【自主レポート】 |
第32回北海道自治研集会 特別分科会 夕張からわがまちの財政を考える |
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1. はじめに 藤岡市は2006年度に、逼迫する財政事情の健全化のため、諸支出の削減を中心とした財政健全化計画を策定した。その中に、2007年度~2010年度の3ヵ年で、管理職手当と職員基本給の削減が盛込まれている。果たして藤岡市の財政状況は、職員給与の削減を行わなければならないほど逼迫しているのだろうか?
2. 給与削減の実態 藤岡市では、2007年度~2009年度の3ヵ年にわたり、管理職手当を部長・参事・課長職で30%、課長補佐・係長で25%、カットされており、当初は2008年、2009年度の2年度に渡り、全職員の給料の3%をカットすることとしていたが、市職労の粘り強い交渉の結果、職員基本給のカットは2008年度のみと変更された。 3. 財政比較 では、給与削減が実施されている藤岡市・桐生市・沼田市と、当市と同じ西毛地区で予算規模などもさほどの違いのない、富岡市・安中市を例に2006年度決算を検討してみたい。第1図はこれらの自治体の2006年度決算で示された一般財源の歳入額と、基準財政需要額・住民基本台帳に示された住民人口を表したものである。いずれの自治体も、その自治体が市民生活のための標準的施策を実施するために必要とされる財源(基準財政需要額)を、賄える一般財源をもっている。 |
一方歳出については第3図に示すとおりである。藤岡市では、性質別歳出全体に占める扶助費、及び補助費、普通建設事業費の割合がやや高めで、職員給の比率は最も低くなっている。また、この中でも全人件費のうち職員給与とそれ以外の人件費に関しての相関図は第4図に示すとおりで、わが藤岡市は、安中市についで特別職報酬等を含む人件費総額に対する職員給与の割合が低くなっている。なお、この値は管理職手当の削減が行われる以前の2006年度のものであり、市長・副市長・市議などの特別職の給与・報酬削減が職員給与の削減と時期を同じくして実施されているが、その時点で話題となったとおり、これら特別職の給与・報酬削減率は、一般職職員の給与削減率には及ばない事実があるため、現在はこの値はさらに職員にとって悪化しているといえる。 |
なお、藤岡市職員のラスパイレス指数の変遷と、2007年度当初のラスパイレス指数は第5図及び表2に示すとおりである。地方公務員の賃金水準を表す一つの指標であるラスパイレス指数は、藤岡市においては常に低い値となっており、特に旧鬼石町を編入した2006年度以降は、県内でも最低水準にある。 |
第5図 藤岡市のラスパイレス指数変遷図 |
表2 07年度ラスパイレス指数表
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次に財政指標を比較してみたい。第6図に示すとおり。藤岡市は自治体の借金である地方債の残高は、比較自治体の中でも多いほうではない。勿論比較自治体の財政規模が異なるため、これだけで藤岡市の財政状況が悪くないとは言えないが、これに公債費に占める一般財源の値を示した公債費負担比率をみると、桐生市はレッドゾーンとされる20%台にかなり近づいており、さらに藤岡市を除く残りの3自治体も警戒ラインとされる15%を超えている。さらに、自治体の財政力を表した財政力指数と、財政の硬直化を表した経常収支比率を見てみると、現在職員給与削減を実施している当市、桐生市、沼田市のうち藤岡市を除く2自治体は経常収支比率が100を超えており、経常一般財源のみでは人件費などの経常経費が賄えておらず、財政状況が硬直化しつつあることが理解できる。 また、ラスパイレス指数が当市より高い富岡市も、99.2と経常収支比率は100に近く、その観点から言えば当市の財政状況より硬直化が進んでいるといえる。 |
第7図 経常収支比率と財政力指数 |
4. まとめに代えて ここまで見てきたように、藤岡市の財政状況は他の自治体に、さらには職員給与をカットしなければならないような自治体に比べ、決して悪い状況にあるとは言えない。むしろ、第8図に示すとおり職員一人当たりが抱える市民人口の数は他の自治体が多くても140人程度であるのに、162人と圧倒的に多く、受け取る給与額は337,500円と決して高くはない。さらにもっと言えばよしんば藤岡市の財政状況が逼迫した状況にあるとしても、その原因は決して職員給与にあるのではないことは明白である。 |