【論文】

第34回兵庫自治研集会
第3分科会 自然災害に強いまちづくり~災害から見えた自治体の役割~

 東日本大震災が発生し、我が国において戦後最大の危機に瀕したが国民の底力を持って復興を目指し進んでいる。大震災においては、消防法被を着て救援活動を行う消防団員が多く活躍した。消防団は現在加入者が年々減少し地域防災の在り方が問われている。高鍋町職自治研究対策部は地域防災ボランティアのリーダーとして消防団の抱える問題を明らかにするとともに、今後の高鍋町の防災向上に向けた方針について提言したい。



地域防災におけるこれからの高鍋町消防団の課題と役割


宮崎県本部/高鍋町役場職員労働組合・自治研究対策部

1. 消防団員の身分と任務

(1) 消防団員の身分と任務
 消防団員の身分や任務については以下の通り消防組織法で定められている。
 ・消防組織法第9条市町村の消防機関
    市町村は、その消防事務を処理するため、次に掲げる機関の全部又は一部を設けなければならない。
     ⇒ 消防本部 ・ 消防署 ・ 消防団
 ・消防団組織法 第18条 消防団の設置等
      消防団の設置、名称及び区域は、条例で定める。
 ・消防団組織法 第19条 消防団員
      消防団員の定員は、条例で定める。   ⇒ 高鍋町 283人/252人(2012年)
 ・地方公務員法第3条
      非常勤で特別職の地方公務員
 ・消防組織法 第1条 消防の任務
      消防は、その施設及び人員を活用して、国民の生命、身体及び財産を火災から保護するとともに、水災害または地震等の災害を防除し、及びこれらの災害に因る災害を軽減するほか、災害等による傷病者の搬送を適切に行うことを任務とする。
 消防団員は非常勤で特別職の地方公務員と位置付けられているが、実際には、それぞれの仕事の傍ら消防の任務を遂行している。例として、高鍋町消防団第10部は現在部員18人(自営業8人・会社員8人・公務員2人)であり、それぞれの仕事や家庭を持った情熱あふれる地域の若者が集まり、自分が住む地域の生命と財産を守る。

 
 

資料提供:高鍋町消防団第10部


2. 高鍋町消防団の実情

(1) 消防団員の実情と近隣自治体との比較
 高鍋町消防団の条例定数は283人であるが、実際には2012年4月現在252人の入団者で、いわば30人少ない人数で活動を行っている。表1において、高鍋町及び木城町においては、減少傾向にあるのに対し、新富町及び川南町は一定の人数をキープしている。この二町に関しては、条例定数をもキープしているとの事。都農町においては、臨時消防団員の登録を行っている。


表1 消防団実員数

 表2では、高鍋町及び木城町の平均年齢が高目なのに対し、新富町及び川南町は低い平均年齢となっている。そこで表3では高鍋町・新富町・川南町だけの年齢構成を、表4では在職年別構成を比較した。これからわかることは、十分に団員数の確保が出来ている新富町・川南町は、高鍋町と比べ消防団員の在職期間が短く、若い世代で構成されていることがわかる。


表2 消防団平均年齢

表3 高鍋町、新富町、川南町の消防団年齢構成比

表4 高鍋町、新富町、川南町の消防団在職年別構成比

(2) 高鍋町消防団の問題点の考察
 高鍋町消防団各部の問題点アンケートを実施したところ、①新入団員の確保②団員の減少③消防団未経験の地区役員からの消防費切り捨て(地域の理解不足)④仕事への影響、等が挙がった。やはり団員数の確保が重点項目となっているが、前段の調査において、条例定数人員確保をしっかりできている新富町及び川南町の在籍期間が短い点に着目して考察をしてみる。

 在籍期間が短いことで考えられる長所としては、下記が考えられる。
  ・在籍期間が短いことで、集中して消防団活動を行える
  ・団員の入れ替えが頻繁に行われることで、地域の消防団活動に従事した人が増え地域の防災力が向上
  ・在籍期間が短いことで、仕事への影響する期間が短くて済む


高鍋町の問題点で考察してみると、下記のことが考えられる。

3. 大震災を振り返って消防団の課題

(1) 震災による消防団及び施設の被災


出展:2011年東北地方太平洋沖地震について136報 消防庁


(2) 大震災を検証し高鍋町消防団活動に必要なこと
 大震災を受けて消防団員の人的被災を調査した方々の論文や研究発表等では、水門ゲートや防潮堤の封鎖に関わった団員が多く犠牲になっている。また、活動中の団員へ防災情報が伝わらなかった状況があったようである。
 高鍋町消防団においては、水防団としての役割はないものの(行政の役割となっている)、いざ台風がくれば河川の氾濫への警戒も行う。大震災の教訓として、河川の警戒を行う際の安全対策の徹底や、防災情報の伝達方法の再確認を早急に整備し地域防災力の強化を図る必要があると思われる。


4. 今後の展開として

(1) 今後の取り組みは?
① 消防団の在籍期間一定化
  現在、高鍋町では消防団在籍期間が15年以上の者は20%以上いる。これを、消防団の在籍期間を一定化することで、集中して消防団活動を行える体制をつくる。また、消防団への入れ替えが活発化し、地域の消防活動への理解者が増えることで、更なる消防団活動の活性化へつながる。
② 勧誘への行政・地域協力のテコ入れ
  消防団の年齢構成比と高鍋町の人口比から考えると、20~30歳くらいの若者はまだまだ地元にいると考えられる。震災等で地域防災の重要性が再認識される今、行政で消防団体験教室を開催し、消防団に活動に興味を示す人材を発掘する。
  また、行政は地域を守るために命を懸けている消防団を地域に知らしめ、自治公民館主導の団員勧誘を促す。

③ 税等の優遇措置
  「団員在職の事業所の優遇措置」
他県で消防団員が数人在籍する事業所には税を優遇するシステムがある。これを導入する。
  「消防互助年金の活用」
消防互助年金制度を利用する。少子高齢化による公的年金の受給水準の引き下げ等により、老後の不安がある中、消防互助年金を活用し、部で強制的に入り、老後の貯えをアピールする。

④ 消防団員の安全対策と報償等の改善
  「消防活動の安全対策見直し」
行政の使命として、命に係わる消防活動を見直し、活動の徹底した安全基盤を確立させる。
「適切な報酬の改善」
  消防団活動の重要性を知らしめ、適切な報酬のもと活動が行えるよう改善する。

⑤ 臨時消防団員制度
  今回の震災で、消防団及び地域防災力の重要性を再認した。そこで、消防団OBや地域防災に興味のある人材を臨時消防団として登録し、有事の際、消防団員の人数が足りない場合に出動してもらう。

5. まとめ

 災害が多様化・大規模化している今日、消防団員は災害の初期対応時に中心的な役割を担うことになる。しかし、常備消防だけでは地域住民全体の安全確保は難しい。指揮命令の下に組織活動を行い、十分な災害対応の訓練と経験を積んでいる消防団員が不可欠である。
  地域の防災の向上のためには、『消防団員の確保が不可欠』『地域社会と密接な関係を持つ』『団員の安全対策の向上と十分な補償制度』が必要。
  消防団員を経験した人材が地域に一人でも増えれば、地域の防災力、防災意識の向上が高まるに違いない。