【自主レポート】

第32回北海道自治研集会
特別分科会 夕張からわがまちの財政を考える

津久見市公共下水道事業財政分析


大分県本部/津久見市自治研・自治体自立部会

1. はじめに ~津久見市の財政状況~

 近年、津久見市の財政は非常に厳しい状況にあり、2004年に試算した財政収支予測では、2008年度に本市の財政は破綻し、財政再建団体に陥る可能性を示していました。この危機を乗り切るため、2004年度から2008年度までの5年間、収支の差の解消はもちろんのこと、将来にわたって持続可能な財政運営の確立を目指して、"最小の経費で最大の効果"といった視点で、2004年10月に『津久見市緊急行財政改革実行計画』を策定し、あらゆる経費をゼロから見直し、徹底的な行財政改革に取り組んできました。
 計画実施から既に4年が経過し、2008年度が最終年度となっています。2004年度から2006年度までは、改善目標を上回る成果があがっていますが、今後についても決して楽観できる状況ではありません。逆に、これまで以上に厳しくなることが予想されています。
 市民サービスの極端な低下や負担の増加等、市民に多大な痛みが伴うことを避けるためにも、2009年度以降についても新たな実行計画が必要であり、今年度中の策定に向け、取り組んでいるところです。


今後の財政状況の見通し

(単位:百万円)

【財政指標等】 (単位:百万円)
津久見市財政健全化計画から抜粋

2. 公共下水道事業の概要

(1) 整備状況
 津久見市では、1976年度より公共下水道の整備を行っています。
 2007年度末時点での普及率は47.6%(4,164世帯、10,256人)であり、大分県平均を上回っています。それに対し、水洗化率は65.3%(2,537世帯、6,700人)となっており、前年度より1.7%伸びているものの大分県平均と比較するとまだまだ大きく下回っています。


【普及率】全人口(行政人口)に対する公共下水道を利用可能な人口の割合
普及率 津久見市 大分県 全国
2006年度末
47.1% 41.3% 70.5%
2007年度末
47.6%

【水洗化率】公共下水道を利用可能な人口に対する実際に水洗化して利用している人口の割合
水洗化率 津久見市 大分県 全国
2006年度末
63.6% 81.8% 92.9%
2007年度末
65.3%

 2004年度排水設備実態調査によれば、水洗化が進まない要因として接続費などの費用負担のほか高齢化や単独浄化槽設置により公共下水道を必要と感じていないことが挙げられています。
 津久見市では、公共下水道だけでなく合併浄化槽による水洗化率も低く、2006年度末における生活排水処理施設接続率は44.1%(大分県内14位)となっており、地球温暖化防止やごみ問題などに比べると、水質汚濁などに対する環境意識はまだまだ低いといえます。


(2) 事業費
 建設改良費は、1986年度から1992年度までに行われた処理場建設をピークに徐々に減少しています。ただし、2001年度から2007年度まで処理場増設工事を行ったため一時的に増加しました。


【建設改良費】

 起債残高については、事業開始時から緩やかに上昇を続け、その後、高水準で推移してきましたが、2005年度から起債発行額を上回る償還を行い、徐々に減少しつつあります。


【起債残高】


【起債償還金】


 建設改良費は減少していく反面、起債償還額が年々増加しているために総事業費は増加傾向にあります。それに伴い一般会計からの繰入金が増加していて、一般会計に対して大きな影響を与えています。


【総事業費及び歳入状況】

【一般会計繰入金】


3. 今後の課題

 今後の財政上の課題は、いかにして一般会計からの繰入金を少なくしていくかということです。そのためには事業費の抑制はもちろんのこと、歳入の確保がもっとも重要となってきます。歳入確保には水洗化率の向上が不可欠ですが、概要で述べたように津久見市の水洗化率は65.3%と低く、その一因は『水質汚濁などに対する環境意識の低さ』にあるといえます。したがって、水洗化率の向上には、財政面と環境面、両面からの視点に立って市民に訴えていくことが必要です。

  水洗化率の向上=歳入確保+水質保全

 しかしながら、水洗化率を向上させ、歳入を確保しても、事業が継続される限りは、設備の維持管理費や起債の償還など多額の歳出があり、繰入金がゼロになることは考えられません。


4. まとめ

 現在、津久見市は急激な過疎傾向にあるため、今後の人口動態等も踏まえながら費用対効果の検証を行うとともに、市の財政状況を踏まえたタイムスケジュールの検討や、津久見市全体での汚水処理計画の再構築が必要です。具体的には、下水道整備エリアの見直しや合併浄化槽整備の推進などが必要になってくると考えられます。
 地域の特性に見合った生活排水処理の推進を行うことで、きれいな海と、健全な財政運営を次の世代へ引き継いでいかなければならないと思います。