【自主レポート】

第34回兵庫自治研集会
第1分科会 「新しい公共」と自治体職員の働き方

 社会保障専門部会でアンケートを、大分市では市街地域として「大道・春日地区」を、郊外地域として「大南地区」を選択した。「大道・春日地区」は大分駅より車で10分程度の住宅と商店が混在する、古くからの住宅街である。また「大南地区」は大分駅より車で30分ほどかかる田畑が多く残る地区で、近在には大型団地を抱えている。今回のまとめではアンケートの数値を上げた後にコメント欄に記載された自由意見をふまえ、所見を加えていきたいと思う。



「暮らしの困りごとアンケート」の分析について
(大分市編)
自治研センター社会保障専門部会

大分県本部/大分県地方自治研究センター・社会保障専門部会・大分市職員労働組合
河野  誠・和田徹二郎

1. 回答者の区分

 回答者数:大道・春日地区 21人、大南地区 20人
 年代区分:20代 5人、30代 3人、40代 8人、50代 7人、60代 2人、 70代 11人、80代 5人
 男女比:男性 25人、女性 16人
 回答者数は市街地域、郊外地域ともほぼ同数であった。
 全年齢層に分布が見られるが、地区別にみると大道・春日地区は平均的に分布しているが、大南地区では20代、30代の分布は見られなかった。郊外地域での若年齢者層の減少、地域の高齢化が進んでいる実態が表れていると推測する。他方、世帯主の年齢が反映されているものと仮定すれば、郊外地区では若い世代の独立世帯が少なく、親もしくは祖父母と同居していると推測される。逆に市街地域では若い世代の独立世帯が多いものと考えられる。男女比は男性25人、女性16人で6割が男性であった。

2. 世帯人員

 1人 8人、2人 10人、3人以上 23人
 8割以上の世帯が2人以上で暮らしていることが判った。また1人暮らしの世帯は、市街地域(4人)では若年層もしくは50歳代までの年齢構成であったが、郊外地域(4人)では70代、80代の高齢者であった。

3. 世帯の主な仕事

①会社勤め13人 ②農林水産業1人 ③自営8人 ④公務員3人 ⑤無職6人 ⑥その他10人

 会社勤めは市街地域で9人、郊外地域で4人であった。自営は市街地域で5人、郊外地域で3人であった。特に市街地域での自営は若年層3人を含み、町の活性化の一翼を担っているものと思われる。農林水産業は郊外地域の1人のみ、公務員は市街地域で1人、郊外地域で2人であった。無職、その他には高齢者が多く含まれ、年金生活の方がこの分類に入っているものと思われる。ただ、市街地域での無職には少数の若年層も含まれる。

4. 今困っていることや不便に感じていること

【大道・春日地区】
① 交 通
⑧ 農林・畜産
② 買い物
⑨ 人間関係
③ 医療・健康
⑩ 災 害
④ 子育て
⑪ 地域つくり
⑤ 福祉・介護
⑫ 世話役不足
⑥ 収入・財産
⑬ その他
⑦ 仕 事
 
 
・両親(80代)がまだ2人で生活しているが、だんだん2人でできることが限られてきている。(60代男性)・自治会の役員が決まらない(40代男性)・就職難(20代女性)・収入が増えたらいいと思う(20代男性)・給料が上がらない(40代男性)・生活費、子供の病気、休日保育など(30代女性)・公務員との差が大きすぎる、税金が高い(50代男性)・障害者を抱えている家族が大変(30代女性)・いつまで仕事ができるか不安(50代男性)・親が歳を取り今後の世話がどうなるか(40代女性)・高齢の両親がいる(40代男性)・地域からの行事の参加要請があるが、いつも同じ顔ぶれとなって広がりがない(70代男性)・高齢者の1人暮らしや高齢者家族が増え、気がかり(70代男性)

【大南地区】
① 交 通
⑧ 農林・畜産
② 買い物
⑨ 人間関係
③ 医療・健康
⑩ 災 害
④ 子育て
⑪ 地域つくり
⑤ 福祉・介護
⑫ 世話役不足
⑥ 収入・財産
⑬ その他
⑦ 仕 事
   
・(交通について)車の免許証を返した(80代女性)・年配者と若者との考え方のアンバランス(70代男性)・福祉介護のことについて、歳を重ねるごとに心配(80代男性)・主人が亡くなり、農業の後継問題(60代女性)・福祉(70代女性)・休み無しで残業が続く、有る時と無い時の差が激しい(50代男性)・自治区の役員のなり手がいない(70代男性)・公共交通機関の不便さ、学校統廃合(40代女性)・女性2人世帯なので区役等に協力できない(80代女性)・親の介護(70代男性)

 市街地域では交通や買い物など生活基盤への不満が少なかったが郊外では多くみられた。全体を通しては福祉・介護や収入・財産関連の悩みや不安が多かった。
 個人的な問題も多く含まれるが、市街、郊外ともに自治会組織の維持、役員のなり手不足に苦慮しているように感じた。また若年層は就職や収入についての悩みが、高齢者は高齢世帯への支援や介護への心配が多くみられた。特に60~70代が親の介護を行う「老老介護」からくる悩みは郊外地域に多くみられた。自治体職員が相談に乗るべきケースも少なくないものと思われる。

5. 解決方法

 解決方法では「何もしていない」(13人)が圧倒的に多かった。ついで「その他」(9人)であるが、欄外に「時間が解決する」「息子に相談する」など様々な方法が取られていることが推測される。「区長に相談」(3人)「行政に相談」(6人)「地域で話し合う」(2人)は少なく、問題によって相談者自身が方法を取捨選択しているものと思われる。

6. 周囲に困っている人はいないか

 困っている人が「いる」は19人、「いない」は15人であった。困っている人の原因は以下のとおり。
・農地の管理、後継者問題(複数)・人間関係・詐欺・学校の廃校・1人暮らしの老人が多い(複数)・子供の結婚問題・就職先が無い・病気

7. 困ったことを解決するには何が必要か

 ・家族の協力(40代女性、70代男性ほか)・話し合いと協力(50代男性)・ふれあいの場つくり(70代女性)・繋がり薄いため困っていても外に出さない家庭への支援、声かけ(70代男性)・地域間の協力、行政との協力(20代女性)・国や地方自治体の施策(50代男性ほか)・困りごとを聞いて解決していく窓口が必要(80代女性、40代男性)・相談する相手や場所を明確にしてもらいたい(60代女性)・気軽の相談できる機関が必要(ただし時間が9時~17時では意味が無い)仕事中以外に相談できない(40代女性)・住民との交流が必要(30代男性)・若者が住みやすい環境(就職や住居)(70代男性)・過疎対策(40代女性)・福祉の充実(50代男性)・健康保険料、年金、市県民税などの引かれ物を少なくすれば少し助かります(20代男性)・町の安全(20代女性)
 様々な意見があるが、自治体で対応しなくてはならないような案件の場合、自治体が積極的に動くか、もしくは相談窓口を一元化して相談しやすい体制を希望しているように感じる。自治会で解決できる案件は話し合いなど自助努力する意見も見られた。

8. 自治体(行政)への意見・要望

(農林水産関連)
・第1次産業の施策等の充実(70代男性)・農業施策を充実してもらいたい。農地の買取等(60代女性)・過疎対策(40代女性)(福祉関連)・福祉の充実(70代男性)・住んでいる自治区には検診車が来ないので困っている(80代女性)
(自治組織への支援関連)
・支所の職員にはよくしてもらっており助かっている(70代女性)・周辺地域の施策の充実(40代女性)・交通安全協会と自治会(自治委員連絡協議会)との連携を(70代男性)・問題解決可能な補助制度の確立・充実(50代男性)・校区毎に相談‘できる’窓口があればよい(50代男性)・小さい単位での意見交換会を開き、地域の声を聞いてほしい(70代男性)・担当者がすぐ変わる(40代男性)・定時内でしか働かないのではなく土、日、時間外にもサービスを提供できるような労働シフトを取れないのでしょうか(40代女性)・窓口をたらい回しにしないでほしい(40代男性)
(その他)
・昨年の原発事故を受けて太陽光発電などには個人・団体(法人)の区別なく補助金を出し、公民館等には無償で設置してはどうか(50代男性)・見えない部分や知らない部分がある(50代男性)・決まり事にこだわらないで話を聞いてください(40代男性)・もっと市民、県民の目線となって考えてください(20代女性)・ちゃんと話を聞いてほしい(30代男性)・ごみの有料化には反対です(70代女性)・公務員が多すぎる、人員を削減して福祉等に回してほしい(30代男性)・行政の人が多すぎる、税金を安くしてもらいたい(50代男性)・税金減額(40代男性)
 行政への要望は、大きいものは施策の提言から小さいものは個人的要望まで様々な意見が上がっている。中には真剣に受け止め、改善しなくてはならない部分もあるように感じる。また少なからず良い印象を持っている住民もいることから、今後も努力が必要である。

9. 自治体職員への意見

(自治会への参加)
・もっと積極的な地域活動への協力(40代女性)・地域活動の協力が薄い(50代男性)・地域行事に顔を出してほしい(70代男性)・市から下ろされてくる事業に対して職員の参加意識が薄い感じがする。「プライバシー」が強く表に出て町内でも誰が職員かつかめず、働き掛けがしにくい面もある(70代男性)(職員への賛辞)・支所の職員はよくお世話をしてくれる(70代男性)・市民相談センターの電話対応がとても良かった(20代男性)
(職員への批判)
・情報が行き届いてないのではないか(50代男性)・親切みをあまり感じない(50代男性)・机に座っているだけで仕事をしていないように見える(40代男性)・たらい回しにならないようにしてください(してほしいです)(20代女性)・市長室の受付はきれいな必要ありますか?(20代男性)・休みが多い(50代男性)・休みが多い、仕事量が足らない(30代男性)・公共の奉仕者ではないのですか(30代男性)・昔に比べれば親切、丁寧は段違いによくなったが、民間では土曜日も仕事をする会社が増えています。土曜日も働いてほしい(40代女性)・真剣に仕事をしてほしい(40代男性)
 職員への意見としては「自治会組織への参加をもっと積極的に行ってほしい」というものであった。批判が多くみられ、なかには偏見と思われる意見もあることから、誤解を受けないよう、真摯な姿勢で職務に当たる必要があるように思う。

10. 自治委員に対してのアンケート

(1番大変なことは何ですか?)
・中堅の世話役の不足で人材の配置に苦慮している(70代男性)・最近仕事が増えた気がする(70代男性)・地域事業への理解や広がり、人とのつながりを高めること(70代男性)
(地域で1番気を使っていること)
・区民の高齢化が進んで区役等で働き手が不足しているので人員の配置に気を付けている・高齢者の対策、お世話等・つながりをつくる、高める活動
(行政に対して自治委員としての意見)
・区からの要望に対して財源不足を理由に断ることのない様にしてほしい・市民協働のパイプを太くしてほしい・各課が取り組んでいる事業が地域に下ろされてくるが、「同じような内容ではないか」と思われるものがある。自治委員は、役員不足や後継問題を抱えながらも地域活動を支える基礎組織として、その機能維持に努められている。高齢化は重大な問題で、役員自身が高齢者でありながら地域の高齢者を労わる、訪問活動を行うなど無理が生じる部分が多々見受けられる。このような中、行政からは様々な行事を要請され、対応に苦慮するところ大であると推測される。意見を集約する中で、「各課が取り組んでいる事業が地域に下ろされてくるが、『同じような内容ではないか』と思われるものがある」というものがあった。正にその通りで、役所から出て行く前に担当者間で協議し、複数事業を一本化する、開催時期を見直す等すれば自治会組織への負担は軽減されるのではないだろうか? また、行政職員の地域行事への参加率の低さは由々しき問題と考える。せめて休日に行われる地域行事に行政職員が積極的に参加すれば、清掃活動等の労働を伴う行事運営もスムーズになるものと思われる。「市民協働」を掲げるのであれば、行政職員は行政サイドからの参加だけでなく、市民サイドからの参加をしなくてはならない。そうでなければ、行政が予算削減を御旗に無理難題を自治会に押し付ける形となり、機能不全になるのではないだろうか。