3. 調査方法
制度導入後7年が経過しています。これまでの制度の運用状況を把握し、実施における当初目的と現状を比較することにより問題点を抽出・整理することとしました。また、調査対象は、指定管理者制度の制度目的にふさわしいと思われる民間企業が管理している施設「大野原運動交流広場」について調査をすることとしました。
4. 大野原運動交流広場における指定管理の状況
(1) 当該施設の概要
名称:大野原運動交流広場
所在地:島根県鹿足郡吉賀町柿木村大野原969番地
施設の概要
① 開設 1996年(平成8年)3月
② 敷地面積 100,875m2
③ 主な施設内容 ゲートボールコート、テニスコート、ゴルフ練習場、多目的運動広場、芝広場、森林公園、親水公園
④ 指定管理者制度導入年月日及び協定年数
指定管理開始日:2007年4月1日
協定年数:5年
⑤ 利用者数及び利用料金収入
利用者数:2007年度6,466人、2008年度7,147人、2009年度8,058人
利用料金収入:2007年度3,507千円、2008年度3,556千円、2009年度4,030千円
(2) 指定管理者「有限会社テクトナカシマ」の概要
当該法人は、主に高速道路路肩、分離帯、サービスエリア、パーキングエリア及びインターチェンジ等の草刈・芝刈り・剪定を行っており、体育施設の施設管理業務の実績を含め施設・設備の維持・保全業務に関する事業を行っています。
① 設立 2000年(平成12年)5月
② 従業員数 28人
③ 主な活動
中国自動車道の維持・保全作業、造園・造景・植栽に関する事業、土木工事業、とび・土木・コンクリート工事業、石工工事業、管工事業、舗装工事業、警備業、労働者派遣業法に基づく一般労働者派遣業、特定労働者派遣業、体育施設の施設管理業、大野原運動交流広場の管理。
(3) 指定管理者制度導入経過
2007年に指定管理者制度での運用が開始されるまでの当該施設の管理形態は、第三セクターである「株式会社エポックかきのきむら」に委託していました。
2006年9月1日からの制度運用に向け、公募を行ったところ申請団体がなく2006年9月1日から2007年3月31日までの間は、当該施設の管理担当である教育委員会による直営での管理を余儀なくされました。
約半年間の直営での管理は、施設の申込み受付から設備等の管理委託契約の事務、草刈をはじめとする各種維持・保全業務等の対応に日々追われ、苦労が多かったそうです。
その後、再公募を行ったところ2者からの申請があり、現地説明会による制度と施設説明、選定委員会による候補者の決定を経て当該有限会社テクトナカシマを指定管理者に決定しました。
(4) 指定管理の現状
指定管理者制度での当該施設の運営管理においての問題点について現状を調査しました。
① 指定管理料
以前の委託契約とその経費を比較すると、2006年において委託料4,490千円だったものが、2007年の制度導入時に4,088千円まで減額し、制度更新時の2010年には4,080千円と410千円で9.1%の減となっています。利用料収入が2007年に3,507千円、2009年に4,030千円と14.9%の増となっていますが、この収入の増額の要因となるイベント経費及び広告宣伝費がかなり増額しており各年の決算状況はいずれも赤字となっています。
このような状況の中で指定管理者は抑えられた予算の範囲内での運営を強いられることとなっています。
② 管理期間の制約による制限
当町の指定管理期間はすべての施設で5年を最長としており、期間の満了に伴い当然ながら指定管理者の変更も可能性として出てきます。このことから収益性を高めるために行うべき施設・設備の改修及び変更も採算が取れないため行えないといった状況もあります。
③ 利用促進の活動
制度導入後の当該施設の利用者数は、2007年6,466人、2008年7,147人、2009年8,058人と右肩上がりとなっており、とても望ましい状況となっていますが、これはすべて指定管理者のイベント開催や広告宣伝の実施に伴うものです。制度導入後はこれらの活動はすべて指定管理者が行うべきものとの偏った考え方もあり、町の広告媒体(町広報・町HP・CATV放送等)を活用した広告は一切行われていません。公共施設の管理を目的として捉えた場合に町が協力すべき(できる)活動は他にもあるのではないでしょうか?
実際に指定管理者の方からお話をお伺いすると、このイベントや広告宣伝にかかる費用の増加が経営を圧迫しているということで、今後これに起因する利用者の減少が懸念されます。
5. まとめ
今回調査対象とした施設においては、指定管理者制度の目的である公の施設の管理に民間の能力を活用しつつ、住民サービスの向上を図るとともに、経費の削減を図るといったところが比較的よく達成できているといえます。
特に施設敷地内の草刈をはじめとする環境美化及び施設営繕業務、無料サービスボール提供や会員制度、子ども祭りやゴールデンイベント等積極的なイベント開催による施設利用率の向上はまさに民間団体の能力によるものだと確信します。
ただ一方では、行財政改革の名のもとに行われる予算の削減により、更新のたびに委託料の減額が行われ、将来的には申請団体がいなくなるといった事態への危惧や管理期間の設定に伴い、指定管理者が思い切った施設の改修や事業を行う意欲の低下、行政側の対象施設の丸投げ意識の定着により、行政と指定管理者の連携による施設維持管理が行えていない現状も垣間見られます。
これらの課題や問題点の改善のためには、まずこの指定管理者制度の導入の趣旨である「民間でできるものは民間に委ねる」といった感覚(丸投げ意識)を指定管理者や行政そして住民のすべてで払拭し、できる限り制度対象施設の運営にそれぞれの立場で関わり、連絡調整を密にすることが必要だと考えます。
その上でそれぞれの施設が果たすべき目的を見出し、指定管理者に期待する事項を明確化していくことが今後この制度を活用していく上で最も大切な事項だということが今回の調査で分かりました。 |