【自主レポート】 |
第34回兵庫自治研集会 第3分科会 自然災害に強いまちづくり~災害から見えた自治体の役割~ |
3・11東日本大震災は、埼玉県内でも本庁舎が損壊したり、多数の帰宅困難者が発生するなど、想定されていない事態に、多くの自治体は対応に追われました。また、首都圏直下型地震の襲来が予測され、地震災害への危機感が高まっています。本レポートは、公共施設等の耐震化や地域防災計画の見直し、被災者支援の体制確立が急務であることから、自治体調査によって実態を把握し、見えてきた課題を報告するものです。 |
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1. はじめに 3月11日の東日本大震災は、地震、津波、原発という未曽有の大災害をもたらしました。埼玉県内でも本庁舎が損壊(秩父市)したり、多数の帰宅困難者の発生や液状化によって住宅が損壊するなど、想定されていない事態に、多くの自治体は対応に終われました。また、直接的被害だけでなく、計画停電や物資の不足など、都市機能が麻痺する状況がしばらく続きました。 2. 自治体調査の結果の概要(抜粋)と課題 (1) 本庁舎の耐震に関する自治体調査について(抜粋) |
① 本庁舎の建設時期
② 耐震改修が必要な40自治体の耐震診断の実施状況
③ 耐震診断を行った31自治体のその後の対応
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④ 調査結果から見えてきたこと (2) 「防災(震災)に関する自治体調査」について |
① 地域防災計画について ・5自治体が時期未定であること、2013年(度)と回答した25自治体のなかには、見直しに着手はしても完了は2014年以降になることも考えられ、大規模地震が切迫していることを考えれば、早期の見直しが望まれます。 イ.東日本大震災を踏まえた防災計画見直しの重点について(複数回答) ・液状化被害が多数起きるなど独自の課題が表面化した久喜市は、「県の防災計画をもとに見直し」と回答していますが、他の項目は選択していません。しかし、県の防災計画をベースに見直すだけではなく市として防災のまちをどうつくるのかが求められていると思われます。 ・「帰宅困難者対策」(77%)、「放射能対策」(67%)、「女性の参加・配慮」(60%)は、東日本大震災によって明らかになった課題です。全体の中では高い率を占めていますが、必ずしも十分とは言えず、的確に受け止められているのか疑問が残ります。 また、的確な被害想定を挙げた自治体は17団体(27%)でした。計画は被害想定によって策定されるものですから、何より的確な想定が求められるはずです。東日本大震災で言われた「想定外」を繰り返さないためにも、綿密な被害想定が望まれます。 ウ.被災時における自治体間の協力協定の有無について
・首都圏直下型地震は、マグニチュード7級以上の地震が想定され、東京湾沿岸の広い範囲で震度7の揺れに見舞われる恐れが指摘されています。被害もまた広範囲に及ぶことになり、広域的応援体制は地震対策の必須条件です。県内全市町村間で結ばれている「埼玉県内市町村間の相互援助に関する基本協定」や県内市町村間(近隣自治体)協定だけでは、被災自治体同士(被害状況は一様でないにしても)であることが想定され、即応を期待することは困難と思われます。 ② 震災対策について ア.避難所における一時的帰宅困難者への対応
・小中学校等避難所に備蓄している物資について、帰宅困難者に対して「十分とは言えないが対応できる」との回答が多数を占めました。一方、「対応できない」は、町村に多く、毛呂山町では「避難所には備蓄なし」とのことでした。 イ.避難所となる小中学校に勤務する市町村職員の防災計画上の役割について ・役割が明確にされている場合、そのための防災訓練の実施についても調査しました。役割が明確にされている12自治体のうち、そのための防災訓練を「実施している」のが6自治体、「実施を検討中」が2自治体、「実施されていない」が2自治体、「無回答」が2自治体でした。 ・市町村立にもかかわらず、小中学校に市町村の職員が配置されていないことに不安を覚えます。まずは、職員を配置し、防災計画上の役割を明確にして、防災訓練をきちんと実施していくのが基本ではないでしょうか。 ウ.消防体制の状況 ・東日本大震災では、自衛隊や警察と並んで自治体職員の献身的な救助・救援活動がありました。とくに消防職員は防災活動の中心的な役割を担うことになります。その消防職員の体制についての調査をしました。 ・単独で消防本部を持っている自治体は職員数や充足率を把握しています。しかし、「国の基準を満たしている」と回答した市は、川越市と蓮田市、坂戸市のみで、市段階の回答は、おしなべて「不足」(充足率は60%~70%台に集中)と答えています。 ・また、組合消防で対応している自治体では、実態把握が十分でないことが浮き彫りになっています。 エ.災害時の医療体制 ・医療体制に関して、「十分確保できている」と回答したのは、春日部市と入間市、毛呂山町だけです。多くの自治体は「充実にむけ検討している」「十分ではない」と答えています。 ・平常時でも「医療過疎・埼玉」といわれていますが、首都圏直下型地震が関東を襲った場合、埼玉県には医療を必要とする被災者が大量に避難されると考えられ、医療体制の充実は、県の重要課題といえます。 オ.園児・児童への対応 ・保護者の勤務中に首都圏直下型地震が発生した場合、保護者が帰宅できないケースが考えられます。このような場合、園児や児童にどのような対応を考えているのか調査しました。自治体の多くは、「園児・児童を預かっている施設で、職員が、保護者が迎えに来るまで預かる」と答えています。ただし、保護者が当日に帰宅できないケースの対応については言及されていません。町村の多くは、「想定していない」と回答しており、防災体制での地域性が出ていました。 ・また、和光市から「各保育園、小中学校に児童、生徒1日程度の食糧を備蓄している」との注目される回答がありました。小中学校に市町村の職員が配置されていることの重要性は前述のとおりですが、園児・児童の食糧についても備蓄が必要です。 ③ 本調査で見えてきたこと 東日本大震災は、災害時における市町村職員の役割の重要性を改めて浮き彫りにしました。ひとたび大規模災害が起きれば、被災地は広域化し、誰もが被災者という状況の中で、被災状況の把握から対応、復旧に向けた様々な業務は市町村職員が担わなければなりません。とりわけ、保育所や学校、清掃などの現場は、住民と直接向き合い、被災者支援の最前線を担うことになります。しかし、こうした現場の多くは、この間の集中改革プランのなかで、人員削減や民間委託などが進められ、十分な職員配置がなされているわけではありません。本調査でも、「学校に市職員はいない」などの回答がありました。 また、消防体制にも懸念を感じます。国が示す「消防力整備指針」に満たない自治体が大半であり、組合消防の場合は市町村としてその状況すら把握されていませんでした。埼玉県は消防の広域化を進めていますが、市町村との連携に課題があることや、広域化された場合の「消防力整備指針」の基準値が下がることにも不安を感じます。 |
3. 調査を終えて 調査結果は機関誌「埼玉自治研」やホームページで公開してきました。調査に協力いただいた各市町村の担当課(者)には、機関紙の送付をもって結果の報告とし、同時に今後の防災計画の見直し等に参考にしていただくよう、要請してきました。その後、いくつかの市から、調査結果に対する問い合わせがありました。 以上見てきた調査結果は、本調査の一部ですが、質問の仕方が不十分なところがあるなど、自治体調査の難しさを感じています。同時に、自治体調査ならではの面白さや意義なども見えてきました。当センターは、今後も、自治体調査を活動の柱の一つに据え、議員や自治労埼玉県本部との連携はもちろん、課題ごとに問題意識を持つ市民とも連携しながら、時宜にかなうテーマで、具体的な課題やその解決策を明らかにできるよう、調査に取り組んでいくこととしています。 |