【自主論文】

第32回北海道自治研集会
特別分科会 夕張からわがまちの財政を考える

「ふるさと納税」制度に関する仙人と弟子の会話より


鹿児島県本部/加治木町職員組合 内村美智浩

 ここは、鹿児島県は加治木町のとある山の中。なにやら話し声が聞こえてきましたよ……。
弟子 ねぇねぇねぇねぇ仙人さま 鹿児島県の伊藤知事が「県と市町村が一体となって県が窓口になって「71億円」も集めてその6割を市町村にあげてやるんだ」なんて、かなり偉そうに言ってるみたいですけど。それって、一体なんのことなのですか?
仙人 ほほ~ぅ。最近話題になってることじゃな。うむ、それは「ふるさと納税」というものじゃ。
弟子 「ふるさと納税」???「ふるさと」に「納税」ってなんですか???
仙人 一言で言うと、例えば東京に加治木町出身の人が居たとするじゃろ。その者が加治木町に寄附をすると。住民税や所得税が一定限度まで控除されるという仕組みのことじゃ
弟子 ふ~ん、じゃぁ東京の人でも加治木町に納税できるんだねぇ!! 加治木町にとっては新しい財源になるんだから大歓迎できる制度じゃないですかぁ すごいなぁ~ 考えた人偉いな~ きゃっ♪
仙人 喝~つ!! そうやってなんでも新しいものや珍しいものを見るとすぐに飛びつくのが、おぬしの悪いところじゃ~っ 喝~つ!!
弟子 ずみまぜん~せんにんさまぁ~~
仙人 あの悪名高き自民党が選挙の公約とか言って導入した制度なんじゃから。よく調べてみると「?」なことが必ずあると思わんといかん 自民党という政党については、あれだけ油断するなよと教えたのを忘れたのかぁ 喝~つ!!
弟子 ひぃ~っ まさか自民党の公約だったなんてしらなかったものですから~ ひぃ~っ
仙人 日頃から「自民党」という言葉を聞いたら先ず「怪しいな」と思うことが肝要じゃ。「大歓迎」なのかどうかということについても、もう少し調べてから言うべき言葉じゃの。さてさて、「ふるさと納税」についてじゃが、中央と地方の格差が拡がっておるのは、よく知っておるな。
弟子 はい 仙人さま。東京ではすごく景気がいいなんていってるけど、加治木町なんてちっとも景気がよくならないし、聞くところによると役場の職員なんていっつも「給料がたけすぎわっ」(給料が高すぎる)とか「職員のちんがらっ減らせよ」(職員をごっそり減らせ)とか言われてるのに、実際は仕事もすごく増えてるのに給料もあがってないって可哀想過ぎだよ……。
仙人 うむ そうじゃ 加治木町だけじゃなく、地方ではどこも一向に景気が回復しない。景気が回復しないと自治体の歳入も増えんのじゃ。そこで、この格差の是正を推進しようと、西川一誠という福井県知事が2006年に日本経済新聞に「故郷寄付金控除」の導入を提言したのが「ふるさと納税」の始まりと言われておってな、ふるさと納税の発案者とも言われているようじゃの。西川さんじゃが、総務省の「ふるさと納税研究会」の委員にも選任されて、賛成の立場から積極的に発言をしたということじゃ。この「ふるさと納税研究会」についてもどうも胡散臭いんじゃ。この研究会は、2007年の5月に当時の総務相じゃった菅義偉氏が創設を表明したものじゃが、実はその年の7月に参院選があったので、安倍政権が地方重視の姿勢を強くアピールするという思惑もあってな~、特にこの制度の導入が駆け足で進んだと言われておる。選挙の結果は、自民党の大敗だったのじゃが。はぁ~自民党がこりゃこりゃまたなんかやりおるぞぉ~ と思っとったら案の定 6月に1回目の研究会を始めたのはよいが、10月にはもう「ふるさと納税研究会報告書」なるものを提出、明けて2008年の1月に法律案が衆議院に提出されたのじゃから、わしもかなわぬ早業で決まった制度だったのじゃ。
弟子 それにしても仙人さまもかなわぬ早業って、それだけ急がないといけないようなすっご~く大事な問題だったんだね~っ♪
仙人 喝~つ!! そうやってなんでも急いてやろうというのが大事なことだと思ってしまうのも、おぬしの悪いところじゃ 喝~つ!! 衆議院では、なんでも自民党のやりたい放題じゃ 近頃は、自民党が言い出したら最後、なんでもぽんぽんぽんぽんとポン菓子のように決めておるではないかぁ おまえは、そういうこともわからんのかぁ~ 喝~つ!!
弟子 ずみまぜん~ぜんにんざまぁ~~~っ でもポン菓子はおいしいそ~っ
弟子 ところで、仙人さま? さっきの西川さんってどういう人なのですか?
仙人 おおっ 興味があると見えるな? さて、「西川一誠」なる人物の経歴じゃが、福井県出身。京都大学法学部卒業後、自治省入省。茨城県地方課長、香川県総務部長、自治省市町村税課長、企画課長、国土庁官房審議官を歴任。福井県副知事を7年務めた後に福井県知事に就任して現在2期目じゃな。まぁ~典型的な官僚あがりの知事じゃの。そういえば、鹿児島県の伊藤知事の経歴を知っておるか?
弟子 知りません……
仙人 うむ、「伊藤祐一郎」1947年鹿児島県出水市の出身。東京大学法学部卒業後、自治省入省。自治省行政局公務員部給与課長、行政局振興課長、財政局地方債課長、行政局行政課長、自治省大臣官房審議官、総務省大臣官房審議官、総務省大臣官房総括審議官等歴任。2004年7月から鹿児島県知事に就任しておる。この者も典型的な官僚あがりだけあって、しれ~っとうそぶくのはやはり得意のようじゃな。職員の賃金カットを最初は3年間だけなんて約束してた筈なのじゃが、突然一方的に延期したという話にはびっくり仰天驚いたの。さすがは官僚あがりじゃ。霞ヶ関の官僚が作ったどうしようもない制度の責任をひたすら背負って、住民に怒られながらも必死に説明しておるのはいっつも市町村の職員じゃ……。官僚たちは、自分たちが直接住民に説明責任を負うということがないだけに、やりたい放題で始末が悪いのじゃ……。
弟子 ところで仙人さま、自民党の人が「ふるさと納税をすると税金がものすご~く安くなるよ」って言ってたけど、ほんとかなぁ?
仙人 またそのような戯れ言に惑わされおって、そのようなことではいかんと申したではないか じゃが5月から始まった制度ということもあって情報が少ないというのも事実じゃ。
弟子 「ふるさと納税」って名前なのに「ふるさとへの寄附」とも書いてあったり、「納税」と「寄附」って全然意味が違うと思うんですけど……。
仙人 ほほ~ぅ。それは非常に良いところに気づいたの。実は自治体への寄附についてはこれまでも「寄附金控除」という制度があったのじゃが。寄附金控除を受けるというのは、経済的に余裕のある人じゃないとできんものじゃろ。
弟子 そんなことはないですよ。だって、わたしも赤い羽根とか寄附してますし。
仙人 それは、よいこころがけじゃの。で、一体いくら寄附しておるのじゃ?
弟子 大体10円かなぁ~
仙人 う~むむむむ。10円では寄附金控除は全く受けられん。なぜなら寄附金控除の計算方法は、このようになっておるからの。
  所得金額の40%又は寄付金の額のいずれか少ない金額-5,000円=寄附金控除額
弟子 ああぁ 最低でも5,000円以上寄附しないとだめなんですね。あああああっ
仙人 そういうことじゃ。それに寄附金控除だと「所得額」から控除されるので、実際の税額に直してみるとほんのささやかな節税にしかならんのじゃ。例えば所得額300万円の人が加治木町に1万円寄附したとしても、税率が10%じゃから、所得税は500円しか安くならんということになるな。
弟子 たったそれだけ だったら寄附なんかしないでおいしいものでも食べた方がいいじゃないですか
仙人 一般的にはそう考えるじゃろうな。寄附金控除にあまり縁がないのは、そういった考えがあるからかもしれんの。そもそも、税金が安くなるから寄附をするという考え方の方が問題じゃ。ただ、お金持ちの人間にとってはそれなりにありがたい制度かもしれんがのぉ……。
弟子 ふぅ~ん。これまでも加治木町に寄附はできたし、それで税金の控除もできていたんですね。でも同じ加治木町への寄附でも新しくできた「ふるさと納税」を使うとどうなるんですか?
仙人 ふむ「寄附金控除」と「ふるさと納税」の違いじゃな。一口で言うと、「寄附金控除」が所得額から控除されるのに対して「ふるさと納税」は税額から控除されることじゃ。
弟子 え? 税額から直接控除するんですか? 寄附した額だけ税金が安くなるということなんですね 加治木町に寄附したら寄附した額だけ税金も安くするなんて、すごく分かりやすいじゃないですか~
仙人 ううむ。「ふるさと納税研究会報告書」を見るとなぜ税額から控除する方法にしたのかが書いてあるぞ。
  ① 税率に捕らわれず政策目的に沿って控除率を設定できること
  ② 高率の税額控除額を設定することで税額軽減効果を高めることができること
  ③ 税額控除方式にする方がその効果を実感しやすく、わかりやすいこと
 となっておるようじゃ。確かに税金のことについては納税者にわかりやすい方がいいと思うのじゃが、本質的な部分を議論することなく、納税者からみて「わかりやすい」ということだけで「ふるさと納税」が決まっているということは大いに問題じゃ そもそも「本人の選択で希望した場所に自由に納税する」という考えはなんじゃ? ぜんぜんなっとらん!!
弟子 なんでも自由にできる それが一番いいことじゃないですかぁ~
仙人 「自由」はよいことじゃ。じゃが、納税は国民の義務だということは誰でもよく知っていることじゃ。
  税金を納めるということは、社会を維持していくための共同事業を行うために共同で意志決定をして、強制力が生じて納税するということじゃ。さればこそ、その使い道については、納税をした者だけでなく、社会の構成員全体が決定権を持っていて、納税者自身が決定権を持つということがあってはならんのじゃ。それが民主主義のルールというものじゃ
弟子 そうですよね、お金持ちがたくさん税金を納めて「俺様が納めた税金だから使い道も俺様がぜーんぶ自由に決めるからな じゃぁまず俺様の家の前の道路を造るのに使え はっはっはー」なんて決めちゃったら、周りの人たちはほんとに困っちゃうなぁ~
仙人 そうじゃろう この「ふるさと納税」という制度は、本質的にはそういう制度だということを心しておくのじゃ 一生懸命働いても賃金が安くて税金を納めることができない人には何にも権利がないということでは、民主主義は成り立たん このような制度が増えてくると困ったことになるやもしれんぞ……。格差社会が生んだ制度にはろくなものがないのじゃが、この格差社会がいかなる力によってもたらされたのか、しっかり考えておかねばならんぞ
弟子 はい、仙人さま!! ところでさっきから気になっていることがあるんですけど……。
仙人 なんじゃ?
弟子 「ふるさと納税」で加治木町に寄附したいのですが、一体いくらぐらい税金安くなるのかな~なんて思って♪
仙人 おまえは、お金のことがそんなに気になるのか?
弟子 もちろんですよ。金は天下のまわりものなんていいますしぃ~~♪
仙人 喝~つ!! 金で買えんものはいくらでもあるわーーーーーっ!! 喝~つ!! 喝~つ!!
弟子 ずみまぜん~せんにんさまぁ~~~っ
弟子 ところで仙人さま。「ふるさと納税」で税金がいくら安くなるのか計算しようと思って、鹿児島県のホームページを見てるんですけど、それがさっぱりわからないんですよ……。
仙人 どれどれ、見せてみよ……。ううむ、なんじゃ? このモデルケースは? 4人家族で扶養が3人うち子供1人は特定扶養とは どうみても家族のために一番お金のかかる家庭ではないか こんな家庭が5万円も寄附をするとは到底思えんがのぉ~。それになんじゃ? 「なお、住民税の控除については、お住まいの市区町村にお問い合わせください」というのは 結局細かいところまで対応するのは面倒だし、よく分からないから市町村に聞けということじゃ。やっぱり苦労するのは市町村の職員のようじゃのぉ~。この制度は、税額から直接控除する訳じゃから「わかりやすい」とは、研究会報告書にも書いてあった筈ではないか? まあよい、とにかく計算してみようではないか?
弟子 おおおおおおっ さすがは,せんにんさまですねぇ~。
仙人 いやいや、それはおまえがやるのじゃ。
弟子 はぁ? わたしがですかぁ~?
仙人 そうじゃ。自分のことは自分でやるというのが肝要じゃ。ほっほっほ~
弟子 とほほほほ……
  ~しばらくたって~
弟子 せんにんさまぁ~っ せんにんさまぁ~っ せんにんさまぁ~っ せんにんさまぁ~っ んがぐぐっ
仙人 うるさいのぉ~、それで、宿題はできたのか?
弟子 それが全然わかりませんよぉ~。「ふるさと納税」って「かんたん」で「わかりやすい」ものだって、研究会の人言ってはずなのにぃ~
仙人 ふぉっふぉっふぉっ 何事もそのように実感してもらわねば分からぬものじゃ。そもそも地方税と所得税の基本的なシステムの見直しもせんでおって、「わかりやすい」筈がなかろう。「税金から控除する」ということを単純に「わかりやすい」と読み替えて騙しているだけじゃ。何をもって「わかりやすい」というのかは、人によって違うじゃろ、ゆえに官僚にとっては曖昧で都合のよい言葉なのじゃな。もともとが複雑な税金の計算じゃ、実際に計算しようとするとわからないというのは当然のことじゃ。

わかりやすい表

個人住民税の所得割額293,500円でした。
加治木町に3万円寄附しました。
 内訳
 控除されない額(手出し)    5,000円
 所得税の還付          2,500円
 住民税の税額から控除される額 22,500円
 ふるさと納税で儲けた額    24,500円

弟子 でも、自分なりには作ってみました~。
仙人 ほほぅどれどれ……。
弟子 どうでしょう わかりやすいでしょう えへん
仙人 確かにぱっとみわかりやすいのじゃが。ちなみに5万円寄附したらどうなるのじゃ?
弟子 ほへ? えーと? うーんと? わかりませんよぉ~っ!!
仙人 仕方がないのぉ~。とにかく「わかりやすい」のは全くの嘘で実は極めて「わかりにくい」のがこの制度じゃ。それではひとつずつ考えてみることにしようではないかの……。
仙人 では、まず「控除されない額」と書いてあるがこれは、正しくは「適用下限額」と言われるもので「5,000円」と決められておる。ふるさと納税の額が5,000円以下じゃと控除の対象にすらならんのはこのためじゃ。
弟子 確か「寄附金控除」にもありましたね。
仙人 うむ。寄附金控除の制度は残っておるからの。同額になるのは当然のことじゃ。いずれにせよ、寄附した金額-適用下限額(5,000円)=寄附控除対象額 という計算式が基本となるからの。そこで5万円寄附した場合だと寄附控除対象額は50,000-5,000=45,000円となる。次に「所得税の還付」というところじゃが、「所得税の還付」の額を求めるのに必要なものが「所得税の限界税率」と言われるものじゃ。

税 率 表

   課税所得金額    税率(限界税率)
  1,000円から1,949,000円まで   5%
1,950,000円から3,299,000円まで  10%
3,300,000円から6,949,000円まで  20%
6,950,000円から8,999,000円まで  23%
9,000,000円から17,999,000円まで  33%
18,000,000円以上         40%

弟子 なんですか? その「所得税の限界税率」って?
仙人 「ふるさと納税」の算出に普段あまり聞かない「限界税率」という言葉が持ち出されておるとは、いよいよわかりにくい。簡単にいうと課税所得金額の額に応じて決まる税金の割合のことじゃ。
弟子 そんな~、さっぱりわかんないですよ。もう少し具体的に教えてくださいよぉ~。
仙人 その人の所得税の税率のことじゃ。給料をもらっている人は源泉徴収票というものを持っておるが、「給与所得控除後の金額」-「所得控除の額の合計額」によって求められた「課税所得金額」を所得税の税率表にあてはめるとすぐにわかるようになっておる。
弟子 さっき作った「わかりやすい表」からだとその辺のところは全然わからないですね~。
仙人 そうじゃの。ところで「所得税の限界税率」を10%と仮定して作っておるようじゃが、なぜ10%にしたのじゃ?
弟子 鹿児島県のモデルにも10%って書いてあったし、なんといっても計算が簡単だったからですぅ~~~っ
弟子 仙人さま。5万円寄附したときの表ができました~♪
仙人 ほほぅ どれどれ……。ところでどのように計算したら、このようになったのじゃ?

わかりやすい表(5万円版)

個人住民税の所得割額293,500円でした。
加治木町に5万円寄附しました。
 内訳
 控除されない額(手出し)    5,000円
 所得税の還付          4,500円
 住民税の税額から控除される額 40,500円
 ふるさと納税で儲けた額    45,000円

弟子 はい♪ 仙人さまっ♪
  寄附控除対象額が50,000-5,000=45,000円で、所得税の還付が45,000×10%=4,500円だから残りの40,500円が住民税から控除されるということになります。かんたんじゃないですかぁ~♪
仙人 それでは、100万円寄附したら控除対象額が99万5千円となりうち895,500円が住民税から控除されるということになるのじゃな?
弟子 はい♪ 仙人さまっ♪
仙人 喝~つ!! そのような事がまかり通ったのでは、みんな喜んで寄附するぞい なにせ住民税(所得割)を納税しなくてよくなるんじゃからの 人口の多い所ほど極端に収入がなくなってしまうことになりかねん 人口が多いと住民税による歳入が多くなるというのは、地域の住民が地域社会を維持するための税金であるという地方税の本質から当然のことじゃ 金額の如何を問わず「ふるさと納税」は、地方税の本質から明らかに問題のある制度ということじゃ
弟子 それにしても地方出身者が多い東京や大阪は大変ですねぇ……。
仙人 東京都石原知事は、「何をもって「ふるさと」とするかは、法律で決められるものではなく、住民税で払うのは極めておかしい。税体系としてナンセンス」と言って反対しておるようじゃ。
仙人 ちょっと話がずれてしまったの……。さて、「ふるさと納税」にはこのように住民税逃れを防ぐ方策として「特例控除の上限額」というものが定めてある。「特例控除の上限額」=「住民税所得割額の1割」と決まっておるでのぅ。じゃが、「住民税の税額から控除される額」も「基礎控除」と「特例控除」というものに分かれておって、「特例控除の上限額」は「住民税の税額から控除される額」の「特例控除」に適用されるので要注意じゃ。
弟子 ??????? ほへぇ~????
仙人 目を回してしまったのぉ~難しかったかのぉ~? では式にしてみるぞい
  地方公共団体への寄附金=A適用下限額(5,000円)+B所得税控除額+C住民税基本控除額+D住民税特例控除額+E控除されない額
  これでどうじゃ?
弟子 AとBはこれまでの説明でなんとか分かりますけど……。まずCがわかりません・・・
仙人 Cの「住民税基本控除額」は、寄附控除対象額×10%と決まっておる。
弟子 Cは簡単なんですね。所得税は限界税率で率が変わるのに、住民税は10%で固定ですか?
仙人 そうじゃ。住民税の税率は一律で10%じゃからのぅ。
弟子 問題はDですね~
仙人 Dの「住民税特例控除額」が「肝」じゃ 「住民税特例控除額」は「住民税所得割額の1割が上限」と決まっておるでの。
弟子 ということは、「わかりやすい表(5万円)」の人は、個人住民税の所得割額293,500円×10%=29,350円が上限なんですね。
仙人 そういうことじゃ。ただし、100円未満の端数処理を行う必要があるのでこの場合は、納税者が有利となるように切り上げて29,400円が上限となるのじゃ。
弟子 ふむふむよしよし……。せんにんさまぁ 早速わかりやすい表(5万円)改訂版を作ってみました~♪

わかりやすい表(5万円)改訂版

個人住民税の所得割額293,500円でした。
加治木町に5万円寄附しました。
 内訳
 控除されない額(適用下限額)  5,000円
 所得税の還付          4,500円
 住民税の税額から控除される額
      基本控除額      4,500円
      特例控除額     29,400円
 控除されない額         6,600円
 ふるさと納税で儲けた額    38,400円
 自己負担額          11,600円

仙人 どれどれ~ふむふむ……。よし 合格じゃ
弟子 わーい わーい 嬉しいですぅ~せんにんさまぁ~っ それじゃ早速寄附しに行ってこよ~っと
仙人 ところで、どこに行けばよいのか分かっておるのか?
弟子 「ふるさと納税」って言うぐらいだから、加治木町役場に行けばいいんでしょ♪
仙人 それが……鹿児島県ではなんかおかしなことになっておってのぉう……。
弟子 はい? なんですか? それ?
仙人 さきほど、加治木町役場に行って寄附をしたいと申しておったの?
弟子 はい、だって加治木町で育ってますし。おじいちゃんやおばあちゃんも住んでる「加治木町」に寄附したいと思ってますよ。確か「ふるさと納税」って寄附する人が自由に寄附先となる自治体を決めてよかったんですよね。
仙人 そのとおりじゃ。寄附する人の意志はあくまでも尊重されなければならん。ところが、鹿児島県ではおかしなことになっておる。伊藤知事が「「ふるさと納税」の受け皿を一本化する」と決めてしまったのじゃ。
弟子 ということは、加治木町に寄附したいと思っても先ずは「鹿児島県に寄附しろ」ということなのですか?
仙人 さすがに、「どうしても加治木町に寄附したい」という人に対して「だめです鹿児島県にしないといけません。」なんて強制はできないのじゃがの、鹿児島県は東京と大阪に事務所を設けておって、そこの職員も含めて専従班というものを作って足で稼ぐ等と言っておる。むろん加治木町にも東京には東京加治木会なる組織があるが、当然その上部組織として「県人会」にも属していることになるからの、鹿児島県の職員が直接訪問してきて「鹿児島県にぜひ寄附を」等とお願いされるとついつい鹿児島県に寄附してしまうのが人情というものじゃろうて……。
弟子 そうなると鹿児島県が全部横取りしちゃうじゃないですか それはおかしいですよ なぜ県内の市町村は「それはおかしい」って言わないんですか?
仙人 さすがは鹿児島県じゃ。自分たちに都合のよい情報、例えば「県が一体となって」ということは当初からマスコミを使って情報を流した上で、市町村への説明会を行った。市町村から文句が出る前に押さえ込んでしまおうということじゃな。そもそも「県と市町村が一体となって」といううたい文句が気色悪い 県と県下市町村で構成する「かごしま応援寄附金募集推進協議会」というのも立ち上がってしまっておる。ふるさと納税に関する住民からの問い合わせはしっかり市町村にさせて、もらえるものはちゃっかりもらってしまおうという魂胆が見え見えじゃ
仙人 地方分権改革推進法という法律によって県と市町村はそれまでの上下の関係から、対等・平等の関係になったはずじゃが、鹿児島県は相変わらずでちっともなっとらん ほんに情けない限りじゃ
弟子 ところで仙人さま、鹿児島県に寄附されたお金の行方がすごく気になってるんですけど……
仙人 「かごしま応援寄附金」じゃが、申込書に市町村を指定する欄があって、そこに市町村名を記入した場合は寄附した額の10分の6を指定した市町村に配分すると決まったようじゃ。例えば、1万円寄附して加治木町を指定すると、4千円を鹿児島県がいただいて、残りの6千円を加治木町に配分するということになるのぉ。
弟子 市町村の指定をしなかった場合はどうなるんですか?
仙人 その場合がこれまた問題じゃ 鹿児島県の取り分となる10分の4という割合は変わらないのじゃが、残りの10分の6についてその4分の1を均等割、4分の3を人口割りで全市町村に配分するそうじゃ。そうなると、どうやっても人口が一番多い鹿児島市が有利になってたくさんもらえるということになってしまうな。そんな方法で、ふるさとのことを思って寄附した人の気持ちが生かせるとは到底思えないのじゃが……。
弟子 そうですよね。寄附ってそこに目的があるからこそ寄附したいって気持ちになるし、自分のした寄附がどんなことに使われてるのか目に見えると嬉しいんですよね。
仙人 長野県は、県として長野県内の市町村に寄附したい人への取り次ぎ業務を行っておる。県に寄附しても市町村の指定がしてあれば全額をその市町村に配分するしくみじゃ。これが本来県としてあるべき姿じゃ 取り次ぎしてやるからといって4割ちょろまかすどこかの県とは大違いじゃ 鹿児島県では、ふるさと納税制度ができる以前から与論町の「ヨロン島サンゴ礁基金」のようにこれまで独自に条例をつくって地道に寄附を集めてきた先進的な自治体があったのじゃが、鹿児島県のやってることはそういう自治体の取り組みをも破壊してしまう恐れすらある。いくら予算がないからといってもあまりにもなりふり構わない行為じゃなかろうかのぉ……。
弟子 鹿児島県は、寄附金の予想額について「関東、関西の県人会の3割の会員が1人1万円の寄附をすると仮定して関東で30億円、関西で45億円」って見積もってたようですけど……。
仙人 その数字こそが、鹿児島県をこのような暴挙に走らせた要因かもしれぬ。じゃが実際にそれだけのお金が関東や関西から寄附されたとすると、関東や関西の自治体から見るとそれだけ財源が減少するということになるからそちらも心配じゃ。
   本来は、中央と地方の格差を是正するために「地方交付税」という制度があって、むしろ国がしっかり地方の財源を保障しなければならないはずなのじゃが、それはしたくないから、とりあえずこのような「ふるさと納税」等という自治体同士で財源を取り合うような制度を導入してとりあえずやらせてみようか~♪ というのは、とんでもないことなのじゃ 今後の動向にも注意しながらしっかりと見ていかねばならぬぞ
弟子 はい よくわかりました 仙人さま~♪