【要請レポート】

第34回兵庫自治研集会
第2分科会 地方財政を考える

 新潟県柏崎市は原子力発電所がもたらす豊富な財源に支えられ財政運営を行ってきたが、原発稼働年数の経過とともに原発財源が減少し、また東日本大震災の影響により原発の運転停止が続く中、原発財源に頼らない財政運営が求められている。



原発財源に支えられてきた柏崎市財政の現状と課題


新潟県本部/自治研推進委員会・第1小委員会

1. 財政分析

(1) 原発財源
① 歳入に占める原発財源の割合
  歳入に占める原発財源の割合は、2003年度(平成15年度)は23.1%であったが2009年度(平成21年度)は15.0%で約8%原発財源への依存度がさがったことになる。
  東京電力原子力発電所に係る償却資産の課税標準額の減が主な要因であり、歳入占める原発財源の割合は今後さらに下がっていく傾向にある。
  2008年度(平成20年度)は、11%と極端に下がっているが、原発財源が27.7億円と前年度の51.7億円に比べて24億円減ったためである。2007年(平成19年)の中越沖地震で、当時、柏崎刈羽原発の運転を全面停止したことが要因と考えられる。


(グラフ1-1)歳入に占める原発財源の割合
(出所)柏崎市

原発財源歳入(電源三法による交付金など)
(単位:億円)
 

2004年度

2005年度

2006年度

2007年度

2008年度

2009年度

原発財源

26.5

27.6

32.4

51.7

27.7

46.0

対前年度比

1.1
(+4.3%)

4.7
(+17.1%)

19.3
(+59.6%)

-24.0
(-46.4%)

18.3
(+66.2%)

(出所)広報かしわざき 決算特集号

(2) 財政指標
① 住民基本台帳
  2005年(平成17年)5月1日に刈羽郡高柳町と西山町を編入合併し、2005年度(平成17年度)の人口(2006年3月31日現在)で、約9千人増え、94,050人になった。その後年々減少し、2009年度(平成21年度)は2005年度(平成17年度)より約2,500人減り91,577人になった。


(単位:人)
 

2004年度

2005年度

2006年度

2007年度

2008年度

2009年度

住民基本台帳人口

85,294

94,050

93,638

92,705

92,279

91,577

対前年度比 

8,756

-412

-933

-426

-702


② 財政力指数(3カ年平均)
  財政力指数とは、地方公共団体の財政力を示す指数で、基準財政収入額を基準財政需要額で除して得た数値の過去3年間の平均値をいう。財政力指数が高いほど自主財源の割合が高く、財政力が強い団体ということになり、1を超える団体は、普通地方交付税の交付を受けない。
  財政カ指数の低い高柳町(2004年度(平成16年度)0.114)と西山町(同0.309)を合併したため、2005年度(平成17年度)の財政カ指数は0.1ポイント以上下がり、0.785になった。2006年度(平成18年度)から2009年度(平成21年度)の間はほぼ0.79から0.82の間を推移している。


(単位:%)
 

2004年度

2005年度

2006年度

2007年度

2008年度

2009年度

財政力指数

0.925

0.785

0.794

0.815

0.82

0.79

対前年度比 

-0.140

0.009

0.021

0.005

-0.030


③ 形式収支、実質収支、単年度収支、実質単年度収支
  2007年度(平成19年度)は、歳入総額714億4,747万円から歳出総額680億4,342万円を差し引いた差額34億405万円(形式収支)は、2008年度(平成20年度)に繰り越している。この中には、2008年度(平成20年度)に支払う22億2,811万円(翌年度の繰越財源)が含まれているため、これを除いた11億7,594万円(実質収支)が黒字となる。しかし、この実質収支は、前年度以前からの収支の累積のため前年度実質収支12億3,396万円を差し引いた単年度収支は、5,802万円の赤字であった。
  形式収支の黒字額が34億405万円と極端に大きなっているのは、中越沖地震関連経費の翌年度繰越財源が多いためである。


(単位:千円)
 

2004年度

2005年度

2006年度

2007年度

2008年度

2009年度

歳入総額 A

45,521,333

48,157,201

46,103,801

71,447,475

64,828,041

59,493,320

歳出総額 B

43,977,085

47,116,340

44,604,250

68,043,425

63,003,424

57,125,334

歳入歳出差引
(形式収支)
C=A-B

1,544,248

1,040,861

1,499,551

3,404,050

1,824,617

2,367,986

翌年度に繰越すべき財源D

551,162

106,353

265,588

2,228,107

400,704

222,322

実質収支 E=C-D

993,086

934,508

1,233,963

1,175,943

1,423,913

2,145,664

単年度収支 F

132,086

-344,035

299,454

-58,020

247,970

721,751

積立金 G

2,000,578

869

265,341

2,721,128

116,004

13,501

繰上償還金 H

1,467,129

978

290,930

積立金取崩し額 I

1,625,616

700,000

2,100,000

実質単年度収支
J=F+G+H-I

507,048

423,963

564,795

563,108

364,952

1,026,182


(グラフ1-2)形式収支、実質収支、単年度収支、実質単年度収支
(出所)柏崎市決算カード

④ 経常収支比率
  2009年度(平成21年度)は08年度(平成20年度)と比べて減少したものの、97.8%と依然と高い数値である。
  要因としては、原子力発電所にかかる固定資産税の減収により、分母になる経常一般財源が減少し、維持補修費、扶助費、補助費等の分子になる経常的経費増によるものである。
  また、2009年度(平成21年度)は2008年(平成20年度)より4.1%下回っている。
  要因としては国の地方財政計画による普通交付税の交付額の増加で分母となる経常一般財源が増加したためである。


 

2004年度

2005年度

2006年度

2007年度

2008年度

2009年度

経常収支比率
(%)

91.5

91.7

97.4

104.1

101.9

97.8

対前年度比

0.2

5.7

6.7

-2.2

-4.1


⑤ 実質公債費比率
  実質公債比率2007年度(平成19年度)は22.0%で県内トップである。
  柏崎市は2011年度の公債費負担比率適正計画で、2013年度(平成25年度)から25%を超える事態を回避できるとする見通しを示した。民間借入金の繰り上げ償還などが理由である。


 

2004年度

2005年度

2006年度

2007年度

2008年度

2009年度

実質公債費比率
(%)

20.7

22.2

22.0

21.9

21.9

対前年度比

1.5

-0.2

-0.1

0.0


⑥ 地方債現在高
  合併した2005年度(平成17年度)は505,144円、2007年度には中越沖地震により540,020円となった。2006年度(平成18年度)以降も増え続け、2009年度(平成21年度)は2007年度(平成19年度)より69,820円増え、609,840円となった。合併後の新市建設計画及び中越沖地震の災害復旧事業が影響していると思われる。


 

2004年度

2005年度

2006年度

2007年度

2008年度

2009年度

地方債残高
(千円)

35,178,376

47,508,836

47,640,777

50,062,572

54,310,930

55,847,292

対前年度比
(千円)

92,707
(+22.5%)

3,632
(+0.7%)

31,244
(+6.1%)

48,531
(+9.0%)

21,289
(+3.6%)


⑦ 債務負担行為現在高
  一人当たり債務負担行為現在高は、2005年度(平成17年度)は、90,729円で2004年度(平成16年度)の77,353円と比べて13,376円(+17.3%)増えている。この要因は、2005年(平成17年)5月1日の旧高柳町と旧西山町の合併により当時の現在高が合算されたためである。
  合併後は、約1割ずつ年々減少してきており2009年度(平成21年度)は55,902円で、合併した2005年度(平成17年度)の90,729円から34,827円も減少している。
  債務負担行為現在高は、2009年度(平成21年度)末における2010年度(平成22年度)以降の支出予定額は51億1,935万円となり2008年度(平成20年度)末から6億5,435万円(11.3%)減少している。


 

2004年度

2005年度

2006年度

2007年度

2008年度

2009年度

債務負担行為
(千円)

6,597,758

8,533,084

7,442,473

6,595,444

5,773,693

5,119,347

対前年度比
(千円)

1,935,326
(+29.3%)

-1,090,611
(-12.8%)

-847,029
(-11.4%)

-821,751
(-12.5%)

-654,346
(-11.3%)


⑧ 積立金現在高
  2007年度(平成19年度)末の積立金残高83億698万円(市民1人当たり89,607円)となっており、2006年度(平成18年度)より19億6,174万円増加した。これは、中越沖地震からの復旧・復興に対処するため、公共施設管理基金を廃止し財政調整基金に積み替え、電源立地地域対策交付金の追加分を電源立地地域整備基金に積み立てたことによるものである。また、柏崎・夢の森公園完成に伴う東京電力からの寄付金を柏崎・夢の森公園維持管理基金へ積み立てたことも大きく影響している。
  2009年度(平成21年度)は2008年度(平成20年度)と比べて約13億円増え、126億840万円(市民一人当たり137,681円)となっている。これは、新たに交付された電源三法交付金制度の一つである原子力発電施設等立地地域特別交付金を原資とした「原子力発電施設等立地地域特別交付金事業基金」の創設が主な要因である。これは、将来の公共施設の整備や維持補修に要する経費に備える目的とした基金である。


 

2004年度

2005年度

2006年度

2007年度

2008年度

2009年度

積立金残高
(千円)

6,610,335

6,073,915

6,345,237

8,306,977

11,302,691

12,608,404

対前年度比
(千円)

-536,420
(-8.1%)

271,322
(+4.5%)

1,961,740
(+30.9%)

2,995,714
(+36.1%)

1,305,713
(+11.6%)


(3) 歳 入
 2005年度(平成17年度)から2009年度(平成19年度)にかけては、市町村合併と中越沖地震の影響が見て取れる。2005年(平成17年)に高柳町、西山町との合併により前年度より約26億円の増となった。また、2007年度(平成19年度)の中越沖地震の影響は特に顕著で、前年度より約253億円、前年対比55%増の大幅な伸びとなった。これは、地震の災害復旧・復興関連事業に要する経費に充てる財源として国県支出金、地方交付税、市債が大幅に増加したためである。翌年度以降も復旧・復興事業が継続するため、減少傾向ではあるものの、2009年度(平成21年度)は地震前の2006年度(平成18年度)の歳入額を約134億円ほど上回っている。


 

2004年度

2005年度

2006年度

2007年度

2008年度

2009年度

歳入決算額
(千円)

45,521,333

48,157,201

46,103,801

71,447,475

64,828,041

59,493,320

対前年度比
(千円)

2,635,868
(+5.8%)

-2,053,400
(-4.3%)

25,343,674
(+55.0%)

-6,619,434
(-9.3%)

-5,334,721
(-8.2%)


① 地方税
  景気低迷や地震の雑損控除による課税所得の減少、家屋の滅失や東京電力原子力発電所に係る償却資産の課税標準額の減少等により、2009年度(平成21年度)は2008年度(平成20年度)と比較して市民税が1億4,439万円(2.7%)、固定資産税3億7,104万円(3.9%)減となっている。
  合併した2005年度(平成17年度)と比較すると2009年度(平成21年度)は約9億5千万円減少し、161.7億円になっている。


 

2004年度

2005年度

2006年度

2007年度

2008年度

2009年度

地方税(千円)

16,547,201

17,113,072

17,164,689

17,484,896

16,738,346

16,166,329

対前年度比 

565,871

51,617

320,207

-746,550

-572,017


② 地方交付税、臨時財政対策債
  2005年度(平成17年度)は市町村合併に伴い、前年より約29億円の増となった。また、2007年度(平成19年度)に大幅に増額となっているのは中越沖地震復旧・復興事業によるものである。


 

2004年度

2005年度

2006年度

2007年度

2008年度

2009年度

地方交付税
(千円)

2,278,087

5,192,566

4,920,805

9,959,599

6,254,057

7,445,619

臨時財政対策債
(千円)

1,184,500

1,149,500

999,900

907,215

849,749

1,318,829

3,462,587

6,342,066

5,920,705

10,866,814

7,103,806

8,764,448

対前年度比 

2,879,479

-421,361

4,946,109

-3,763,008

1,660,642


③ 国庫支出金
  2007年度(平成19年度)は、中越沖地震災害復旧事業の影響により、前年比150%増、約55億円増え、91億円となった。翌年度も地震関連の繰越事業の関係で、引き続き大きな額となっている。
  2009年度(平成21年度)は、前年より約13億円の増となっている。原子力電源施設等立地地域特別対策交付金の増などによる。


 

2004年度

2005年度

2006年度

2007年度

2008年度

2009年度

国庫支出金
(千円)

3,195,498

4,187,145

3,500,618

9,092,539

8,099,570

9,438,339

対前年度比 

991,647

-686,527

5,591,921

-992,969

1,338,769


④ 県支出金
  合併後の2005年度(平成17年度)は約12億円増加し、約37億円になった。これは、合併で約2.7億円、農林水産事業で約1.4億円などである。
  2007年度(平成19年度)は、中越沖地震災害復旧事業の影響により、前年比で国庫支出金と同程度の伸びとなり、約53億円の増となった。その後は、震災前と同程度の額まで減少している。


 

2004年度

2005年度

2006年度

2007年度

2008年度

2009年度

県支出金
(千円)

2,531,133

3,713,352

3,518,307

8,823,581

5,745,623

3,690,071

対前年度比 

1,182,219

-195,045

5,305,274

-3,077,958

-2,055,552


⑤ 繰入金
  合併後の2005年度(平成17年度)は約57億円減少し、約13億円となった。
  2007年度(平成19年度)は2006年度(平成18年度)と比べて約51億円増えている。要因は中越沖地震関連に伴う事業費に充当するためであり、公共施設管理基金繰入金から約28億円、財政調整基金から21億円などを取り崩している。


 

2004年度

2005年度

2006年度

2007年度

2008年度

2009年度

繰入金(千円)

7,074,932

1,336,409

379,443

5,466,679

619,487

555,446

対前年度比 

-5,738,523

-956,966

5,087,236

-4,847,192

-64,041


⑥ 諸収入
  2008年度(平成20年度)は2007年度(平成19年度)と比べて約21億円増えている。これは、中越沖地震被災住宅特別資金、中越沖地震対策特別資金の増によるものである。


 

2004年度

2005年度

2006年度

2007年度

2008年度

2009年度

諸収入(千円)

5,953,125

6,173,278

6,525,551

7,043,770

9,152,705

10,492,145

対前年度比

220,153

352,273

518,219

2,108,935

1,339,440


⑦ 地方債
  市町村合併に関連した事業に伴う市債の借り入れにより、2005年度(平成17年度)は9.4億円の増となっている。
  2007年度(平成19年度)は中越沖地震関連の災害復旧事業実施に伴い、前年より約22億円の増となっている。また、翌年度も地震関連の繰越事業に伴い、さらに21億円の増となっている。


 

2004年度

2005年度

2006年度

2007年度

2008年度

2009年度

地方債(千円)

3,579,900

4,522,650

4,590,400

6,819,815

8,952,449

6,546,229

対前年度比

942,750

67,750

2,229,415

2,132,634

-2,406,220


⑧ 手数料
  手数料は、2009年度(平成21年度)に1億929万円増え2億7,674万円になり前年比65.3%も増えている。これは、家庭ごみ有料化導入に伴うごみ処理手数料の増加によるものである。


 

2004年度

2005年度

2006年度

2007年度

2008年度

2009年度

手数料(千円)

88,199

184,792

177,547

162,323

167,452

276,747

対前年度比

96,593

-7,245

-15,224

5,129

109,295


(4) 歳 出
 歳出は2007年度(平成19年度)の前年度より234億円の増となった。これは中越沖地震の災害復旧・復興関連事業に要する経費の増で、その影響は2009年度(平成21年度)へと続いている。その他増額の要因として、2007年度(平成19年度)に公共下水道特別会計などの公営企業法適用などによる増と公共施設管理基金から財政調整基金への積み替えがある。
 中越沖地震後の歳出決算額は、2007年度(平成19年度)は680億円、2008年度(平成20年度)は630 億円、2009年度(平成21年度)は571 億円と減額しているが、中越沖地震関連経費が依然として含まれるため、平年ベースとは隔たりがある。


 

2004年度

2005年度

2006年度

2007年度

2008年度

2009年度

歳出決算額
(千円)

43,977,085

47,116,340

44,604,250

68,043,425

63,003,424

57,125,334

対前年度比

3,139,255
(+7.1%)

-2,512,090
(-5.3%)

23,439,175
(+52.5%)

-5,040,001
(-7.4%)

-5,878,090
(-9.3%)


① 人件費
  2005年度(平成17年度)は合併と旧柏崎地域広域事務組合の解散に伴い、約28億円増加し、約88億円になった。2007年度(平成19年度)は一時的に増えているが2008年度(平成20年度)、2009年度(平成21年度)と減り、2009年度(平成21年度)は約78億円となり、2005年度(平成17年度)と比較すると約10億円減っている。これは市長等の報酬カット、職員の3%給与削減が主な要因である。
  定員適正化計画による職員数の減(2005~2009年度で8%減目標。結果11%減)により、類似団体との人口一人当たりの人件費の比較において、2006年度(平成18年度)ではプラス8.1%であったが、2009年度(平成21年度)ではプラス3.1%となりマイナス5.0%に推移してきている。


 

2004年度

2005年度

2006年度

2007年度

2008年度

2009年度

人件費(千円)

6,057,660

8,822,180

8,281,730

8,696,086

8,333,285

7,803,945

職員数(人)

769

1,117

1,100

1,076

1,055

1,022

対前年度比

348

-17

-24

-21

-33


② 扶助費
  高齢化の進行により義務的経費が増加している。
  2007年度(平成19年度)児童手当の制度改正などにより増加しており、少子高齢化に伴い、今後もこの傾向は続くものと思われる。
③ 公債費
  2005年度(平成17年度)は市町村合併や柏崎地域広域事務組合の解散に伴う債務を継承したこと、繰上げ償還(約15億円)により、約34億円増加し、約72億円になった。その後は、50億円台で推移している。
  2009年度(平成21年度)は59.8億円で60億円に近づいている。これは、合併特例債(借入金の元利償還の70%が普通交付税措置)を有効に活用し、積極的に事業を実施しているためである。
  中越地震、中越沖地震による災害復旧事業や合併特例債事業による市債の元金償還が本格化し、増加傾向にある。


 

2004年度

2005年度

2006年度

2007年度

2008年度

2009年度

公債費(千円)

3,752,219

7,197,891

5,532,567

5,439,600

5,702,495

5,982,750

対前年度比 

3,445,672

-1,665,324

-92,967

262,895

280,255


④ 物件費
  2005年度(平成17年度)は合併に伴い、約14億円増加し、約61億円になった。これは、委託料が約6億円増加したことが大きい。また、2007年度(平成19年度)は中越沖地震により約75億円増え、約131億円になった。これは災害廃棄物処理等の経費が増えたことが要因である。
  公共施設には新しい施設も多くあるが、老朽化した施設や利用度の低い施設も見受けられ、これらの施設については、「公の施設のあり方」の見直し作業を実施し、順次統廃合などに取り組んでいる。指定管理者制度やアウトソーシングの増加に伴い、これらの委託料の増加で物件費の割合が高くなっていることも近年の特徴である。


 

2004年度

2005年度

2006年度

2007年度

2008年度

2009年度

物件費(千円)

4,687,546

6,072,019

5,622,242

13,124,742

7,019,015

5,768,988

対前年度比 

1,384,473

-449,777

7,502,500

-6,105,727

-1,250,027


⑤ 補助費等
  2005年度(平成17年度)は旧柏崎地域広域事務組合で行っていた事業を市直営にした(解散)ことなどによって、約20億円減少し、約21億円になった。また、2007年度(平成19年度)は約55億円増加し、約76億円になった。これは、中越沖地震に伴う被災者生活再建支援金の増加と、下水道・農業集落排水事業会計が公営企業法適用になったことなどが大きい。


 

2004年度

2005年度

2006年度

2007年度

2008年度

2009年度

補助費(千円)

4,083,133

2,076,071

2,044,653

7,579,361

5,559,730

7,205,661

対前年度比

-2,007,062

-31,418

5,534,708

-2,019,631

1,645,931


⑥ 建設事業費
  2005年度(平成17年度)の市町村合併後、合併特例債の有利債を利用することが進められ、増加傾向にあった普通建設事業費が2007年度(平成19年度)中越沖地震の影響によりさらに増額となっている。
  2008年度(平成20年度)に中越沖地震で被災した市民の公営住宅を整備したことと土地(商業用地)取得により、前年を大きく上回り、人口一人当たり決算額が類似団体平均を大きく上回った。2009年度(平成21年度)に減少したものの依然として類似団体平均を上回っている。今後は、中越沖地震関連の財政需要が建設投資から起債償還へシフトするため、減少することが予測されるが、長期的な視点で各種社会資本整備の必要性や効果を見極めていく必要がある。


 

2004年度

2005年度

2006年度

2007年度

2008年度

2009年度

普通建設事業費
(千円)

5,207,079

6,196,635

6,516,468

7,043,347

10,416,066

8,474,325

対前年度比

989,556
(+19.0%)

319,833
(+5.2%)

526,879
(+8.1%)

3,372,719
(+47.9%)

-1,941,741
(-18.6%)


⑦ 災害復旧事業費
  中越沖地震の影響により、2007年度(平成19年度)・2008年度(平成20 年度)は中越沖地震関連事業費が増加した。2009年度(平成21年度)は災害復旧事業が完了し、約41 億円減少したことが挙げられるが、依然として平年ベースと隔たりがある。


 

2004年度

2005年度

2006年度

2007年度

2008年度

2009年度

災害復旧事業費
(千円)

1,183,226

1,530,462

1,059,166

4,811,245

6,465,344

2,334,329

対前年度比

347,236
(+29.3%)

-471,296
(-30.8%)

3,752,079
(+354.2%)

1,654,099
(+34.4%)

-4,131,015
(-63.9%)


⑧ 繰出金
  2008年度(平成20年度)は約57億6千万円で07年度と比較して約2億9千万円低くなっているが、2009年度(平成21年度)は61億円を超え2008年度(平成20年度)と比べると約3億7千万円増えている。これは、上水道、下水道などの公営企業の中越沖地震関連事業費が増加したためである。
  また、公営企業において、公的資金保証金免除繰り上げ償還、銀行等資金の繰り上げ償還を実施することにより利子負担を軽減し、一般会計からの繰出金の抑制に努め、将来負担比率の軽減につなげている。


(単位:千円、%)
 

2004年度

2005年度

2006年度

2007年度

2008年度

2009年度

公営事業等繰出金

5,019,694

5,458,306

5,494,121

6,059,102

5,764,570

6,133,711

対前年比

438,612

35,815

564,981

-294,532

369,141

将来負担比率

227.9

211.4

183.0

対前年比

-16.5

-28.4


(5) 建設事業
 豊かな原発財源に依存して多くの公共施設の建設が行われ、他市と比べると、市民一人当たりの財産(行政財産、普通財産)が大きい状況である。また、2007年度(平成19年度)と2009年度(平成21年度)の公共施設の箇所数を比べると、公会堂・市民会館が2か所から4か所と2か所増え、公民館が26か所から27か所と1か所増えているが、陸上競技場、野球場、プールは減っている。施設の廃止や譲渡、休止など施設の見直しを行っていることがわかる。その一方、2007年(平成19年)7月の中越沖地震災害からの復興、発展を最優先に、合併特例債(借入金の元利償還の70%が普通交付税措置)を有効に活用し、市民会館整備事業など積極的に建設事業を行っている。そのため、投資的経費の金額が多額になっている。今後も、公共施設の維持管理費(委託料、光熱水費、賃金など)の負担が懸念される。


2. まとめ

(1) 原発に頼らない財政運営を
 原発は、地域経済、雇用に大きく影響し、市財政でも関連財源は大きな存在である。2003年度(平成15年度)は約23%を占めていた原発財源も、東京電力原子力発電所に係る償却資産の課税標準額の減少等により2009年度(平成21年度)は約15%ほどに縮小している。
 原発の運転期間を原則40年、最長60年にするなどの原子炉等規制法の改正案が国会に提出された。原発の寿命を考えると、現在の原発が稼働している状況は一過性にすぎない。国は、2013年度(平成25年度)から原発停止でも原発交付金の支給を検討しているが、今後は、中・長期的な計画をたて、過度に依存しない社会を構築し、新たな財源が確保できるような財政運営を目指す必要がある。

(2) 公共施設の整理
 福島第一原発の事故は、柏崎市内の雇用や関連産業に影響し、法人市民税は減少し、財政規模を縮小せざるを得ない状況と思われる。
 「(6)③人口一人当たりの人件費、物件費等」からも分かるように、豊かな原発財源(地方税含む)に依存して、多くの公共施設の建設が行われ、その維持管理費(委託料、光熱水費、賃金など)が大きいことがうかがえる。
 今後も引き続き公共施設の整理を行い、維持管理費を抑制し、財政規模縮小に対応した財政運営を行っていく必要がある。

(3) 財政計画の検証を
 柏崎市は、2017年度(平成29年度)までの財政計画を修正し、黒字を確保できる見込みを示した。これは2010年度から原子力発電所が順次運転を再開する前提で作られた。しかし、福島第一原発の事故で原発を取り巻く環境が大きく変化した。柏崎刈羽原発は、定期点検、ストレステストで2012年(平成24年)3月に全基が停止した。原発の停止により交付金が見込めず、また東京電力が赤字に転落するため法人市民税も見込めないことが推察される。今後、柏崎市が示した財政計画を検証していく必要がある。

(4) 引き続き借金の借り換え、繰り上げ償還を実施し実質公債比率25%回避を
 二度の震災により多額の災害復旧事業債の発行を余儀なくされ、併せて新市建設計画による重要プロジェクトの執行時期も重なったことから、2009年度(平成21年度)の将来負担比率は類似団体の平均106.7%を大きく上回る183.0%となっている。(⇒「(6)④ 将来負担の状況」参照)
 一般会計において、2005年度(平成17年度)に14億6千7百万円銀行等資金の繰り上げ償還を実施し、また、2007年度(平成19年度)から3年間の公的資金免除繰り上げ償還では計18億4千8百万円の低利資金への借り換え及び繰り上げ償還を実施しており、早期健全化団体の回避に向け努力していることは評価できる。
 当面は、将来負担比率、実質公債費比率とも高い比率で推移すると見込まれることから、建設事業の実施時期の調整・先送りを検討するとともに、今後も市債の繰上償還への取り組みにより将来負担の軽減を図る必要がある。
 そして、収入に対する借金返済額の割合を示す実質公債比率が25%を回避する必要がある。25%を超えると「早期健全化団体」に陥り財政健全化計画の策定(市議会の議決が必要)と、外部監査の要求の義務付けと同時に合併特例債(借金)の制限を受けることになる、いわば“イエローカード”をもらうことになるからである。