【自主レポート】

第34回兵庫自治研集会
第6分科会 地域での子育ち支援

 『少子化対策』や『子育て支援』に対する危機意識によって、国全体で議論がスタートしてから現在まで、さまざまな研究や対策がとられてきています。しかし、今年の5月、子どもの日を前に総務省が発表した人口統計によると、15歳未満の子どもの数は12万人も減っています。これはいったいなぜなのか? 政策がニーズにあっていないからではないのか? このレポートは職場での意識調査を行い、改めて身近な問題として考えたものです。



改めて『少子化』について考える
― 職場の『意識調査』から見えてきたもの ―

北海道本部/石狩地方本部・自治研グループ検討会議

1. はじめに

 「今年の研究テーマは何にしようか?」「少子化は?」「え~っ 今さら?」……。自治研テーマについて議題としていた会議で、こんなやり取りがありました。確かに「今さら」です。「少子化対策」、インターネットで検索してみると、でるわでるわで政府関係からNPO法人まで、ありとあらゆる研究がされています。しかし、メンバーの一人がもってきた新聞の切り抜きには、「子ども31年連続減 総人口に占める割合は過去最低の13%」のタイトルがでかでかと踊っていました。「なぜだろう?」「対策はあるが、一向に改善されていないってことか?」「自分の役所でもさまざまな子育て支援があるのに」「結婚観がかわったからじゃない?」さまざまな意見が飛び交いました。そのうち誰かが「そういえば、今まで組合や職場でそんな話、したことなかったな」「みんなはどう思ってんだろ?」と言ったのがきっかけとなり、国や学者の研究はさておき、身近なところではどんな状況なのかについて調べてみようということになりました。
 このレポートでは、「少子化対策について研究成果を出す」などと大それたことを言うつもりではありませんが、労働環境や次世代を担う若者の意識、結婚や子育てについてなど、身近な職場の意識調査を通じて、「少子化研究」から見えてきたものを報告したいと思います。


2. はじまった調査
各職場から寄せられたアンケート用紙

(1) ありきたりだが、まずは「アンケート」
① 設問や選択枝になやむ
  「じゃあ、まず意識調査をやって見ましょう」会議座長の指示がでました。できあがった(案)をもとに、メンバーで精査を始めます。回答者が答えにくくては回答率が下がると考え、慎重に設問を考えていきます。特に結婚観や子育て観は選択肢を幅広くし、いろいろな意見に対応できるように工夫しました。また、婚姻件数の推移と出生率の統計表を掲載し、「自由に」意見を書く項目も設けました。最後に、印刷した際のページレイアウトなども検討してアンケートが完成しました。
  しかし、懸念材料もありました。「最近、署名やアンケートは集まらない傾向が強い。ましてや今さら「子育て」のアンケートなんて、答えてくれるのか?」メンバーの誰しもがそう思ったものの、やる価値は絶対ある と自分たちに言い聞かせ、各職場にお願いして用紙を配布しました。
② 予想外の結果が……
  アンケート提出期限が迫ったある日、集計を担当していた事務局担当は朝、職場に来てみて驚きました。アンケート用紙が各職場から次々と返信され、テーブルに山積みになっていました。「きっとそんなに集まらないんじゃないか?」そう思っていたので、集計作業もホイホイと引き受けていましたが、多少あせりながら見てみると、自由記載を含めて、びっしりと記入されていました。最終的に数をカウントすると、3週間程度の期間で、500枚以上が返信されていました。
③ 回収分を集計する
  集計結果は以下のとおりとなっています。
  ○ 集約期間 23日間
  ○ 回収枚数 525枚
    (職種はばらばらで14の組合から提出あり)

  アンケートには、いくつかの設問で「自由に記載」してもらう項目をいくつか設けていましたが、パラパラ見てみるとかなり細かく記載されており、労働組合の依頼とはいえ、「みんな意識は高いんだなぁ」と感心しながら、どうやって集計しようかと頭を悩ませてしまいました。


(2) いざ、分析開始
 集計結果は、「自由記載」も含めて報告書にまとめています。紙面の都合上、ここでは主な回答項目について掲載してみます。


① 対象者の年齢・性別は?
  回答者の男女比は51.4%:48.6%で半々、
  年齢は20~30代で95%を占めています。
② 既婚・未婚の割合は?
  既婚:未婚で34.7%:65.3%、
  回答者の7割近くが「未婚」でした。
③ 未婚の今後
  65%以上の回答者が結婚を希望しています。
④ 理想の結婚年齢は?
  20~30代が圧倒的! となりました。
  また、9割が「恋愛結婚」を希望しています。


⑤ 既婚者で「子どもはまだほしい?」
  既婚者の8割近くに子どもがおり、「いないがほしい」とあわせると9割に上りました。
  また、子どもがいても60%が「まだほしい」と思っていて、「あと何人?」の問いに、回答者の80%が「あと1人」と回答しています。


⑥ 結婚相手に望むこと(性別)、「理想」の子どもの数
  男女とも3つの要素(優しさ・価値観・家事)+趣味一致が圧倒的で、子どもはみな「2人ほしい」と回答しています。※既婚者は「理想」で回答してもらっています。



⑦ 子どもがいらない理由
  「理想の家庭像」を聞く項目で、「子どもがいらない」と回答した人にこんな質問もしてみました。
  経済的な理由を挙げている割合が高いのが印象的です。



座談会の説明をする大橋座長(左)と
三橋座長(右)

(3) 次のステップへ
① 座談会をやってみる
  アンケートの集計もようやく軌道に乗り始め、データが出揃った頃、「では次のステップへ」ということになりました。アンケートだけでは足りない、やっぱり生の声も聞いてみようということで、「青年層を中心に、このアンケート結果も使って、座談会をやってみよう」ということになりました。
  かくして、各職場からいろいろな職種のメンバーが参加し、座談会がはじまりました。
② 会議ではない、自由な雰囲気で
  あらかじめ趣旨は説明していたものの、参加したメンバーは、組合の「会議」っぽい雰囲気にかなり緊張気味でした。そこで「座長」の出番です。これまでいろいろな場面で検討会議をリードしてきた大橋座長が、この会の趣旨などを説明、三橋座長との絶妙なコンビで和やかなムードを作り、参加者からも徐々に発言がでてきました。
座談会の様子。いろいろな職場から参加し、
結婚や子育てについての意見が飛び交った。

  メンバーは既婚・未婚から、まだ3週間という新婚までいろいろな人が集まり、結婚観については「結婚する人はするし、しない人はしない、政策がどうとかではない気がする」「もっと若いときに結婚したほうがよかった」という意見や、女性からは「女性のほうがしっかり考えている、男性はあまり考えていないのでは?」などの指摘もありました。子育て層からは「子どもはほしいが、今の収入を考えるともう一人は難しい、援助などがあれば考えが変わる」「ほとんどの親が子どもには大学にいってほしいと思っている」「周りがみんな塾に通っているので、きつい」などの子育てにかかる経済的な話が出ていました。また、「出会い」という面では、独身女性から、「今回アンケートがあったので職場で話をしたが、(出会いを)待っているだけで自分からは何かしようとしていない」といった話もだされていました。
   しかし、やはりいきなり初対面で、結婚や子育てといった話をバシバシできる人は限られており、また座談会を開始したのが業務終了後で、あまり時間を延ばせず、意見が出てきたころに終了となってしまったところは反省点であったと思います。


3. 結果から見えてきたもの

 今回のアンケート調査で、特に興味深かったのは、年齢こそ30代~40代の、いわゆる「結婚」を一番意識する世代が中心となったとはいえ、職場や組織がまったく異なるにしては、ほぼ一定の答えにまとまっていた点です。
 たとえば、独身者で「結婚したい」人は7割近くに上り、結婚年齢は20代~30代にしたいとの解答が9割を越えました。みんな「恋愛」して結婚したいし、相手に望むことは「容姿」や「高収入」よりも「優しさ・誠実さ・包容力・価値観の一致」です。理想の子どもの数は圧倒的に2人……。婚姻率や出生率の低下にはやむを得ないと思いつつも危惧している、そんな、若者層が浮かび上がってきます。一方、既婚者では、「子どもがいる・ほしい」が9割を占め、みな、「あと一人ほしい」と回答しています。ただ、理想で「子どもがいらない」と回答したのはわずか3%でしたが、その最大の理由が「経済的に養っていけない」「親になる自信がない」というものでした。
 「異性とのコミュニケーション能力の低下」「仕事以外にかけられる時間が短い」「子育てにお金がかからないようにする」……、アンケート調査の自由記載で実際に記載のあったものです。これらの結果から総合的に判断すると、回答者の7割近くだった未婚者はやはり「出会いやきっかけ」が必要で、既婚者には「経済的なサポートを含めた支援の拡充」が求められているということになるのでしょうか。あまりにも“絵”に描いたような結果となってしまい、これまでとられてきた政策がなぜ効果がでないのか、ますます疑問がのこる結果となりました。


4. おわりに

 当初は「いまさら……」という感がありましたが、今回、自分たちのもっとも身近なところ(職場)に「少子化」についてぶつけてみました。結果というか反応はこちらが期待していた以上のものでした。
 今回は公務の場で働く者の意識調査となりましたが、これが一般の市民や民間労働者ともなれば、また違った結果になったであろうと思います。結論的なものは出せませんでしたが、身近な問題について、自分たちも含めて、自治体で生活する市民がどのような政策を求めているかも意識していかなければならないと思います。
 すばらしい研究や机上の理論も必要かもしれませんが、それだけではない、実際に生の声を聞き、本当に求められる政策を行っていくことが重要であると改めて感じました。