【自主レポート】

第34回兵庫自治研集会
第1分科会 「新しい公共」と自治体職員の働き方

 「自治研」とは……地方自治研究の略で労働組合が主体的に地方行政や自治研政策、自らの仕事のあり方について研究し、実践していくこと。
 文字通りでは、何となく分かった気がしますが、いざ活動しようとすると「一体、どのような活動をしていいのか??」。そんな私達の自治研活動の始まりから今までの軌跡をまとめたものです。
 本当の意味での私達の自治研活動はこれからです。手探りの中、はじめの一歩を踏み出した私達の活動は他の単組活動の実例と比較に値しないかもしれませんが、まずは実践 と取り組んだ活動をご報告致します。



自治研ってなんやいね?
―石川県七尾市での自治研活動のスタート とこれから―

石川県本部/七尾市職員労働組合・自治研対策部

1. 「自治研って何?」

 2010年4月、七尾市職員労働組合の自治研部長が自治労石川県本部開催の学習会に参加したところから、私たちの活動が始まりました。
 自治研部長によれば、「自治研を活発に」とは言われたものの、何から、どのように始めればよいのか、という状況でした。当時、自治研委員は、七尾市職員労働組合の執行委員から8人が充てられていましたが、そもそも自治研活動とは名ばかり……。悩んでいても何も始まらない。
 そこで、まずは「自治研ワーキングメンバーを組合員から10人程度募ろう」。
 中堅職員で構成される自治研委員と、やる気がある若いメンバーで構成される自治研ワーキングメンバーとが連携することで、きっと何かを始められる
 「青年部学習会」や「機関紙スクラム」などで募集を呼び掛けた結果、8人が集まりました。
 ワーキング会議は、ノー残業デーとなっている水曜日を開催日とし、会議では活発な意見交換を求め議論するために、3つの原則を決めました。



 また、自治研の目標として、「職場や七尾市に関するフリートークの中から、実際に職場に導入できるもの、市民のためにできることなど、近い将来実現可能な試みをリストアップし、実践する」こととしました。


2. 「はじめの一歩」

 ワーキング会議をスタートしたのは、6月。職員労働組合でいう年度末まで、すでに半年を切っていました。
 「とにかく、実践しよう」とはいっても、何から始めればいいのかはまだ具体化していないため、第1回目のワーキング会議では、メンバーの日常業務の改善提案や「七尾市をさらに元気にしよう」という率直な思いを話し合いました。
・地域に出て、組合員が自身をPRしていこう
・自分たちの業務がどれだけ市民の幸せにつながっているか考えてみよう
・歴史的観点から七尾市をさらにPRして、観光客を増やそう
・職場環境の改善を考えよう
 これらは、当たり前のようなことかもしれません。しかし、これをメンバーで共有し、話を深めていくことで、見落としていた部分に気付くのです。
 さらに、第2回ワーキング会議では自治労石川県本部役員も参加してくださり、様々なアドバイスをいただきました。
 この2回の会議を通して、メンバーの共通する「思い」が見えたところで、これからの活動の方針をこのように決めました。


「自分たちのまちをもっと知る
      ⇒ 職員として当然のことだが、なかなかできていない。
「まちをもっと良くしよう
      ⇒ 市民と連携した取り組み、地域への貢献を考えよう。


3. とにかく動き出そう!!!
第1回レクレーション大会

 七尾市は2004年10月に旧七尾市、田鶴浜町、中島町、能登島町という4つの自治体が市町合併をしたことで市の庁舎が5箇所になり、職員数の増大、職員間のコミュニケーション機会の減少など、職場環境が以前と比べて悪化していることを感じていました。
 自治研活動を進めるためには、職場の人間関係の向上が第一だと考えました。
 そこで、何らかの活動を通じてコミュニケーション機会の向上を図るため、「組合員全員が参加できる場の創出」が大切と考え、これを私達は第一歩としたわけです。
 10年ほど前には「職員運動会」というものが旧七尾市で開催されていましたが、公務員を取り巻く環境の変化や市町合併などにより、その後は開催されていない状態でした。
 このような中でレクレーション大会を開催したので、全職員約650人のうち果たしてどれだけの人が参加してくれるのか? という不安はメンバーの表情からも伝わってきました。
 なるべく多くの方に参加してもらえるように、プログラムや雰囲気作りに知恵を出し合いました。
 2010年11月14日、第1回職員レクレーション大会が福利厚生と職員同士の親睦を深めるために開催されました。参加人数は250人。大会当日は、ほかの行事もある中で、予想を超える方が参加してくれたことに私たちは大きな自信を持ちました。
 各部局でチーム編制し、対抗戦方式をとったため、競技が進むにつれ、各チームのボルテージがどんどん上昇。みんなが一緒になって喜び、笑い、悔しがる。それは「チーム」そのものでした。
 大会後、各チームごとの交流会の中で、たくさんの方が参加し、業務外での交流、これまで話したこともない組合員同士の親睦も深まりました。この大会を振り返り、その目的を十分に達成したと考えています。


4. 石川県内や全国の自治研メンバーとの出会い

 職員レクレーション大会の準備を進める中で、私たちは二つの自治研大会に参加しました。
 一つは「第24回石川県自治研集会」、もう一つは「第33回地方自治研究全国集会」です。
 他の労組はどのように自治研活動に取り組んでいるのかを勉強することで、今後の自分たちの取り組みの参考にしたいと思っていました。
 これらの大会、とくに全国自治研集会で感じたことは、以下の点でした。
① 地域に入って活動している。
② 地域をよく理解した上で活動している。
③ メンバーが熱意を持って活動をしている。
 よく考えると、これは、私たちが自治研ワーキングを始めた当初、石川県本部の役員からいただいたアドバイスそのものだ、ということに気付きました。
 あわせて、私たちが活動方針として決定した、「地域を知る」「まちを良くする」ということについても、これは自信を持ってやれる ということを確信しました。
 何はともあれ、全国の組合員が、地域のために全員一丸となって活動していることを知り、自分たちがこれまで何もしてこなかったことに恥ずかしさを感じたとともに、今後はしっかりと取り組むことで、地域に貢献していくことの必要性を強く実感しました。


5. 2年目の自治研「前年からのステップ

 自治研活動も2年目に入り、今年は「前年以上の成果を」とメンバーの意気込みはとても大きなものとなっていました。まずは前年の取り組みに加え、何か新しい活動をやろうということをメンバーで決定しました。
 2011年度は、新たに二つの取り組みを行うことを決定し、以下のとおり実施しました。


業務発表会

(1) メンバーの業務内容を知る発表会の開催
 自分たちの担当業務や課題などを発表し、それに対するメンバー間の意見交換をしました。同じ職場にいながら、メンバーの多種多様な業務内容に驚きました。情報の共有化や公共サービスの向上を図るため、自治研ワーキンググループとして活動できるものがあると認識しました。
【目 的】七尾の現状を知る。各部署の業務内容や職場理解、プレゼン能力の向上。
【内 容】問題点や解決方法などを含めた業務内容の発表と意見交換
     第1回『ななお歴史散歩』、『ななおの交流人口拡大のために』
     第2回『人口から見た七尾市の現状』、『石川県産業創出支援機構について』
     第3回『新米アナウンサーから見た七尾ケーブルテレビ』、『日本一の青柏祭でか山について』
     第4回『農商工連携室の取り組み』、『生ごみゼロへの道』
【開催日】2011年3月から6月(月1回)


七尾城跡本丸付近で解説を聞くメンバー

(2) 「七尾城跡ハイキングウォーキング」の実施
 七尾市の代表的な歴史遺産である七尾城を知るため、車ではなく、旧道という昔の道から本丸を目指して登りました。
 七尾城山の麓にある「七尾城史資料館」で七尾城に関する事前学習をした後に、本丸まで40分かけて山を登り、上杉謙信も苦しんだ難攻不落の七尾城の堅固なつくりに一同仰天。地域の歴史や文化を知ることの大切さを改めて認識しました。
【目 的】七尾城史資料館などでの学習会(郷土の歴史学習)、七尾城跡への旧道登山(健康増進)、バーベキュー交流会(組合員の懇親)
【内 容】日本五大山城 七尾城への城攻め
【開催日】2011年5月28日
【参加者】約35人


(3) 石川県自治研集会の地元開催
 七尾市和倉温泉において、石川県自治研集会が開催されました。
 集会では、県内各地の自治研の活動報告がありましたが、どこの自治体もしっかりと取り組んでいて、大きな刺激を受けました。集会ではフィールドワークも行われ、七尾の観光名所でもある一本杉通りの視察もしていただきました。私たちは、そこで改めて、地域の歴史と文化の貴重さを、他の自治体組合員から教えていただいた気がします。
【開催日】2011年9月30日から10月1日


(4) 第2回職員レクレーション大会の開催
 10年ぶりに開催した職員レクレーション大会の第2回を開催できたことは、前回大会が評価されたということで、私たち自治研メンバーの大きな自信につながりました。
 今回も200人を超える組合員が参加し、さらには子どもたちなど家族が参加できる競技を設定するなど、多くの方が楽しめるよう心掛けました。
【開催日】2011年11月23日


6. 3年目の自治研「地域に飛び出そう

 2012年度は、いよいよ「地域に飛び出そう」を合言葉に取り組むことにしました。
 もちろん、すぐには大きなことはできないため、能登最大のお祭りである「青柏祭」を目前に控え、七尾市中心部のごみ拾い活動から始めました。また、当初から、メンバーのうち数人が中心になって、会議の開催や企画などを取り仕切るという状況でしたが、今年度からは、しっかりと役割分担を行うことで、各自の責任感の向上と新規取り組みの増加を狙い、そして何より、「メンバー全員で取り組んでいる」という共通意識を強くすることで、自治研メンバーの結束力向上を目指しました。
JR七尾駅前での清掃活動

(1) 「ぴっかぴっかのななおプロジェクト」の実施
 七尾市は祭礼やイベントが多い観光都市で、その幕開けとなる「青柏祭」「花嫁のれん展」を前に、開催場所となる中心市街地のごみ拾いを行うことで、来訪される観光客に気持ち良く楽しんでいただくことを目的としました。
 自治研活動としては、初めて地域に飛び出した活動でしたが、住民の方からは温かい声も掛けてもらって話に花が咲くなど、地域へ出る活動の大切さを実感しました。商店街は住民の皆さんがいつもきれいにされていますが、幹線道路沿い等は、意外とごみも多く、私たちの活動がポイ捨てごみの減少につながればと願っています。
【目 的】自治体職員としての地域貢献、地域を知る、職員同士の親睦。
【内 容】3グループに分けて、市街地のごみ拾いを実施。
     七尾駅前、能登食祭市場など集客施設付近を中心に街中の美化活動を行った。交流会は、桜の名所小丸山公園(前田利家築城)。
     青年部とのコラボ事業。
【開催日】2012年4月28日
【参加者】約45人
 第3回レクレーション大会も、少ない準備期間でしたが、役割分担によりスムーズな企画と進行ができたことはとても大きな成果となりました。当日は、七尾市主催も含め多くの催しがあり、参加者数は少なくなりましたが、初めて参加する組合員も少なくなく、大会の継続開催の大切さを実感しました。
 開催日:2012年6月24日 参加者:約130人


7. 最後に

 私たちの活動は3年目を迎えましたが、まだまだ胸を張って発表できる段階の自治研活動ではありません。しかし、取り組みへの理解は徐々に浸透し、着実に拡がりを見せています。当市職の健康福祉部内で市民目線での行政サービス向上を目指した活動も動き始めたことが一例です。私たちは、自らのやりがい、市民への幸せを提供するためにこれからも以下のことを着実に進めます。
 自治体職員、職員労働組合員として、また一市民として、自治研活動を積極的に進めるため、以下の課題をしっかりと克服しながら、前に向かっていきます。


1)職場での人間関係の向上と結束力の強化
2)地域の現状を把握し、求められているものを理解
3)それに対し、自治研として何ができるのかを検討
4)できることからコツコツと着実に取り組みを実施
5)地域と共に取り組みを実施

1)自治研活動の発信
 私たち自治研の活動はまだ始まったばかりですが、やはりその活動に関する組合員への周知、地域への周知がまだまだ不足しています。今後は活動を発信することで、仲間同士のつながり、NPOや民間団体・地域と連係しながら活動を進めます。
2)仲間・スキルアップ・継続は力なり
 活動のPR不足もあり、私たちの活動の認知度が低い状況です。しかし、仕事の熱意・地域への思いを持っている組合員はとても多いのも事実です。彼らと共に、ステキな自治研活動ができるよう持続性のある活動を地道にやっていきます。
3)地域と共に
 自治研活動3年目でようやく地域で活動しましたが、今後はこのような機会を増やすことで、どんな小さなことでも地域と連係し、貢献していきます。姿の「見える活動」を進めていきます。
4)他の自治研との交流
 情報交換や情報共有などを目的として、市内外の自治研グループとの交流もとても大切だと考えます。
 地方自治研究全国集会でも全国各地の事例発表がなされており、大変刺激になりました。このような機会をどんどん増やすことで、私たちの自治研活動のレベル向上につなげ、元気な七尾を目指します。

 2014年には、北陸新幹線が金沢駅まで延伸します。金沢駅から列車で1時間の距離にある観光都市七尾市へ、これまで以上に多くの皆様にお越しいただけるよう魅力ある街づくりをしなければなりません。私たちは、市職員としてはもちろん、自治研メンバーとしても七尾の魅力づくりに積極的に携わっていきたいと思います。