以上、3つのモデル事業はすべて新聞各紙などのメディアで取り上げられ、予算0円で広く安彦氏やG-clubの活動が認知されるきっかけになっており、同時に遠軽町のPRにもなっています。
また、これら取り組みの影響で、町民の中からG-clubの活動に参画したいという声やイベントを望む声なども聞こえ始めています。
なお、G-clubは、2012年1月23日に「アニメ等コンテンツを活用した地域振興策の調査研究報告及び政策提言書」をまとめ、遠軽町長に提出しています。
(2) まちKEN ~Mission:地域の魅力を再発見せよ~
まちKENは、震災後の2011年3月23日に一人の職員の声かけをきっかけに「まちづくり研究会(仮称)準備会(以下、準備会)」として始まりました。
準備会では賛同した職員から、様々なまちづくりに対する意見交換が行われ、まちづくり研究会(仮称)の目的として、まずは地域を知ること、職員の一体感を醸成するため交流を深めること、その中から見つかった課題ごとに部会を分けて協議・提案をしていき遠軽町の活性化を図ることとしています。
また、若い職員の積極的な意見を尊重するため話し合いのスタイルは、ブレーンストーミングにするなど配慮されています。
準備会ではその他、会員の募集(臨時職員含む)や会の名称の募集などを行い、2011年7月22日の設立総会で、会の名称を「まちKEN」とすることで決定し、会員34人(現在33人)でスタートしています。
まちKENは、2か月に1回程度「例会」を開催しており、今後の活動の意見交換や情報交換、交流活動を行っています。
その中から、以下のような取り組みが生まれています。
① 遠軽を知ろう! 「マチペディア」
遠軽町は、4か町村で合併した町ということもあり、職員の中でも、旧町村地域の施設、場所、イベントやグルメスポットなど知らない情報が多くあることが意見交換の中から見えてきました。町内をよく知ることはまちづくりや政策の基本であるとの原点にかえり、町内情報をデータ化する取り組み「ウィキペディア」のまち版「マチペディア」を行っています。
「マチペディア」は、現在、まちKEN会員内だけで編集作成と閲覧がされていますが、情報を共有することで新たなまちの発見があったことや、会員間のコミュニケーションが活発になるなどの効果があったものと思われます。
また、作成に当たっては堅苦しくならないようユーモアのある文書表現がされており興味を引く内容になっています。今後、蓄積された「マチペディア」をどのように活用していくかが課題となっています。
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まちの隠れた情報を編集した「マチペディア」
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② “秘密?”の町民食材を食べてみよう!
まちKENでは、「マチペディア」の実践編として隠れた地域食材や名産品の発見とそれらを実際に持ち寄り食べて交流を深めることをテーマに、2011年10月14日第1回例会を開催しています。
この例会では、参加者は参加費用として1,000円分の食材を持ち寄ることがルールとなっており、17人の参加会員は地域ごとの特産品や珍品などを持ち寄り、それを酒の肴に交流を図っています。
具体的には、鹿肉ジンギスカン(丸瀬布)や林冷菓のアイスもなか(生田原)(昨年惜しまれつつ林冷菓閉店)、fu-soraのパン(白滝)、赤胴焼き(遠軽)などが集まり、参加会員の中には初めて鹿肉を食べたという人や、初めて顔を合わせた職員がいたなど、当初の目的である「食」の発見、職員の親睦交流を図ることに成功しています。
また、第1回例会の中では、まちの将来を語る場が出来たことへの評価や地域の新たな魅力を発見したいなどの積極的な意見も出されており、参加会員のまちづくりへのモチベーションを上げることにも繋がっています。
③ 「イベント」と「食」を研究しよう!
マチペディアや例会の中で見えてきた「まちづくり」をより具体化するために、特に意見の多かった「食」と「イベント」というテーマで部会を作り、それぞれ部会長を選出し調査研究を進めることになりました。
今のところ取り組みが始まったばかりで具体的な活動には繋がってはいませんが、「食」部会については、近年B級ご当地グルメブームなど「食」で地域活性化という取り組みも広く浸透しており、その経済効果を狙った活動も全国各地で多く見られるようになっています。このことから、地元食材の発掘や地元食材を使用した新メニューの開発、町内飲食店情報のデータ化、HP開設による情報の発信などの案が出ており、地元商工関係者からの期待の声も出始めています。
また、「イベント」部会については、地域のイベントに積極的に参加し、インターネットで隠れた町の魅力発信やイベントのマンネリ化、集客力の低下などの問題を検討、新イベントの開発などアイデアブレーンとして期待されています。
3. おわりに ~The Times They Are A-Changin'~
今回報告したグループはどちらも組合加入の有無、管理職や一般職といった立場にとらわれない取り組みとなっていますが、仕事の関係などで調査活動や例会に参加できないメンバーも出てきており、住んでいる地域や立場の違いなどによりそれぞれが思い描くまちづくりのビジョンや方向性にも違いがあることが見えてきました。また、G-clubやまちKENの取り組みをすべてのメンバーが十分理解している訳でもなければ、グループに参加していない職員や地域住民がこれら活動に対し必ずしも協力的という訳でもありません。改めてまちづくりの難しさに直面しているのが伺えます。
しかし、2つのグループの「まちづくり」はまだ始まったばかりです。今は“たのしむことからまちづくりへ”をモットーに活動を行っていますが、多くの職員が日々の業務や生活などに追われ、ほんの少しの将来さえ語ろうとしない中、これらの活動が刺激となり「何か」をやりたいという意欲が少しずつ形となって周囲に現れ始め、職場内部が変わろうとしています。
今後、私たち遠軽町自治研推進委員会は、両グループの活動に期待するばかりでなく、自らもできることから着手し行動することによって「まちづくり」を実践し、色々な角度から研究していきたいと思っています。
また、合併後進んでいなかった町の一体感の醸成についても、各地域が持っているすばらしい歴史や財産を「融合」することで「まちづくり」を盛り上げていければ、子どもたちが大人になるころには、4町村が合併した「遠軽町」は歴史的事実のみとなり、地域が一つになっているはずです。
震災後、転がり始めた職員の小さな取り組みは今も転がり続けています。“Like A Rolling Stone”
そして、「職員」も「遠軽町」も「時代」も変わり始めています。“The Times They Are A-Changin'…” |