【自主レポート】

第34回兵庫自治研集会
第1分科会 「新しい公共」と自治体職員の働き方

 ワンストップ窓口の導入自体はずいぶん前から議論をされてきましたが、最近になって、各自治体において急速にワンストップ窓口の導入が進められています。
 東灘区役所でも、市民課諸証明と税諸証明のワンストップ窓口(以下証明発行コーナー)を2011年10月より設置をし、約9カ月が過ぎました。市民からの声、そこで働く職員の反応は非常に良い結果となっています。このレポートでは東灘区証明発行コーナーの設置について報告をします。



市民が求める窓口へ
~役所目線から市民目線へ近づくために~

兵庫県本部/神戸市職員労働組合・東灘支部 村上 敏光

1. ワンストップサービスで市民満足度が向上

 東灘区役所では、市民サービス向上に向けた協議を2009年の夏から区と支部で進めてきました。当初は、市民の来庁が多い市民課・保険年金医療課職場(2階)の受付時間や待ち時間の短縮、待合スペースの混雑解消を重点にし、どのようにすれば市民サービスが向上していくかを協議してきました。
 また、同時に他都市で導入されているワンストップ窓口についても、市民サービス向上の手段として、お互いに調査・研究し、東灘区に導入することのメリットやデメリットについて議論をしてきました。
 これから私たちがどのような市民サービスをしていくのか。区役所に来られる市民は何を求めているのか。年代や来庁目的によって区役所へ求めるものも違ってくる。「市民にとっての利便性」とは。
 このような考え方のもと、東灘区では、課題の解決のために1階に市民課証明(2階)と税証明(3階)を交付する証明発行コーナーを設置することを、区と支部で合意しました。
 合意に至るまでに支部では市民課・市税事務所の該当職場で、それぞれ4回、その他の職場においても3回ずつ職場懇談会を開催し、「市民サービスの向上」について議論を深めてきました。
 「市民サービスの向上」については、この間様々な取り組みを進めてきた中で、職員の中ではサービスを充実させたと思っていても、市民が本当に満足しているかという「市民満足度」をあげていく必要性、同時に職員自身が「やりがいをもって仕事をする。区役所をどう変えていくのかという意識を持つ」など「職員満足度」をあげていくことの必要性を重視する意見が出されました。同時に、ワンストップサービスを実施することのメリットやデメリット、ワンストップ以外のサービスの向上など、職場からは肯定的なものから否定的なものまで様々な意見が出されてきました。
 支部は、こうした職場懇談会で出された意見をみんなで考えながら、新たなものを作るのであれば「区役所のサービスが良くなった・便利になった」「役所が自分たちのために考えてくれている」また、職員からは「やってよかった」「もっとできることはないだろうか」という積極的な意見がだされるようなきっかけになるよう議論を進めてきました。

2. 市民にとっての利便性とは(目的に応じた窓口)

 2011年10月11日より証明発行コーナーが開設されました。3連休明けの初日は、たくさんの市民の方が来庁し、ロビーが発行待ちの市民であふれる状態となりましたが、証明取得に来られた方からの評判は良く「便利になったね。」「2階、3階にいかずに取れるんですね」「早くなった」「さっと用事がすんで良かった」「区役所のイメージが変わった」などの声が直接職員に寄せられました。
 既に設置して9カ月がたちますが、今でも来られる市民の方から、「テキパキしてますね」「早いですね」「1階で済むのは便利ですね。」などの声が寄せられています。そして、職員からは、「感謝の言葉を言われるとうれしい」などの声が出されています。
 このことは、支部が求めてきた「市民満足度」が上がったことを表す言葉であると思います。役所目線でなく市民目線でサービスを向上させることがこうした結果につながったものと思います。
 銀行や郵便局に行くと、今では見慣れたATMが入口の近くにあります。ほとんどの人は簡単な入出金・振込は窓口ではなくATMを利用しています。導入された頃は不安だった人たちも、今では老若男女関係なく、だれでもATMを利用しています。
 証明発行のように簡単な用件なら、エレベータや階段を使わず区役所に入ってすぐに済ませたい。反対に、引っ越しなどの手続き、各種支払いのなどの相談は、ゆっくり丁寧に話を聞きたいというように、区役所に来られる方の目的によって求める窓口の形態は変わってきます。
 この目的による窓口を作っていくことこそが「市民にとっての利便性」の一つであり、市民満足度を上げていくことにつながっていくと思います。



3. コンパクトオフィスへの転換 省スペース化

 実際の設置に向けて、1階に証明発行コーナーを設置するのは紆余曲折しました。もともと事務スペースでないロビーに事務スペースと待合を作ったため、床はタイル、天井は吹き抜けという構造の中で、狭隘対策・空調対策・セキュリティ対策に手間取りました。
 特に狭隘対策については、証明発行の窓口は一つにできても、証明を作成する端末は住基関連証明用、戸籍関連用、税証明用と3種類の端末が必要となり、それらの配置スペースがコーナーを圧迫しました。
 そのため、職員が書類を運ぶという導線が確保できない状況となり、その中から人が動かない導線づくりが始まりました。結果として、すべての作業が動かず座ったままでこなせることにより、受付から交付までがよりスムーズになりました。
 一方で、記載台には、各種証明交付申請書があります。一度に2種類以上の証明申請をする際には、何度も申請書を記入するという手間を省くためにも、今後は申請書の統一などを求めていくことが市民サービスの向上になるのではないかと考えています。


4. 届出窓口を市民が求めるものへ

 証明のワンストップの次は? とよく聞かれます。他の自治体においては、既に住所異動にからむ他課の届出をワンストップ窓口でしているところもでてきています。神戸市では、2001年度以前は国保・年金の届出は住所異動の窓口で行っていました。しかし、保険年金制度の度重なる制度改正により、より丁寧に制度を説明することが求められてきたことから窓口を分けてきた経緯があります。
 一方で、他都市で評価されているように、住所異動・保険関係・子ども関係・老人関係などの届出について、一ケ所の窓口ですべての用件が済ませられるのが、市民が求めている窓口であると考えます。
 市民の人が一ケ所の窓口で用件を済ますには、①オールマイティーの職員を作りその人がすべての処理を行う窓口②市民の人は動かず、対応する職員が変わっていく窓口③ちょっと変則ですが、同一フロアーなら、空いているときは次の窓口を案内し次の窓口が混んでいるときは、職員を呼んできてその場所で対応する。という3つのパターンがあると思います。市民が求めるのは、必ず一か所で一人の人が処理をするということでなく、何度も順番待ちをせず、たらいまわしをせず、正確・的確な処理であることから、上記①~③はそのための手段であり、大都市においては①の対応は、非常に難しいものと考えています。現実的な対応としては②③となってくるのではないかと考えています。
 支部としても、今後さらなる市民サービスの向上のために調査・研究を進めていく必要があると考えています。


5. 終わりに

 今回のレポートでは証明発行コーナーを主として報告をしてきましたが、東灘区役所での市民サービス向上の取り組みは、最近にはじまったことではありません。東灘支部では、1982年に第1回来庁者アンケートを実施して以来、区側が来庁者アンケートを始める2005年まで2年に一度、区役所に来られる方の人の流れ、庁舎に関する要望、その他自治体に求めるものなどを集約して、その都度、市民サービスの向上に反映させてきました。そして、2000年にオープンした新庁舎においても、震災経験も含め、市民導線や案内表示も含め議論を進めてきました。もちろん、それらがすべて完全であったわけではなく、今日にいたるまで、市民・職員からの声の中で、常に変わってきています。私たちは、これからも現状に満足することなく、今回のワンストップサービスでできた余力で相談業務を充実させるなど市民満足度の向上を図っていきます。


2012年1月26日実施来庁者アンケートより