【自主レポート】

第34回兵庫自治研集会
第1分科会 「新しい公共」と自治体職員の働き方

 近年、都市化の進展やライフスタイルの変化、価値観の多様化などにより、地域住民同士の交流が減少し、地域が本来もっている相互扶助の機能すなわち“絆力”が低下傾向にあります。その一方で昨年3月11日の東日本大震災により、地域ぐるみの相互扶助の重要性が見直され、日頃から地域の絆を育むことの必要性が高まっています。
 また、日本の人口は、右肩上がりの時代から本格的な人口減少・少子高齢化社会を迎えつつあります。少子高齢化と人口減少が急速に進行していくことにより、担税力のある生産年齢人口が減少すると同時に高齢者の増加により高齢者福祉などの福祉関連経費が増加していくことが予想されます。
 住民と行政が一丸となったまちづくりを真剣に考える時代にきています。本レポートでは、地域の絆力を高め、地域活動を効率的に展開する仕組みづくりについて提言します。



地域協議会(新しいコミュニテイ組織)の創設
みんなで いっしょに まちづくり

愛知県本部/小牧市職員組合

1. 協働の必要性

(1) 日本の人口構造の大きな変化
① 少子化の進行
  1974年に合計特殊出生率が2.0を割り、それ以降2.0を回復したことはありません。少子化の進行により担税力のある生産年齢人口(15歳~65歳)が減少していくため、行政の財源となる税収が年々減っていきます。
② 人口減少
  日本の人口は、2005年をピークに右肩上がりの時代から本格的な人口減少社会に転じました。これは、有史以来の歴史的な出来事であり、将来推計では50年後に3分の2の人口(約9,000万人:50年前の人口)になると推計されています。
③ 老年人口の増加
  団塊世代の方々が75歳に達する10年後(2022年問題)には、高齢化率が約30%になると推計されています。急速な高齢化の進行によって、高齢者福祉などの福祉関連経費は、急激に増加していきます。

(2) 選択と集中の時代へ
 行政は、どのように人口が減ろうとも、高齢者が増えようとも最低限の市民の安全・安心を維持(セーフティネット)していく必要があります。
 人口減少と少子高齢化が同時進行していく社会において行政がセーフティネットを維持していくためには、“やるべきことはやる”“やるべきではないことはやらない”といった考えの下で行政改革を進めていかなければなりません。将来に向けてセーフティネットを維持し役割強化を図るためには、“あれもこれも”から“あれかこれか”の事業の『選択と集中』を検討していく必要があります。しかし、今までやってきた行政サービスをただやめるということは、できません。行政がセーフティーネットを維持するためには、地域で解決できることは地域で解決してもらう必要があります。地域には今以上に公の形成に関わってもらわなければなりません。そのためには、地域の受け皿が必要になります。しかし、自治会や区に今以上の負担をかけることは困難です。
 よって、地域活動を効率的に展開する新しいコミュニティ組織を検討する必要があります。


2. 地域協議会(新しいコミュニティ組織)の創設

(1) 組織の位置づけ
① 各種地域団体の連携・補完
  自治会(区)、老人会、子ども会、PTAなどの各種地域団体や民生児童委員、保健連絡員などの地域で活動している方々が集い、横の繋がりを持って相互に補完しあい、それぞれが活動できるような新たなコミュニティ組織。
② 地域コミュニティの醸成
  自治会(区)をはじめとする各種地域団体や地域で活動している方々が、様々な地域課題や問題意識を共有し、その解決のため、地域住民が相互扶助の精神で自ら考え行動していく組織。
③ 地域課題への対応
  画一的、均一的なサービスが求められる行政では取り組みが困難な事業や、既存組織では対応できない地域課題に対して、自治会(区)より広域で効果的・効率的に地域活動を展開し、解決していく組織。

(2) 設立の効果~ねらい~
 地域には、それぞれに課題があります。公共交通機関が充実している、していない地域。高齢化が進行している、していない地域。犯罪が多い、少ない地域など、それぞれに課題が異なるため取り組むべき事業も異なります。その地域のことを最も良く知っている地域住民が自らの地域課題について話し合い、その解決のための地域活動を企画・実践します。
 また、地域の元気な高齢者が中心となって、地域活動を展開することで、高齢者が活躍できる場を創出します。誰もが参加できる地域ボランティアの仕組みを確立させ新たな人材発掘を行います。そういった地域活動の活性化の仕組みをつくります。

(3) 組織のイメージ
① 各種団体との関係

② 組織体制

(4) 役 割
① 地域づくりミーティングの開催
  区をはじめとした地域内の既存の団体や地域で活動している方々が集まり、意見交換をする機会をつくり、その中で、自らの地域の特性や課題、その解決策、将来の方向性などを話し合います。最終的には「地域活動計画」を策定し地域住民で共有します。

② 地域づくり事業の企画・実施
  協議会が実施する様々な事業を「地域づくり事業」と位置づけ、以下の2種類に分類します。
 ア 地域づくり事業(課題解決型)
   様々な地域の課題解決のために実施する各種事業を企画・実施します。
   例 防犯パトロール活動
     通学路見守り活動
     環境保全活動
     家事支援活動
     子育て支援活動など

 イ 地域づくり事業(交流促進型)
   地域住民が顔を合わせ交流できるようなイベントを企画・実施します。
   例 地域のお祭り
     防災訓練
     各種スポーツ大会
     映画鑑賞会
     カラオケ大会など

 上記のような役割を担い、地域が支えあう魅力あるまちづくりを行うためには、まずは地域住民が自分たちの地域のことをよく知り、地域の長所や短所を皆で共有していかなければなりません。また、地域の絆力を高めるためには、地域住民が参加して顔を合わせる機会をつくることも重要になります。さらに、地域活動を活性化させるためには、活動の担い手となる人材を発掘することが必要になります。そのために、有償地域ボランティア制度の仕組みを確立させます。
「地域のあり方は地域が決め、地域が担う」

「地域住民自らが主体的に地域の課題解決に取り組む」

『新しい地域自治』の創造

(5) 組織単位
 協議会の組織単位については、小学校を核として子どもとその父母、祖父母世代の「3世代のつながり」や「範囲のわかりやすさ」、また、「小学校との連携強化が図りやすい」などといったメリットが大きいことから、小学校区単位とします。

(6) 協議会の財源
 協議会が事業を実施するためには財源が必要になります。その財源は自治体が交付金として支出します。金額については、総額を設定し、平等公平の観点から人口割りで各地域に配分します。また、イベントのみではなく地域活動を拡充発展させる仕組みとして交付金には、以下のルールを設定します。
≪交付のルールについて≫
 ⇒ 地域づくり事業の課題解決型と交流促進型に充当する交付金の配分割合を設定する。
  【配分割合:交流促進型は、配分額の3割以下】
 ⇒ 役員報酬や委員報酬に充当する交付金の配分割合を設定する。
  【配分割合:企画した地域づくり事業に係る事業費の1割】

(7) 拠点施設
 多くの地域住民が積極的に参加し、交流や情報交換を行いながら、意志と継続性を持った機能的な協議会とするためには、会議室・倉庫などを有した活動拠点施設が必要です。協議会の拠点は、小学校とし、空き教室の活用や敷地内に事務所を建設するなど整備します。学校には、広い運動場や体育館、パソコン、調理室などといった豊富な資源があります。それらを地域に開放し、活用して様々な地域活動が展開できるようにします。

(8) 行政職員の人的支援
 各地域の協議会の運営を円滑かつ効率的に進めるため協議会毎に行政担当職員を派遣します。
 地域と行政が協力しあうためには、信頼関係を築く必要があります。そのため住民と一緒になって地域づくりを行う機会をつくります。
① 協議会で実施される会議への出席
  協議会の会議に出席し、地域住民と一緒に地域づくりについて考えます。
② 地域づくり事業の企画立案に関する支援
  全国の事例紹介などを行います。必要に応じて、協議会の運営や活動に関する助言を行います。
③ 地域で実施するイベントへの参加
  地域で実施するイベントに参加し、地域住民との交流を深めます。

(9) 協議会のルール
① 共通ルール【以下の項目は、全協議会共通のルールとします。】
 ・設立時には、地域内の全ての区の合意を得る。
 ・地域内の全ての住民(法人含む)を協議会の構成員とする。
 ・協議会役員には各区からの選出委員と、地域住民からの公募委員をそれぞれ1名以上入れる。
 ・代表者の任期は1期2年とし、再任は3期までとする。
 ・協議会の会計年度は4月1日から翌年3月31日とする。
② 協議会毎のルール【以下の項目は、協議会ごとに決定するルールとします。】
 ・役員定数に関する事項
 ・役員報酬や委員報酬に関する事項
 ・部会の数や名称など組織構成に関する事項