私たち公益財団法人京都市ユースサービス協会(YS協会)の理念とは、子どもから責任ある大人へと成長する青少年を「支援」していくということである。この中での「支援」とは、“青少年が家庭、学校、地域社会、職場及び青少年の自主的な活動の場面といった、あらゆる活動場面への参加を通じて、社会と交わり、青少年自身の興味や関心を豊かにし、青少年が必要とした場合、助言、情報、または多様な人的・物的資源を得られるような「機会」を提供しようとするものである。自発的な集団への参加を通して、充実感を体験し、自己の可能性にチャレンジすること、それは青少年の自主的で創造的な活動を刺激するような方法で青少年の心身を発達させ、その人格的成長を図ること”を意味している。
このような理念を元に、支援の枠組みを大きく分けてターゲット型とユニバーサル型の支援を行い、お互いが補完し合いながら青少年支援を行っている。この2つ支援の説明と共存関係を説明する。
1. YS協会でのターゲット型の支援
・何かしらの課題や問題に焦点を当てて、その部分に関しての支援を行うこと。
・YS協会では、「子ども若者総合相談窓口及び支援室CATCh」と「若者サポートステーション」がこの部分を担っている。
・比較的個別の対応が多い。
(1) 「子ども若者総合相談窓口及び支援室」
・2010年4月に施行された「子ども・若者育成支援推進法」の趣旨を踏まえて、同年10月に設置
・対象は、ニート・ひきこもり等、社会生活を円滑に営む上で困難を有する子ども・若者
① 子ども若者総合相談窓口について
・上記対象の子ども若者及びその家族に対して相談に応じ、適切な支援機関の紹介や情報提供。助言を行っている。
② 子ども・若者支援室(CATCh)
・総合相談窓口の相談者の中で、総合的な支援が必要な場合には、支援室にいる支援コーディネーターにつないでいる。
・支援コーディネーターは支援対象者である青少年が、社会参加や社会的自立につながるよう、本人や家族・関係機関からの相談、訪問等による状況把握を行い、課題を整理する。その上で、多様な社会的資源の活用を調整して、本人や家族の変化・成長を促していく。
・ひきこもる若者のように、さまざまな理由で支援につながっていない本人への訪問アプローチも行う。
(2) 「京都若者サポートステーション(以下サポステ)」
・厚生労働省の委託事業として2006年度から設置
・対象は、一定期間無業状態にある方とのその家族(原則として、若年無業者のうち課題がありながらも職業的自立をはじめとした自身の将来の取り組みに意欲が認められる者)
・主な事業として、相談業務(ワーカーによる相談と専門家(こころとキャリア)の相談)および就労体験事業
・就労の斡旋は行わない。
2. YS協会でのユニバーサル型の支援
・7つある青少年活動センター(北・中京・東山・南・山科・伏見・下京)
・対象は青少年であること。特定の課題や問題の有無は問わない。
・青少年が自分の本来持っている力を損なわれることなく伸ばすこと及び、社会参加を促進するような支援。
・事業内容としてはボランティア活動やイベント参加などによる様々な体験を通して、仲間づくりや中での様々な価値観や人生観との出会い。
・比較的グループ活動が多い。
3. ターゲット型とユニバーサル型の共存
(1) ターゲット型の特徴
・個別での対応がメインなので、利用者のニーズを注視すればいい。
・利用者のニーズを注視するために、利用者は比較的安心して支援を受けられる
・支援のゴールを見出しやすい。また市民等から理解されやすい。
・課題や問題を解決することが中心。
・問題・課題の解決方法に対して原因を探る必要があり、原因によってはかなりの困難さを要求される。
・個別でのかかわりが多いので、ワーカーが抱え込みやすい。
・利用者は個別対応するワーカーの価値観としか出会えずに、選択肢の広がりがない。
・支援のなかで利用者の葛藤を避ける傾向があり、成長していくという部分での弱さがある。
・意欲などの、前進する力を見出す場面が少ない。
・子どもや思春期での必要な経験の機会を得られなかったことから生じる問題や課題には、個別的支援だけでは対応できない。
(2) ユニバーサル型の特徴
・仲間つくりや他者を意識する場面が多くある。
・自分のやりたいことや、達成したいことが実現できる。成長の場
・比較的健康的な青少年が集まりやすい。
・様々な価値観と出会えるために、選択肢の広がり見出す可能性が多くある。
・葛藤する場面が多くあり、その葛藤を乗り越えていくことで成長するきっかけが多々ある。
・欲を見出しやすい。
・原因を追究するよりも、行動の変容が重要。なんでそうなるかではなく、どうやったらできるかが重要。
・学校・家庭とは別の社会空間を持つことで、成長に必要な社会的経験の機会を得ることができる。
・支援のゴールが見出しにくく、市民等から理解されにくい
・様々な人との出会いや葛藤そして利用者ごとのニーズがあるために、利用者にとって混乱を招き安全な場ではないことがある。
(3) 両者の共存
① 入り口としてターゲット型の場合
その人の主訴を明らかにしながら、支援のプログラムを考えていく。しかしながら、友達作りが課題であったり、就労などの意欲がない場合や、成長する場が必要である場合に、ユニバーサル型の支援を利用する。そこでの葛藤など乗り越えにくいしんどさがあった場合や、前進したいという気持ちがはっきりしてきた時に、ターゲット型の支援を利用する。
② 入り口としてユニバーサル型の場合
何かしら活動場面で、乗り越えなくてはいけない課題が見えてきた時に、ターゲット型の支援を利用する。
(4) まとめ
・両方とも必要なものであり、あわせて青少年の支援を行うことはメリットとして大きい。
・両方ともを持っている青少年支援の場は日本の中ではあまりない※他には札幌・横浜
・この両方を併せ持ちながら青少年支援を行っていくのはユースワーカー(人によって割合が違う)
・青少年活動センターでは従来からこの2つは共存していた。先述した2つの支援ができたことで、その共存のメリットが明確になった。
・特に、子ども期を過ぎた中高生以上の社会的資源が重要。
・少年非行の大多数は中高生年代に起こっている。学校・家庭だけでは「育ち」の機会として不十分ということを表している。その意味で青少年活動やその基盤となる施設が、教育において欠かせない。 |