純化させ、検証する」ことを目的としていることでご了承いただきたい。


【参考:人口の推移(住民基本台帳人口)】 (単位:人)
2003.3.31 2004.3.31 2005.3.31 2006.3.31 2007.3.31 2008.3.31
74,461 74,218 73,830 73,371 73,038 72,301
注1)2003.3.31~2007.3.31は決算カードより(※2003.3.31~2005.3.31は3市町決算カードの合算)
注2)2008.3.31は南相馬市ホームページ「統計情報」より(※ホームページでは、2007.3.31現在の人口は「72,835」となっている)

2. 歳入の状況

 歳入に占める割合の高い地方税、地方交付税、地方譲与税、国・都道府県支出金、地方債の推移は次のとおりである。
(1) 各年度歳入の30%以上を占める地方税は減少し続けている。2002年度税収11,293,395千円と比較し、2006年度は9,684,448千円で▲1,608,947千円となっている。
   主な税収である市町村民税(個人分・法人分)、固定資産税、都市計画税の推移は、固定資産税の税収が全体の60%以上を占めていることが、南相馬市の大きな特徴である。しかし、固定資産税は減少し続けており、2002年度7,872,355千円と比較し、2006年度は6,275,116千円で▲1,597,239千円となっている。2002年度から2006年度の地方税は全体で▲1,608,947千円、固定資産税は▲1,597,239千円であることから、地方税減収の大きな要因は「固定資産税の減収」となってくる。
   市町村民税(個人)は2003年度から2005年度までは減少傾向であるが、2006年度は増加し、2005年度比149,656千円増の2,023,394千円となっている。法人市町村民税、都市計画税は減少傾向となっている。
(2) 地方交付税は2003年度から2004年度までは減少傾向にあったが、2005年度から増加傾向になり、2006年度は6,255,749千円となっている。過去5年間の最小値である2003年度5,357,957千円と比較し、897,792千円の増となっている。
   「歳出・歳入一体改革」により地財計画が圧縮され、多くの自治体が地方交付税抑制に悲鳴を上げる中、地方交付税の増は「行政水準の確保」の面では好材料と言えるが、この増の要因(税収減、合併要因)は精査する必要がある。
   地方譲与税は増加し続け、2002年度459,508千円と比較して2006年度は1,061,974千円で602,466千円増となっている。これは、三位一体改革に伴う所得税から住民税への税源移譲のための暫定措置として創設された「所得譲与税」への配分が増の要因と思われる。
   国・都道府県支出金は2003年度から2004年度までは減少傾向にあったが、2005年度から増加している。最小値である2004年度2,949,753千円と比較し、2006年度は338,692千円増の3,288,445千円となっている。これは、合併による生活保護費負担金等福祉関連の増などに伴うものが要因として考えられる。
(3) 地方債は2005年度から大きく増加している。過去5年間の最小値である2004年度3,055,800千円と比較して2006年度は925,500千円増の3,981,300千円で、過去5年間で最大値となっている。減税補てん債、臨時財政対策債は減少傾向にあり、合併特例債などが増の要因として考えられる。

2006.4.1南相馬市広報紙「将来の財政・予算の推計」より

合併特例債

・合併自治体に対する国の財政支援のひとつ。合併後10年間借入ができ、元利償還額の70%が交付税に加算される。
○今後10年間で計画した建設事業に借入できる合併特例債を推計

合併特例債・基金分

・地域振興基金【ソフト】の原資とするため借入する合併特例債(借金)

将来の財政・予算推計結果

・10年間の一般会計の予算規模は平均270億円の見込み
・このうち建設事業は10年間で555億円(うち10%は予備)。その主な財源は合併特例債で213億円、国県補助金で121億円、一般起債で56億円、一般財源で153億円、その他12億円

 次に、一般財源計及び一般財源で大きな割合を占める地方税、地方譲与税、地方交付税の推移は以下のとおりである。
 一般財源計は、2002年度18,693,741千円を最大値とし、2004年度までは減少傾向にあったが、2005年度から増加傾向になった。最小値である2004年度17,483,201千円と比較し、2006年度は657,828千円増の18,141,029千円となっている。
 地方税が減少する中、地方譲与税と地方交付税は増加しており、よって2005年度から2006年度の一般財源の増加は、地方譲与税と地方交付税の増が主な要因となってくる。
 次に、歳入合計及び一般財源、国庫・都道府県支出金、地方債の推移は全体として2004年度を最小値として2005年度から増加傾向にある。一般財源、国庫・都道府県支出金、地方債は増加しているが、歳入合計では2005年度30,190,967千円と比較し、2006年度は▲473,713千円の29,717,254千円となっている。これは繰入金・繰越金が2006年度は2005年度比較で▲1,008,304千円となっていることが要因となってくる。


3. 歳出の状況

(1) まず、性質別歳出で見た場合、義務的経費(人件費、扶助費、公債費)と普通建設事業費等投資的経費、その他歳出に占める割合の高い物件費、補助費等の推移については、過去5年間の歳出総額で、2003年度31,038,497千円を最大値として、それ以降は2005年度で前年度を大きく増加したものの、水準は減少傾向にある。2006年度は2003年度と比較して▲1,287,701千円の28,835,251千円となっている。
  ① 義務的経費の推移は人件費が、2005年度5,791,805千円を最大値として、2006年度は前年度比▲257,645千円の5,534,160千円となっている。その水準も2002年度を下回っている。
    扶助費は増加し続けている。2002年度1,754,258千円と比較し、2006年度は1,021,344千円増の2,775,602千円となり、過去5年間で最大値となっている。
    公債費は2004年度2,749,873千円を最小値として2005年度から増加している。2006年度は2004年度比495,848千円増の3,245,721千円、過去5年間で最大値となっている。
    義務的経費は増加傾向にあり、2002年度10,537,282千円と比較し、2006年度は1,018,201千円増の11,555,483千円となっている。構成比も増加傾向で、2002年度から2005年度までは30%台だったが、2006年度は40%台に達している。2002年度と2006年度の構成比比較では、人件費は2002年度を下回る19.2%、扶助費は上回る9.6%、公債費は同水準の11.3%となっている。
  ② 普通建設事業費等投資的経費は、2003年度8,277,259千円をピークとして2004年度からは50億円台で推移している。その水準は相当減少しているものの、2004年度からは増加傾向にあり、2004年度5,139,362千円と比較して2006年度は323,314千円増の5,462,676千円となっている。なお、構成比は2004年度から2006年度は18%~19%台で推移している。
  ③ 物件費は増加傾向にある。2002年度3,324,103千円と比較し、2005年度は1,111,472千円増の4,435,575千円となっている。2006年度は2005年度比▲352,723千円の4,082,852千円であるが、2002年度比では758,749千円の増となっている。
補助費等は2002年度から2004年度までは30億円台で推移していたが、2005年度は30億円台を割り、2,874,561千円で最小値となっている。しかし、2006年度は2005年度比673,059千円増の3,547,620千円、過去5年間で最大値となった。
(2) 普通建設事業と公債費、地方債の推移は、普通建設事業費、地方債が2003年度をピークとし、それ以降減少はしているものの、2004年度から見ると2005年度~2006年度は増加傾向にある。公債費は増加傾向にあり、過去5年間中2005年度、2006年度は高い数値となっており、2006年度は最大値となっている。2004年度と比較し、2006年度の普通建設事業費は222,114千円増の5,349,002千円、地方債は495,848千円増の3,245,721千円、公債費は925,500千円増の3,981,300千円となっている。
(3) 目的別歳出で見た場合、歳出に占める割合の高い総務費、民生費、土木費、教育費、公債費の推移は以下のとおりである。
  ① 総務費は2005年度が最大値の5,995,007千円となっており、最小値である2003年度と比較して2,120,291千円増の3,874,716千円となっている。2006年度は2005年度比▲1,325,801千円の4,669,206千円となっている。
  ② 民生費は増加し続けている。2002年度4,720,821千円と比較し、2006年度は1,545,220千円増の6,266,041千円となっている。民生費の増は社会的要因・福祉関連業務の拡大等合併要因が考えられる。
  ③ 土木費は減少し続けている。最大値である2003年度4,549,710千円と比較し、2006年度は▲1,321,532千円の3,228,178千円となっている。
  ④ 教育費は2003年度6,330,849千円を最大値とし、2004年度から2006年度の水準自体は減少している。しかし、2004年度から2006年度で見れば増加しており、2004年度3,662,342千円と比較し、2006年度は906,324千円増の4,568,666千円となっている。


4. 歳入・歳出の類似団体比較

 2002年度から2004年度決算における類似団体は、3市町の2000年(平成12年)国勢調査による産業構造を再計算した結果、都市類型は「Ⅱ-2」となった。なお、2005年度は「Ⅱ-0」、2006年度は「Ⅱ-1」である。

【2000年国勢調査】
○人口…3市町合計75,246人
○産業構造…第1次産業 3,291人(8.8%)
      第2次産業 14,540人(38.8%)
      第3次産業 19,632人(52.4%)
 よって、人口が55,000人以上80,000人未満、第2次・3次産業が85%以上95%未満、かつ第3次産業が55%未満により、類似団体は「Ⅱ-2」が該当する。

 なお、過去5年間で3都市類型との比較になっている。よって、連続した比較は多少無理があることは否めないが、そこはご理解願いたい。

(1) 歳入の状況
 地方税、地方交付税、地方債の類似団体比較は、以下のとおりである。
① 地方税は南相馬市が各年度で類似団体を上回っているが、南相馬市、類似団体とも減少傾向にある。2002年度151,669円を最大値として減少し続け、2006年度は▲19,074円の132,595円となっている。また、類似団体との差は2003年度で21,087円、2006年度では11,680円であり、その差は縮小傾向にある。
② 地方交付税は、2002年度から2004年度までは類似団体を上回っていたが、2005年度では南相馬市が78,090円、類似団体が85,308円で類似団体を下回っている。2006年度でも僅かながら類似団体を下回っている。
③ 地方債は過去5年間、類似団体を上回っている。また、人口1人当たりの地方債は類似団体が減少傾向にある中、南相馬市は2004年度66,091円の最少値から2005年度に大幅に増加した。2006年度では類似団体54,510円と比較し、32,002円増の86,510円となっている。類似団体との差は2002年度で4,852円、2006年度で19,571円であり、その差は拡大している。
④ 一般財源計と歳入合計の推移は図表⑩のとおりである。一般財源計・歳入合計ともに類似団体を上回っている。一般財源計では、2005年度で類似団体とほぼ同水準になったが、2006年度は南相馬市が248,378円で増加しているが、類似団体は減少し、その差は12,361円になっている。
  歳入合計は、2005年度で類似団体との差が縮小したが、2006年はどちらも減少したものの、その差は2005年度18,063円から2006年度32,951円に拡大している。

(2) 歳出の状況
 人件費、扶助比、公債費の義務的経費の類似団体比較は以下のとおりである。
① 人件費は、2002年度から2004年度までは類似団体を上回っている。2005年度は前年度比5,875円増の78,930円で大きく増加したものの類似団体80,040円を下回り、2006年度も南相馬市、類似団体とも減少する中、類似団体を下回っている。
② 扶助費は過去5年間、類似団体を下回り、大きな差が見られる。その差は2005年度7,011円から2006年度10,113円に拡大している。
③ 公債費は、2002年度から2003年度までは類似団体を上回っていたが、2004年度で類似団体を下回り、2006年度まで類似団体を下回っている。公債費自体は増加傾向にあるものの、その差は2004年度2,468円から2006年度5,122円に拡大している。
④ 歳出合計及び義務的経費、投資的経費の推移は、義務的経費は南相馬市、類似団体とも増加傾向にあるが、その比較においては2003年度以外の年度は類似団体を下回り、その差は2004年度7,251円から2006年度16,572円に拡大している。
  投資的経費は、過去5年間類似団体を上回っている。南相馬市、類似団体とも2004年度が最小値となっているが、類似団体は2004年度55,578円と比較し2006年度は54,819円で減少しているのに対し、南相馬市は2004年度69,611円と比較し2006年度74,792円で5,181円の増となっている。その差も2004年度14,033円から2006年度19,937円に拡大している。

(3) 歳入・歳出総額等
歳入・歳出総額等の推移は、歳入・歳出総額は南相馬市、類似団体とも2004年度を最小値として2005年度で大きく増加しており、その比較では歳入総額・歳出総額とも類似団体を大きく上回っている。これが南相馬市の人口1人当たりの歳入・歳出合計が類似団体を上回る結果につながっている。標準財政規模は、過去5年間類似団体を上回っており、最小値である2004年度以降、2006年度まで増加している。


5. 財政指標分析

(1) 実質収支・実質収支比率
 実質収支・実質収支の推移は、一般的に自治体の黒字・赤字団体の判断基準とされる実質収支はプラス、標準財政規模に対する黒字の比率を表す実質収支比率は、望ましい黒字の水準といわれる3%~5%を満たしている。実質収支比率の類似団体比較では、2002年度・2003年度・2005年度は類似団体を下回っているが、2004・2006年度は類似団体を上回っている。

(2) 財政力指数
 自治体の財政的自立度を示す財政力指数は、1.00に近いほど「財政の自立性が高い」となるが、0.67~0.68の一定数値で推移している。財政力指数は、基準財政収入額を基準財政需要額で除して計算されるが、税収減等による基準財政収入額減に対応した基準財政需要額減により、財政力は一定に保たれている。類似団体比較では、僅かながら類似団体を上回っている。

(3) 経常収支比率
 財政構造の弾力性を判断する経常収支比率は、類似団体を下回っているが、2002年度78.0%から年々上昇し、2006年度では87.7%となっている。市で妥当とされている75%からは高い数値となっているが、2005年度における市の全国平均90.3%は下回っている。類似団体比較では、類似団体を下回って推移している。
 経常収支比率の推移は、経常一般財源等が最小値である2003年度16,339,313千円と比較し、2006年度は541,192千円増の16,940,505千円であるのに対し、経常経費充当一般財源等は増加し続け、2007年度は15,644,038千円で、その差が縮小(経常経費充当一般財源等の増加)していることが経常収支比率上昇の要因となっている。
 経常経費充当一般財源、経常一般財源の推移であるが、経常経費充当一般財源等の金額の推移は、増加し続けている。総額では2002年度14,331,785千円と比較し、2006年度は1,312,253千円増の15,644,038千円となっている。義務的経費は2002年度8,047,602千円と比較し、2006年度は1,349,659千円増の9,397,261千円となっており、経常経費充当一般財源等の増加は義務的経費の増加であると言える。
 個別推移は、人件費、扶助費、公債費とも増加し続けている。人件費は2002年度と比較し、2006年度は271,281千円増の5,031,606千円、扶助費は628.154千円増の1,247,193千円、公債費は450,462千円となっている。その他物件費も2002年度と比較し、338,821千円増の2,483,094千円となっている。
 比率は、義務的経費が2002年度43.8%から2006年度では52.7%に上昇し、うち人件費は2002年度と比較し、2.3ポイント上昇の28.2%、扶助費は3.6ポイント上昇の7.0%、公債費は3.0ポイント上昇の17.5%になっている。その他物件費が2.2ポイント上昇の13.9%となっている。
 経常一般財源等の推移は、総額では2004年以降増加傾向にあるが、2002年度と比較し、2006年度は▲535,604千円の16,949,505千円となっている。地方交付税は2002年度と比較し、466,873千円増の5,180,550千円、その他は579,073千円増の2,271,261千円であるのに対し、地方税は減少し続け、2002年度11,079,244千円と比較し、2006年度は▲1,581,550千円の9,497,694千円となっている。よって、経常一般財源は税収に大きく左右されてきている。

(4) 公債費比率・起債制限比率
 公債費比率は年々上昇し、2002年度11.9%から2006年度13.9%となっている。類似団体比較では、類似団体を下回って推移している。2005年度の市平均15.5%も下回っているが、要注意である15%に近づきつつある。
 起債制限比率は、類似団体を下回って推移し、数値としては大きな変動は見られないものの、2002年度と比較し、2006年度は0.4ポイント上昇の9.0%となっている。
 なお、両数値が上昇傾向にある場合、今後の公債費負担が増える可能性を示していることから、その数値の動向を注意しなければならない。

(5) 単年度収支・実質単年度収支
 実質収支、単年度収支、実質単年度収支の状況は、単年度収支は2002年度から2006年度まで黒字となっている。これは、前年度の繰越財源の控除後も余剰財源が発生し、翌年度に繰り越す財源に余裕があることを表すことになる。実質単年度収支は、2002年度から2005年度までは黒字、2006年度は赤字になっている。
 なお、これら収支は、単年度のみで評価できるものではなく、かつマイナスは過去5年間で初めてであることから、今後のマイナス動向と年度間収支調整等を踏まえて評価する必要がある。

(6) 積立金の状況
 積立金の状況は、2003年度からは積立金の取り崩しが積立金を上回っている。2005年度は積立金885,327千円、取り崩し1,156,509千円で最高値になっている。積立金残高は2004年度6,331,605千円から以降増加し、2006年度は1,596,664千円増の7,928,269千円となっている。
 なお、積立金の内訳では、財政調整基金・減債基金は減少し続け、2002年度3,249,272千円と比較し、2006年度は▲1,717,677千円の1,531,595千円になっている。逆に特定目的基金は、2004年度以降増加している。積立金の類似団体比較では、過去5年間類似団体を上回っている。

(7) 地方債現在高
 地方債現在高は増加し続けており、2002年度26,906,244千円と比較し、2006年度は6,231,776千円増の33,138,020千円となっている。
 図表①は地方債現在高を標準財政規模で除した地方債残高比率である。一般的には200%を超えると危険水準と言われているが、比率は年々上昇し、2006年度は196%の高水準に達している。また、類似団体比較においても、地方債現在高は過去5年間類似団体を上回り、増加し続けている。


図表① 地方債残高比率

年度 地方債残高 標準財政規模 地方債残高比率
2002 26,906,244 17,590,203 153%
2003 27,913,486 16,479,950 169%
2004 28,743,416 16,361,484 176%
2005 31,809,029 16,591,542 192%
2006 33,138,020 16,897,153 196%

 また、潜在的な負担と言われる債務負担行為は、減少し続けており、2002年度7,283,503千円と比較し、2006年度は▲1,510,639千円の5,772,864千円となっている。しかし、類似団体比較では、減少し続けているものの、過去5年間類似団体を上回っている。

(8) 実質公債比率
 2005年度決算から導入された実質公債比率は、2005年度15.8%から2006年度は0.6ポイント上昇の16.4%となっている。なお、実質公債費比率は昨年成立した自治体財政健全化法における自治体の財政状況を判断する1指標であり、今後も十分注意が必要である。類似団体比較では、2005年度・2006年度とも類似団体を上回っている。


6. 終わりに

 以上が、決算カードを基に行った南相馬市の決算分析の概要である。南相馬市は類似団体と比較して歳入規模が大きいというメリットがあるが、固定資産税の減収を要因とする地方税の減収がそのメリットを低下させ、財政指標においても経常収支比率、公債費比率などが上昇傾向にあり、新たな指標である実質公債費比率も上昇傾向を示すなど、厳しい財政運営が迫られてきているのは事実である。また、地方債現在高が類似団体を上回る水準で年々増加し、2006年度の地方債残高比率が危険水準である200%に近づいていることは、大変危惧されるところである。今回の財政分析は一側面であり、歳入・歳出増減の要因等を更に一歩踏み込んで調査し、それをもとに多方面から各財政指標を詳しく分析する必要がある。
 地方分権が推進される中、地方財政の確立を積極的に求めるとともに、「質の高い行政サービスを提供するために、財政をどのように使うか?」は私たちに与えられた至上命題である。よって、組合にも自治体財政のチェック機能が求められるところである。2007年度から税財源移譲分が市町村民税に上乗せされたが、自治体財政への影響を見据え、組合としてのチェック機能を十分役割を果たせるよう、今後も継続的に財政分析に取り組んでいきたい。