(2) 過疎地・我が村の「いいとこさがし」
① ニホンオオカミ最期の捕獲地から自然保護の取り組みを発信
107年前の1905年(明治38年)に東吉野村で捕獲されたニホンオオカミが、学術的に日本で最期に捕獲された個体と確認されている。
現在、頭骨と毛皮がイギリスの博物館に保管されている。野生動物が多く住める環境の本村であったこと、水源地も多くあり豊かな水を都市に提供し続けていること、こうした自然環境は、山村であるからだ。
旧伊勢街道は、本村の森林内を巡って伊勢に入っている。300年前の伊勢街道を歩いた人々は、本村のどこの旅籠に泊まったのだろう、江戸時代末、天誅組が新しい時代を 求めて決起し、本村の山中をどのような思いで駆け巡り、最期を遂げたのだろう、こうした本村にかかわる歴史を散策する森林であることも付加価値のひとつである。経済効果がなによりも求められてきた戦後の価値観から、少々の遠道ではあっても心や身体をいやしてくれる森林資源を語ることができる「いいところ」を持っている。
イギリスの博物館に保管されるニホンオオカミの頭骨と毛皮を生まれ故郷の本村に返還してもらえないだろうか。野生動物の保護や自然環境を守り豊かな水の美しさや森林資源を維持・管理していくことを目的とすること。
また、ニホンオオカミの毛皮と頭骨は、永久保存する管理体制を整えることを必須条件として、他の絶滅危惧種を守っていくためそのシンボルとしてニホンオオカミを位置づけ、最期の捕獲地から全国に発信する「絶滅していく地球上の動物・植物を守る」取り組みを展開できないだろうか。地域再生の議論は、こうした「夢」を語る「むらづくり」を切り口として、具現化していけると発想している。
2. 過疎地移送サービスで地域再生
(1) 利用者と移送サービス提供者をつなぐきずなと課題
① 山間へき地の公共交通事情
日本の各地で抱える公共交通の事情は、「赤字経営をこれ以上続けられないから、路線の廃止、または縮小」と言うことではないか。しかし、人が住む限り、交通便は、買い物・通院など生活するのに必要。まして、50%近い高齢化率で、自家用車を自分で運転して行く範囲も限られてくる住民にとって、公共交通機関の整備は、地方自治体にとって欠かすことのできない施策だ。
私たちにできる地域貢献は何か、6年前に住民ニーズ調査をして、浮き彫りになったのが過疎地移送サービスの必要性であったことから、陸運局の許可、運営協議会での協議などを経て、「東吉野村まちづくりNPO」が運営を行ってきた。私たち自治労公共サービスユニオンの職場(あいの家デイサービス)も「東吉野村まちづくりNPO」が設置運営を行っている。
② 団塊世代や若者が移送サービスの担い手に
団塊世代の方々に運転業務をお願いすることやデイサービススタッフが移送サービス車の運転を担当している。
当初、1台のワゴン車のみで非専従の状態で運営してきたが、今は、デイサービス送迎車と兼ねて4台で運営をしている。
現行システムは、利用者から1時間につき1,000円程度の負担を頂き、運転手には、1時間800円の賃金を支払っている。車購入、その他経費(保険、税金、修理など)は、NPOで負担しているが、この負担がいつまで続くか課題である。
しかし、こうした社会貢献に企業が支援制度をもっていて、行政施策より迅速な判断と決定をしてくれる。私たちが頼ったのは、丸紅基金。もう一年前になるが、新車一台の提供を受けている。収入は、会員制による1年間2,000円の登録費があるが、上記その他経費の費用には到底届かない。
過疎化に伴う公共交通機関の整備は、さらに、厳しくなることが予想されるが、この過疎地移送サービスの存続は、この地に住む者にとって欠かせない取り組みとなっている。解決策は、それぞれの協力体制づくりだ。村役場や村民そしてNPOの協働が必要であることを、どれほど理解を深めてもらうかが課題となっている。
3. お出かけおしゃべり介護予防事業は、孤立を防ぎ地域を元気にする特効薬
(1) 介護の支援が必要な方々を正確に把握するには
① 介護を必要とする人の立場で介護保険制度を適正に運用すること
「介護を必要とする人の立場で介護保険制度を適正に運用する」こんなに原則的なことが、難しくなっているのではないか。
介護に係る経費がかかりすぎるとの判断が働き、利用者の介護認定がきびしくチェックされるようになった。この4月の介護保険制度改正は、事業者に支払う利用代金を削ったことも、こうした対応のひとつだ。
地域を見つめると、高齢者と障害者家族がともに年をとって、今まで自分でできていた日常生活の一つ一つができなくなって困っている世帯がある。また、男性高齢者の一人暮らしが、妻の入院をきっかけとして始まり、調理をして毎日の食事をするのも面倒でうどんを買ってきて過ごす日々が続いていると言う。また、室内で転倒し、足、腕の打撲で救急車で運ばれたが、骨折もなくその日の内に帰宅、ケアマネージャーが早々に施設を手配、本人は短期入所のつもりが、長期入所を勧める。本人と家族が在宅介護を決めたが、その人にとって、施設入所か、在宅暮らしがよいのか、地域包括支援センターの力量が地域で試される事例が多く存在している。
私たちは、介護を必要とする人の思いを掌握するにあたって、地域の中で孤立する方を囲んでおしゃべりをすることから取り組んできた。隣近所の歩いてこられる範囲で会場を設定し、介護予防の話など、きっかけをつくっておしゃべりをする。介護をする側される側の関係から困ったときはお互い様の立ち位置で居場所を作ることが大事ではないか。居場所づくりこそ、その地域が元気になる特効薬だ。
(2) 地域から求められる人材=自治労組合員の自治研活動
① 地域の高齢者・障害者等へサービス提供するしくみづくりを担うのは、自治研活動で培った知識と行動力を発揮する場ではないか。
介護認定を受けていようといまいと介護を必要とする方々は、日々増加している本人が申し出をしない限り介護認定調査に入らない地域であってはならないが、見逃されているケースも多い。こうした現状を見据え、認定外の人にも1時間500円で生活支援に入る仕組みづくりを模索している。
介護保険外のサービス提供ヘルパーには、1,000円を支払うものの、うち500円を自らが生活支援を受ける時のために認定外介護保険料として支払ってもらう。
このシステムづくりには、地域の方々の参加がなければ成立しないと同時に地域に暮らす自治労組合員のボランテイア活動が要となってくる。
地域の課題にかかわる自治研活動の実践を展開していくチャンスである。自治労は、自分たちの労働条件をよくするための組織であるが、質の高い公共サービスを地域に提供するために働きやすい職場を実現する組織である。地域での孤立を防ぎ高齢者・障害者のパワーを引き出す粘りと知恵を出し合う継続した取り組みが、自治労の生き残りをかけた「たたかい」であると言っても言い過ぎではない。人と人をつなぐ組織づくりに必要な事務能力と自治研活動の行動力を発揮して、地域社会への貢献をする時である。自治労組合員による地域での活動が、今、必要とされているのではないか。
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