【自主レポート】

第34回兵庫自治研集会
第2分科会 地方財政を考える

 町財政の健全化のため、不要不急の事業及び無駄のある事業の見直しをする必要があるため、町職としての考え方を聞きたいという当局からの提案を受けて、組合員に、日頃、業務をこなすなかで改革が必要と思われる事業についてアンケートをとり、その結果をもとに討議を重ね、当局に提案した。現在、まだ、当局と話し合いが継続しているが、その内容について報告する。



笠置町事業仕訳の取り組み


京都府本部/笠置町職員組合

1. 取り組みの経緯

 町職および自治労京都府本部と、町当局との間で実施している賃金問題検討委員会において、町当局より町事業の検討について提起された。
【背景】町財政が逼迫している現状。
     ① 町人口の減少(厚労省推計では2035年に1,000人となる見込み)
     ② 高齢化率の上昇
     ③ 税等の滞納者増加
【町当局の提起理由】
 町財政の健全化のため、不要不急の事業及び無駄のある事業の見直しをする必要がある。財政難を解消していくためにも、町単費事業の目的が達成されたものや、達成が困難な事業について、町職としての考え方を聞きたい。
 町職からの提案内容について、町職執行部と担当課長・担当者とで検討し、その内容等を町二役に提言していきたいというものであった。

 この事業見直しについては、人口減少や財政難のもとで必要のない事業をやめ、その財源を有効活用することを目的とするものであって、町職より要望している給与改善のための財源をうみだすものではないことを確認し、町職として取り組むことに決定した。

2. 取り組みの状況

2011年9月22日   町当局より提起あり。
   12月8日   町職執行委員会にて、当局提起について取り組むために、以下の具体的な方法等を確認する。
① 組合員全員から、見直しが必要と考えられる事業を提案してもらう。(1事業以上。アンケート方式。)
② 提案事業を執行委員会で集約し、方向性を協議する。
③ 学識経験者等から、提案内容について意見を得、最終的に町当局に提案する内容をかためる。
2012年1月初旬   組合員アンケート実施。
   1月12日   執行委員会にて、組合員からの提案を集約。14人から10事業についての提案を確認。

【提案内容】
事業名
事業内容
人数
①ケーブルテレビ事業 町行事や町議会中継などを放映
5人
②各種まつり事業(イベント) 桜まつり、夏まつり、紅葉まつり等
6人
③巡回バス事業 町営の町内循環バス(無料)
3人
④高齢者JR運賃助成事業 70歳以上。上限2,000円/回×12回
3人
⑤高齢者への配食事業 町実施(無料)⇔ 町社協実施(有料)
1人
⑥老人手当支給事業 80歳以上。1,000円/月×12月
4人
⑦身障者への医療費助成事業 府制度以外に対象者を拡大し、町単費で助成
2人
⑧いこいの館への出資 第3セクターで運営する温泉施設への出資(助成)
3人
⑨公民館事業 施設の老朽化等
2人
⑩特別職の配置 副町長職の廃止
1人

2012年2月9日   執行委員会にて、提案のあった事業について協議。
   3月1日   執行委員会にて討議する事業を決定し(前述網掛けの事業)、学習会を開催することを決定。
※①④⑦⑧ → 廃止方向、③⑥ → 見直し方向
   3月21日   コメンテーターに澤井勝奈良女子大学名誉教授を招き、検討学習会を実施。執行委員会で協議した対象事業について討議し、町当局へ提案する内容等をまとめる。
(出席者)・執行委員 7人
     ・自治労府本部 2人
     ・京都地方自治総合研究所 1人
   4月4日   執行委員会にて、町当局(総務財政課長)との協議日程を確認。
   4月11日   町当局との検討討議開催(17:30~18:40)。
執行部より事業ごとに意見等を提案。
町職より提案した見直し・廃止事業について、町当局からは、国・府から補助を受け実施しているものもあり、簡単には廃止できない事業や、住民・町議員からの要望が強く、廃止・見直しが難しい現状があるといった事業の経過や、思い等の報告があった。
(出席者)・執行委員 6人
     ・町当局(財政担当課長及び職員) 3人
   5月9日   執行委員会にて、4月の討議での町当局の意見等を踏まえ、事業毎に補強・修正を行い、最終的な町職の意見として文書(シート)をまとめ、町当局(総務財政課長)へ提出することを決定。また、当課長より副町長へ提示してもらうよう要請することを確認。
   6月12日   町当局(総務課財政課長)へ文書を提出。

3. 今後の取り組み

 現在、最終的な事業見直し案を町当局に提出し、今後の事業運営方法がどのように示され、改善されていくのかを見守っている。


<町事業検討討議まとめシート>
(No.1)
事業名 ケーブルテレビ事業
予算他 2,231,000円(人件費除)
事業の概要他 ケーブルテレビネットワーク加入者宅へ町議会中継や町行事を放映。
その他、NHKや京都府広報番組のテープを借用し放送。
事業の現状・背景 住民アンケート(2008年実施)では70%が「見ていない」、また、70%が「あったほうがよい」と回答。
議会中継と町事業のおしらせが中心で、1日30分程度の放映。
和束町では事業が廃止されている。
ネットワーク加入世帯のみが視聴可能。
撮影で休日出勤が発生し時間外勤務が増加。費用対効果が不明。
事業の廃止・見直し理由 (行政の公平性の観点から)
1割の世帯がネットワークに加入してなく視聴できない現実。
(現状の実態の観点から)
7割が見ていないアンケート結果の現実。
地デジ対応が終了し、家庭でのBSやCS放送の受診件数が増加の現実。
個人ビデオの普及により、行事参加者の撮影が増加の現実。
年間数日の議会のための放映は非効率で、かつ、資料として残らない現実。
個人情報や肖像権への対応と対策がより必要となる現実。
防災行政無線が「お知らせ」に代行が可能な現実。
(経費の増大の観点から)
ビデオ放映に伴う機材やテープレンタル料に多額の費用が発生する実情。
2012年度からNHKのテープが借用できなくなる実情。
事業の代替策 事業のお知らせと議会中継のみの放送に限定し、放送日の削減を行う。
結論は 見直し事業
(No.2)
事業名 高齢者鉄道運賃助成金交付事業
予算他 780,000円(2010年度実績は857,000円)
事業の概要他 70歳以上の町民が対象、笠置駅を起点に往復のJR乗車券を購入時にその1/2を助成、助成金の上限は2,000円/回
事業の現状・背景 運賃(片道) 笠置⇒京都  820円  笠置⇒天王寺 950円
       笠置⇒大阪 1,110円  笠置⇒亀山  950円
事業の廃止・見直し理由 JRの複線電化促進とのからみでの実施ならば、見直しの必要有。
事業の代替策 今後、高齢化に伴い対象者が増加することは間違ないので、利用回数の制限を考慮することが必要。
助成額の上限を引き下げることも検討課題。
結論は 見直し事業

(No.3)
事業名 老人手当支給事業
予算他 2,912,000円
事業の概要他 80歳以上の町民に年12,000円を支給(2回分割支給)
事業の現状・背景 約250人が該当。他市町村では廃止が増加傾向。
事業の廃止・見直し理由 高齢化に伴う対象者の増加による費用の増大。
費用対効果が検証できない事業であること。
事業の代替は 介護サービスを受けていない対象者への支給に限定する。
支給額の引き下げも検討課題。
支給回数も年1回として事務の省力化に務める。
若年者への住宅助成、保育料・学童保育利用料等少子化対策への補助見直しの検討必要あり。
結論は 見直し事業

(No.4)

事業名 ①福祉医療(障害)制度事業  ②重度心身障害老人健康管理事業
予算他 ①2,667,000円  ②3,469,000円
事業の概要他 ①②とも、身障手帳3~4級か療育手帳B所有者と府制度の所得水準超過者が対象で、保険適用内での自己負担額なしで医療を受けられる制度のため、診療回数の増加になっている。
事業の現状・背景 ①②とも、近隣市町村では笠置町のみ実施。
町独自制度のため全額町負担事業で、2010年度で①は3,214,063円 ②は3,758,952円の見込み。
事業の廃止・見直し理由 ①②とも、府制度の所得基準超過者は、この事業対象から除外する見直し必要。
近隣市町村では身障手帳4級者は、障害程度の関連から対象除外となっている。
事業の代替は 段階的に自己負担制度の導入を行う。
結論は 見直し事業

(No.5)

事業名 いこいの館への補助事業
予算他 7,356,000円
事業の概要他 デイサービス事業の家賃と光熱水費として「いこいの館」へ支出。
2010年9月までは月118,000円の支払いが、10月から495,000円の増額となり613,000円となった。
事業の現状・背景 町のバックアップがあるという現実が、「館」の経営と従業員の意識に影響を与えている。
料理委託会社の「香芝」は売上の15%のみを「いこいの館」へ支払っている。光熱費は「いこいの館」が負担している現状。
事業の廃止・見直し理由 デイサービス事業の光熱水費と家賃の負担額としては妥当な額ではない。
「館」従業員のサービス業としての意識改革が必要。
料理委託業者の「香芝」に対し、売上に対するリベートの見直しや光熱費の負担をしてもらうべき。
事業の代替は 「いこいの館」は第3セクターであるので「館」の赤字分は独自で負担すべきである。
利用者にアンケートを行い、ニーズ等の把握に努める。
PRの充実に取り組むことが必要。
町からの補助金に「枠」を設けることが必要。
従業員にサービス業としての教育・研修が必要。
経営に指定管理者制度を導入することの検討も必要。
結論は 補助金支出の廃止を視野に入れた見直し事業

(No.6)

事業名 町内循環バス事業
事業の概要他 町内各路線を巡回してバス停で町民のみの乗降を無料で扱う。
バスはマイクロバス3台他1台の4台。
事業の現状・背景 乗車人数が少なく空バス運行が多い。
事故が発生している。
従事職員の待機時間が多い。
議員からの増便の要望もあり。
事業の廃止・見直し理由 利用者数の減少。
循環バスと移送サービスのあり方を検討する必要有。
事業の代替は デマンド運行方式や有料化の実施。
福祉タクシーの導入検討。
高齢者対象の社会福祉協議会移送サービスの充実と利用拡大。
観光客が乗降できる運行への対応検討。
運転手の技量とマナー向上の研修実施。
利用者アンケートを実施し、利用ニーズ等の把握に努める。
バス車体と車内に広告掲載を実施。
結論は 見直し事業