【モデル単組】

第32回北海道自治研集会
特別分科会 夕張からわがまちの財政を考える

築上町財政再建計画協力の取り組み


福岡県本部/築上町職員労働組合・執行委員会

1. 築上町の概況

(1) 築上町の概要
 築上町は福岡県の北東部、北九州市から大分県中津市へと貫く国道210号線に沿い、総面積119.34km2、人口20,837(2005年度)人の町である。2006年1月10日、築上郡椎田町・築城町が合併して誕生した。南部は大分県と隣接し筑紫山地が連なり、その谷を源とする多くの河川が北部の平野を潤し周防灘へと注ぎ込む地勢を持つ。就業構造は第3次産業就業者が60%を超え、従来盛んであった第一次産業は減少しているが、林業・農業・漁業の資産が多く存在している。また、旧築城町内には航空自衛隊築城基地が存在し、在日米軍再編問題をはじめ国際反戦活動、護憲・平和の課題があり、自治体労働組合としても積極的に取り組んでいる。

(2) 合併の経緯
 築上町が誕生してから、まだ2年数ヶ月の事跡しかない。当初は近接する行橋市・京都郡3町(犀川町・勝山町・豊津町)、築上郡2町(椎田町・築城町)の6市町で法定協を立ち上げて協議し始めたが、築城町の離脱で不成立。その後、豊前市・椎田町・築城町の組み合わせでも法定協を設置したものの椎田町の住民投票で白紙に戻り、特例法の期限が迫るなか急遽2町だけでの合併が成立した。
 組合的な結集については、合併から1ヵ月後に新組合結成を行った。その後2年有余の期間の人事異動や機構改革にともない、ようやく組合員同士の名前と顔が一致するようになった。合わせて本庁と支所の距離も大幅に縮まってきたと感じている。

2. 財政問題の経緯

(1) 合併以前の各町の財政状況(千円)

2004決算

歳入総額

歳出総額

実質単年度収支

経常収支比率

財政力指数

地方債現在高

公債費比率

椎田町

5,592,383

5,453,445

-229,840

99.4%

0.35

7,385,283

18.1

築城町

6,691,390

6,523,202

-338.829

105.6%

0.25

4,737,162

13.2

 合併前の数年間は、2町とも財政問題が深刻化していて、合併判断の要因にもなっていた。
 合併に伴う各種財政的補助により改善を目指したが、折からの交付税改革等の国の財政も緊縮するなか思うような効果にはならなかった。

(2) 築上町行財政改革の発端
 2007年2月の春闘要求書提出時に、当局から財政状況についての説明・提起があり労使の検討委員会を設置した。当局から人件費の削減や集中改革プランへの取り組みをはじめとした、改革プランの方向性が示されるなか、組合としては総合的な行財政改革の取り組みを要求し、職員への状況浸透化と推進体制の確立、チェック体制の確立を求めた。

(3) 組合内部での対応
 2007年3月、当局による職員への説明会が開催され、逼迫した財政状況が周知されることになる。組合としては財政シミュレーションや集中改革プランの数値目標の根拠説明を求める交渉を平行して開催、同年5月の交渉で削減案が示される。
【提案内容】
  月例給ならびに一時金傾斜配分について相当額を削減する。ただし、各種手当てには跳ね返らない。期間は2007年7月から2010年3月までとする。
  月例給〈一般職〉  5%カット
  〈町 長〉     20%カット
  〈副町長・収入役〉 15%カット
  〈教育長〉     13%カット
  傾斜配分〈一般職〉 3%カット  〈特別職〉5%カット

 提案を受けて周辺自治体でも給与削減のなかった地域なので、県本部とも協議し当局とも再協議、執行委員会・代議委員会、職場内においては、労働組合として徹底的にたたかうべきとの意見と、今後、住民への負担を提起するなかで町職員は何をしているのかと問われたときに、何を示せばいいのかとの意見を中心としての議論が続いた。
 交渉を重ねながら組合としても臨時大会を開催し進捗状況の周知徹底と意見の集約に努め、6月議会を直前にした状況等も鑑み、執行委員会としての判断のもと方針案を提示し全体集会で確認された。

(4) 当局との確認
 同年5月末日、地方自治確立の基盤である財政健全化へ向け、労使が精力的に交渉を積み上げ財政再建計画を樹立することについて確認を取り交わした。
【主たる確認事項】
① 行財政健全運営は当局の責任である。今日の築上町の財政状況は危機的な状態であり、町民・役場職員の協力のもと財政再建計画を樹立する。
② 財政再建計画を実効あるものとするため、労使による行財政検討委員会を(4対4)を設置し、聖域なき行財政改革を推進する議論・検証を行う。
③ 財政再建の期間は2010年3月末までとし、当局の責任において財政再建を実現する。
  職員給料等の削減については特例条例とし、財政運営が安定したときは期間にかかわらず条例を廃止する。
④ 賃金労働条件の変更にかかる事項については、労使合意に基づき実施するものとし、労使自治を確立する。
  以上を中心とした確認書となり、特筆すべきは労働組合としても財政再建を検証するために(財)福岡県地方自治センターの財政診断を受けることを一項入れている。
  また、交渉の過程において給与削減額は若年層職員(3級以下職員は3%カット)への配慮を行い、傾斜配分についても管理職(5%カット)から主査・主任(1%カット)と段階を設けた。

3. 行財政検討委員会の活動

 確認書での取り決めで行財政検討委員会は労使双方において設置された。構成は4対4の基本から、当局は副町長、企画課長、財政課長補佐、企画係の構成、組合は委員長、副委員長、書記長、書記次長で対応している。

(1) 第一回行財政検討委員会(2007年6月18日)
① 主たる協議事項
 ア 今後の検討委員会の進め方について
 イ 財政診断の準備作業について
 ウ 議題の提出方法
 エ 収納対策のため人員体制の強化策
 オ 職員提案制度の具体的な実施について
 カ 各種補助金の見直し基準等の整備について

(2) 第二回行財政検討委員会(2007年7月23日)
① 主たる協議事項
 ア 2006年度決算状況について-実質公債費比率が18%を超えたため許可団体となる。
 イ 行政改革(案)についての協議
 ウ 補助金見直し分類一覧表の作成

(3) 第三回行財政検討委員会(2007年8月23日)
① 主たる協議事項
 ア 集中改革プランの進捗状況の説明
 イ 米軍再編交付金の概略説明-今後、事業展開を考える
 ウ 財政診断の具体化について-9月上旬から取りかかる

(4) 第四回行財政検討委員会(2007年10月16日)
① 主たる協議事項
 ア 財政健全化計画(案)について
 イ 公債の公的資金繰り上げ償還について
 ウ 外部監査方式についての説明

(5) 第五回行財政検討委員会(2007年12月20日)
① 主たる協議事項
 ア 2008年度当初予算について
 イ 各種補助金のヒアリング結果について-削減案策定中
 ウ 早期健全化基準-現段階では該当しないと思われる

(6) 第六回行財政検討委員会(2008年2月1日)
① 主たる協議事項
 ア 2008年度当初予算について-5.3億円の財源不足を財政調整基金・減債基金で対応
 イ 交付税見込みは前年度並みと推測されるが、町財政の特徴として扶助費が増大している。
 ウ 機構改革検討状況報告

(7) 第七回行財政検討委員会(2008年6月26日)
① 主たる協議事項
 ア 2007年度決算状況についての説明-単年度黒字になっているがこれは人件費削減効果
 イ 公共施設の統廃合の取り組み-交付税算定措置終了前に必要
 ウ 公会計制度の導入について

4. 築上町職労としての今後の取り組み

(1) 財政診断の早急な実施
 確認書で定めた外部よりの財政診断には当局においても期待する部分もある。2007年9月に地方自治センターと当局も参加の上、初めての打ち合わせを行った。その後、自治労の活性化モデル単組に応募して、広範囲の視点での財政再建への取り組みを考えようしたが、選定期間が延びて指定が遅れたこと、また、地方自治センターの分析担当者配置も決まらずとの影響で取り組みが遅れている。
 しかし、単組としての猶予はなく、2010年末までの計画期間内においての責任がのしかかっている。この間、積極的に財政関係のセミナー等へ組合員を派遣して、財政確立に対する組合員の研修を増やすなどの内部での対応を進めている。今後は早急に(財)地方自治センターとの連携を取り、残された期間内に財政再建を成し遂げる決意を持って取り組みを進める。

(2) 労働組合としての政策協議
 「財政協力問題」における賃金の削減は2007年7月から実施され、この後最長2010年3月まで続いていく。本町の財政状況は各種の財政指数が示すとおり、破綻した夕張市や賃金カット9%を超え実質財政再建中の大牟田市には至らないが、大変厳しい状況であることには間違いない。我々は築上町の行政サービスを提供する職員で構成される「労働組合」として、この状況を真摯に受け止め、一定の財政協力は避けて通れないと判断した。この財政協力が単なる人件費削減だけで終わるのではなく、根本的な問題解決と実効ある運営を目指していく行財政改革のステップとなるように、ひとりひとりの組合員がさらに汗をかき知恵を出しながら、積極的に取り組んでいく必要がある。とりわけ、「労使による行財政検討委員会」で十分な議論を行い、また、組合員それぞれが行政サービスを提供する職員として、日常の業務の中で日々改革に向けた強い認識を持ち、地に脚をつけて取り組みに邁進していくことが肝要となってくる。
 今年、公務員制度改革が実働をし始めた。地方公務員の世界にもやがて労働協約や労使協議といった新しい労使関係が登場してくるだろう。その先駆けとして「組合力」を高め、「地域力」を高めることも併せ持って、私たち築上町職労は今、ここで踏ん張っていく決意である。

歳入歳出予算の状況