1. 大阪府労働行政のこれまでの経過
1989年、大阪府は「労働行政地域総合システム」と称する労働行政推進の方針をとりまとめた。
これは、大阪府産業労働政策推進会議の提言に基づき提起されたものであるが、自治労府職労働支部と大阪府は、これに基づく政策協議を踏まえ、大阪府と市町村、国機関、労使団体が連携しながら府内地域において労働行政施策を展開していくとともに、①市町村における労働行政担当セクション及び第一次労働相談窓口設置の勧奨、②中小零細企業における健康診断の実施等を支援する勤労者健康管理事業の実施、③中小零細企業の福利厚生を支援する事業所共済事業、④大企業の福利厚生施設を中小企業に開放する施設開放事業など、当時、他県と比較して異質ともされる新規施策を打ち出した。そして、これと同時に、労働施策の展開をはかる地域拠点として7カ所に設置していた労政事務所を5つの労働事務所(北大阪、中央、東大阪、南大阪、泉南)に再編整備し、勤労青少年ホームや婦人ホームの市町村へ移管した。
その後、財政状況悪化等による行政改革を背景に、1996年に大阪府が一転して労働事務所の全廃を提起してきた。しかし、労働支部が労働行政を担う労働組合として積極的に政策を提起する一方で、その間、労働行政施策で連携関係を深めていた市町村や労働団体の協力も得ながら大阪府の労働行政を後退・縮小させる労働事務所廃止の反対運動を展開し、1997年4月、5つの労働事務所は3つ(北大阪、中央、南大阪)に整理されることとなった。また、このとき、労働事務所の減少が地域における労働行政を縮小させ、府民の利便性低下に繋がることから、例えば、労働相談事業について、大阪府が共通の「労働相談処理マニュアル」を作成し市町村と共有する、大阪府が市町村の担当職員に対して継続した研修を行うなど、大阪府と市町村とがさらに連携を深めながら府内地域における労働施策に関する諸課題にともに取り組んでいく方向性を確認した。
2. 地方分権一括法(1999年)の成立
全国でも最悪の失業率 ⇒ 雇用行政が大阪府労働行政の中心に |
1999年に地方分権一括法が成立したことを受け、それまで地方事務官として大阪府労働部の関係各課でともに府の労働行政施策展開にあたっていた国費職員の身分が、国に身分移管された。
結果、雇用対策事業は、各都道府県労働局やハローワークなどで全国共通の土台に載せられることとなり、地域特性をできるだけ取り除く方向へ導かれることとされた。
大阪府は、国費職員の身分移管に伴い、翌2000年にこれまであった国費三課(職業管理課、職業業務課、雇用保険課)と府費の労働政策課、労働福祉課の再編・整備した。また、商工部と労働部の統合で商工労働部となり、加えて、部の下に雇用推進室を設置するなど、雇用対策事業を部施策の中心に据えることが強く打ち出されることとなった。
3. 地域労働ネットワークの構築
1997年に行われた労働事務所の再編・縮小(東大阪、泉南支所の廃止)以降、府内に3か所で事業展開をはかっていた労働事務所が、2002年に、1所2分室の体制にさらに縮小されることとなった。
あわせて、大阪府は、労働事務所において雇用対策を進めるとの位置づけを行い、従来の『労働事務所』を『総合労働事務所』に改称するとともに、市町村との関係を「地域労働ネットワーク」(府内7ブロック)という枠組みで再構築した。
地域労働ネットワークの構築にあたっては、大阪府総合労働事務所の職員が関係機関・団体に足を運び、ネットワークへの参画と協力を求めた結果、大阪府総合労働事務所を事務局とし、国機関、使用者団体、経済団体、労働団体、市町村で構成される7つの地域労働ネットワークが誕生した。
※地域労働ネットワークの構成機関・団体やイメージ等については、次ページ以降参照
地域労働ネットワークの構築に伴い、それまで国機関(労働基準監督署、ハローワーク)や、大阪府、各市町村など、それぞれが独自に実施していた事業(「就職面接会などの雇用対策事業」や「労働相談会などの相談事業」、「労働法セミナーなどの啓発事業」)の多くが、構成員相互の協力を得ることで、事業そのものの運営はもとより、府民への事業の周知・広報について効率的・効果的な取り組みが可能となった。
また、事業実施にあたり、各機関・団体の担当者が事業の企画段階から共に考え、悩み、そして喜びや苦労を共有することで、人間関係が一層深まり、事業をより円滑に実施することが可能となっている。
4. 地域労働ネットワークを活用した事業展開
合同就職説明会など雇用対策事業のほか、メンタルヘルス関連事業などにも拡大 |
地域労働ネットワークを活用した共同事業の展開が始まった2003年当時は、各構成機関・団体との共同・協力事業数は33件であったが、さらに多くの機関・団体との協力関係を拡大していこうということで、大阪府の就職支援施設である「JOBカフェOSAKA」(若年対象)や「JOBプラザOSAKA」(中高年対象)をはじめ、厚生労働省から中高年向け事業を受託していた「大阪府商工会連合会」などが実施する『就職説明会』も地域労働ネットワークの共同事業に位置づけ、各機関・団体全体で府民への周知に協力するなどの取り組みを進めた結果、2011年度には115事業を実施するに至っている。
また、大阪府総合労働事務所では、心理職の職員が職業カウンセリングを行う機能を有していることから、合同就職説明会の場に「職業適性診断コーナー」を設置、職業選択に迷っている求職者に対して「職業適性検査」と「性格検査」を行うことで個々の特性を掴み、また、その結果を踏まえたカウンセリングを行うなど、求職者への側面支援を行っている。
さらには、内閣府が2009年度に設置した「地域自殺対策緊急強化基金」を活用し、2010年度から大阪府内企業のメンタルヘルス課題への対応能力を向上させることを目的とした「事業場内メンタルヘルス推進担当者養成研修会」を開催している。
これは、公益社団法人大阪精神科診療所協会と大阪産業保健推進センターの全面的な協力を取り付け、企業の人事・労務担当者や労働組合役員などを対象に実施しているものであり、昨年は、堺市内実施分で178人、大阪市内実施分で245人の参加者が得られるなど大盛況であった。
なお、基金最終年度にあたる今年度は、大阪府内3箇所(摂津市:定員200人、堺市:同250人、大阪市:同500人)で開催予定である。
その他にも、今年度からの新規事業として、中小企業労働環境向上講座と題する各種講座事業を21世紀職業財団などの協力も得て実施する予定であり、今後もより一層、多くの機関・団体と連携・協力関係を構築していくことで、『大阪府総合労働事務所を拠点とした労働行政施策の展開』がはかれるよう強く意識した取り組みをはかっていく。 |