② 人事管理上の考え方
ア 当局案により「一般職場B」に位置付けられることとなる現在の現業職場では、現行の業務内容を変更しないことから、労務職として採用された職員本人の意向に関係なく配置が行われます。
イ 労務職として採用された職員が、上記アにより「一般職場B」に配置された以後において、本人の意に反し「一般職場A」へ配置されることはありません。
ウ 一般職として採用された職員は、職員本人の意向に関係なく「一般職場A」又は「一般職場B」への配置が行われます。
職 場 |
業務の性格 |
動物園管理飼育展示担当
ツル担当 |
専門的な知識を有する業務 |
道路維持事業所
下水道管理課 |
災害時等の緊急対応が必要な業務 |
環境事業課指導担当 |
行政的な判断要素を含んだ業務 |
|
③ 労務職場から一般職場へ移行する職場
現行の業務内容を変更することなく、労務職場から一般職場へ移行する職場及びその理由については、2008年検討委員会の検討結果を踏まえ、右表のとお
りとなります。
④ 総合職採用試験の実施
当局案では、現業職場の職種の整理とあわせて職員採用試験に係る実施方法の変更案も示されました。
これまで釧路市が実施している職員の採用方法は、大きく「一般職(事務・技術)」「労務職」「消防職」の3区分でしたが、2012年度採用者からは「総合職」と「消防職」の2区分とするという内容です。これは、今後、釧路市においては順次現業職場の一般職場化を検討することから、職員を労務職に限定して採用した場合、人事管理上の制約を残すこととなることなどが理由として説明されました。
(3) 2011年検討委員会の議論経過
上記2.(2)が当初の当局案です。基本的に労使双方が、今後も直営とすべきとした現業職場をいかに維持するべきかというスタンスに立っていることから、当局側が提示した概念を基本に、制度上の矛盾や現業職場全体の公平性の観点などからの修正点を点検することを主眼として検討委員会に臨みました。
6回にわたる開催ごとの議事概要と論点は、次のとおりです。
① 第1回検討委員会
当局案の説明を受け、この中で、総合職採用試験の実施に関し、試験日などのスケジュールを勘案し、当局責任において当該事務的手続きを先行させたい旨の申し出があったところでありますが、そのことが会議における主要課題の議論の幅を狭めることへの懸念を指摘し、議論の方向性に制約が課されない公正な協議の場を保証することを当局側に確認させました。
② 第2回検討委員会
当局側が、現業の範囲を整理する理由の1つとして挙げている現業給与水準の見直しを促す国の動向に関し、具体的な通知や調査の実態を提示することを求め、次回の会議において資料の提出と説明を受けました。
また、現行の現業業務に事務的又は技術的な要素を付加することにより一般職場化を検討した結果、それが不可能と判断された職場についての当局側の考えを質したところ、現業独自の給料表を導入しないという労使の確認を尊重するためには、更なるアウトソーシングや嘱託職員化、臨時職員化への転換なども考えなければならないという姿勢が示されました。
③ 第3回検討委員会
第2回検討委員会が終了した時点で関係職場ごとに集会を開催し今後の方向性を確認したところ、基本的に当局案に対する反対意見はなかったものの、一般職場化が難しいと思われる職場からの不安の声が聞かれたほか、当局案の「一般職場B」には一般職採用職員、労務職採用職員、総合職採用職員が混在することとなるにもかかわらず、労務職採用職員の昇任のみが主任職にとどまることに関する制度的矛盾が指摘され、さらに、「一般職場A」と「一般職場B」が混在する職場の混乱も予測されることから、それを回避するための技術的措置を求める意見が寄せられ、第3回検討委員会では、主にこれら3点の是正が必要であることを主張しました。
④ 第4回検討委員会
前回の課題3点のうち、「一般職場A」と「一般職場B」が混在する職場の混乱回避のための発令上の工夫(内容は省略)について是正案が示され、その他の2点の課題については、次回へ結論を持ち越しました。
⑤ 第5回検討委員会
結論を持ち越していた一般職場化が難しいと思われる職場への対応策と「一般職場B」における昇任矛盾の解消について是正案が示され(内容は、後述の(4)検討結果を参照)、検討委員会全体がこれを了承しました。
⑥ 第6回検討委員会(中間報告)
これまで5回にわたる検討結果を報告書としてまとめることとし、引き続き、次年度以降においても検討すべき課題があることが確認されたことから、この報告書の取扱いを「中間報告」として整理することとしました。
(4) 検討結果
2011年検討委員会の「中間報告」の概要は、次のとおりです。
① 2008年検討委員会の報告書により今後も直営として維持するとした職場のうち、現行の業務内容を変更(拡大)することなく一般職の範疇であると判断できる労務職場(環境事業課指導担当、道路維持事業所、動物園、下水道管理課)については一般職場とする。これにより、一般職場へ移行する労務職場を「一般職場B」、それ以外を「労務職場」とする。なお、従来の一般職場は「一般職場A」とする。(制度の概念は、当局案①②③のとおり)
② 職制については、労務職採用職員についても主査職までの登用を可能とし、「一般職場B」の労務職採用職員における職名を「主査」、労務職場における職名を「業務(技能)主査」とする。(下図参照)
③ 「一般職場B」のみの異動に限定される可能性があることに承諾した職員は、「一般職場B」において専門員(係長相当職)以上に登用される可能性がある。ただし、採用区分は労務職のままとする。(下図参照)
④ 2012年度以降の職員採用試験の区分は、「一般職採用試験」と「労務職採用試験」を統合し「総合職採用試験」とする当局決定に伴い、今後、総合職試験で採用される職員は、配置先によって一般職か労務職(「一般職場A」又は「一般職場B」に配置された場合は一般職、「労務職場」に配置された場合は労務職)となる。(下図参照)
⑤ この検討委員会は次年度も継続することとし、「労務職場」と位置付けられた業務(廃棄物収集、調理業務、用務員、事務補等)について、一般職場化への可能性を検討することとする。
3. おわりに
経済が低迷すると、安定した公務職場に対する批判が増大し、公務員改革を謳い文句に政治をはじめ社会全体が公務員労働者攻撃を強めます。この間、現場では再三にわたる合理化が進み、多くの職場が廃止、外部化されてきました。現業職員だけではなく、事務・技術職員も合理化の対象となり人員が減る一方で、仕事量は減っていないのが現実です。結果、事務職や技術職が担ってきた仕事の一部を労務職が必然と担わざるを得ないようになりました。全国的にもこういった状況が増えているのではないのでしょうか。2011年3月11日に発生した東日本大震災では、自治体職員を含む多くの国民が犠牲となりました。被災した自治体では、合理化によって現業職員が不在となっているところも多く、瓦礫を処理するパッカー車、グレーダー、ダンプなどの機械はもとより、災害監視パトロールなどの車両を動かす職員すらいないなど、自治体が住民を守るための初動体制が欠落していたと言わざるを得ません。民間委託化後の実態は、元請・下請け・孫請けの関係で仕事が行われているのが実態であり、初動が遅れることは明らかで、また、日常から住民の命を守るという使命感の要求されない民間企業に果たして災害対策を任せられるのでしょうか。組合としては、地公法第57条の規定廃止に向けた取り組みと賃金に新たな差別を持ち込む「行二表」を導入させない取り組みに重点を置きながらも、真の住民自治を維持するためには、現業職場を守ることが重要であり、この間の働き方、働かされ方を議論する中から、単純労務の枠を超えた仕事を行っている実態を明らかにし、合理化が進んだ現在の現業職場をベースにした一般職場化と、一般職場化の推進による新規採用職員の配置を図ることが必要と判断し、これからもこの取り組みを進めていきます。 |