【自主レポート】 |
第34回兵庫自治研集会 第1分科会 「新しい公共」と自治体職員の働き方 |
大分市職労としては一方的な合理化に対抗するため、1999年から、新たな施策を組合側から提案し実現させることを目的とした「自治体改革闘争」を運動の重要課題として取り組んできました。その成果として、給食調理員が中心となって運営を行う「市民ふれあい学校給食試食会」を報告する。 |
|
1. はじめに 全国の自治体では、厳しい財政状況を理由とした歳出削減や人員削減に歯止めがかかっておらず、良質で安定的な公共サービスの提供は危機的な状況となっています。大分市においても、多聞に漏れず“行政改革”の名の下、現業職場を中心に合理化攻撃に晒されており、大分市職労としては一方的な合理化に対抗するため、1999年から、新たな施策を組合側から提案し実現させることを目的とした「自治体改革闘争」を運動の重要課題として取り組んできました。その成果の一つが、給食調理員が中心となって運営を行う「市民ふれあい学校給食試食会」(下記参照)であり、今年で12回目を迎えました。 |
|
2. 保護者からの高いニーズ、事業化にむけ協議をスタート 事前にクラブの指導員と保護者に対してアンケート調査を行い、指導員には、昼食の現状や給食提供の問題点などの質問、保護者には、クラブの利用頻度やお弁当の回数、給食提供のニーズについて質問を行いました。集計結果は、手作りのお弁当を持たせている保護者は88%いる一方で、スーパーやコンビニのお弁当などを持たせている保護者も12%おり、約10人に1人の児童が、手作りのお弁当を食べる児童の隣でコンビニ弁当や菓子パンを食べているという実態が浮かび上がりました。また、夏休み期間中に給食提供を希望する保護者は84.6%もいること、給食費も400円程度でも利用を希望する保護者が87.8%いるなど、クラブへの給食提供に対するニーズは高いものでした。一方、クラブの指導員からは、給食提供を行った場合、配膳や給食費の徴収などに課題があるなどの意見が寄せられました。 |
|
|
3. 当局の消極的な姿勢に協議は難航 当局との協議は、2012年3月28日から6月26日の間で計4回行いました。第1回の協議では基本的な課題として、クラブ(民間団体)への給食提供は法律上問題ないこと、小学校の調理場を使用することも、本来業務に支障を及ぼさない範囲で一時的に他用途に使用する場合であれば問題ないことが確認できた一方で、クラブへの給食提供は学校給食にはあたらないとして、食中毒が発生した場合の補償、管理監督者の任命などの課題が残ったほか、給食費についても、人件費・光熱水費・衛生用品費などを含めた場合、相当程度、高くなるとの指摘を受けました。第2回の協議では、「食中毒が発生した場合の補償は、全国市長会で加入している『市民総合賠償補償保険』で対応できる」との見解が示されましたが、その他の課題として、教育財産の使用許可、補正予算、市議会への説明、全クラブ対象の給食提供体制、指導員の負担 など、当局から“事業化できない理由”が多く出たことから、試行までに整理が必要な課題を次回までに明確にすることとして協議を終えました。 4. 児童育成クラブへの給食提供の足がかりを掴む 3回の協議を終えて、当局の後ろ向きの姿勢に具体的な進展が見られなかったため、改めて当局の考えを確認したところ、当局からは、児童育成クラブ運営委員会の運営は校区のボランティアに委ねており、クラブごとの体力差が大きく、また、クラブと学校(教育委員会)との連携がほとんど無いなかで、給食提供の提案を合意させるのは困難、との見解が示されました。そういったなかで、当局に対して、事業化を望む組合側の熱意を訴えた結果、オープンスクールの取り組みの一環として、今年の夏休み期間中に、教師や児童(児童育成クラブに通う児童を含む)、保護者などを対象に、給食調理員の知識や技術を活かした食に関する啓発、指導などを行う「(仮称)夏休み食育推進ふれあい給食会」として試行するとの方向性を見出しました。具体的には、今年度は1校において夏休み期間中の数日間で試行し、給食提供と併せて食育に関してのミニ展示会や給食調理員との意見交換会などを実施するという内容であり、当局としても、今回の試行を検証し来年度以降も拡大するという意向であったことから、組合側としても、将来的な事業拡大の可能性を見据え、「(仮称)夏休み食育推進ふれあい給食会」の試行を実施することとしました。 5. おわりに 私たちは、「自治体改革闘争」の必要性を頭では理解しても、いざ実践となると自らの労働強化につながるため、及び腰になってきたのかもしれません。しかし、行政サービスを最前線で担う者として、地域のサービスを担保する現業職場を自然消滅させるのを許してはなりませんし、そのためには仕事のあり方を変えていくことも必要です。今回で給食職場を取り巻く問題がすべて解決するとは思っていませんし、今回の成果もどのように実を結ばせるかは、これからの取り組みにかかっています。 |