【自主レポート】

第34回兵庫自治研集会
第1分科会 「新しい公共」と自治体職員の働き方

 北海道日高管内新ひだか町では、2008年4月1日より『新ひだか町職員意識改革推進計画』に基づき「職員提案制度」が実施されています。自治労新ひだか町職員組合では、実施されてから4年目を迎える取り組みがどう生かされているか報告したいと思います。



職員提案制度について
~職員の意識向上の推進~

北海道本部/自治労新ひだか町職員組合・自治研推進委員会

1. 背景・経過

 本格的な地方主権時代を迎えようとしている今日、2006年に静内町と三石町が合併してできた「新ひだか町」も限られた財源の中で、より効率的な行政運営を図りながら、健全な行政基盤の確立に努めるとともに、地域に根ざした特色あるまちづくりを進める必要があるため、町職員の意識改革や資質の向上、職員の人材育成を図ることが求められてきました。
 求められる職員像として『新ひだか町職員意識改革推進計画』が立てられ「自らの責任で、自ら考え、新たな課題に挑戦する職員」「町民ニーズの的確な把握と町民に対する説明責任を負う職員」「高いコスト意識をもって、より効率的に業務を遂行する職員」「常に問題意識をもち、高い目標と新たな発想で業務に取り組む職員」、「広い視野をもち、中長期的な観点から物事を捉える職員」「自己啓発に積極的に取り組む職場環境を醸成できる職員」等が挙げられました。
 人材育成の基本的方針として、職員の能力や資質向上には、職員一人ひとりが常に向上心をもって自己啓発に取り組む必要があるが、その自発的な取り組みを支援する制度や多様な人材育成を進めるために各種研修の充実はもとより、習得した知識や能力を実際の職場に生かされるような人事管理制度の確立への取り組みも重要であり、これらが有機的、総合的に機能して実りある人材育成となことから、基本的方針として「自己啓発の推進」、「職員研修の充実」、「職場の学習的風土づくりの推進」「人材育成と人事管理の連携」が示された。それぞれの指針について、具体的な推進施策が掲げられています。
 その中にある「職場の学習的風土づくりの推進」の推進施策の「職員提案制度の実施」の取り組みは、2008年4月1日より、前段で述べた「新ひだか町職員意識改革推進計画」に基づき、町政の推進に関する職員からの自主的な提案を奨励することにより、町政に関する新しい手法及び仕組みの創造を促進するとともに、職員の資質向上と質の高い行政運営を実現し、もって町民サービスの向上に寄与することを目的として開始されました。
 提案の要件としては、町政に関する企画、考案、改善、提言等のうち創意工夫により具体的なもので、かつ、次のいずれかに該当するものとされた「町民サービスの向上に関するもの」「事務事業の効率化に資するもの」「収入の増加又は経費の削減が期待できるもの」「公益上有効であると認められるもの」で自分の担当職務に限ることなく、自由な発想としています。
 すでに公表されているもの、内容が漫然として不明確なもの、個人的な不満・苦情・批判等に基づくものなど、提案としてふさわしくないと認められるものは除外としています。
 提案することのできる職員は、全職員とされており、個人または複数の職員による提案も可能とし、提案数については、提案の具体性を高めるため、1人5提案までの制限することとしました。
 その提案された意見は、審査委員会(町長、副町長、教育長、各部長、総務課長、総務企画課長、企画課長のメンバーにて構成されているが、必要に応じて、メンバーを加えることが可能となっている。)において、第1次新審査において、書類審査を行い、第2次審査では、提案者からプレゼンテーションが行われ、そこで、採用、不採用が判定されます。
 採用となった提案については、関係部署において、実施に向けた協議が行われます。


2. 実績報告

 ■2008年度から2011年度までの実績は次のとおりです。
  2008年度 提案数 146件(5人)、採用 4件、不採用 142件
  2009年度  〃   15件(5人)、 〃 4件、 〃   11件
  2010年度  〃   13件(3人)、 〃 1件、 〃   12件
  2011年度  〃   12件(10人)、 〃 5件、 〃   7件
 【合  計 提案数 186件(23人)、採用 14件、不採用 172件】
 ※ 採用数については、最終審査(第2次審査)で採用となった件数となり、事業実施の件数とは異なります。


 ■職員提案により実施された事業等は次のとおりです。
 
事業等の名称
事業等の概要
議会中継のパソコンによる視聴の実施
(2009年度から実施)
職員が身近な場所で町議会の進行状況を把握することができるよう、職員それぞれが所属部署のパソコンで議会中継を視聴することができる環境を整備するもの。
新ひだか町メールマガジンの実施
(2009年度から実施)
メルマガ登録者に対し、定期的に町の情報を発信することにより、行政に興味を持っている方々に対する確実な情報提供の機会を確保するとともに、登録者を起点をする情報の広がりを期待するもの。
フェスティバルスタンプラリーの実施
(2009年度から実施)
町内で開催される祭りなどのイベントに客を誘致するため、全てのイベントへの参加を条件としたスタンプラリーを実施し、集客力のアップを図るもの。
坂道に名前を付ける【心に残るふるさと坂道さがし】
(2010年度から実施)
町内の坂道に名称を付け、道路に対して愛着を持ってもってもらうもの。
情報発信ブログサイトの設置
(2010年度から実施)
ブログを設置・公開し、リアルタイムに情報発信することにより、町のPRやイメージアップを図るもの。
新ひだか町公式ツイッター
(2012年度から実施)
ファロアーに対し、リアルタイムに情報発信することにより、町のPRをするとともに、フォロアーを起点とする情報の広がりを期待するもの。


3. 今後の課題と検証

 職員提案は実施から4年が経過し、採用になったもの、現在も検討中のもの、また、予算の関係などで採用には至らなかったが内容は認められたものなど全件で186件の提案がありました。職員が自ら考え立案し、それに基づく資料を集めてプレゼンテーションを行う。このように職員が提案したものが実際に事業として展開していく取り組みは他市町村でもあまり事例がないかもしれません。少しずつではありますが、職員にまた町民にも浸透してきているものと考えます。採用された中には町のPRにつながる提案や町民参加型の提案などが多く見受けられます。しかし、その反面、職員からの提案者は多い年で10人、それ以外の年は5人程度と伸び悩んでいるのが現状です。その原因には、提案するまでの労力(資料作りから必要経費の問題、現実味があるかどうかなど)が必要となるほか、審査委員会(町の幹部で組織されている)でプレゼンテーションを自ら行うということが提案者の伸び悩みの原因かもしれません。今回は報告となりましたが、今後はアンケート調査などを行い、実際に職員の声を聴き、検証していきたいと考えています。