【自主レポート】

第34回兵庫自治研集会
第4分科会 自治体がリードする公正な雇用と労働

 総務省の集中改革プランを受けて自治体が推し進める定員適正化計画により、自治体内部での非正規化が進行し多くの問題を生み出しています。しかし、労使交渉を積み重ねても組織実態を省みようとしない行政側との溝は深く、着実に計画に沿った定員管理がなされています。交渉において組合側指摘に対する行政側の認識を高める手段として、決算を利用した一手法をレポートします。



決算から導き出す非正規化の実証と組織実態


高知県本部/高知市職員労働組合・執行委員長 明坂  浩

1. はじめに

 高知市は、中核市の平均的な職員数(市民130人に職員1人)を目標とする定員適正化計画を作成し、現場実態を踏まえないまま人員減を行ってきました。一方、事務量が減らないままの各職場には恒常的に臨時職員が配置され年々その人員数が増えてきていました。しかし、交渉において高知市は「全体的に臨時職員数に大きな変化はない」との認識にたっており、議論は平行線のままでした。そこで、具体的に臨時職員数を把握しようとしましたが臨時職員の任用方法は産休などの休暇制度代替や業務繁忙など理由も期間もさまざまであり、どのように臨時職員数を把握するかが課題となっていました。いろいろな方法を検討する中で、【職員数減と臨時職員数増が関連している傾向をつかむ】との目的を明確にしたうえで、行政の決算額を利用してとにかくやってみて結果を見てあらためて考えてみようとして具体的な作業にはいりました。


2. 具体的な作業

(1) 決算額の拾い出し
 

 高知市における決算は、4~5月の出納閉鎖期を経て9月に行われる市議会定例会に決算報告として関連する資料が提出されます。この中の「決算事項別明細書」には、歳出目的のわかる科目「目」とその中で歳出内容の性質がわかる「節」に区分され円単位で決算額が示されています。臨時職員の給料は、予算科目「7節 賃金」に該当しますので、この欄の金額を拾いだして転記していきます。作業は2010年の秋に行いましたので、その時点で最新の決算である2009年度(平成21年度)を含む過去5年間分を一覧表として作成したものが、後段に掲載してある【市労連NEWS】の「表1 賃金決算額の推移」です(この作業において、水道事業会計の職員は全水道に加入しているため作業対象外としています)。
 一覧表ができたら集計の作業に入るわけですが、最初に「職員数減と臨時職員数増の傾向を確認する」という目的を設定していますので、臨時職員の任用が一時的なものや職員数と関係ないものを除外しました。例えば、定額給付金や各種選挙(知事・市長など)、国勢調査、学校の臨時教職員、競輪(従事員関係)などです。

(2) 決算額の換算
 こうして「表1」の最下段に職員数と関係のある賃金の決算額が集計できました。次に利用しやすくするため臨時職員数に換算する作業を行いました。決算額を臨時職員1人あたりの年間支払額で割るだけです。年間の支払額は、事務や作業員など従事する業務や年度によって単価が違いますが、あくまで傾向を確認する目的ですので作業の単純化もあわせ当時の事務職臨時職員単価(6,670円/日額)に概ねの年間勤務日数(245日)をかけた1,635千円としました。これにより「表2 換算人数との比較」ができあがりました。


3. 内容の補強

 「表2」により作業の目的である正職員(正規)→臨時職員(非正規)の実態が数字としてわかりやすく証明できましたが、この材料だけで組合側が主張する組織実態を行政側に認識させるには説得力が不足しています。そこで、各職場の管理職(課長や課長補佐)を対象としてヒアリングを行うこととしました。
 ヒアリングにあたっては右のような質問項目を作成しましたが、この内容にとらわれず各管理職が抱えている課題や不満などを自由に話してもらうことを目的として聞き取りを行いました。また、ニュースにする時は具体的な課名や課が特定できるような表現を使わないとして、できるだけ本音を聞きだすように心がけました。こうした聞き取りを取りまとめたものが【市労連NEWS】の「その2は職場実態から」になります。

4. おわりに

 このニュースにより交渉では組合側が主張する職場実態を一定認めさせることはできましたが、実際の課別配分定数への反映までには至っていません。しかし、ニュースで配布することにより市職員全体で課題共有ができただけでなく、市議会議員にも実情への認識を少しでも高められたのではないかと考えています。また、高知市側とは厳しい臨時職員の待遇について交渉の場だけでなく改善に向けた意見交換の場を別途設けることとなり、議論を重ねるなど少しずつ高知市側の認識もかわってきています。