【自主レポート】 |
第32回北海道自治研集会 特別分科会 夕張からわがまちの財政を考える |
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1. はじめに 国の進める三位一体の改革により、地方自治体が大きく依存している地方交付税は年々減少してきています。さらに、地方の長引く景気低迷や過疎化・少子高齢化の進行による生産年齢層の減少からも地方税は伸び悩んでおり、地方自治体は極めて厳しい財政運営を強いられている状況にあります。一方、行政に対する住民のニーズの多様化・高度化は、今後ますます増加していくものと思われ、歳入の減少行政需要の増大という相反する事象への対応のあり方が問われています。 2. 歳入の状況 本市の普通会計の歳入総額は2004年度28,997百万円、2005年度、29,530百万円、2006年度28,986百万円と29,000百万円前後で推移しています。歳入の大きな比率を占める、地方交付税、地方税、国県支出金、地方債について見ていきたいと思います。 |
(1) 地方交付税 (2) 地方税 (3) 国県支出金 (4) 地方債 |
3. 歳出の状況 本市の普通会計の歳出総額は、2004年度27,623百万円、2005年度28,306百万円、2006年度27,497百万円と28,300百万円前後で推移しています。2006年度の歳出総額における性質別構成比【図表3】を見ると、人件費22.5%、投資的経費19.2%、公債費18.5%と突出しています。その中でも義務的経費の人件費と公債費、また、集中改革プランで縮減が明記されている物件費・補助費等、特別会計と関係の深い繰出金に着目してみます。 |
(1) 人件費 |
(2) 公債費 次に公債費が高い構成比を示す要因としては、合併前の町村時代、景気対策や地域振興策として積極的に実施してきた公共事業があげられます。2004年度~2006年度における公債費は5,000百万円を超え【図表5】、類似団体と比較しても約2倍の額となっており、本市の財政を大きく圧迫しています。また、集中改革プランにおいて過去の起債の繰上償還を行うこととしており、このことも短期的に公債費を増加させる要因であると思われます。 |
しかし、【図表2】のとおり、毎年度、地方債残高は減少してきていること、起債シーリングを設定していることもあり、中長期的には公債費を圧縮することができるのではないかと思われます。 また、起債シーリングを設定することにより、公共事業の選択が図られるようになります。計画的に公共事業を実施していかなければならなくなり、結果として普通建設事業費の過剰な支出を抑制することとなります。 (3) 物件費・補助費等 |
(4) 繰出金(公営企業への出資金等を含む) 上水道事業、下水道事業などへの繰出は整備費や公債費を補てんする目的で支出されています。病院事業への繰出は、公債費や救急医療の確保、高度医療に要する経費の補てん分などです。これらの会計は独立採算ではありますが、公共性という観点から、一般会計と同様に住民のある程度の負担は必要であると考えられ、一般会計からの繰出基準が総務省から示されています。 繰出基準を超えた繰出金は、一般会計を大きく圧迫することになるため、一般会計の財政負担を軽減するためには、特別会計の健全度に注視し、一層の健全化にも積極的に取り組まなければなりません。 病院事業を例にすると【図表8】、一般会計からの繰入金は、2005年度167,550千円、2006年度167,968千円であり、普通交付税の基準財政需要額への算入額がそれぞれ、171,451千円、166,152千円となっており、おおむね操出基準に則った繰出がされているといえます。また、資金収支差額がある程度の金額を保持しているため、安定した事業継続が可能であり、赤字補てんのための繰出は必要ないことがいえます。 また、病院事業、上水道事業等の公営企業についても集中改革プランを策定し、事業の効率化、より充実したサービスの提供に向け取り組んでいるところです。 |
4. 基金の状況
歳入の状況でも触れましたが、本市において普通交付税が本来の姿となる2020年度には公債費や人口減少を加味し約4,300百万円の減額が予想されています。また、2015年度からは、本来の姿に近づけていくために5年間をかけて交付税を徐々に減らしていく「階段落ち」が始まります。全国的にもこれほど交付税が減少する自治体は少なく、今後の財政運営を考えると基金を積み立て財政基盤を強固にしておく必要があります。 |
5. 財政指標の状況
自治体の財政状況を判断するために様々な指標がありますが、2006年度における本市の指標をいくつか見てみます。 (1) 財政力指数 0.27 (2) 経常収支比率 97.0% (3) 実質収支比率 9.0% 6. まとめ このように、様々な項目を見てきましたが、本市の財政状況は合併前の7町村の財政状況をいまだ引きずり、スケールメリットを生かした財政力強化や行政運営は実現できていません。それどころか、国のさらなる財政制度改革や景気低迷などにより、一層、自治体運営に厳しさが増しているように思われます。 |