【自主レポート】

第34回兵庫自治研集会
第1分科会 「新しい公共」と自治体職員の働き方

 本庁支部の業務として、職員が安全・安心に市民サービスを提供できるように「裏方」的な仕事が多い。今、私たち公務員(現業)が市民から厳しい目を向けられているなか、市民サービスを直接提供することが困難な私たちの仕事は、どのように業務の必要性を訴えていかなければならないのだろうか。



「裏方」は職務遂行の基盤業務


兵庫県本部/神戸市従業員労働組合・本庁支部

1. 庁舎設備管理業務

 庁舎の維持管理、修繕、熱源機械の操作、制御、空調管理、水質管理、保守点検他、電気は特別高圧(33,000ボルト)の受電、変電、供給、照明、回路等の制御、保守点検等の他、防災センターとして即応体制を敷いている。
 その他に国のエコ事業の推進・指導、汚泥・汚水の保守管理、危険物第4類可燃性液体(A重油:非常停電用発電機用)約8,000リッターの貯蔵・取り扱い、PCB使用製品の保管・管理等、各自が数種の国家資格を有し従事している。
 これらを民間に委託するとそれぞれの業者に分かれるため膨大なコスト増になるばかりか、対応の遅れにより各局執務、如いては市民サービスに多大な影響が及ぶことになる。
 市民が気持ちよく訪れることができ、また、職員が円滑に業務を遂行できる状態を維持するのが、われわれ裏方の役割である。

2. 市場管理業務

 1932年に全国で5番目の市場として開場した神戸市中央卸売市場本場は108,000m2、東部市場は117,000m2あり、本場は2008年より一部PFIが導入されたが、日々の管理、保守点検、守衛業務は直営が常駐で従事している。東部市場は青果、水産の他に花卉市場があり、祝日も競りが行われている。
 両市場とも仲買業者店舗などの機器故障修理、応急処理に即応体制を敷いている。
 夜間は委託しているが、日々ある故障に対して夜間委託業者の対応の遅れから、守衛室から電工に連絡が入り、出動し直営修理を行うのもしばしばである。
 市民の食卓に繋がる市場業務で競りが行えない、生鮮食品の供給が遅れるとの事態になれば市民生活に多大な影響がある。
 また、業者の個人情報や管理費、光熱費の償還金等のデータ処理も行っている。
 西部市場は特殊的要素の多い職場の中、施設の維持管理を行っている。併せて畜施設のため特殊機器が多数あるが、専門的な知識により素早い対応をしている。
 これまで元卸、仲買、出入りの業者と信頼関係の下、老朽化した施設の維持に努めてきたが民間に委託すると利益が優先され、多数の業者が出入りする市場施設の機能が維持できるのか疑問である。
 また開設者の立場から場内業者、関連業者に安全、省エネ等の提案、指導を行い、施設管理の裾を拡げ、共に効率化し活性化を図る。

3. 守衛業務

 外部評価では夜間警備を直営でする必要がないとあるが、夜間業務の内容には庁舎巡回、執務室・会議室の施錠確認、防犯・防火の他に不審者の監視、時間外入庁者のチェック、時間外入超車両のチェック、時間外電話対応(ダイヤルインの案内)、要請要望・苦情等の対応・案内、緊急事項の取り次ぎ、市民からの時間外郵便物受付、遺失物届出受理、拾得物の管理等がある。
 夜間・休日ほど、市民、警察、他都市自治体からの、緊急かつ重大性の高い内容の電話が多く対応には知識、経験が必要である。
 対応の遅れや間違いがあれば多大な損害が発生する恐れがあり民間委託のマニュアル化した業務内容では絶対に対応しきれない。
 また機密文書、市民の個人情報を扱う部署に立ち入りできるマスターキーを管理するには直営でなければならない。

4. 自動車運転業務

 神戸市総面積は549.34平方キロメートルあり、公共交通機関やタクシー等を利用することが困難または非効率な場合での機動性を確保するとともに、特に災害時等の緊急を要する場合には、資機材を含め職員が現場へ急行できる体制を確保しておく必要がある。
 神戸市内、兵庫県内に限らず、他都市にて災害が起きた際にも災害派遣などの移動に即時対応してきた。
 また職員及び来客の安全、迅速、秘密保持に配慮した効率的な移動手段を提供する必要がある。稼働率、運行時間は非常に高い。
 秘書課運転手は市長、副市長のスケージュールに常に随行している。
 休日を振り替えたりしながらコスト面でも内部努力はしているが平日昼間の乗務がないときもあるので、今後は集中管理との兼務発令など市長、副市長が不在のときなど別の車に乗務するなど、協力体制を敷き、更なる稼働率のアップ、災害、緊急時の体制強化等、実車率、費用対効果の面でも外部にアピールできる体制の確立を目指す。

5. 電話交換業務

 神戸市では市役所と市内9区役所で電話交換業務を直営で行っている。
 多種多様の問い合わせがあるなか長年の経験と知識によって市民が求めていることを素早く察知し、担当係りに迅速につなぐことにより各課、係りがスムーズに業務を遂行できる。
 民間委託になるとマニュアル化され、また派遣等、人材の繁盛な入れ替わりがあると思われ細やかな対応ができず各課、係りの業務に支障をきたし、結果、たらいまわし、トラブル等、市民サービスの低下につながるのは歴然である。
 2011年4月から民間による総合コールセンターが開設されたが、マニュアル、及び単なるQ&Aだけの返答では市民サービスは成り立たない。
 災害時やインフルなど緊急を要する出動、24時間の対応も直営にしかできない。

6. 文書管理及びメールカー業務

 現在嘱託職員によりメールカーを運行しているが 経費等、民間よりコスト面でも勝っていたため現在に至っている経緯がある。
 また文書管理にはハンディを持つ職員が安心して働ける職場として確立してきた経緯もある。
 外部評価では公文書の電子化とあるがほとんどがペーパーのままというのが現状である。
 公文書を扱う面でも民間はなじまないと考える。

7. 区庁舎管理業務

 区管理員は区庁舎の小修繕の他に、郵便、メール等の公文書取り扱い、窓口案内等、市民と直結した業務を行っている。
 私たちの数ある業務の中で唯一、市民と接する場の多い区庁舎管理業務だが、垂水区役所の管理員と住民ボランティアが一体となって区役所ロビーに大きな水槽を置き、「エフィラ」と呼ばれるミズクラゲの赤ちゃんの繁殖に成功した。
 花びらに似た形をしたこのミズクラゲは子どもからお年寄りまで幅広い人気を集め、区役所に来庁する方々に「やすらぎ」を与えている。
 これからは資格取得、研修等でスキルアップを目指すのが効率化と考えている。
 この様に、市民から目に見えにくい仕事が多いが、今までの考え方にとらわれず、一人ひとりが業務プロセスの再構築に取り組んでいる。