【自主レポート】

第34回兵庫自治研集会
第1分科会 「新しい公共」と自治体職員の働き方

 自治労京都市職員労働組合は、行政に携わる職員がつくる労働組合として、市民の暮らしを守り、市民サービスの向上を求めて、市政改革運動を提起し、市民ニーズに対応した市政運営をめざしている。こうした取り組みの一環として、2011年の9月から10月にかけて、市民の意見を積極的に京都市政に反映するため、「市民アンケート」を実施した。そこで明らかになった、市民の行政に対する意識や意見を紹介する。



京都市政に対する「市民アンケート」


京都府本部/自治労京都市職員労働組合・常任執行委員・公共政策部長・政治政策部長 下村 幸児

1. はじめに

 自治労京都市職員労働組合(以下、自治労京都市職)は、行政に携わる職員がつくる労働組合として、市民の暮らしを守り、市民サービスの向上を求めて、市政改革運動を提起し、市民ニーズに対応した市政運営をめざしています。こうした取り組みの一環として、2011年の9月から10月にかけて、市民の意見を積極的に京都市政に反映していくため、「市民アンケート」を実施しました。この「市民アンケート」は4年前と8年前にも実施しております。
 アンケートでは、性別や年齢といった回答者の属性を把握することをはじめ、「京都のまちの魅力」、「市政改革のあり方」、「市政への市民参加」、「京都市が進めてきた施策」などについて質問を行いました。集められた回答を数値化し、4年前の結果と比較を行いながら分析をしています。また、自由記入欄を設け、市民が京都市政に対する意見を自由に記入していただきました。
 今回のレポートは、より市民ニーズに直結した京都市政にしていくため、自治労京都市職が提起する政策要望などの基礎となる資料として活用していきたいと考えています。

2. 調査の方法

調査対象:京都市民    回収数:5,070人    調査期間:2011年9月16日~10月15日
調査方法:①調査票を自治労京都市職の組合員が市内各家庭に配布。
     ②連合加盟の各労働組合に協力を依頼し、京都市在住の組合員に配布。



3. 回答分析

Q1 あなたは、「京都のまち」のどのような点に魅力を感じますか?

「絆」を深める「コミュニティ活性化条例」の、今後の取り組みに期待
 質問項目のなかで「芸術や文化、歴史的遺産が大切にされている」89.9%(「そう思う」と「どちらかというとそう思う」の合計数値。以下同じ)、「まちなみや景観が大切にされている」82.6%が圧倒的に高く、前回と比較してもそれぞれ5%前後上昇しました。伝統文化や景観を重視した政策が、市民から高く評価されていることがうかがわれます。反面、最も評価が低かったのが「子どもやお年寄り、障がい者にやさしいまちづくり」44.1%です。これを年代別にみると、50歳代38.9%、60歳代34.1%と平均より厳しい評価をしています。京都市では65歳以上人口が23%を超え高齢化が進んでいることから、市民ニーズがますます高まっていることがうかがわれます。
 また、「道路や公園などの公共施設の整備」(48.5%)を居住区別にみると、下京区・南区・右京区では50%を超える市民から評価を得た反面、東山区や山科区では50%を下回りました。まだまだ市民ニーズの高い地域があります。
 「町内や学区内などで、人々の交流が活発である」は47.7%です。3月の大震災以降、「絆」が大きなキーワードになっていることから、今年、制定された「コミュニティ活性化条例」をもとに、さらなる充実した取り組みが求められています。



Q2 よりよい市民サービスを行っていくうえで、どのような市政のあり方がよいと思われますか?

重要性が増した行政の役割
 回答を市民サービスの質の面でみると、「厳しい財政情況なので、市民サービスの質の水準低下はやむを得ない」と回答した人は29.5%。「市民生活を守るサービスは、行政が責任をもって行うべきである」は85.1%となり、多くの市民が、サービスを低下させずに行政は責任をもって行う必要があると感じています。とくに「行政の責任」は前回調査より5.6%上昇しました。
 「これまでの市民サービスを見直して、新たな市民ニーズにこたえるサービスを行うべきである」が86.5%と、市民サービスの見直しを求める声が大きくなっています。反面、「市民サービスの維持・向上のためには、税金や利用料など、市民の負担が増えても仕方がない」が31.6%と前回より3.5%増加しました。税金などの負担が増えることには抵抗があったとしても、公共サービスは必要だと感じている人が増えているといえます。
 「財政再建のため、賃金の低い非正規職員の採用や民間委託を進めるべきである」では60.1%と高い結果になりました。しかし、職業別にみると「学生」は50%となっており、財政再建の必要性を認める一方、賃金の低い非正規や民間委託の推進による、将来への不安がうかがえます。
 また、自由記入欄では、厳しい財政情況を踏まえ、寺社仏閣と、"古都"京都の街並を維持するために協力すべきだとする声が、たくさん寄せられました。



Q3 市民とともに市政を進めるため、今後どのようなことが必要だとお考えですか?

情報公開や市民参加の機会を拡大し、市民と市職員との協働を促進
 市民参加については、「市民の意見や要望については、議員や地域団体に任せておけばよい」と考えている人は14.4%でした。
 反対に、「市政に市民の意見を反映させるために、市民参加の機会をひろげるべきである」88.7%、「市民参加を進めていくためには、市民と市職員が共に協力していくべきである」89.8%と、市民参加の機会を拡大し、市職員と協働して市政をすすめるべきだと考えています。
 京都市では、2003年に「京都市市民参加推進条例」を策定し、保健所・児童館や観光地のトイレを市民のワークショップで設計するなど、市民参加によるまちづくりが全国的に注目を集めています。今後もこうした具体的な事例を積み重ねながら、さらに情報公開の拡大や、市民参加の機会を拡大することが求められています。



Q4 現在京都市が進めている施策についてどう思われますか?
 また、これから進めようとしている施策についてどのように思われますか?

再生エネルギーなど、環境対策の一段の充実を求める声が高まる
 この質問では、門川市政4年間の重点施策に対する評価と、今後、どのような施策を求めるかについて聞いてみました。
 門川市政4年間の重点施策については、概ね50%を超える評価を得られています。とくに「子育て支援」や「教育環境の整備」「新産業の創出」は、評価する声が前回より5%程度増えています。
 しかし、質問の具体的内容が前回調査と異なっているため、単純に比較することはできませんが、「高齢者や障がい者の施策」は前回69.4%から今回53.3%へ、「環境対策」は64.5%から47.0%へと減少しています。「高齢者や障がい者の施策」については、高齢者の増加によってますます多様なニーズが生まれているためと考えられます。
 また、自由記入欄では、「環境対策」について「反原発」を求める意見が多く出されていることなどから、福島第1原発の事故以来、再生可能エネルギーへの関心が高まったことで、市民はこれまで以上の取り組みを求めていることがうかがわれます。

「ワーク・ライフ・バランス」や入札改革のさらなる推進を
 また、今後の市政についての質問では、ほとんどの項目で「(どちらかというと)そう思う」と回答した人が80%を超えました。なかでも「防災対策」は91.6%と、非常に高い関心があります。また「コミュニティの活性化」85.8%、「観光戦略」82.9%と、門川市政が重点的に進めようとしている施策に大きな期待が寄せられている結果となりました。
 「スポーツ施設の整備」は、自由記入欄には、若い世代から「各区にプールを作って欲しい」「子どもたちが自由に野球やサッカーができるグランウンドや公園の整備」など、市民が身近にスポーツに触れ、体験できる施設の充実を求める声が、多く寄せられました。
 自治労京都市職が強く求めている施策でもある「ワーク・ライフ・バランス」は88.6%、「入札改革」は79.4%と高い評価を受けています。夫婦がともに働きながら子育てなど充実した家庭生活をおくることができるための職場や社会環境の整備は、非常に重要な施策で、ワーク・ライフ・バランスを実現する体制を整えることが必要です。
 また、千葉県野田市や川崎市などで「公契約条例」が施行されています。市民の雇用を守り、雇用身分に差のない豊かな地域社会をつくるために、今後、さらに「入札改革」をすすめることを、市民は強く願っている結果となっています。




Q5 今後、京都市政はどのような分野を充実すべきだと思われますか?

厳しい経済情勢に、雇用対策や経済対策を求める声が増加
 京都市政が充実すべき分野では、「雇用対策」が最も多く33.3%になりました。これを男女別にみると、「男性」31.2%、「女性」38.5%と、女性の割合が高くなっています。「雇用対策」は、前回調査で5位だったことから、経済情勢の悪化などで市民が雇用に不安を感じていることがわかります。
 2位の「保健・医療」と4位の「高齢者福祉」を含めた社会保障関係の充実は、合わせて56.5%を占めています。これを男女別にみると、男性51.8%、女性67.8%、年齢別にみると、50歳代71.8%、60歳代72.3%と、女性や高齢者、高齢者の家族をかかえる世代が、医療や介護の充実を強く求めていることがうかがわれます。
 今回初めて質問項目に加えた「子育て支援」は、29.0%で3位になりました。男女別では、男性29.9%、女性26.9%と、男性の要望が高いのが特徴的です。また「観光の振興」は前回10位から6位に、「産業の振興」は12位から7位に、「防災対策」は14位から8位に上昇しました。男女別では、男性は「道路・交通網の整備」が、女性は「教育の充実」が上位にあがっているのが特徴的です。
 自由記入欄では「保育所の充実」や「子どもを遊ばせられる公園や施設の充実」を、「道路・交通網の整備」では公共交通の地域間格差の解消や公共バスの充実を求める声が多数、寄せられています。

(この設問は、3項目選択のため、合計は300%になります。)

4. さいごに

 今回の取り組みで得られた結果を自治労京都市職が京都市に対して行っている政策協議や、京都市の民主党会派(民主・都みらい京都市会議員団)への要望などに活かしてまいりたいと考えています。また、自由記入欄に書かれている意見の中には、京都市政や職員の批判とともに、労働組合に対する厳しい意見も多くありました。それらの意見を真摯に受け止め、今後の活動を進めてまいりたいと考えています。
 これからも、自治労京都市職は、行政に携わる職員がつくる労働組合として、市民ニーズに対応した政策への転換をめざし、市政改革運動を提起し、市民に信頼される市政をつくるため、取り組みを進めてまいります。