【自主レポート】 |
第32回北海道自治研集会 特別分科会 夕張からわがまちの財政を考える |
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1. 下水道の役割と日出町における整備状況 戦後の急激な経済成長や生活様式の変化の結果、川や海の水質汚染問題がクローズアップされ、水質保全の重要な対策として下水道が位置づけられた。また現在では、水質汚濁の防止のほか、(1)悪臭や蚊・ハエなどの発生の防止、(2)伝染病の予防及び大雨による浸水被害の防止、(3)資源の有効活用などその役割は大きなものとなっている。現在では、欠くことのできない都市基盤整備の一つであり、時代の変化とともに多様な役割を果たしていると言える。
2. 元利償還金の返済と繰上償還 下水道整備事業における財源は、国からの補助金、起債(借入金)及び一般財源である。1980年代後半から1990年代前半頃に行った整備事業の財源とした起債の借入利率が年利5%台から7%台と高かったために、その後の元利償還金の支払が重くのしかかっている。借入金残高についても、漁業集落排水事業及び農業集落排水事業については、整備事業が完了しているため毎年度着実に減少しているが、公共下水道事業については、平成のバブル景気が終わり、その後の景気対策として、国が地方に対し積極的な公共投資を推し進めたことなどから、整備工事を積極的に進め、2003年度末には45億円にまで膨らんだ。しかし、ここ数年は町の財政が厳しいことを踏まえ、整備事業費を抑えていることからやや減っている。 |
公債費の負担が大きいのは日出町だけではなく、全国的な問題であるといえる。そこで、国は公債費負担の軽減対策として、2007年度に「公的資金補償金免除繰上償還等実施要綱」を作成し、地方公共団体を対象に2007年度から3年間で5兆円規模の公的資金の補償金免除繰上償還を行うこととした。「公的資金」とは、旧運用部資金(財政融資資金)、旧簡易生命保険資金、公営企業金融公庫資金のことを指す。本来、繰上償還する場合は、償還期限までの利子相当額を「補償金」として支払うことになっているが、今回3ヵ年の期間限定でその「補償金」を支払うことなく繰上償還することができるようになった。 3. 下水道使用料の引き上げと繰入金の削減 公共下水道会計については、使用料の引き上げも大きな問題である。現在日出町の使用料単価(注3)は、2006年度で129円/m3であり普通交付税算定の目安となる150円/m3を下回っており、2008年度以降この基準を超えていない場合は、下水道高資本費対策にかかる交付税措置(注4)に該当しなくなる。そうなると、町の税金からの繰入金が増えることになる。一般会計からの繰入金が多くなると、本来の行政サービスに財源がまわらなくなる恐れがあり、下水道の使用できる住民と使用できない住民との負担の不公平を生むことになる。また、使用料回収率(注5)が低く(2006年度で31%)、全国平均(約62%)の半分である。つまり、使用料でまかなうべき維持管理費や資本費(元利償還金)の割合がかなり低いといえる。また、国(総務省)は一定の要件を満たす場合にのみ資本費の一部について一般会計からの繰入を認めており、その基準も2008年度より「月20m3使用した場合の下水道使用料が3,000円以上」(150円/m3)と通知している。 |
4. 下水道事業の今後について 汚水処理を行う浄化センターについても、供用開始後20年以上経過し、耐用年数15年と言われている処理系列(水槽)の老朽化や下水道接続世帯増加に伴う処理能力の限界等から、施設の増改築が必要かつ急務となっている。これを2008年度から4、5年で実施する予定であり(2008年度に調査設計委託、2009年度から増築、2011年度から改築予定)、事業費も毎年1億円から2億円必要となる。国庫補助金に加え起債を財源とするため、起債残高及び元利償還金も増加することが予想される。 |