【自主レポート】

第34回兵庫自治研集会
第1分科会 「新しい公共」と自治体職員の働き方

 高度経済成長期の真っ直中、日本国中が「開発」に追われるなか、いち早く「都市景観」への関心を持ち、日本で最初に「花時計」を誕生させることになった神戸。その歴史の1ページを紹介します。



神戸の「花時計」とその継承業務


兵庫県本部/神戸市従業員労働組合・建設支部

1. はじめに

 神戸市役所北側にある花時計は、日本で始めて作られたものです。直径6m、高さ2.25m、傾斜角度15度で、地下には機械室があり、盛り土の上に設置しています。現在ある花時計は1976年に改装した2代目のものです。文字盤は約3,000株の季節の草花で彩られ、約1~2カ月ごとに植え替えられています。

2. 花時計誕生までのストーリー

 花時計誕生のきっかけとなったのは、当時の助役、後の神戸市長による海外視察であり、スイス・ジュネーブにあったものが、製作にあたってのモデルとして選ばれたということです。ただ、国内にはほとんど参考にできる資料がないことから、時計メーカーや大学関係者などに研究を依頼する一方、海外の事例収集やジュネーブの花時計の設計図面などを取り寄せるなどして調査・研究したうえで、製作に取りかかることになりました。
 それでも、文字盤が6メートルという国内ではあまり例を見ない大きさのうえ、傾けた文字盤の上を花壇にすることもあり、時計としての精度の維持はもちろんのこと、針軸部分の防水や機械室の防水防湿構造、そして針への風圧の影響等々、資料が集まるにつれて、検討が必要な要素が山積することになりました。
 やがて、技術的な問題が徐々に克服されていくと共に、設置費に足るだけの基金も市民や民間企業などから寄せられるようになりました。そして、花時計は市民有志から神戸市に寄贈される形で、1957年4月26日、市庁舎落成記念式典のこの日から、神戸の街に時を刻み続けることになりました。

3. 製作・設置

 1950年代前半、宮崎辰雄市長の提案に基づき、スイス・ジュネーブのイギリス公園に設置されていた花時計をモデルにした、日本初の花時計が製作されることになりました。花時計の製作は神戸市役所の新庁舎建設にあわせて進められ、新庁舎完成と同時期にその北側に設置された。1957年4月6日、新庁舎開庁記念式典に続く形で始動式が行われ、稼動を開始した。

4. 構 造

(1) 形 状
 花時計は小高い山のような形をしており、直径6m、傾斜角度15度の文字盤が設置されている。文字盤の中には後述のように、季節ごとに様々な花が、周りにはジャノヒゲが植えられている。

(2) 文字盤
 前述のように、文字盤には花が植えられている。設置当初、花は相楽園内の花苗園で栽培されていた。1963年以降は、須磨離宮公園内の花苗園で栽培されている。使用される主な花は、春はパンジー・ヒナギク、夏はコリウス・ベゴニア、秋はモヨウビユ・コギク、冬はハボタンで、鳩による食害に遭いにくいデージー、コギクの使用頻度が高い。年9回ほど花の植え替え工事が行われる。文字盤の図柄はそのとき行われる行事をテーマにしたものや、市民からの公募作品をもとに決定される。デザイン公募は年4回ほど行われる。

(3) 針
 時計の針はステンレス製で、時針は長さ260cm・重さ16Kg、分針は長さ310cm・重さ20Kg、秒針は長さ310cm・重さ8.2Kgである。

(4) 機械室
 花時計の地下には機械室がある。文字盤に花が植えられていることから防水のため、機械室の壁には防水モルタルが塗られており、時計の針軸には防水リングが装着された上に油脂が塗られている。なお、機械部分は電気によって作動しており、停電に備えてバッテリーも内蔵されている。

(5) 防犯装置
 花時計に対するいたずらは当初は少なかったが次第に増加した。これを受けて神戸市は1985年、防犯センサー(赤外線・熱感知)を設置した。夜間、花時計に侵入者が現れた場合には防犯ベルが鳴る仕組みになっている。


5. クリーンエネルギーで動きます

 2002年から、花時計の電源には、夜間や雨天を除き市役所2号館屋上にある、太陽光ソーラー発電設備機器から作られた電気を使用している。太陽光ソーラー発電は、環境問題を考えた設備機器であり、エコロジーである。 太陽光ソーラー発電の、電力発電量は花時計の左側に設置された電力供給盤に、リアルタイムで発電量が表示されている。(最大出力は3kW)

6. 花時計の作り方

 図案の原寸作成という下準備と、花時計での本番との延べ2日間を費やす植え替え作業。文字盤内の植え込みはスペースの都合上4人で作業するしかないものの、全体では10人ほどのスタッフを動員しての一大作業となります。





7. まとめ

 「神戸市民と花時計」と題して、ご説明してきましたが、花時計は、神戸の顔でありシンボルであります。又、県外から来られる観光客の、一つのスポットとして、「神戸の花時計」は愛されています。
 この歴史ある花時計の維持管理の日常業務に携わっているのが、我が建設局公園砂防部管理課、我々の仲間である職員です。なお、市内9行政区を管轄する6建設事務所や公園緑化協会においても、我々の仲間が樹木の剪定・花植え等、市民との協働により、まちの花と緑を守っています。年約9回の植え替えにあたり、デザイン(公募)・花の構成(色合い)・図面作成、等々、さまざまな過程を経て、先に、ご説明しました施工へと進み、その後、日常の水やり・雑草の駆除・清掃をし、市民の憩いの場として提供し、県外からの観光者には、神戸での一つの思い出づくりをと、職員の努力と研鑚を重ね今日に至っています。そして伝統ある「神戸の花時計」のノウハウは今も継承されています。デザインは、時代背景と共に変わりますが、過去から現代・現代から未来へと時が流れる様に、花時計の時を絶やさないように公園砂防部管理課、全員で守って行きます。

 「これからも神戸の花時計をよろしくおねがいいたします。」