1. はじめに
列車・バスなどの公共交通機関が充実していない北海道、特に道東といわれる北海道東部地域においては、移動手段または物流手段として自動車が主流となっている。自動車という交通手段を失った瞬間に、地域の経済に大きなダメージを与えるだけでなく、人命の危機にまで発展する場合がある。ここ十数年は自動車の性能向上並びに道路整備の進展により、通常時に自動車が運転できない状況は数少なくなってきたものの、依然自動車が使用できない場面が少なからず存在する。
それは、自然災害による道路の通行不能である。
自然災害には豪雨・大雪・吹雪・濃霧・津波・高潮などがあり、その多種多様な異常気象により道路は通行不能(恐れも含む)となる。その際、道路管理者である自治体は、住民の生命を危険にさらさないよう「道路の通行の禁止」(いわゆる通行止)を道路法第46条第1項に基づき実施するが、その実施にあたっては様々な問題が発生する。
道路法第四十六条 道路管理者は、左の各号の一に掲げる場合においては、道路の構造を保全し、又は交通の危険を防止するため、区間を定めて、道路の通行を禁止し、又は制限することができる。
一 道路の破損、欠壊その他の事由に因り交通が危険であると認められる場合
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本レポートにより、住民の安全を第一に、どのように道路を通行止するかを北海道根室振興局管内の北海道を題材として、考えたい。
2. 通行止発生要因・頻度
まず、異常気象時の通行止めの発生要因は、先ほども述べたが次のとおりであり、それぞれ対応方法や通行止区間さらにはその通行止時間は様々である。
(1) 大雨や豪雨
根室管内において大雨の発生頻度は低いものの、河川や海岸付近の低地において道路上に冠水など発生する場合は、通行止を実施する。ほとんどの場合はごく短い区間(数百メートル程度)での通行止となり、比較的高い場所を迂回路として指定すれば、住民生活への影響はごく小さい。しかし、迂回路が設定できない場所での大雨による冠水などの場合は、地域が陸の孤島と化す場合もごく希に発生する。いずれの場合も雨が止み、水が引くまでの間が通行止め時間となり、長くても1日程度で解消される場合がほとんどである。
(2) 大 雪
発生頻度としては比較的多いのが大雪によるものである。根室管内は北海道内では比較的降雪の少ない地域であるものの、ひとたび大雪が降ると少雪地域であるが故に除雪機材の絶対的不足により道路の除雪が追いつかず、通行止を実施する場合がある。この場合は、通行止区間は管内全域に広がるため、迂回路も設定することは困難となり、孤立する地域も数多く発生し、住民生活や経済への影響は大きい。また、通行止時間は長いときには3~5日程度かかる場合もある。通行止めの要因の中では、非常に影響の大きい通行止である。
(3) 吹 雪
通行止の要因として、一番多いものはこの吹雪である。低気圧などにより強風を伴った降雪の際、降雪量が少なくても道路の視程不良により通行止を実施せざるを得ない時が多い。比較的平坦である根釧台地にある根室管内は、降雪が無くとも強風により雪が舞い、いわゆる“地吹雪”によっても視程不良のため通行止となる。通行止の区間は数十キロに及ぶものもあれば数百メートル程度の場合もあり、迂回路を考慮した通行止区間の設定には非常に困難が伴う。通行止時間も数時間程度から数日かかることまで様々であり、住民への影響は大きい。
(4) 濃 霧
根室南部地域において、濃霧の発生頻度は非常に高い。しかし、それに伴っての通行止はほとんど無い。これは、通行止をしなければならないレベル(視程100m以下など)の濃霧があるものの地域住民も十分注意して通行しているとの理由と、通行止めを実際にした場合においてバリケードなどの通行規制機材による事故を誘発しかねないことからである。仮に通行止した場合は、広範囲に及ぶものの海岸線付近のみの通行止となり、代替路線も設定しやすいことから、住民への影響は小さい。
(5) 津 波
東日本大震災で大きな災害をもたらした津波は、根室管内の道路においても脅威である。津波の発生頻度は低いものの、河川や海岸付近の低地においては津波警報発令時には、通行止を実施する。区間は数百メートル程度から数キロに及ぶものもある。比較的標高が高い場所を迂回路として指定するが、住民避難の観点や規制する側の生命の問題もあり、通行止がしっかり出来ない部分がある。通行止時間は、概ね津波警報が発令されている間であり、地震の震源が遠い時や規模が大きい場合は長期化する場合がある。
(6) 高 潮
台風・低気圧により高潮が発生した場合、海岸付近の低地において道路上に冠水などが発生する場合は、通行止を実施する。ほとんどの場合はごく短い区間(数百メートル程度)での通行止である。比較的高い場所を迂回路として指定すれば、住民生活への影響は少ない。
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