4. 今後の課題
(1) 直営に対する不安
2012年度末をもって本委託契約は期限を迎える。町教委は議会に対し次年度以降も継続して長期委託契約を締結するか、直接雇用に戻し安全面をはじめ、コストや人材確保策を全面的に見直すかの結論を実質的な予算要求が開始される秋までに出すとしている。
見通しとして、明るい材料はそれほどないが、自治労推薦の町長が「委託には、それがなじむものとそうでないものがある」と言及していることと、3年前、署名活動や直雇用に猛反対した議員の半数が改選により入れ替わっていること、「直営が望ましい。」とする保護者会の思いが今もなお引き継がれていることなどを勘案すると、決して楽観視はできないが、2013年度以降は従来の嘱託職員による学童に戻る可能性が出てきた。しかし、受託会社で働く労働者にとって、直営に戻った場合に雇用が確保されるかといった問題に対する不安も出てきた。
(2) 10年雇用の撤廃
町は、かねてから労使交渉で指摘されてきた「臨時・非常勤職員制度」の見直しを2011年度と2012年度の2年間で適正化にむけ推進しようとしている。一つは「上限10年以内」とする規定の撤廃である。当局側からすれば「10年間は働き続けられるという『期待権』を誘発する。」事態の解消にあるのだが、理屈はどうであれ、優秀な人材の流出を防止できる意味では評価できる。もう一つは「任用形態の適正化」である。全国的にみて臨時・非常勤職員の増加や職務内容の多様化等により処遇問題が指摘される中、本町でも勤務形態や賃金の支払方法等を規則・要綱ではなく、条例で定めようとするものであり、従来の曖昧な部分はこれにより整理できるものと考える。
ただし、嘱託職員の位置づけに適正化が図られたところで現行の組合員の職場が確保されている訳ではない。2013年4月から町内に7つある小学校のうち1つが統廃合される。当然、敷地内にある現行の学童保育の活動拠点である育成室も例外ではない。ここで「1+1」が決して「2」にならない合理化の原理が働く。労組としては引き続き、組合員全員の雇用確保に向けた取り組みを強めなければならない。
2013年4月1日施行予定の「臨時・非常勤職員制度」見直し案(2012年8月24日現在) |
区 分
|
現 行
|
改 正 案
|
嘱 託 職 員
|
嘱 託 職 員
|
臨時的任用職員
|
根 拠 法 令
|
地公法第3条第3項第3号
|
地公法第3条第3項第3号
|
地公法第22条第5項
|
地公法の適用
|
無
|
無
|
有
|
任用の位置づけ
|
―
|
学識・経験に基づき非専務的に業務に従事する職員
|
臨時の職または緊急の場合に任用され、事務または技術の補助的業務に従事する職員
|
勤 務 形 態
|
非 常 勤
(常用実態含む)
|
非 常 勤
(原則、常勤の3/4以下)
|
原 則 常 勤
(常勤の3/4超を従事する者含む)
|
勤務時間/週
|
38時間45分以内
|
30時間未満
|
30時間以上
|
任 期
|
1年以内
|
1年以内
|
6か月以内
|
再度の任用
|
1年ごとに人事査定等を行い、その職が「新たに設置された職」として任用されることとし、結果として同一の者の任用に対してその年数には上限を設けない。
|
給料等の性質
|
賃 金
|
報 酬
|
賃 金
|
通 勤 手 当
|
常勤及び常勤の3/4以上の勤務に従事する者
|
原則支給しない
|
支給する
|
期 末 手 当
|
常勤及び常勤の3/4以上の勤務に従事する者
|
原則支給しない
|
月給で従事する者のみ支給
|
給 与 体 系
|
職種・職務内容等によって月給・日給・時給を適用
|
日給・時給
|
職種・職務内容等によって月給・時給を適用
|
条例の規定
|
規定なし
|
非常勤の嘱託職員の報酬及び費用弁償等に関する条例
|
臨時的任用職員の給料等に関する条例
|
社会保険等
|
勤務時間等により、厚生年金、社会保険、雇用保険を適用
|
公務上の災害
|
労働災害を適用
|
非常勤公務災害補償を適用
|
労働災害を適用
|
(3) 嘱託・臨時職員の組織化
学童の直営雇用後は嘱託職員の組織化に取り組まなければならない。未組織の組織化は長年にわたり自治労が掲げてきた課題である。正規職員数が減少傾向で推移している現状の中、嘱託・臨時職員は増加傾向にある。もはや地方自治体の公共サービス提供の担い手となっている現実にあって、また質の高い公共サービスを実現するうえでも求められるのは処遇の改善と雇用の安定である。
|
嘱託職員の賃金合計額(円)
|
正規職員数(人)
|
嘱託・臨時職員数(人)
|
嘱託・臨時職員の 全体に占める割合(%)
|
2007年度
|
276,857,938
|
267
|
113.7
|
29.87%
|
2008年度
|
277,657,128
|
264
|
113.5
|
30.07%
|
2009年度
|
281,484,000
|
259
|
115.5
|
30.84%
|
2010年度
|
284,742,493
|
258
|
124.9
|
32.62%
|
2011年度
|
286,386,000
|
258
|
121.0
|
31.93%
|
(4) 公契約条例の制定
そもそも安全性とコストは天秤にかけられない……。2012年4月、関越自動車道で乗客7人が死亡した都市間ツアーバスの交通事故は、過当競争をめぐる旅行会社のコスト削減強要が安全対策を不十分なものにしているとバス関係者から指摘されていた最中の大惨事であった。
今後は、関係法令の改正などにより旅行会社のバス所有義務化などで対策が講じられると聞くが、地方自治体における公共サービスの質の低下や労働条件の悪化を防ぐ意味で「公契約条例」の制定議論を進めていかなければならない。2008年以降の自治法改正では入札に関する制度改正が相次いだ。資格要件や総合評価方式で価格以外の要素が入札に反映されるようになったこうした動きは、単に安ければ良いのではなくサービスの高いクオリティが求められるようになってきた社会的要請の一つである。
本町では、低賃金かつ違法状態で働かされてきた一連の学童指導員の労働実態を踏まえ、直営職場で働く嘱託職員の組織化とともに、千葉県野田市や尼崎市議会の取り組み検証を参考にしながら、「安全だから安心できる」まちづくりにつながるような公契約条例の制定に向けた取り組みを強めることとする。
|