【自主レポート】 |
第34回兵庫自治研集会 第1分科会 「新しい公共」と自治体職員の働き方 |
にわかに脚光を浴びたが、昨今ではその手法や効果のあり方に多くの疑問や課題が並べられている「事業仕分け」。元来、自治体は「行政評価」という手法で内部評価による事業内容の精査を行ってきた。その評価を予算という形で議会に提案し、議決によって事業が認められてきたことこそが、「二元代表制」の本質である。その部分に、当該自治体の歴史と変遷についてほとんど認知していない外部の視点を評価に加えることが、果たして適当だろうか。実際に当市で行われた仕分け作業を元に、行政評価のあり方について検証する。 |
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1. 「事業仕分け」の導入に至る経緯
(1) 佐藤前市長の姿勢と市長の交代
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【事業仕分け :行政刷新会議】 行政刷新会議が行う「事業仕分け」は、国家予算の見直しにおいて国民への透明性を確保しつつ、予算執行の現場の実態を踏まえ事業の必要性を判断し財源の捻出をはかるとともに、政策・制度・組織等について今後の課題を摘出するものである。「事業仕分け」は、2010年度予算編成のために民主党政権が導入した手法。2002年、シンクタンク構想日本によって地方自治体を対象とし、その予算の無駄を明らかにするために行われたものが最初である。それを国の予算編成にも取り入れようと、2009年11月に実施された。 |
(2) 政争の具
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2. 研修で判明した、事業仕分け(構想日本)の姿勢 |
【構想日本】 構想日本とは、日本の非営利系シンクタンク。1997年に元大蔵省職員の加藤秀樹氏によって設立された。専任の研究員は置いておらず、研究活動は外部の有識者にほとんど依存している状態にある。 |
(1) 主役は構想日本
(2) 「質問」と「攻撃」
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【事業仕分けの流れ】 |
今回の研修で模擬仕分けに選定された事業は「広報誌発行事業」。関連事業として、ホームページの運用やケーブルテレビを活用した行政情報の提供も併せて説明され、多方面にわたる住民への情報提供によって、まちづくりに対する市民の関心を高め、市政への積極的な参画をはかることが事業の目的であることも示された。有効かつ必要不可欠と認識されて当然の事業であり、さほど改善(の余地はあり得るかもしれないが)すべき(可能な)要素が見当たらないことから、仕分け人の質問・指摘が注目された。(※なお、模擬仕分けは構想日本から2人、あとの3人は市職員が仕分け人となって始められた)仕分け人からの質問事項を大きくまとめてみると、
(3) 「議論」はどこにいったのか
(4) みんな仲良く「要改善」
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3. 行政と住民の溝が広がる「仕分け」の公開
(1) 検証なき公開の実施
(2) ここでも公務員批判
(3) 仕分けの本質は傍聴者に伝わったのか?
(4) 得たものは何か……
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4. 評価の本質を探る
1月24日、野田政権が「行政構造改革実行法案」の原案をまとめた。原案には、(組合として賛成できない)国家公務員総人件費の2割削減も盛り込まれているが、非効率な事業運営が問題化している独立行政法人の再編や官僚OBの天下りなどが指摘される公共法人への政府支出の見直しなどの計画策定も織り込まれている。また、「行政刷新会議」の廃止を前提に内閣に「行政構造改革実行本部」を設置するなど、行革をすすめていくには、国や自治体が責任を持って自らの視点で取り組むべきであると位置づけている。 |
5. 原因の追求と真の改善
前段で述べたとおり、「事業仕分け」に対してはマスコミのほとんどが「職員の意識改革・向上」に注文をつけた。では、このような状態はいったい誰がつくってきたのか。職員が不断の努力を続けてきた行為に対し、「トップダウン」という手法や無秩序な「機構の改編」等で、職員の知恵と行動を遮断してきたことに原因はないのだろうか。 |
日田市は、2012年度一般会計当初予算案について、1月に実施した「事業仕分け」の結果を反映させ、一部事業を実質廃止するなど11年度当初比で計約2,750万円を削減したことを明らかにした。事業仕分けは政策シンクタンク「構想日本」と協力して実施。対象になった8事業はすべて「要改善」「再検討」などの見直しを求められていた。 |