【自主レポート】

第34回兵庫自治研集会
第4分科会 自治体がリードする公正な雇用と労働

 八幡市職員労働組合嘱託職員協議会は、1978年に結成され、今年で34年目になる。嘱託員は、正職員と比べると報酬は少なく、定年まで雇用が約束されているわけでもなく、有給休暇の種類や日数も正職員より少ないのが現状である。このレポートでは2010年から2年間かけて交渉して勝ち取った賃金・労働条件改善の取り組みについて報告する。



八幡市役所に勤務する嘱託員の
賃金・労働条件の改善と今後の取り組み

京都府本部/八幡市職員労働組合・嘱託職員協議会

 八幡市職員労働組合嘱託職員協議会は、1978年に結成されました。今年で結成から34年目になります。結成当時、八幡市役所に勤務していた嘱託員13人全員が自分たちの賃金・労働条件向上のため組織を立ち上げたと聞いています。現在は、八幡市職員労働組合の一分会として活動しています。組合員は5月1日現在で81人です。
 私たち嘱託員は、正職員と比べると報酬は少なく、定年まで雇用が約束されているわけではありません。有給休暇の種類や日数も正職員より少ないのが現状です。嘱託職員協議会は、組合員の団結と相互扶助により会員の権利と人権を守り生活擁護を図り地位の向上を目的に頑張っています。
 私達の先輩は、今から27年前の1984年に、それまで定額制だった嘱託員の報酬に定期昇給制度を組み入れるため、当局と交渉を行い1985年4月から嘱託員の報酬表を導入しました。正職員とは比較になりませんが、退職するまで毎年昇給するのは先輩方の取り組みのおかげだと感謝しています。以降、嘱託協議会で賃金・労働条件の要求、交渉を行い退職金制度や年次有給休暇など様々な賃金・労働条件について勝ち取ることができました。また毎年、賃金確定闘争期には、人事院がプラス勧告の年は報酬表改訂を要求し、マイナス勧告の年は改訂を見送る要求する取り組みを継続しています。近年、人事院はマイナス勧告を出しますが、報酬が引き下げられたことはありません。
 新しい組合員を獲得するために毎年、勉強会などを開催し、組織拡大にも取り組んでいます。今年は、5月18日に自治労京都府本部から組織拡大担当の中原様を講師に招き「自治体で働く臨時・非常勤職員の課題」について講演をいただいて、学習会を開催しました。学習会参加者は36人で、組合未加入の嘱託員も6人参加し、新たに4人が組合に加入してくださいました。
 本日は、私たちが2010年から2年間かけて交渉して勝ち取った賃金・労働条件改善の取り組みについて発表させていただきます。
 2010年9月15日に市長に対して賃金・労働条件改善要求書を提出しました。内容は次のとおりです。
① 嘱託員は正職員と何ら変わらない地域に根ざした仕事をしています。にもかかわらず正職員にある地域手当が嘱託員にはありません。嘱託員の報酬に地域手当相当の上乗せをすることを要求します。
② 長期間正職員の新規採用がなかった時期に多くの嘱託員が採用されました。市の都合で採用試験が実施されなかったのだから、新規採用職員の受験要件である年齢制限を緩和して、一人でも多くの嘱託員が受験できるようにすることを要求します。
③ 近年、子どもを産み育てる嘱託員が増えています。正職員と同様に産前休暇を6週から8週に延長すること。
  更に産前・産後休暇を有給休暇にすることを要求します。
 この要求に対して、2010年10月1日に市長から文書で回答がありましたが、前向きな内容はなく、到底納得できる回答ではありませんでした。再度10月18日文書にて交渉を申し入れ11月11日に総務部長と交渉をすることになりました。交渉までに何度も折衝を重ねて、お互いの妥協点を探りました。
 地域手当相当額の上乗せの交渉では、地域手当を支給するに当たって正職員と嘱託員を区別する必要があるのかどうかが、争点になりました。制度の主旨からして、同じ八幡市役所で勤務する職員ならば全員に地域手当を支給するべきという私達の要求を総務部長にぶつけました。
 また産前休暇を6週から8週に延長し、無給から有給に変更する交渉では、出産するのに正職員と嘱託員に差をつけるのは人権に関わる行為だと強く抗議しました。
 2度目の交渉では、その前日11月10日に市職労が市長交渉を行い私達嘱託員の報酬改定を2012年4月に実施する約束を市長から取り付けていただきました。おかげで賃上げについては、総務部長から引き上げる方向で今後、嘱託協議会と継続して話し合いたいと申し出がありました。
 交渉以降、嘱託協議会案と当局案を何度か協議して最終的に2011年8月23日地域手当相当分一律3%アップが嘱託協において一番ベストな案と判断して当局に回答しました。2011年10月4日一律3%アップで合意をし、2011年11月22日市長交渉によって確約を得ました。これにより2012年4月より嘱託員の賃金報酬表に月5,150円~8,300円が上乗せされることになりました。
 労働条件の改善の産前産後の有給休暇化は、当局から「現状では有給は難しい、今後継続して検討する」との回答を得ました。また、産前休暇6週間を8週間に延長することについては、産前の8週間は妊婦に負担が大きいので正規職員の休暇は8週間になっている。既に京都市、久御山町などは実施をしている。八幡市は労基法で6週と記載されているので6週にしてきたが、他都市の状況を知らなかったので少し時間が欲しい、できる限り早く対処するとの返事をもらいました。その後、2011年4月から無給ながら産前休暇を6週から8週に延長する合意もできました。労働条件の改善は一歩前進しました。
 採用試験の受験要件である年齢制限も一部の職種で緩和することで合意しました。2011年・2012年の職員採用試験では、嘱託員が採用試験を受験して合格者が出ています。受験することさえ出来なかった採用試験に合格できたのです。すべての嘱託員に該当することではありませんが、希望を持った嘱託員もいると思います。
 これらの一連の交渉時に市職労の書記長から「嘱託員の賃金・労働条件改善については、嘱託員自らが当局に訴えないと相手の胸には届かない」といつも言われていました。これまでの交渉では、委員長や書記長に発言を任せていました。しかし自分たちの労働条件は自分たちで発言しないといけないと思い、思い切って市長に自分たちの思いをぶつけました。
 約2年間の取り組みで、報酬アップと産前休暇6週間を8週間に延長することなどを勝ち取る事が出来ました。しかし、まだまだ課題は山積みです。
 産休の有給化:これは正職員同様産休を無給から有給に求めるものです。
 退職金制度の拡充:現在の制度は週37.5時間以上勤務する嘱託員が対象になっており、対象外の嘱託員が増えてきています。全職員が対象となるよう要求していきます。
 前歴換算の導入:正職員は近年の取り組みで近隣市町レベルまで引き上げましたが、嘱託員は対象になっていません。嘱託員も対象にするよう要求します。
 サービス残業の撤廃:保育園や幼稚園ではサービス残業を行っているのが現状です。予算化するよう要求していきます。
 年休の完全取得:年休要員が確保されていないため、思うように年休が取得できないのが現実です。年休要員を要求していきます。
 あげると切りがないほど要求はあります。嘱託職員協議会では、年に2回懇親会を開き、普段はそれぞれの配属場所に分かれている同職種の職員同士の交流・情報交換の場を設けています。困っていることや改善して欲しいことを出し合い、それを各職種の組合役員が集約し、さらに嘱託員全体の問題として当局への職場環境の改善、生活擁護のための要求につなげています。また年1回組合員を対象に職場改善のためのアンケートも実施していますが、今年度は組合員以外の嘱託員もアンケートの対象に加えて、年休の取得やサービス残業の有無などについて具体的な数字を出し、当局への改善要求の根拠とし、改善課題の実現に向けて取り組んでいきます。
 今、臨時・非常勤職員の賃金・労働条件が社会問題になっています。人が人らしく生きていけない賃金・労働条件は、人権問題です。直ちに改善していかなくてはなりません。また人が人らしく生きていくために必要な賃金・労働条件確保は、労働組合の使命でもあります。八幡市嘱託職員協議会は、先輩達が勝ち取ってきた権利に感謝するとともに、先輩達の取り組みをお手本にして、これからも自らの人権のため賃金・労働条件改善に向けて頑張っていきたいと思っております。