【自主レポート】

第34回兵庫自治研集会
第1分科会 「新しい公共」と自治体職員の働き方

 地域主権時代における地方自治体の実態把握・研究に資するため、2006年に引き続き、藤沢市職員の職場・業務・自治体運営に対する意識調査を実施。市職員として働く立場・意識から見た施策・自治体運営課題を全職員に対するアンケート形式で調査、自治体像の議論、あるべき藤沢市の姿・施策の提言・発信に資することを目的に調査・分析を行った。



藤沢市職員に対する仕事と市政に関する意識調査


神奈川県本部/藤沢市職員労働組合

1. はじめに

 藤沢市職員労働組合は、地方自治・自治体施策・地域の諸問題等に関する総合的な調査・研究、政策構想の充実を図り公共サービスの拡充・推進に資することを目的に、1997年に発足した藤沢地方自治研究センターの活動に参画、「地域主権の確立」「全国に誇れる藤沢市」の実現にむけ、様々な活動を展開してきました。
 自治研センターは、その活動の一つとして、2006年に「藤沢市職員の地方自治に関する意識調査」(消防職、臨時・非常勤等職員を除く全職員に対する日常業務、自治体運営や施策に対する意識調査 回収率70.2%)を実施、市職員の感じる市政・自治体運営課題を明らかにするとともに、調査結果に基づいたセミナーの実施や藤沢市政の提言を行ってきました。
 今回の調査は、基本的には前回の調査と同じ要素を調査項目としつつ、4年が経過、かつ、首長が交代(2008年)するなかで、日々の業務・職場の状況や自治体運営の状況、また、それらに対する職員の意識(受け止め)がどのように変化しているのかを把握、改めてあるべき自治体像・藤沢市の姿を研究・議論、広く発信することをめざし実施しました。

2. 調査の方法

① 調査対象
  藤沢市職員(特別職および臨時・非常勤等職員を除く全職員)3,488人
② 実施時期
  2010年8月10日から9月7日
③ 回収結果
  有効回収数 2,161人(回答のうち無回答者数を除いた人数)
  有効回収率 61.96%

3. 調査結果の概要(抜粋)

(1) 設問1 日常業務の現況・職場の状況等に関して
① 約7割が担当・職場の業務について「満足」
  「担当・職場の業務に対する満足度」について聞いた。「満足である」12.2%、「まあまあ満足である」55.8%、「やや不満足である」22.7%、「不満足である」6.9%となった。
  「満足である」と「まあまあ満足である」を合わせると約7割となり、担当している業務に対する「満足度」は高い。

② 7割超が、2年間で「忙しくなった」
  「この2年間で担当・職場業務は忙しくなったか」について聞いた。「かなり忙しくなった」29.7%、「やや忙しくなった」42.2%、「変わらない」23.0%、「やや暇になった」1.7%、「かなり暇になった」0.4%となった。
  「かなり忙しくなった」と「やや忙しくなった」を合わせると7割を超え、2年間で職場が忙しくなっていることがわかる。特に3分の1が「かなり忙しくなった」と答えており、注目すべきである。

③ 6割超が、人員が「足りない」
  「職場の人員配置は適切か」について聞いた。「人員が多すぎる」1.2%、「ほぼ見合っている」35.4%、「やや足りない」38.4%、「不足している」24.3%となった。
  「やや足りない」と「不足している」を合わせると6割を超え、「人員が足りない」状態にある。特に全体の4分の1の職場で「人員が不足している」と答えており、注目すべきである。

④ 約6割が、現在の賃金は「適当」
  「現在の賃金は適当か」について聞いた。「適当である」12.2%、「まあまあ適当である」48.8%、「やや不満である」28.8%、「不満である」9.6%となった。
  現在の賃金について「適当である」と「まあまあ適当である」を合わせて6割超が、「適当」と受け止めている。

⑤ 約8割が、処遇(役職)・人事評価について「適当」
  「現在の処遇・人事評価は適当か」について聞いた。「適当である」21.7%、「まあまあ適当である」59.7%、「やや不満である」12.5%、「不満である」4.6%となった。
  「処遇・人事評価」について「適当である」と「まあまあ適当である」を合わせて8割超が、「適当」と受け止めている。

⑥ 8割超が、上司(部下)とのコミュニケーションは「うまくいっている」
  「上司(または部下)とのコミュニケーションはうまくいっているか」について聞いた。「うまくいっている」22.5%、「ほぼうまくいっている」62.1%、「ややうまくいっていない」11.1%、「うまくいっていない」3.7%となった。
  「上司あるいは部下との間のコミュニケーション」について「うまくいっている」と「ほぼうまくいっている」を合わせて8割超が、「うまくいっている」と受け止めている。

⑦ 同僚とのコミュニケーションは「うまくいっている」が9割に達する
  「同僚とのコミュニケーションはうまくいっているか」について聞いた。「うまくいっている」28.7%、「ほぼうまくいっている」63.5%、「ややうまくいっていない」5.8%、「うまくいっていない」1.4%となった。
  「同僚とのコミュニケーション」については、「うまくいっている」と「ほぼうまくいっている」を合わせて9割超が、「うまくいっている」と受け止めている。

⑧ 「人員不足」が過半数を超え1位
  「担当業務・職場における一番の課題は何か」について、8つの選択肢から3つまで選んでもらった。「人員不足」が52.5%と最も高く、次いで「執務環境」31.9%、「予算不足」26.7%、「職員の意欲・能力不足」24.5%、「業務に見合う賃金でない」15.3%と続き、「人事評価・処遇(役職)」10.9%、「人間関係がうまくいっていない」10.8%となっている。
  「特に課題はない」は、9.3%と最も低く、職場に何らかの課題があることがわかった。特に、「人員不足」が過半数を超え、「執務環境」も3割を超えている。

⑨ やる気を高めるには「職場の雰囲気」が6割超で1位
  「職員としてやる気を高めるには何が必要か」について、11の選択肢から3つまで選んでもらった。「職場の雰囲気」が61.0%と最も多く、離れて「能力が向上できる環境」38.7%、「業務に見合った賃金」37.7%、「休暇が取りやすい」31.7%、「評価(処遇)がされる」21.5%、「自分の意見が反映されやすい」19.9%と続き、他の選択肢は10%未満となった。
  「職場の雰囲気」が約6割と高く、やる気を高めるためには「職場の雰囲気」が重要であると考えていることが分かった。

⑩ 「コミュニケーション能力」が約5割で1位
  「自治体職員として今後どのような能力が必要か」について、12の選択肢から3つまで選んでもらった。最も高かったのは「コミュニケーション」で45.3%、次いで「職場管理能力」37.9%、「接遇」31.7%、「プレゼンテーション能力」29.5%、「交渉力」27.3%、「政策形成能力」24.9%、「資料作成能力」15.3%、「語学」13.6%、他の選択肢は10%未満となった。

(2) 設問2 藤沢市の自治体運営(経営)の現況に関して
① 「悪くなった」45.4% 対 「良くなった」12.5%
  「2008年2月より新市政となり、市の自治体運営に変化はあったか」について聞いた。「良くなった」1.9%、「まあまあ良くなった」10.6%、「変わらない」37.4%、「少し悪くなった」24.3%、「悪くなった」21.1%となった。
  「良くなった」と「まあまあ良くなった」をあわせると12.5%に対して、「悪くなった」と「少し悪くなった」を合わせると45.4%となる。新市政となって「自治体運営」は「悪くなった」と否定的に受け止めている。

② 7割超が、市長マニフェストを「知っている」
  「市長マニフェストの内容を知っているか」について聞いた。「よく知っている」13.9%、「少しは知っている」58.9%、「あまり知らない」20.1%、「知らない」6.5%となった。
  「よく知っている」と「少しは知っている」を合わせて7割超が、「知っている」と答えており、職員の認知度は高い。

③ 市長マニフェストには、「現実的な対応」を期待
  「市長マニフェストの施策実現についてどう思うか」について聞いた。「実情に即した修正が必要」が60.4%ともっとも高く、次いで「可能なものだけ実現すべき」24.2%、「わからない」11.9%、「全て実現すべき」1.8%となった。
  「実情に即した修正が必要」と「可能なものだけ実現すべき」を合わせると84.6%となり、「マニフェスト」について現実的な対応を期待する声がほとんどであった。

④ 「トップマネジメント」の評価は分かれる
  「理事者はトップマネジメントを果たしているか」について聞いた。「よくやっている」6.4%、「まあやっている」39.3%、「やや不満である」31.7%、「不満である」17.8%となった。
  「よくやっている」と「まあやっている」を合わせると45.7%となり、「やや不満である」と「不満である」を合わせると49.5%とほぼ同じ割合となり、職員の「理事者のトップマネジメント」の評価はほぼ二分された。

⑤ 最も力を入れるべき課題-「福祉・健康」が約6割で1位
  「市として最も力を入れるべき施策・課題は何か」について、10の選択肢から3つまで選んでもらった。「福祉・健康」56.4%、「医療」36.2%、「環境」29.4%、「教育文化」29.4%、「産業」26.1%、「防災」24.2%、「都市基盤」20.2%、そのほかの選択肢は10%未満となった。

⑥ 7割超が、職員意見は「反映されていない」
  「市の施策や業務に職員の意見は反映されているか」について聞いた。「反映されている」1.1%、「ほぼ反映されている」20.7%、「やや反映されていない」48.8%、「反映されていない」25.3%となった。
  「反映されていない」と「やや反映されていない」を合わせると7割超と高く、市の施策や業務に職員の意見が「反映されていない」と受け止めている。

⑦ 6割超が、「市民から信頼されている」
  「藤沢市役所は市民から信頼されていると感じるか」について聞いた。「信頼されている」5.5%、「ほぼ信頼されている」60.7%、「やや信頼されていない」25.4%、「信頼されていない」4.3%となった。
  「信頼されている」と「ほぼ信頼されている」を合わせると6割超と高く、職員の自負が伺える。しかし、「やや信頼されていない」と「信頼されていない」を合わせると約3分の1となっていることも見過ごせない。

⑧ 最も重視する市民サービスは、「適切なニーズ対応」が1位
  「市民サービスを高めるにあたり何を重視するか」について、10の選択肢から最も重視するものを1つ選んでもらった。回答数の多かった順に、「適切なニーズ対応」20.0%、「スピード感ある対応」12.3%、「市民接遇の向上」11.6%、「安心・安全感」11.5%、「業務に対する意欲向上」10.1%、そのほかの選択肢は5%未満となった。
  無回答者が21.6%といずれの回答よりも高く、「市民サービスで重視するもの」について5分の1が判断できなかったことになり、仕事に対する認識に課題がある。

3. さいごに

 前回の調査から4年が経過するなか、当市においては、社会情勢の変化に加え、これまでと自治体運営スタイル・手法が異なる首長が誕生する等、大きな変革を迎えていました。こうした中で、改めて職員の仕事や市政に対する意識変化を調査・分析することにより、公共サービスを支える現場の状況、職員の立場からみた市政課題を浮き彫りにすることができました。また、2011年2月には、この調査結果の報告会を行うとともに、県議会議員・市議会議員・市民団体代表を交えたパネルディスカッションを開催、公共サービス向上に向けた、市職員の行政に対する意識の高揚等について議論を深めるとともに提起を行いました。
 今後、定期的に調査を行い、継続した分析・提言を行うとともに、さらなる市民や各種団体への発信・協働を強化し、「全国に誇れる藤沢市」の実現にむけ取り組みを進めたいと考えます。