【自主レポート】

第32回北海道自治研集会
特別分科会 夕張からわがまちの財政を考える

中津市の国体開催事業を検証する


大分県本部/中津市職員労働組合・自治研部

1. はじめに

 国民体育大会は戦後の荒廃と混乱の中、スポーツを通じて国民に勇気と希望を与えようと、1946年に第1回大会が京阪神地域を中心に開催されました。大分県では、1966年に「剛健国体」をテーマに第21回大会が開催され、今回2回目となる第63回国民体育大会「チャレンジ おおいた国体」が9月28日から開催されます。
 中津市では、2004年7月2日に開催された第63回国民体育大会中津市準備委員会設立第1回総会において次のように決定し、正式競技として空手道(全種)、サッカー(成年男子・女子)、バスケットボール(少年女子)、デモンストレーション競技としてウエイクボード、サイクリングが開催されます。

(1) 基本方針
 大分の最西北端、山国川を挟み福岡県と接し、また一万円札の顔、福沢諭吉が育った中津市は、第63回国民体育大会の開催にあたり、8万6千市民の英知とエネルギーを結集し、簡素な中にも魅力あふれる大会の開催をめざす。
 また、この国民体育大会を契機にスポーツの振興のみならず、市民が今後の心の豊かさを感じあえる活力あふれる都市づくりを推進する。

(2)実施目標
① 県及び関係諸機関・団体と緊密な連携と協力を図り、8万6千市民の力を結集し、大会の運営に当たる。
② 国体の簡素・効率化の趣旨に沿い中津市にふさわしい魅力と活力に満ちた大会の開催をめざす。
③ 市民が生涯にわたり、気軽にスポーツに親しむことのできる環境づくりを進めると共に、スポーツのより一層の普及・振興を図る。
④ 全国から大会に参加する人々を温かい心で迎え、友情とふれあいの輪を広げると共に、本市の「人・歴史と伝統・文化」等を全国にアピールする。

2. 国体開催競技日程

 中津市における開催競技は、次のとおりです。



3. 国体開催に伴う事業費

 国体開催に伴う事業費の総額は、下記の表のとおりです。



4. 財源内訳

 上記事業費の財源内訳は、下記の表のとおりです。



(新設された総合体育館)

 上記の表で事業費及び財源内訳を示したが、2003年度から2008年度までに国体関連事業として約50億円となっています。(うち国県補助金16.3億円、起債23.2億円、一般財源10.7億円)
 国体の開催は持ち回りであるため、交付税措置がほとんどないことから、一般財源とあわせて起債償還を含め大きな金額が支出されることとなります(但し、合併特例債については、その償還について70%交付税算入措置がされることとなっています)。これまで中津市では、行財政改革の中で事業費等の削減を行いながら健全な財政運営に努めています。既に織り込みずみとはいえ、国体関連事業費が少なからぬ財政負担であることにまちがいありません。
 なお国体関連事業費のうち体育館新設など競技場整備や道路整備などは、国体後もスポーツ振興や地域の生活利便に役立つものであり、国体の効用として受容できる面もありますが、一方国体がなければ発生することのなかった財政支出でもあります。したがって事業費の検証にはさまざまな角度から見る必要があります。

5. 予定される参加者数

 国体開催に伴う参加者数は、以下の表のとおり延べ約4万人が見込まれています。


○正式協議

○デモンストレーション競技

6. 国体開催に伴う波及効果

 国体開催に伴う波及効果については、国体事務局は下記のとおり見込んでいます。

(1) 国体の波及効果
 国体を開催することによって、①青少年の健全育成 ②施設、環境の整備充実 ③市民意識の高揚 ④地域のスポーツの普及振興 ⑤競技力の向上 ⑥地場産業の発展に効果があると考えられる。

(2) 国体の経済効果
 国体を開催することにより、①観光施設の収益・お土産・宿泊・輸送交通関係・飲食関係に経済的に効果があると考えられる。

(3) 数値で見る波及効果
① 需要発生額
 ア 競技施設整備費   中津サッカーグランド         66,796千円
             禅海ふれあい広場           88,008千円
             中津市総合体育館         1,422,350千円
 イ 大会運営費                       230,000千円
 ウ 大会参加者の消費支出
    4,477,000×2,310人(市来会者)/32,000人(県来会者) 323,183千円
 エ 需要発生額の合計                   2,130,337千円
② 波及効果
    2,130,337千円(需要発生額)×1.59(生産誘発倍率)  3,387,236千円

7. 民泊・ボランティアなどの市民参加

(電線地中化ですっきり整備された中津駅前通り)
 国体を実施するにあたって、民泊関係については、サッカー女子の選手及び関係者などを民泊で受け入れていただく[中津市民泊協力会(16協力会)」が結成され、民泊に160戸(1戸あたり2人)320人を受け入れることになり、献立調理講習会・衛生指導講習会・調理実習会などに多くの方が参加しています。また、ボランティア関係では、施設周辺草刈、花いっぱい運動、駅前受付係、会場案内係等約1,800人の参加が見込まれており、市民参加による意識向上が図られると考えます。

8. ダイハツ九州アリーナ(総合体育館)の今後の活用

 国体終了後、施設の活用が大きな課題となります。ダイハツ九州アリーナの管理については、指定管理者で管理していくことになりますが、その施設を維持管理するためには年間数千万円かかると見込まれています。命名権スポンサー料として、1,800万円(年間600万円の3年間)が歳入として入るものの、管理費のほとんどが一般会計からの支出となり、新たな負担を生じることになります。

9. おわりに

 国体開催に伴って経済効果・市民意識の向上等、プラス効果はあるものの行財政改革のこの時期に約50億円の事業費を投じることは、今後の財政運営に少なからぬ影響があると考えられます。また、国体に関わる職員が約30人(臨時職員含む)で業務を行っていますが、その分一般行政の職員に大きくしわ寄せが来ているのも事実です。
 組合としては、国体関連事業費の実態把握と行政負荷について、国体事業の検証が必要であるという立場からこのレポートをまとめました。