【自主レポート】

第34回兵庫自治研集会
第1分科会 「新しい公共」と自治体職員の働き方

 2012年1月に、佐伯市内の2地域を対象に暮らしの困りごとアンケートを実施した。対象とした地域は、中村北町と米水津地区で、中村北町は市役所がある中村南町の隣の地域で、古くから住宅地として現在に至っている。家屋が建ち並び、密集した住宅地域である。米水津地区は、合併前の旧米水津村で海岸部に位置した地域で、現在の佐伯市から見れば周辺地域にあたる。分析については、まず全体的な数値を示し、次に各地域における回答状況や意見について記述する。



「暮らしの困りごとアンケート」の分析について
(佐伯市編)
自治研センター社会保障専門部会

大分県本部/大分県地方自治研究センター・社会保障専門部会・佐伯市職員労働組合 佐保 昌一

1. 回答者について

 聞き取りを行った世帯数については、中村北町が23世帯、米水津地区が21世帯の計44世帯であった。回答者の年代は、30代が5人、40代が3人、50代が8人、60代が12人、70代が12人、80代が4人であった。回答者の年齢を見てわかるように、60代以上の方が回答されていることで、高齢化が進んでいるということを示しているようである。男女別であるが、偶然男性・女性とも半数の22人ずつだった。

年 代

2. 世帯人員について

 1人暮らしが7世帯、2人暮らしが19世帯、3人以上が18世帯だった。地域別に見ると、中村北町は4人、13人、6人で2人暮らしの世帯が多いのに対して、米水津地区では3人、6人、12人と3人以上で生活している世帯が多かった。

3. 世帯の主な仕事について

 世帯の主な仕事で、①会社勤めと答えた方は8人、②農林水産業と答えた方は2人、③自営と答えた方は6人、④公務員と答えた方は2人、⑤無職と答えた方は24人、⑥その他と答えた方は2人だった。無職の方は年金で生活されている方が含まれている。 次に、回答者やご家族が感じていることや願いなどについて、聞き取りを行った。

4. いま困っていることや不便に感じていることについて

 複数選択可となっており、地域別に選択肢別の回答者数を記載する。


【中村北町】
選択肢
回答者数
選択肢
回答者数
① 交 通
⑧ 農林水産
② 買い物
⑨ 人間関係
③ 医療・健康
⑩ 災 害
④ 子育て
⑪ 地域づくり
⑤ 福祉・介護
⑫ 世話役不足
⑥ 収入・財産
⑬ その他
⑦ 仕 事
 
 

 回答の中で多かったのが、③医療・健康と、②買い物だった。これは、この地域でかかりつけの医療機関やスーパー・個人商店が少なくなってきていることを反映しているものと思われる。
 具体的なことについて、いくつか回答をいただいているのでここに記載する。
「近くにスーパーがない(32歳女性)」、「近くのスーパーがだんだんなくなる(57歳女性)」、「スーパーが遠くなった。近所の店が閉店した。(66歳女性)」、「広い道路ができて、大きい車が通ると家が揺れる(64歳女性)」、「騒音・振動(65歳男性)」、「年金が少ないこと(77歳男性)」、「年金だけでは少々不安(71歳男性)」、「体調不良(78歳女性)」、「ごみ箱を同じにしてほしい(54歳男性)」、「地域での一般的な協働・協力の欠如(72歳男性)」、「一人暮らしなので災害など恐怖です(68歳女性)」、「仕事がない(55歳男性)」


【米水津地区】
選択肢
回答者数
選択肢
回答者数
⑧ 交 通
⑨ 農林水産
⑩ 買い物
⑨ 人間関係
⑪ 医療・健康
⑩ 災 害
⑫ 子育て
⑪ 地域づくり
⑬ 福祉・介護
⑫ 世話役不足
⑭ 収入・財産
⑬ その他
⑮ 仕 事
   

 回答の中で最も多いのが、⑩災害である。これは、昨年3月11日に発生した東日本大震災の影響が大きい。米水津地区は、海岸部で過去に津波で被害を受け、犠牲者も出たことがある。そのために地域で暮らす方は不安を感じている。
 具体的なことについて、いくつか回答をいただいているのでここに記載する。
「災害時等の避難場所がない。家の裏山の舗装を言っても全くしてくれない(36歳女性)」、「道が悪いので災害の時が怖いし、救急医療が間に合わない(59歳女性)」、「消防団(44歳男性)」、「防災対策(53歳男性)」、「地震・津波が心配(58歳男性)」、「もし地震がきたら……(35歳女性)」、「今困っていることではないですが、津波が発生した場合、避難場所に簡単な小屋等があれば良いのではないかと思います。(72歳男性)」、「車がないから自在に受診できない(73歳女性)」、「高齢者が多い(65歳男性)」、「バスの時刻が悪い(76歳女性)」、「世代交代(77歳男性む)」

5. 解決の方法について

 困ったことをどのように解決しましたかという問いに対しては、①区長に相談と答えた方が6人、②行政に相談と答えた方が3人、③地域で話し合うと答えた方は0人、④何もしていないと答えた方が26人、⑤その他と答えた方が5人で、④何もしていないと答えた方が圧倒的に多く、中村北町、米水津地区の両方で多かった。何もしていないと答えたのは前述の困ったことに対しての回答であったと思われ、①から③の範囲では解決できない困りごとであることが要因のようである。

6. 周囲に困っている人はいないかについて

 これについては、①いると答えた方が6人、②いないと答えた方が36人であった。設問文章を誤解して「私から見て周囲に困っている人はいないか」という問いに思えたのかもしれないし、近所の方がどう困っているか把握できていないのかもしれない。これについては、米水津地区の方が困っている人の数が多いので、中村北町のような住宅地では隣近所との付き合いの希薄さもあるかもしれない。
 ここからは、選択肢ではなく記述する質問である。

7. 困ったことを解決するには何が必要かについて

 困ったことを解決するためには何が必要だと思いますか、という問いに対して、回答のあったものを以下に記載する。「福祉行政の充実(65歳男性)」「地域の活性化(57歳女性)」・「自身の努力(74歳男性)」「地区等で話し合う(78歳女性)」・「地方分権で直接居住者住民サービスの向上。市町村合併後、一時的混乱かと思いますが、サービス低下を招いています(72歳男性)」「地域住民同志のつながりが希薄化してきている。余りにもプライバシーを重視しすぎるのでは(67歳男性)」「高齢化し若い人が少ないため、子どものいる家庭が少ない。地域に活気がないような気がします(66歳女性)」「市民と役所のコミュニケーション(36歳女性)」「交通面、道路の整備とか公共の乗り物の整備(回数)、独居老人の買い物(59歳女性)」「地区と行政の距離を近くする必要がある(44歳男性)」・「住民の助け合い、話し合い、行政の理解(51歳女性)」「災害が起きても若い人は大丈夫だと思うが、高齢者(一人暮らし等)はどのような支援を必要とするのか考える必要があると思う(53歳男性)」「情報と防災設備の早急の設定を望む(58歳男性)」「公共交通の充実(73歳女性)」・「若い世代が必要(65歳男性)」・「地域住民のつながりと実態把握(34歳女性)」「人づくり(77歳男性)」・「困りごと相談と言っても、相談員が地域の人だと相談しにくい(63歳女性)」・「バスのダイヤを増やしてほしい(63歳女性)」

8. 自治体(行政)への意見・要望について

 自治体(行政)に対してご意見や要望がありますか、という問いに対して、回答のあったものを以下に記載する。
 「仕事などがあって、若者が住める町に(57歳女性)」「まだまだ職員数が多いのではないか(74歳男性)」「悪い所を言っても、なかなかしてくれない(77歳男性)」「市議会議員の人数の減について(78歳女性)」「もっとしっかりしてほしい!(54歳男性)」「窓口業務における親切さが不足。特に高齢者に対して努力をお願いしたいです(72歳男性)」「若者が結婚し、子育てできる働く場が必要(67歳男性)」・「議員にもっと働いてほしい(36歳女性)」「中心部だけでなく、へき地の方に目を配っていただきたい(59歳女性)」「視野を広げる(38歳女性)」「消防団員の定年等のあり方も考えてほしい(44歳男性)」「弱い立場の人のことを考えて仕事をしてほしい(46歳男性)」「地区等の要望事項が適切に処理されているのか(53歳男性)」「どのように相談したらよいのかわからない(73歳女性)」「若者が定住できる施策を行ってほしい(65歳男性)」「地域活性の取り組みを行うようにしてほしい(77歳男性)」「相談事への対応、及び答えが聞けないので本当に対応してくれたのかどうか(63歳女性)」「振興局に地元の職員が少ない(63歳女性)」

9. 自治体職員への意見について

 自治体職員についてご意見はありますか、という問いに対して、回答を以下に記載する。
「話し方が冷たく感じます。もう少し心のこもった対応を!(32歳女性)」「地域に積極的に出かけて!(57歳女性)」「何もしてない(77歳男性)」「市役所に行っての限りですが、部署・課によって多忙さがあるようですが、忙しくない課もあるようで、人員が必要なのかと感じました(78歳女性)」「国家公務員給与引き下げ等、公務員に対する世論が悪い意味で風潮化しているが、最賃制度等国民所得の向上、物差し役も果たしている訳ですので、反論し現給を守るべきです(72歳男性)」「市民の立場に立って物事を考えてほしい(59歳女性)」「がんばってください(46歳男性)」「いろいろなことを聞いても、職員が知っていないことが多い(53歳男性)」「振興局に、地元の人(知っている人)を置いてほしい(73歳女性)」「対応が遅い(65歳男性)」・「地元に精通した職員を配置してほしい(77歳男性)」「振興局に尋ねても、本庁に聞かないとわからないと言われる事が多い(40歳女性)」
 ここで、住民の方へのアンケートは終了するが、2つの地域の自治委員2人に対して、追加の質問を行っている。

10. 自治委員に対しての質問について

 一番大変なことは何ですか、という質問に対して次のような回答があった。
市町村合併後セクトにこだわり、横の連絡等全く悪い。改善努力すべきだ。地区の行事催事に人の集まりが年々悪くなること。役員になる人が少ないこと。
 地域で特に気を配っていることがありますか、という質問に対して次のような回答があった。
 地域住民の輪をいかに充実・発展させるかです。今は地震、津波の事で頭が痛い。地区の人が、どこまで真剣に考えているのか心配。
 行政に対して自治委員としてご意見がありますか、という質問に対して次のような回答があった。
 市町村合併後セクトにこだわり、横の連絡等全く悪い。改善努力すべきだ。何をお願いしても、予算書を理由に対応が遅い。わかっていても、なかなか対応してくれない。

11. まとめ

 今回のアンケート調査で、地域の生活環境が違えば困っていることや心配事も違いがあることにあらためて気付いた。普段の生活の中で不安に感じていることが、表れているようだった。こうやって答えていただいた困りごとや心配事に対して、私たちはまずきちんと向き合わなければならない。「それはできない」、「難しいから」と簡単に答を出してはいけない。そうすることは、私たち自治体職員として責任を果たしていないし、そんな姿勢があるから自治体や自治体職員に対して期待をしないことにつながっていく。まずは、問題と向き合って、何か解決策はないかしっかり考えて、それでもないと言って答えるようなことになっても、考えて何とかしようとした姿勢は少なからず理解してもらえると思っている。自治体や自治体職員に対して、耳の痛くなるようなことも書かれているが、そういった批判に対しても、謙虚にしっかりと向き合わなければならない。市町村合併で年々職員が減少し、周辺部の振興局職員も一気に減少した。しかし、そんな中でも私たちにできることがあるのではないか。また、私たちだけではできないことをどうやって行政以外の方、地域に暮らす方と協力してできるようにならないか、そういったことを考えていかないと、いずれ自治体は地域から見放されていくのではないかとさえ思っている。