【要請レポート】

第34回兵庫自治研集会
第5分科会 医療と介護の連携による地域づくり

 2008年6月「健康見守り隊」は発足しました。第33回愛知自治研集会第5分科会において自主レポートにてその活動の様子を報告させていただいたのですが、その後その活動は行き詰ってしまいました。今回は行き詰ってしまった活動のようすとこれからの活動について報告させていただきます。



その後の「健康見守り隊」
行き詰った活動~世の中そんなに甘くない~

石川県本部/公立松任石川中央病院労働組合 山下 千恵

1. これまでの経緯

(1) 「健康見守り隊」発足
 2008年6月、私たちは当時の執行委員長、西本政之の呼びかけで各職種の有志が集まり「健康見守り隊」を結成しました。目的は病院の規模が大きくなるにつれて遠くなっていった地域住民の方々との距離を、地域の方々と交流し、共有する時間を持つことで近づけ、お互いを理解するきっかけを作ることでした。
 初期メンバーは10人。職種は看護師、薬剤師、臨床検査技師、診療放射線技師、調理師、事務職員と多岐にわたり、職員の増大と委託の増加により希薄になった各職種間のつながりも取り戻すことが出来るのではないか、と期待されました。

(2) 活動方針
 「健康見守り隊」は公立松任石川中央病院労働組合の「地域連携部会」に属しています。
 その「地域連携部会」第1回会合で今後の活動方針について話し合われました。
 「地域連携部会」はその名の通り地域との関わりを密にし、連携を図っていくことを目的としています。
 どのようにして地域との関わりを持つかが話し合われ、「健康教室の開催」という意見が出てきました。
 自然な形での地域との交流方法として、また私たち医療人が地域の方々のお手伝いを行う形としてとても良い案と思われ、活動の軸は「健康教室の開催」ということとなりました。
 その際、病院の開催している医師による健康教室との区別のため、またより身近な印象をあたえるために名称を「健康見守り隊」とすることとなりました。
 「健康見守り隊」の活動は地域に出向いて「健康教室」を開催し、それを通して地域の方々との交流を深めて意見をうかがったり、病院や職員のことを知っていただくことを目的とすることとなりました。それをきっかけに病院や職員を身近に感じていただきたいとも考えました。

(3) 「健康見守り隊」始動
 当初、私たちは市町村に声かけをすれば簡単に「健康教室」を開けると思っていたのですが、なかなかそう上手くはいきませんでした。町会の催しとしての「健康教室」は医師会等を通じて行われていたり、病院としてその手の催しが行われていたりしたため、なかなか新参者が「健康教室」を開く場は見つかりませんでした。
 それでも病院OBの方からの紹介等で初年度は2回、開催することができました。


2. 行き詰った活動

(1)  途絶えた依頼
 周囲の協力を得て、順調に活動が進んでいくと思われましたが2年目の後半からはまったく依頼が来なくなりました。「健康見守り隊」の活動をなんとか周囲に知ってもらう方法がないかと何度も話し合いが行われ、フリーペーパー「金沢情報」に掲載してもらうことで2件依頼がありました。しかし、その後またぷっつりと依頼は途絶えてしまいました。
 4年目の依頼件数は0件。今後の活動に暗雲が垂れこんできました。
 この事態を何とかしようと、私たちはホームページを作成することとしました。

(2) ホームページ作成
 ホームページは、これまでの「健康見守り隊」の活動内容とその様子の写真をメインとしました。また、メンバーの紹介を掲載し、メンバーが定期的にブログを書き込むこととしました。依頼が舞い込んだ時、ブログを通じて「健康見守り隊」の特徴で売りでもある「手作り」の「健康教室」が開催されるまでをリアルタイムに掲載し、知ってもらおうとも考えていました。また、他のボランティア団体とも知り合うことができれば…など、いろいろ広がりをつくれるのでは、と皆が期待しました。
 しかし、ホームページを作って1年経っても、依頼につながることはありませんでした。

(3) 落ちていく士気
 もともと「健康見守り隊」はボランティア団体として発足したので、「健康教室」を開催する場がないのなら他の活動をすればいい。との意見もあり、東北の大震災の後、復興のお手伝いに行くという意見が出ました。メンバー全員がボランティアの登録をして、レンタカーや機材の予算を計上し、計画を立てました。しかし、勤務がバラバラの病院職員が日程を合わせて東北に向かうのは考えていた以上に難しく、数人が個人で行くのにとどまってしまいました。
 また、「健康見守り隊」が発足して4年。メンバーは何回か入れ替わり、「健康教室」を開催したことがないメンバーが半数となっていました。依頼がない期間が長くなり、メンバーの士気も目に見えて落ちてきてしまいました。
 ごみ清掃のボランティア等に参加してその場で紹介のビラを配る等の意見が出ては消えていくような状態になってしまいました。ホームページのブログの書き込みも途絶えがちになってしまい、そのうち話し合いの参加人数も減っていきました。このまま自然消滅していくしかないのかも…と感じられるようにさえなっていました。
 そんな時、「健康見守り隊」OBから依頼が舞い込みました。高校のPTAの地区懇談会の前座として講演会を行うこととなり、その講演会を「健康見守り隊」に任せていただける、とのことでした。
 久しぶりの依頼ということで、メンバー全員、とても喜びました。
 講演会に先だち、PTA会長および担当の教師の方と打ち合わせがありました。「健康見守り隊」設立時の隊長であった西本政之も同席して設立の趣旨とメンバーの思いをお話しさせていただいたところ、PTA会長は趣旨に賛同してくださり、当日「健康見守り隊」の紹介の時間を作っていただくこととなりました。


3. これからの「健康見守り隊」

(1) 久しぶりの活動
 今までの「健康教室」は講師の他は3人程度のメンバーで行ってきましたが、今回は今まで「健康教室」を経験したことのないメンバーと立ち上げ時からのメンバー合わせて7人で行うこととしました。実際に活動することで士気を上げることが目的です。
 内容は高校のPTAが対象とのことだったので、その年齢に一番多いがんである「乳がんの話」とその親の年代に増加してきた「アルツハイマーの話」をテーマとしました。当院ではアルツハイマーを対象としたPET検診が行われていることもあって、PTA会長が興味を示したことも理由のひとつです。
 当日はメモをとる父兄も多く、好評をいただくことができました。また、講演の前にはPTA会長が「健康見守り隊」の紹介をしてくださり、講演後には西本の挨拶の時間も作っていただくことができました。さらに高校のホームページに講演の報告と一緒に「健康見守り隊」の紹介写真まで載せていただくことができました。この講演を足がかりに次の依頼につながることを期待しています。

(2) 新たなる始動
 今回のこのレポートは、以前「健康見守り隊」が立ち上がった時に提出させていただいたレポートの続きなのですが、この2年間、特に目立った活動が出来ず、苦悩の日々が続いていました。
 ただ、この活動を広める方法をいろいろ考えてきたうえで分かったことは、人とのつながりが活動を広げるということです。今まで私たちは、フリーペーパーに掲載したりホームページを作成したりと一度に大勢に知らせることをメインに広報してきました。それで依頼が来たこともありましたが、地道に私たちの趣旨を周りの人に伝えることが実は私たちの活動を広めることに必要であることに気付きました。実際、ほとんどの健康教室の依頼はOBからの紹介であったり、以前講演させていただいた方からの口コミがきっかけでした。
 まだまだ「健康見守り隊」が目指していた地域の方々とのつながりを作るには至っていません。この目標に近づくためにこれからもがんばっていきたいと思います。
 初めて「健康教室」に参加したメンバーも今回の講演でやる気になったようです。これまで休眠状態に近かった「健康見守り隊」。これから新たに活動を始めたいと考えています。
 次回また紹介する機会がいただけましたら、再始動した「健康見守り隊」の様子をお届けすることができると思います。その日を楽しみに活動を続けていきます。


4. 活動の経緯

 これまでの活動内容です。
① 2008.2.27 野々市町押越コミュニティセンター 「乳がんについて」
  乳がんの疫学から、検診、手術、その後の治療までわかりやすく解説しました。早期発見の大切さとがん治療にかかる費用までお話ししたところ、大変好評をいただきました。
② 2008.3.28 白山市茶屋町集会所 「乳がんについて」
  前回と同様の内容で行いました。当時乳がん患者さんをテーマにした映画の公開もあり、このテーマは婦人会の方からの要望で選ばれました。
③ 2009.10.9 野々市町つばき保育園 「ノロウイルスについて」「新型インフルエンザについて」
  冬になる前に、秋冬に幼児に流行するノロ、ロタウイルスを中心に流行しつつあった新型インフルエンザの予防についても交えてお話しました。すべての予防は手洗いから始まるということで、手洗いの歌を歌いながらの手洗い法を紹介し、おう吐物の処置法は実際に実演をして説明しました。これも大変好評をいただきました。
④ 2009.10.17 白山市末広集会所 「乳がんについて」「PET検診について」「新型インフルエンザについて」
  前半は婦人会の方々に前回までの話を少し短縮してお話し、後半は男性の方も合流して当院で行っているPET検診の紹介とその他検診の受け方のお話、最後に当時流行していた新型インフルエンザの予防についてお話ししました。
⑤ 2010.5.23 ホテル日航金沢 「日常生活における泌尿器科領域のQ&A」
  某社のOB会の定期総会特別講演の依頼でした。参加者はすべて男性で年齢も60歳以上ということを考慮して内容を決定しました。講師には当医療企業団の企業長で泌尿器科の医師でもある長野賢一先生にお願いしました。ボランティアで無償にも関わらず、快諾していただきました。内容もとても好評で、またお願いしたいとの声もいただきました。
⑥ 2010.8.7 白山市つながりの家ひびき  「もしもの時の応急処置」
  介護施設の職員の方々からの依頼でした。人形を使用して心肺蘇生やAEDの使用法を実習しました。講師には当院でBLSの資格をもつ看護師にお願いしました。なごやかな雰囲気の中でとても活発な交流をもつことができました。
⑦ 2011.7.16 ののいち研修センター  「熱中症について」
  生活協同組合の研修の一部でお話しさせていただきました。対象はヘルパーさんたちで、熱中症の予防と対処についてのお話でした。講師に金沢赤十字病院の医師を招いて行いました。「健康見守り隊」の趣旨に賛同していただき、ボランティアでの講演でした。
⑧ 2012.6.30 石川県立金沢商業高校 「乳がんのお話」「アルツハイマー」
  PTAの地区懇談会最終日の前座として行わせていただきました。PTA会長や学校関係者の方々が趣旨に賛同してくださり、「健康見守り隊」の紹介の時間を作っていただくことができました。新たな活動のきっかけになることを期待しています。また、隊員の結束にもいい機会となりました。
講義形式の健康教室も行いますが、このようにみんなで参加型の教室も行います。
地域の方とのふれあいを大切に、これからの生活に役立つ情報を発信したいと思っています。
金沢商業高校での健康教室のようす
久しぶりの活動でしたが、ここから活動が広がっていくことを期待して、新メンバーを加えた7人で行いました。