【自主レポート】

第34回兵庫自治研集会
第5分科会 医療と介護の連携による地域づくり

 平成24年度から平成26年度までの3年間の本市における介護保険制度の円滑な実施を図るため、介護保険制度の運営の基本となる各種サービスの目標量等を定めるものとして、「第5期介護保険事業計画」を策定した。
 この中で特に苦慮したのが、給付の伸び等による保険料の設定であり、一般会計から繰り入れを行うこととなった現状についてレポートする。



豊後大野市の介護保険について


大分県本部/豊後大野市職員連合労働組合・自治研部

1. はじめに

 豊後大野市は、平成17年3月末に旧大野郡5町2村により合併(8年目)し、人口4万人余りの市である。この間、大分市と熊本市を結ぶ総延長120kmの中九州横断道路も犬飼-大野間が開通しており、朝地までの工事も順調に進んでいる。このことにより大分市市街地までの所要時間が短縮され通勤圏域の拡大等がされ、生活環境の改善がされている。また、豊後大野市民病院の開設やCATVの整備がされ、現在新庁舎の建設中でもある。
 一方、本市を取り巻く社会情勢は、少子高齢化の進行や過疎化による人口減少、地域経済の停滞等により、極めて厳しくその行先は不透明になっている。
 こうした状況の中、

2. 介護保険の現状について

 高齢化社会における介護問題の解決を図るため、介護が必要な高齢者等を社会全体で支える仕組みとして平成12年に介護保険制度が創設された。その施工後、サービスの提供基盤は急速に整備され、サービス利用者は着実に増加するなど、日本の高齢期を支える制度として定着している。
 厚労省が今年の1月に日本の50年後の人口の推計を発表し、高齢化率が39.9%になるとのことである。
 豊後大野市最新高齢化率37.1%。




 上は豊後大野市における給付額の推移である。合併初年度の平成17年度は40億円だったのが、平成23年度には57億1千万円となり、6年間で1.43倍に伸びている。
 下の表で給付率の状況を見ると、豊後大野市が特に高いことが分かる。



一人当たりの給付費が高い原因として考えられること
①認定率が高いこと。平成19年から平成23年まで県内で一番の高さ。最新認定率23.7%
②実際に健康を害している方が多い。
③事業所が多くサービスを受けられやすい環境にある。
・老人福祉施設    3施設  265床
・老人保健施設    6施設  338床
・養護老人ホーム   2施設  120床
・認知症共同生活介護 12施設  141床
・有料老人ホーム   12施設  277床
   計       35施設 1,141床
・通所22事業所、通所リハ10事業所、訪問22事業所、訪問リハ9事業所、 等
 下の表から、現在は1,000を軽く超えている。
 有料老人ホームについては、今年度も3施設100床弱の追加が予定されている。


主な入所・入居施設の床数と利用度


年度別の給付費予想額と決算額の推移


 上の表にて第4期の給付予想額と決算額の差が大きいことが分かる。
 考えられることは、県に届け出だけで開設できる有料老人ホームができたことによる、訪問介護や通所介護の伸びが影響しているのか。第5期の予想も、有料老人ホーム等の増床による伸びを考慮し24年度を60億円。25年度を65億円と読んで計画している。しかし、26年には、伸びを止めたいと言うことで若干の伸びに止めている。

3. 保険料について

 下の表のとおり4期も5期も大分県で一番の高さである。
 第3期 4,375円  第4期 5,095円  第5期 6,250円


4期と5期の保険料


(1) 介護保険料の見通し
 大幅な介護保険料のアップ。
 第4期は大分県トップで全国52位。
 第5期は大分県トップで全国9位。 6,250円
 法定外繰出しがなければ、全国トップの7,000円。
 このまま給付費が増加していくと第6期はさらに保険料の上昇が予想される。 9,000円超か。

(2) 問題点
・資金投入(法定外繰入れ)は原則を逸脱した不適切な介護保険制度の運営状態
・法定外繰入れを続けると、介護保険が豊後大野市を破綻に追い込んでしまう可能性
・特別地方交付税などの減額の財政的ペナルティの可能性

(3) 苦渋の選択
 中長期目標を達成するまでの短期的措置として法定外繰入れを行う。

4. 給付適正化ロードマップ

(1) トップセミナー(事業所・医師会)
・これまでは、市町村に指定等権限がある地域密着型サービス事業所を集めた集団指導等は行ってきたが、市内の全ての介護保険関係事業所の代表者等に集まっていただき、厳しい市の介護保険財政運営を説明し、適正な運用給付を指導する。(23年度より実施)

(2) 介護予防施策の再構築
・一次予防事業、二次予防事業、総合支援事業等の充実。
・庁内連携会議(健康推進室、国民健康保険係、社会教育課、公民館)による健康・介護予防事業の組立。

(3) 介護予防等広報啓発
・ケーブルテレビ、広報誌にて啓発

(4) 認定調査直接実施率up
・年間調査件数4,500件。これまでの認定調査は、新規は直接調査を行っていたが、施設等で更新などは委託しているケースが多かった(全体の約5割)。平成23年度介護認定調査員数7人(嘱託職員)を平成24年度は10人+正規職員1人配置と増員し、およそ9割の調査を直営で行うこととする。調査の尺度の均一化を図る。

(5) 法23条による実地指導
・県の指定介護保険施設は、大分県監査指導室が実地指導を行っているが、数が多く手が回らない状況にある。そこで、豊後大野市としてはこれまで市町村に指定等権限がある地域密着型サービス事業所のみ行ってきたが、24年度より市単独で実地指導に入る。取り掛かり年度は居宅介護支援事業所、通所介護、訪問介護事業所を中心に7月から開始する。各種基準と報酬の構造を理解しておかねばならない。

(6) 予防プラン検討会【地域ケア会議】
・今回の法改正の目玉のひとつに「地域ケア会議」が挙げられている。当市は、県のモデル市に選定してもらっており、24年3月より毎週金曜日に取り組んでいる。
 地域ケア会議とは、予防プランを検討する会議で、専門家等からアドバイスをいただきながら自立した生活に導くプランにするため、出席者全員で検討を行う。
① 開 催 日  毎週 金曜日
② 開催時間  午前 9:00~11:00
③ 開催場所  介護予防拠点施設ひなたぼっこ研修室
④ 内  容  原則、新規認定・更新のケース(3ケース)
⑤ 構  成  ア.進行 市介護保険係長
        イ.地域包括支援センター 3職種及び介護支援専門員
        ウ.保険者 市介護保険係4人、高齢者福祉係長、認定調査係1人、保健師1人
        エ.豊肥保健所保健師 1人
        オ.アドバイザー 3人(作業療法士又は理学療法士、管理栄養士、歯科衛生士)
        カ.プラン作成介護支援専門員 3人
        キ.サービス提供事業所の担当者 必要に応じて若干名(訪問、訪問リハ、通所、通所リハ等のサービス提供責任者)事前申込により傍聴可能

(7) 地域包括支援センター機能強化
・地域包括ケアの要 最初の2年間は直営で行っていたが、平成20年度より委託(市社協)。
  新庁舎の完成に伴い、市高齢者福祉課の隣のフロアに配置したい。

5. 今後の取り組み

 人生の終末を豊かに穏やかに暮らし、人の尊厳に満ちた最期を送りたいと願うのはみな同じである。それをきちんと支えるシステムがあるかどうかであり、その多くは国の社会保障制度である。高齢者福祉を支える重要な制度の一つである介護保険制度をどう維持していくか、長寿社会が進む中で健康で暮らす期間をどれだけ長くできるか、終の棲家をどこにするのか、そのための選択肢が用意されているのか等多くの課題を解決していかなければならない。