【自主レポート】自治研活動部門奨励賞 |
第34回兵庫自治研集会 第3分科会 自然災害に強いまちづくり |
昨年、下水処理場からの脱水焼却汚泥、ごみ焼却場からの焼却灰から放射能が検出され、当初は処分方法に焦点があたり、想定しない放射能汚染物質を取り扱う作業者の安全衛生が置き去りにされていた。 |
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1. 取り組みの契機 2011年5月、下水道焼却汚泥から東京電力福島第一原子力発電所事故由来の放射性物質検出が大きく報道された。次いでごみ焼却灰についても、地域によっては高濃度の数値が計測され、コンクリート材料としてのリサイクルや、埋立処分ができない状況となり、現在も国からの安全基準は示されているものの、川崎市の海面埋め立てという特殊性や市民感情もあり、埋立処分されず保管された状況が続いている。当初、下水汚泥・ごみ焼却灰ともに「どのように処分できるのか」「できないのであればどのように管理すべきか」に対応が焦点化され、それらを管理する労働者の被ばく防止について、大きく取り上げられることはなかった。 2. 焼却工場を対象とした取り組み (1) アンケート調査の実施 |
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(2) 「安心」できる職場環境保全に向けて ※1 神奈川労災職業病センター 3. 実地検証 実地検証では環境局担当者と現場職員、産業医、労働組合代表者、労災職業病センターなどを交えて意見交換、空間放射線量率の測定、作業状況の確認などを行ってきた。保護具等については、ダイオキシン類対策、アスベスト対策によって確保され、内部被ばくを防止できる体制が整っていた。問題となる外部被ばくに関しては、 |
4. 市全体への波及 (1) 中央安全衛生委員会での情報共有から、職員間の情報共有へ (2) 「専門家による知見」への不信 5. 環境局による作業手順の確立 その後、環境局の焼却工場における実地検証作業の結果がまとめられ、現場職員からの要望や当該の清掃支部の働き掛けもあり、ごみ焼却工場と埋立事業所に各1つであるが、個人積算線量計が配置された。また環境局でも独自にシンチレーション式サーベイメーターを購入、必要となる計測が行える体制が整えられ、2012年5月、環境局として作業手順が確立された。現実的には、既に作業が淡々と進められており、放射線量も刻々と低下していた状況ではあるが、労使で現場に入りながら作業標準を明らかにしたという行程は、今後も想定しないリスクに対する対策を議論する上で、参考となる取り組みとなったはずだ。 6. 取り組みの中で感じた課題 環境局の4焼却工場のすべてを実地調査しながら職員の率直な意見を聞くと、個人の放射能に対する受け止め方は千差万別であり、「気にしても仕方がない」「仕事として基準をはっきりとさせて厳正に対応すべき」「将来の病気への影響や、こどもへの影響がとても心配」など、温度差は通常の安全衛生の議論以上のものを感じた。この温度差は、作業管理として放射線量の測定、記録、作業者のシフト、作業時間の管理など、これまでにない作業を増やすこととも相まって、必要とされる職場での対応の議論にも波及し「そこまでの手間をかける意味があるのか」という意見もあるのが実態だ。しかし、これまで述べてきたように「安心して働き続けることができる職場環境」が必要であり、長期の低線量被ばくの影響に関する知見は極端に議論が分かれることからも、できる限りの対策を進め、将来に備えておく必要がある。将来的に健康影響がないことを願わずにいられないが、万が一にも災害補償の対象になるような医学的根拠が示されれば、労働者側に立証責任が求められることからも、全国的に公務労働に限らず測定や記録を進めることが必要なのでは、と感じている。 |