【自主レポート】

第34回兵庫自治研集会
第2分科会 地方財政を考える

 2005年度(平成17年度)に策定した「宇佐市行財政改革プラン」も、2009年度(平成21年度)までの5年間で修了しました。この5年間で改革プランに対してどのような成果があらわれたのか、2009年度(平成21年度)の決算状況等を含め検証を行いました。



宇佐市における集中改革プランの内容と財政収支試算


大分県本部/宇佐市職員労働組合・自治研推進委員会

1. 歳入歳出の収支状況

2009年度(平成21年度)決算額は
歳入 : 27,732,726千円 ……(A)
     歳出 : 26,102,160千円 ……(B)
(A)-(B)の差額いわゆる形式収支は1,630,566千円で、実質収支は1,219,152千円、単年度収支は190,084千円といずれも黒字となっています。
※ 形式収支  …… 歳入総額-歳出総額
    27,732,726-26,102,160=1,630,566 千円
※ 実質収支  …… 形式収支-翌年度に繰り越すべき財源
     1,630,566-411,414=1,219,152 千円
※ 単年度収支 …… 当該年度実質収支-前年度実質収支
     1,219,152-1,029,068=190,084 千円

2. 改革目標額に対する実績額(年度別)



【項目別総括】
① 人件費の見直し  (達成率 107.3%)
  「定員管理の適正化」および「給与等の見直し」により、各年度とも目標額を上回り、約28億4,500万円の縮減。
② 補助金等の見直し  (達成率 116.1%)
  補助金交付基準を策定し、再検証することにより、各年度とも目標額を上回り、約7億900万円の縮減。
③ 投資的経費の見直し  (達成率 82.7%)
  施設設備計画の延長に努めるも学校施設整備事業、東九州自動車事業、国体関連事業、経済危機対策事業などの新たな政策事業に取り組んだため、約7億8,200万円の縮減に留まった。
④ 扶助費の見直し  (達成率 98.6%)
  介護保険利用者負担額特別対策事業などを見直すことにより、目標額なみの約1,700万円の縮減。
⑤ 公債費の見直し  (達成率 0%)
  普通交付税の振替措置である臨時財政対策債などの償還のため、改革目標より約2,900万円債務費が増加。
⑥ 内部管理経費の見直し  (達成率 101.6%)
  旅費規程や臨時職員配置を見直すことにより、目標なみの約2億6,800万円の縮減。
⑦ 繰り出し金  (達成率 153.9%)
  介護特別会計での介護予防事業、下水道特別会計での施設維持管理費の縮減などにより、約3億6,300万円の縮減。
⑧ その他事務事業の見直し  (達成率 109.6%)
  法規関係追緑の見直しや納税組合奨励金の廃止など経常経費の節減により、目標を上回る約2億1,400万円の縮減。

〈歳出削減策合計〉  (達成率 105.0%)
  上記8項目の歳出削減取り組みにより、目標額49億4,200万円に対し、実績額51億9,000万円。

〈歳入確保策合計〉  (達成率 231.2%)
  「未利用財産の売り払い」や「広告収入事業」により、各年度とも目標額を上回り約9,600万円の収入増。

《改革目標額全体》  (達成率 106.1%)
  改革項目全体として、改革目標額49億8,300万円に対し、52億8,600万円の収支改善を図ったことになる。

3. 財政指数

 次に、財政構造の根幹をなす主な指標について、2005年度~2009年度決算で比較してみます。

(1) 経常収支比率 …… 経常経費充当一般財源/経常一般財源
   (一般的に70~80%が健全財政状況)
    2005年度 …… 96.0%  2006年度 …… 95.4%  2007年度 …… 94.8%
    2008年度 …… 94.0%  2009年度 …… 94.6%
   例年高い水準にあり、財政の硬直化は否めない状況下にあります。

(2) 健全化判断比率 …… (2008年度決算より算定)
① 実質赤字比率 …… (実質赤字額/標準財政規模)一般会計と飲雑水道事業会計の収支が赤字の場合、 その赤字額を標準財政規模で除した比率で、会計が黒字か赤字かを判断する指標。
   (早期健全化基準12.71%、財政再生基準20.00%)
   2007~2009年度  実質収支が黒字のため該当なし。
② 連結実質赤字比率 …… (連結実質赤字額/標準財政規模)一般会計等だけでなく公営企業会計やその他の特別会計も含めた収支に赤字や資金不足が生じた場合、その赤字額・資金不足額を標準財政規模で除した比率で、会計を合算して黒字か赤字かを判断する指標。
   (早期健全化基準17.71%、財政再生基準40.00%)
   2007~2009年度  実質収支が黒字のため該当なし。
③ 実質公債費比率 …… (元利償還金及び準元利償還金/標準財政規模)一般会計等で負担する元利償還金と準元利償還金の額を標準財政規模で除した比率です。収支のうち、どのくらいを地方債の借金に充てているかを示す指標で、一般事務組合等も含めて判断します。実質公債費比率は2005年度決算から算定しており、3ヶ月の平数値を使用します。
   (早期健全化基準25.0%、財政再生基準35.0%)
    2005年度 …… 14.5%  2006年度 …… 13.7%  2007年度 …… 11.4%
    2008年度 …… 10.8%  2009年度 …… 9.7%
     早期健全化基準の25%を下回っているものの、引き続き注意が必要です。
④ 将来負担比率 …… (将来負担すべき実質的な負債額/標準財政規模)町債や債務負担、公営企業に充当される繰入金、一般会計雇用職員の退職金等、将来負担しなければならない債務を標準財政規模で除した比率。
(早期健全化基準350.0%)
    2007年度 …… 93.2%  2008年度 …… 61.6%  2009年度 …… 37.7%
 以上、県下市平均並の数値もありますが、県下市・全国平均より高い数値もあり、国や県の方針に左右されない財政体質を築いていく事が必要です。

4. 基 金

 次に、「積立金の現在高」ですが、特に重要なのは、財政調整基金と減債基金であるので、これについて見てみます。
  財政調整基金 …… 年度間の財源の不均衡を調整するために設けられる基金。
  減債基金 …… 地方債の償還(返済)を年度をこえて計画的に行うために設けられる基金。


※財政調整基金・減債基金ともに取崩額の減により残高は増加しています。


5. 職員退職基金残高と退職予定者数

 職員退職基金と退職予定者数の推移は次の通りです。



 職員退職手当基金については毎年積み立てているものの、今後10年間に180人以上の退職予定者があるため、積み立てを積極的に行い、財源の年度間調整を行っていかなければなりません。

6. おわりに

 「集中改革プラン」による行政改革は、国の財政政策に大きな問題があることは言うまでもありません。「宇佐市行財政改革プラン」が予定の5年間を終え、数字的にみれば行革により赤字縮減の改革・改善効果があったようには見えます。しかし、宇佐市においては全職員の給料カット(4~6%)をはじめ様々な合理化をうけているのが現状です。
 職員数の変化を見てみても、合併時、本庁665人・安心院支所67人・院内支所88人に対し、現在では本庁611人・安心院支所34人・院内支所26人と職員数が激減しました。行革の結果もたらされたのは、人件費の抑制・職員数の減であり、住民サービスの低下・職員一人一人にかかる負担の増であることには、間違いありません。
 新たに「宇佐市行財政改革ビジョン」たるものが策定された現在、その場しのぎの財政運営にならないよう今後の動向に注視し、更なる検証を行い、真に住民の幸せに結びつく行財政の姿を求めなければいけません。