1. はじめに
中津市では、退職や職種変更による正規保育士の欠員補充が、ここ30年間殆ど行われていないため、正規(保育士)と臨時(保育士)の数が逆転し、現在では、正規の比率は3割を切っています。加えて、欠員分を補うはずの臨時も、近年では応募者が少なく、年度当初から、配置基準に対して欠員が生じたままでスタートすることも珍しくありません。同様に、受け入れ園児数の増に伴って年度途中に臨時を募集しても応募者がなかなか現れず、最悪の場合、他園への入所を促す事態さえ起こっています。
前記のような欠員分は非常勤の代替(保育士)でカバーしているのですが、中津市における臨時は実質11か月雇用の制度となっており、臨時一人につき年間のどこかで1ヵ月の欠員が生じます。また、正規の土曜保育は代休となるため、毎日3人~4人の欠員を代替で補うことになり、代休の変更を余儀なくされたり、いざ有休を取ろうにも、本来の代替の手が空いておらず、休みが取りづらいような状況がここ数年続いています。
このような現状ではありますが、保育所ごとにいろいろと話し合いをすすめ、努力や工夫でなんとか保育の質を維持しているところです。
2. 中津市職労保育所部会の取り組み
中津市の保育所部会の歴史は長く、三十数年間にわたり継続して活動を行っています。部会では、毎年8回程度の会議を行い、各保育所の抱える問題点や、公立保育所のあり方などについての話し合いを重ねています。また、よりよい保育を提供したいという思いから、部会主催の自主研修会を行い、保育所職員の資質の向上にも努めてきました。
近年、部会で討議をすすめる中で、毎年、議題にあがるのが、
① 正規保育士の新規採用を行って欲しい
② 臨時職員の11か月雇用は、保育所の運営上困るので改善して欲しい
③ 人事担当課には責任を持って臨時職員を確保して欲しい
④ 臨時職員の雇用条件が悪いので、処遇改善をして欲しい
⑤ 主管課との連携について
などです。
特に、①~④の件については、人員確保闘争をはじめとした各種闘争時に職場からの意見として基本執行部に伝え、交渉もしていただいていました。しかし、いつも『当局からは満足な回答を得られなかった』ことが後日の報告会で語られるのみで、私たちの思いを当局はどう受け止めているのかを図りかねていました。
そこで、今年度の保育所部会の中心的な取り組みとして、保育職場で働く私たち保育士の生の声を、当局に聞いてもらいたいという思いから、各園で話し合いを重ね、保育士一人ひとりの思いを反映した独自要求書案を作成しました。そして、この要求書案をもとに基本執行部の執行委員会で助言をいただきながら、保育所部会としての独自要求書を作り上げることができました。この要求書は、人員確保闘争の単組独自要求の中の一つとして提出し、交渉団の中にも保育所部会の代表を一人送り込むことが出来ました。
交渉の結果は、これまでと同様、満足のいくものではなかったのですが、私たち現場で働くものの思いを当局に直に伝えることができたという点では、少しの前進があったのではないかと思います。この経験をふまえて、今後も引き続き保育所部会での取り組みを進めていきたいという思いが更に強まりました。
3. 今後の取り組みについて
私たち保育所で働く者がお子さんを預かる上で常に大切にしていることは、①保護者が安心して就労などできるように、お子さんを、責任を持ってお預かりする ②子どもの心に寄り添い、健全な心と体が育つように手助けをしていく③保護者との信頼関係を築き、保護者、保育所、地域、学校、幼稚園が一つとなって子どもの育ちを応援していく ということです。
今春とりまとめられた、子ども・子育て新システムに関する基本制度の冒頭に「『子どもは社会の希望であり、未来をつくる力である。』子どもが、それぞれの個性と能力を十分に発揮すること、人の気持ちを理解し互いを認め合い、共に生きることができるようになること、このような子どもの健やかな育ちは、子どもの親のみならず、今の社会を構成するすべての大人にとって、願いであり、また喜びである。幼児期の学校教育・保育は、生涯にわたる人格形成の基礎を培う、極めて重要なものである。そして、子どもの健やかな育ちは、我が国にとっての最大の資源である「人」づくりの基礎であり、子どもの育ちと子育てを支援することは、未来への投資でもある。」と書かれています。
“子どもは地域の宝”と、よく言われます。私たちは、未来を担う、子どもたちの成長に関わるという、とても責任の重い仕事をさせてもらっています。そのことからも、保育所の今だけを見るのではなくて、将来的な保育環境を視野に入れながら、保育運動を進めていかねばならないのではないかと考えます。
4. おわりに
中津市では、現在、公立保育所が9園あり、そこに27人の正規保育士がいます。しかし、今後10年間で半数以上の保育士が定年を迎え、このままでは正規保育士の数は10人にまで減少してしまいます。
未来を担う子どもたちの育ちを保障していくうえでも、公立保育所のもつ役割は大きいと考えます。私たち公立保育所で働く者が、子育て行政の中核となり、もっともっと、子育て施策に携わっていきたい。そのためには、質の高い保育を提供し、保護者が、安心して子どもたちを預け、働けるような環境をこれからも維持していかねばなりません。
さらに、子どもたちの心に寄り添い、心の通った温かい保育を行うためには、保育士が心にゆとりを持って保育にあたることができる環境が必要です。保育士の心からの笑顔は、子どもの心に届き、その子の未来に豊かな人間性をもたらしてくれるのではないでしょうか。
よく、保育士が元気でなければ、いい保育はできないと言われています。私たちは保育士が元気に笑顔で働ける職場づくりをめざして、保育士の新規採用の要求や、臨時・非常勤職員の処遇の改善を行い、意欲を持って楽しく保育ができる環境づくりを今後とも進めていきたいと思います。 |