【自主レポート】

第34回兵庫自治研集会
第1分科会 「新しい公共」と自治体職員の働き方

「保健所における感染症対策(感染性胃腸炎)について」



保健所における感染症対策(感染性胃腸炎)について


北海道本部/全北海道庁労働組合連合会・根室総支部 竹内 祥司

1. はじめに

 1937年制定の保健所法に基づき設置。(2002年地域保健法施行)
 都道府県、政令指定都市、中核市、その他指定された市又は特別区が設置する。
 北海道の行政組織の変更により「保健所」→「保健福祉部」→「保健行政室」(2012年より)に名称変更。
 「保健所には医師、歯科医師、薬剤師、獣医師、保健師、助産師、看護師、診療放射線技師、臨床検査技師、衛生検査技師、管理栄養士、栄養士、歯科衛生士、統計技術者その他保健所の業務を行うために必要なもののうち、地方公共団体の長が必要と認める職員を置くものとする」とされている。

2. 保健所の業務

 保健所の業務は大きく分けて①対人保健、②対物保健となる。

3. 根室保健所における感染症対策(対人保健)

 感染症の種類~別添資料参照
・1類感染症~4類感染症  医療機関から直ちに保健所へ届け出
・5類感染症 41疾患のうち16疾患 医療機関より7日以内に保健所へ届け出
             11疾患 定点医療機関より保健所へ週単位で届け出
◎ 5類感染症のうち感染性胃腸炎(ノロ・ロタウイルス等)が施設内で集団発生した場合は、施設から保健所への届け出が必要となる。

保健所内での流れ

 ①発生届の受理         医療機関、施設から
 ②所内対策会議         所長以下関係者
 ③施設調査・疫学調査の実施   集団発生施設、患者及び家族等接触者
 ④原因及び菌検査の実施     保健所により検体回収、検査の実施
 ⑤発生状況の公表        道庁及び保健所
 ⑥収束

根室保健所管内での感染性胃腸炎の発生状況 (2010年以前は除く)

 2012.4   感染性胃腸炎(ロタウイルス) 2施設(24人・11人)
 2012.6   感染性胃腸炎(ノロウイルス) 1施設(29人)

4. 問題点

 保健所では、前述のとおり専門的知識・技術を持った職員が配置されていることとなっているが、道の機構改正、職員の適正化計画により保健所職員定数も削減されている。
 また、保健所の配置見直し等により、総合振興局所在地の保健所に機能を集中したことから、試験検査機能が釧路保健所に統合となった。
① 感染性胃腸炎発生時の対策メンバーは、医師、保健師、獣医師、臨床検査技師の専門職を含め、課を横断する体制としてきたところであるが、臨床検査技師が不在となり、必要な意見は釧路保健所試験検査課に求めることとなった。
  ただし、ウイルス検査については、従来より釧路保健所、道立衛生研究所での検査であるため変更無し。
② 感染症発生時は感染の拡大を防止するため、迅速な対応が求められるが、休日の対応も予想され、人員の削減(専門職種)が大きな影響を及ぼす。
③ 地域的な問題もあるが、根室に配置される職員は新規採用者、昇格を伴う異動者が多く、事件対応に不慣れな者も少なくない。

5. まとめ

 2010年度以前の根室保健所管内における感染性胃腸炎発生状況は1年に1件程度であるが、今年度に入って既に3件発生している。
 全道的にも本来、夏場を迎えると収束傾向になるが、未だ減少していない(2012.6現在)。保健所管内における発生状況が増えていることは、医療機関及び施設への感染症予防に向けた普及啓発を行った結果とも考えられる。
 試験検査機能の集約により、集約した保健所では、より専門的な検査が実施できることとなったが、反面、集約された保健所においては臨床検査技師不在のため検査についての専門的な意見を確認できなくなった。
 保健所としての機能を維持するためには、専門職の配置と充分な人員が必要であり、北海道の進める職員数適正化計画による一方的な定数削減は、対人保健業務だけではなく住民サービスの低下に直結するものと考える。

6. 感染性胃腸炎とは

 細菌、あるいはウイルスなどの感染性病原体による嘔吐、下痢を主症状とし、その結果種々の程度の脱水、電解質喪失症状、全身症状が加わるものを感染性胃腸炎と云う。年長児や成人では細菌性腸炎の頻度が高いが、乳幼児ではウイルス性腸炎が圧倒的に多い。特に1才以下の乳児は症状の進行が早く、乳児嘔吐下痢症と呼ばれる。
 主な原因ウイルスとしてはノロウイルス、ロタウイルスが一般的。

(1) ノロウイルスとは
 ノロウイルスとは、世界中に広く分布し、急性胃腸炎の原因の一つとなるウイルスである。
 ノロウイルスの人への感染は、ウイルスに汚染された飲食物を口にすることや、感染者との接触等による二次感染によって起こり、主に11月から3月に集中している。
 主 症 状:吐き気、嘔吐、腹痛、下痢、発熱(38度以下)
 潜伏期間 :24~48時間
 経過・予後:通常3日以内で回復、予後は良好

(2) ロタウイルスとは
 ロタウイルスは、主として乳幼児に見られる嘔吐下痢症の原因ウイルスとして知られており、冬期から春期に集中して発生する一般的な疾病である。
 なお、成人でも感染がみられることがある。
 感 染 源:患者の排泄物(糞便)及びウイルスに汚染された物品
 感染経路:経口ないし経鼻感染
 主 症 状:嘔吐と頻回の下痢。発熱、風邪様症状を呈することもある。
 潜伏期間:48時間以内